| 回数 | 放送日 | サブタイトル | ゲスト出演者 |
| 296話 | 昭和47年1月5日 | 初手柄娘岡っ引 | 大川栄子 永田靖 町田祥子 |
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年の暮、桑名屋に押し込んだ二人組の賊が、老岡っ引き、吉兵ヱの隙をみて、番屋から逃走。平次は、賊のひとり、儀助を御用としたものの、辰次郎は逃してしまう。吉兵ヱの娘、お清は、平次に負けてなるものかと捜査に乗り出すが、果たして、娘岡っ引きの初手柄となるのだろうか。 ゲスト 大川栄子さん(お清)、永田靖さん(吉兵ヱ)、町田祥子さん(お時) 正月から、御用の平次。平次の不在に、お静の心も沈みがち。福笑をしても、おかめの顔は、泣きベそをかいてしまいます。玄関の戸が開くたびに平次と思うと他人。三度目の正直で平次でしたが、またすぐ、出かけてしまいます。短い逢瀬に八五郎も気を遣います。 父親のしくじりにお清は、女だてらに、下手人の辰次郎を捕まえようとします。心配する平次に「お説教は、もうたくさん、必ず、親分の手柄を横取りしてみせるわ」と気の強いこと。ラストは、やっぱり、平次が、辰次郎をお縄に。でも、手柄を吉兵ヱに譲ります。そんな平次を見て、お清は、平次に惚れてしまいました。仲間の駕籠かきたちも「さすが、銭形の親分だ」と男も惚れる親分です。 最後は、やっと二人きりのお正月がきた、平次とお静。二人で初笑。お幸せに。 * お正月から御用 平次の家。 お静、おゆき、お勝、日が傾いてきたが、まだ、おしゃべり中。玄関の戸の開く音。 お静「あら、また、今度はどなたかしら?」 平次「どなたはねぇだろう、亭主のお帰りだい」 お静「あぁ、おまえさん!(嬉々として、平次に飛びつかんばかり)」 お勝「あのぅ、私たち、やっぱり、帰ります」 お静「あら、どうして?」 おゆき「どうしてって……どうしても」 お勝「それを言わせようなんて、姐さんもお人が、悪い」 平次「おい、なにも俺に遠慮することは、ねぇんだよ」 お勝「いいえ、どうもお邪魔しました」 お静「変な人たち(平次の顔を見つめる)」 平次「おい、お静な……ん? 俺の顔、どうかしたかい?」 お静「えっ、いえ、しばらく会わなかったから、何だか眩しくて……ふふ」 平次「バカ野郎〜、へへ」 平次、立ったまま、重箱から何やら、つまみ食い。 お静「あらまぁ、お行儀の悪い! 座ってくださいよ。今、支度しますから」 平次「せっかくだがな、そうもいかねぇんだ。あの、着替え、出してくれ、着替え。大みそかから、着たっきりすずめなんだ」 お静「そうですか」 八五郎が、玄関から、入ってくるが、二人を気遣い、声をかけない。 平次「おい、お静」 お静「何ですか」 平次「何でもねぇ」 お静「言ってくださいよ」 平次「すまねぇな。ふたりっきりの 水入らずの正月のはずが、こんなはめになっちまって」 お静「それなら、いいんですよ。私、別になんとも思っちゃいませんから。ただね、おまえさんが、体を壊しやしないかと……」 お静、平次の胸に顔をうずめようとして、八五郎に気づく。 お静「八つあん!」 平次「なんだ、おめぇ、そんなところで、何してやがんだ」 八「イヒヒヒ、いえね、あの、樋口様からお呼び出しがあったんで。お知らせに、へへへ」 平次「じゃ、なぜ声をかけねぇんだ」 八「いや、あの、それはつまりね、あのう、ふたりの逢瀬を少しでも引きのばして差し上げようと思いましてね、へへ」 平次「いい加減にしねぇか」 お静「いやな八つあん」 八「イヒヒヒ」 * ラストシーン 平次の家。 平次とお静、こたつに入っている。 平次「正月早々、えれぇ事件だったぜ、へへ」 お静「(平次に屠蘇を注ぎながら)案外、これが今年の厄落としになって、いいことが、続くかもしれないわね」 平次「な〜に、今年もまた、相変わらず、貧乏暇なしよォ(屠蘇を飲もうとする)」 お静「ふふ、あっ、待っておまえさん! 大事なこと忘れてたわ」 平次「大事なこと?」 お静「(三つ指ついて)おまえさん、あけまして、おめでとうございます」 平次「な〜んだ、そうかい」 お静「そうですよ」 平次「いや、おめでとう」 二人、笑う(初笑?)。 |
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| 297話 | 1月12日 | 盗っ人の涙 | 古都清乃 水島道太郎 山下洵一郎 |
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左官職の親方、上総屋政蔵が、浪人に襲われた。居合わせた平次に助けられたが、その理由を頑として話さない。次に足場に細工され、政蔵は、命を落としそうになり、娘、お信乃までもかどわかされる。こんな目にあっても、なぜ、わけを話さないのだろう。何を隠しているのか。平次は、やっと政蔵の秘密を掴んだが、政蔵は、娘を助けるため、ひとり敵地に乗り込んでいった。 ゲスト 古都清乃さん(お信乃)、水島道太郎さん(上総屋政蔵)、山下洵一郎さん(嘉助) 出来心で、潮田邸の御金蔵から、千両箱を盗んでしまった政蔵。犯した罪の重大さに気づき、盗んだ金額の金だけでも返さなくてはとお金を貯めていた所、そのときの相棒に強請られることになってしまいます。 ラスト、徳松に殺された政蔵の亡骸の前で。平次、涙ながらに「おめぇの胸のうちは、察するぜ。だが、罪は罪、上総屋政蔵、潮田様御金蔵破りの件で、明神下の平次が、召しとるぜ」と言います。罪を憎んで人を憎まず。うまく言えないけれど、平次の仕事に対する、厳しさが出ていて、かっこいい台詞でした。 * ラストシーン 平次の家の前。 平次と八五郎が来る。お静が家から出てくる。 お静「おまえさん、お信乃さんは?」 平次「お咎めなしの御沙汰が、おりたぜ」 お信乃「えっ、本当ですか」 嘉助「よかった」 平次「お信乃さん、嘉助さん、お上の御慈悲、粗末に思っちゃならねぇぜ」 お信乃「はい」 嘉助「お信乃さんと一緒になって、上総屋をもう一度、開けるよう、がんばります」 平次「うん」 お静も頷く。 八「桧の旦那も潮田様に仕官が、叶ったそうだし、へっ、よかったですね」 嘉助「それじゃ」 嘉助とお信乃を見送る平次、お静、八五郎。 |
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| 298話 | 1月19日 | 女房関白 | 姫ゆり子 玉川良一 雷門ケン坊 |
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京屋の主人、治兵ヱは、養子。女房のお竜にうだつが上がらない。ストレス解消に浮気をして、朝帰りをしたら、大変なことになっていた。お竜が、殺され、アリバイのない次治兵ヱが、疑われた。おまけに浮気相手は、美人局。ふんだり、けったり。平次は、表向きは、かかあ天下だが、お竜の優しい心に気がついた。真犯人は、一体誰? ゲスト 姫ゆり子さん(お竜・お千賀)、玉川良一さん(治兵ヱ)、雷門ケン坊さん(千吉) 久々にクレジットの間違い。 雷門ケン坊さん扮する奉公人は、「千吉」となっていましたが、劇中、「しんまつ」と呼ばれていました。「仙吉」は、治兵ヱの息子でしたが、クレジットだは、「仙太」となっていました。 かかあ天下のその裏には、不治の病で、余命いくばくもないお竜が、家族や店を案じて考え抜いたストーリーが、ありました。後添えまで決めてあるとは、完璧。 八五郎に為吉が、養子の話を持ってきます。なかなか、よさそうな娘さんらしいから、会うだけ会ってみればよかったのに。「行っちゃえ、行っちゃえ」と平次もおススメでした。 京屋に明和の三美女、「笠森お仙」の絵が貼ってありました。 ☆ 笠森おせん…明和のころ、江戸市井では、「評判娘」と言われる美女たちが、注目を集めていた。その多くは、盛り場などの水茶屋で働く美人の茶汲み女であった。谷中笠森稲荷の鍵屋のお仙、浅草寺境内の本柳屋お藤、同境内の茶屋のおよしらが、特に有名で、のちに明和の三美女と称された。中でも薄化粧の自然美のお仙を化粧のやや厚い都会美のお藤は、大評判で、江戸の美女、一、二を競った。人気の評判娘は、絵草紙や、芝居などの題材にもなり、鈴木晴信らが、描く錦絵は、飛ぶように売れた。 お仙は、旗本の倉地政之助満済の妻として、迎えられ、子宝にも恵まれて、幸福な生涯を送ったと思われる。倉地家の菩提寺正見寺(東京都中野区)には、今も夫婦の名前が刻まれた墓石が残っている。(小学館 江戸時代館より) * ラストシーン ひょうたんや。 お竜の遺言状を読んだあとで。 為吉「へぇ〜、驚きましたね、そいつは」 お静「何から何まで、行き届いているし、本当にこの気持には打たれるわ」 八「ねぇ、親分」 平次「ん?」 八「女将さんが、自分が病気で死んだら、店は、狩野屋に乗っ取られることまで、知ってたんですかねぇ」 平次「そうだよ。ん、つまり、自分を殺して、店と息子と亭主と全部守ったんだよ」 為吉「おまけに、その上、浮気をした亭主まで、ちゃんとお灸をすえているんですからね」 お勝「悪い女房なんて、とんでもない。稀に見る賢い女将さんですよ、ねぇ〜」 おゆき「そうよ」 平次「だけど女は、こわいねぇ、なっ」 八「え〜え、全く……」 八五郎、女性軍を見て、口を塞ぐ。 おゆき「あらぁ、そんなことないわよ、ねぇ、お静姐さん」 お静「え〜え、そうですとも」 為吉「そうだ! 八つあん、ほら、いつかの下駄屋の養子話、せっつかれて、困ってるんだよォ、顔は、十人並みだけど、とっても利口な娘だってよォ、どうする?」 八「よしてくれよォ、おい」 お勝「八つあん、行っちゃいなさいよ」 おゆき「そうよ、行っちゃえ、行っちゃえ」 お静「覚悟した方がいいわよ」 八「冗談じゃない」 為吉「決まった、決まった」 八「決まったって……やめてくれよォ、頼むよォ……ねぇ、ねぇ、親分、助けてくださいよォ」 平次「行っちゃえ、行っちゃえ」 皆、大笑い。 八「ひどいなぁ」 京屋。 治兵ヱは、相変わらず、女性客に必要以上の接客をしている。そこへお竜に頼まれたとお竜の親戚、お千賀が来て、治兵ヱの後添えだという。お竜そっくりのかかあ天下になりそうな気配。それをほほえましく、暖簾の陰から、平次と八五郎が、見ている。そして、平次と八五郎は、日本橋を渡っていく。 |
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| 299話 | 1月26日 | 一度死んだ女 | 真屋順子 中野誠也 |
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魚屋の勘三が、殺された。日頃、勘三に虐げられていた妻、お千代が、疑われ、捕えられた。平次は、勘三の家から、およそ似つかわしくない、桜の模様の着物が出てきたことに疑問を持つ。そして、人生を捨てたようなお千代の態度にも納得がいかない。お静は、お千代が、水茶屋時代、世話になったおせいに違いないという。お千代に隠された秘密とは? ゲスト 真屋順子さん(お千代)、中野誠也さん(文吉) 冒頭、平次とお静が、着物のことで揉めてしまいます。思い出のある大切な着物の話が、事件の伏線となっています。事件解決のヒントにもなりました。 平次とお静、せっかくのふたりっきりのデートもまた、八五郎の「たいへんだぁ」で、 おじゃん。 平次は、お忙し、家の中に上がらず、庭から入って縁側でお昼ご飯。 * 思い出の着物 平次の家。 平次とお静、デートのよう。平次は、玄関で、お静を待っているが、まちくたびれている。 平次「おぅ、まだかよ」 お静「(鏡台の前に座っている)はいはい、おまちどうさま((平次の前で、ひと回りしてみせる)どうかしら?」 平次「おっ、いいよ」 お静「少し派手だったかしら……派手なら、別の着物に(部屋に戻ろうとする)」 平次「おぅ、とんでもねぇ、(ひとりごとで)これ以上待たされたら、たまらねぇ」 お静「何です?」 平次「あぁ、いや、似合うよ、ぴったりだ、おめぇは、若くみえるから、これじゃ地味すぎるくらいだよォ」 お静「本当?」 平次「あぁ、嘘なんか言うもんかい。おい、その着物いつ作ったんだ?」 お静「あら、覚えてないんですかぁ」 平次「あっ、今年の春だ、そうだったな」 お静、ふくれっ面。 平次「あっ、去年かぁ、あぁ、そうだ、そうだ、へっ、思い出した。ど〜も柄が少し古いと思ったんだ。去年の秋、作ったやつだ、なっ、お静」 お静「まぁ、調子のいいこと言って」 平次「違うのか」 お静「忘れたんですね、これはね、おまえさんが、私に初めて、こさえてくれた着物じゃありませんか」 平次、ばつの悪い顔。 お静「あのとき、おまえさん、何て言ったんです? 岡っ引きっていうやつは、金に縁がないから、そうそう、着物なんざ作ってやれねぇ、だから、これを俺だと思って大事にしろって」 平次「あぁ、わかった、わかった、わかったよ(お静をなだめるように肩をたたいて)」 お静「だから私、この着物を何より大切にしてたんですよ。今日だって、何を着ていこうかとさんざん迷ったんだけど、せっかく久しぶりにおまえさんとおつながりで、出かけるから、やっぱりこの着物にしようって、決めたのに……肝心の言った本人が、忘れるなんて(平次の胸元をつかんで)もう、くやし〜い!」 平次「あぁ、もっともだ。だから、その話は、帰ぇってから、ゆっくり……」 お静「あっ、ごまかすんですか」 平次「そうじゃねぇが、ただ、その、今ここで、バタバタしている間に、もし、八の野郎が、おめぇ、たいへんだぁなんて飛び込んできやがったら、せっかくの久しぶりが、台なしになっちまうじゃないかよォ!」 八五郎の声「親分、たいへんだぁ〜」 八五郎が、駆けこんでくる。 八「親分! たいへんだぁ」 平次「おい、どうした、八」 八「親分、たいへんだ、殺しですよ」 平次「何、殺し?」 がっくりしたお静の顔。 * ラストシーン 往来。 棒手振り姿のお千代(おせい)。旅姿の文吉。 お千代「達者でね」 文吉「おめぇもな」 お千代「鰯、いわ〜し、いわし、いわし(去っていく)」 文吉が、平次、お静、八五郎のところに来て、頭を下げる。 お静「文吉さんの江戸おかまいは、いつまででしたっけ?」 平次「来年の春まで」 お静「そ〜う、それじゃ、おせいさん、もう少しの辛抱ですね」 八「あ〜ぁ、あっしゃ、いつまで辛抱すりゃいいんですかねぇ」 平次「死ぬまで待っても、嫁の来てはねぇんじゃねぇのかな」 八「え〜、そ、そりゃないですよ、親分」 平次、お静、笑う。 |
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| 300話 | 2月2日 | 島破り | 高橋長英 北村英三 |
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石川島の人足寄せ場から、三人の咎人が、脱走した。日が落ちるまでにはと、足を棒にして、捜しまわる平次や万七たち。三人の潜伏先は、あさり売りの作兵ヱの家だと断定した平次。どうやら、ひょうたんのおゆきもそこに捕えられているに違いなかった。平次は、俺が身代りに人質になると作兵ヱの家を訪ねる。作兵ヱは、三人の咎人にひとり、源太という若者が気にかかって仕方がない。 ゲスト 高橋長英さん(源太)、北村英三さん(作兵ヱ) 島抜けした三人が、作兵ヱの家にたてこもり、おゆきも人質になっているに違いないと推測した平次。三河屋(酒屋)の手代と称し、商人に扮して潜入します。 しかし、賊のひとり、熊造にすぐ見破られてしまいます。仲間の銀次が、平次の顔を足で踏みつけます。気を遣って踏みつけてるなぁ〜と感じました。 * ラストシーン 平次の家。 お静、お膳の用意。玄関の戸の開く音。 お静「お帰りなさい」 平次「おっ(お膳をみて)出来たな」 お静「本当に来てくれるんでしょうかねぇ、作兵ヱさん」 平次「あぁ、おゆきちゃんと八がな、今、迎えに行ってるんだ。きっと連れてくるよ、ん」 お静「でも、まさかと思うような話でしたね」 平次「あぁ、全くだ。正直いって、おいら、寄せ場の調書を見るまでは、半信半疑だったよ」 お静「息子さんをこんな風にしたのも、親の責任だって、作兵ヱさん、泣いていましたね」 平次「行く末の幸せを願って、見捨てた子なんだろうが、誤った親心だ。しかし、源太じゃなかった。その三吉もこれで、まっとうになるだろう。傷もてぇしたことは、なかったし、それで今度のことは、熊造たちにそそのかされてやったことだ。その気になってやり直しゃ、きっと二、三年で、出てこられる」 お静「十何年ぶりかで、親子が一緒に暮らせるなんて、まるで夢のようでしょうね」 平次「そうだろうとも。とにかく、まぁ、親子の間で捨てたり、捨てられたり、まぁ、この人の世にそんなことは、赦されちゃならねぇんだ」 お静「あっ、おまえさん、着がえてくださいな」 平次「あっ、そうしよう」 平次、お静に十手と投げ銭を渡す。 お静「はい」 お静は、十手と投げ銭を持って、神棚へ。平次は、着替えに隣室へ。 |
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| 301話 | 2月9日 | 城を出た女 | 葉山葉子 御木本伸介 加賀ちか子 |
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上様の側室、お蓮の方へ懐紙入れを献上した桔梗屋。どう、間違ったのか、その懐紙入れには、お蓮の家紋を竜が銜えている図柄が、描かれていた。竜……お竜は、お蓮のライバル。怒りをかった桔梗屋は、島流しの刑に。桔梗屋の後ろ盾で、大奥に上がっていた波津江も暇を出された。御恩返しとばかり、波津江は、平次の手で借りて、無実の桔梗屋を救おうとするが、さすがの平次もお城の中のことには手を出せない。しかし、この事件に関した殺しが、次々と起こり、平次は、命を賭けて、事件解決に挑む。 ゲスト 葉山葉子さん(波津江)、御木本伸介さん(村岡重蔵)、加賀ちか子さん(お蓮の方) 桔梗屋の番頭伊助が、入って行った場末の飲み屋の暖簾、なんと若草色で、違い柏の模様でした。 平次、おせん殺しを八五郎に任せますが、桔梗屋の事件に結びついていました。波津江を襲った三人のごろつきも八五郎に任せました。ぐっとがまんの平次。やっぱり、投げ銭が、必要でした。それにひとりしか、御用にできませんでした。 夜も更けかかって、平次は久しぶりに詰将棋をして、のんびりしてますが、そこへ桔梗屋が、平次に無実の罪に問われている父親の助けを求めにきます。なかなか、ゆっくり休ませてもらえませんね。 毎度のことながら、たとえ、上役だろうと何だろうと平次は、御用の道、人の道をはっきり伝えます。その潔さに上役も折れてしまいます。今回は、その上役が、与力の村岡重蔵。頑固ものと思いきや、憎いことをやってくれました。首を突っ込んではいけない今回の事件に首を突っ込んだ樋口様と平次。村岡は、「桔梗屋の処刑の時刻まで、番屋から絶対出るな、俺は、朝まで帰らないから」と言います。「朝まで帰らない」と念を押して言った村岡に平次は、「朝まで村岡様は来ないということは、その間に……」そう、村岡は、平次たちの捜査に横を向いてくれたのです。 ひょうたんのおゆき、平次に対してベテランになりましたね。「親分が、あんな顔しているときは、最後の仕上げの考えをまとめているとき」と言って、お銚子を持っていこうとしたお勝に「今、持っていかない方がいい」と止めます。 * 平次の啖呵 牢。 桔梗屋が入っている。 桔梗屋に話を聞くため、身分を偽って入ってきた波津江とお勝。 与力村上にばれて、ピンチ。そこへ平次。 村岡「平次、掟を心得ておろうな」 平次「村上様、掟は人の心を縛るものではなく、正しいお裁きをするためのものでございましょ?」 村岡「ん?」 平次「相手は、上様のご側室。ただ一遍の弁解も許されずに、無実の罪に泣かねばならないのでござんしょうか。口幅ったいことを申し上げて、申し訳ありません。しかし、天下のご政道は、人の真心の上に成り立つもの。あっしは、そう思っております」 * ラストシーン 桔梗屋の店先。 新規巻き直しの祝があるのか、酒や祝の品をもった客が、次々とくる。出迎える息子の新之助と波津江。反対側に新しい番頭であろうか、奉公人がいる。 新之助「波津江さん、お城へは?」 波津江「ええ、改めて、私の方から、お暇をいただいてきました」 新之助「それじゃ」 波津江「これからは、このお店で、桔梗屋の御恩返しの真似ごとでもさせて頂きたいんですけど」 新之助「波津江さん……(客が入ってくる)あっ、いらっしゃいませ。ありがとうございます」 遠くで見ている平次と八五郎。 八「親分、いい気持ちですなぁ」 平次「ふたりに言ってやんな」 八「何?」 平次「桔梗屋が、流人船が御赦免になるのが、六つすぎだ。早く霊岸島へ迎えに行ってやんな、とな」 八「へい」 八五郎、走って桔梗屋へ。新之助たち、頭を下げる。 八「え、どうも、どうも、あの〜」 波津江と新之助、平次の姿を見つけ、お辞儀をする。平次、頷き、踵を返す。 |
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| 302話 | 2月16日 | ある絆 | 島田正吾 八木孝子 戸浦六宏 |
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肥前屋に強盗が入り、皆殺しにされた。大判、百枚、小判にして七百五十両も盗まれた。大判のままでは、足がつく。平次の推測通り、賊は、金銀細工師を狙い、大判を潰して、ほかのものに細工しようとしていた。狙われたのは、佐平。佐平と賊のひとり、疾風の銀三郎の間に何かがあると睨んだ平次。佐平は、嫁入り直前の娘、お絹のしあわせを願ってひた隠しにしていた秘密を明かす決心をした。 ゲスト 島田正吾さん(佐平)八木孝子さん(お絹)、戸浦六宏さん(疾風の銀三郎) 島田正吾さん、いい味を出されてます。何か秘密を持っていて、地味に生きているが、その正体は、大泥棒やお尋ね者、という役柄が、上手いですね。 「佐平に縄を打つのは、この俺だからな!」と意気込んでいた万七。父子の秘密を知って、情に「ほだされ、「俺には、縛れねぇ」と。八五郎が、平次の命で、佐平を番屋に連れていきました。 平次は、娘のお絹の年齢と佐平が、島から戻ってきた年齢のずれに気づきます。これが、佐平の秘密でした。 お絹の嫁入りを快く受けいるてくれた山城屋に平次は嬉し涙を。 花嫁の手を引く留袖(いい柄ですね)姿のお静。紋付袴姿の平次。どうやら、仲人頼まれたようです。(紋は、ふたりとも違い柏でした)」 * 佐平の秘密 平次の家。 お静「(お勝手で、茶碗を拭きながら)あぁ、でもよかった、男手ひとつで、十八年、佐平さんの苦労は、並大抵のことじゃなかったでしょうからねぇ」 平次「(長火鉢のところで、お茶を飲みながら)十八年か……おい、お静、赤ん坊ってぇのは、十月十日、母親の腹の中にいるんだったな」 お静「ふふふ(平次のそばにきて)おまえさんたら、そんな、わかりきったことをきいて……一体どうしたっていうんです?」 平次「あぁ、いや、お絹さんは、十八だ」 お静「ええ、それが」 平次「勘定が合わねぇ」 お静「あら、だって、十八年前に佐平さんが、島から帰って、出来たんだから、ぴったりじゃありませんか」 平次「父つあんが、御赦免船で、島から帰ぇってきたのは、十八年前の七月なんだ。それから、馴染んだ女との間にすぐ子供が出来たとしても、生まれるのは、あくる年の五月か、六月ごろだ。だとすると、お静、今、その子供は、いくつになる?」 お静「十七……おまえさん、するとお絹さんは?」 平次、厳しい顔つき。 * ラストシーン 長屋。 お静に手をとられ、長屋から出てくる花嫁姿のお絹。後ろから紋付袴姿の平次。万七、清吉に守られ、天水桶の陰から、お絹を見て涙を流している佐平。お絹、駕籠に乗る。あとから平次夫婦がついて行く。 |
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| 303話 | 2月23日 | 洲崎弁天横丁 | 赤座美代子 山本豊三 国睦子 |
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備前屋の婿養子、弥之助は、妻のお万と洲崎大師からの帰り道、品川宿で、逃げた飯盛り女たちをごろつきどもが、連れ戻している光景に出会う。そのひとりの女は、弥之助の幼馴染で、末を誓い合ったお加代。昔の思いが、弥之助の足をお加代のもとへ走らせる。そんなふたりを利用する、お加代の雇い主、仙右ヱ門。その仙右ヱ門が、殺された。疑いは、弥之助とお加代に……。 ゲスト 赤座美代子さん(お加代)、山本豊三さん(弥之助)、国睦子さん(お万) お静が、平次と八五郎に「お彼岸のお団子」を作って、持ってきますが、放送日が2月23日なので、ちょっと早い気がします。それにしても、八五郎、泥だらけの手で、お団子を掴んで、親分に勧めるとは、食べる気がしませんよね。八五郎の「たいへんだぁ」がないと思ったら、為吉が「たいへんだぁ」と飛び込んできました。 備前屋の番頭、与七が弥之助の身代金を持って行きます。鮫洲の仙右ヱ門の手下にお金を渡したものの、取り返そうとして、揉みあいになります。平次が、助けに入るのが、遅い気がしました。投げ銭もタイミングをはずして……というか、与七が、邪魔でしたね。 * ラストシーン 南町奉行所。 平次と八五郎が出てくる。 八「(門番に)あっ、どうも……へへ、ねぇ、親分、お加代さんにすぐ知らせてあげましょうや、ねっ」 弥之助とお加代がいる長屋。 為吉をはじめ、近所のひとたちが、集まっている。そこへ平次と八五郎。 平次、お加代の死を察した様子。 為吉「親分さん、お加代は、たった今……」 平次「間に合わなかったかい。今、お奉行所で、お裁きがあった。お加代は、お咎めなしと決まった」 八「それを知らせて、喜ばそうと思って、飛んできたのになぁ」 弥之助「お加代……聞いたかい。おめぇは、何のお咎めもない、きれいな体で、あの世に行けるんだよ」 平次、八五郎、近所の人々、合掌。 弥之助「お加代は、このなつかしい長屋で、七日の間、私の腕の中で生き、そして、私に抱かれて死にました」 為吉「親分さん、この美しい幸せそうな顔をみてやってください。まるで、笑ってるみてぇじゃござんせんか」 弥之助「お加代は、昔のまんまで、清らかな赤いほっぺたのお加代坊として、死んでいったのです」 平次「おめぇさん、これからどうなさる?」 弥之助「お加代の魂が、眠っているこの長屋で、もう一遍、裸一貫の弥之助として、出直してみるつもりです」 頷く平次。 お加代の顔のアップから、青空の映像へ。 |
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| 304話 | 3月1日 | 恋と十手 | 渋沢詩子 北原隆 |
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料理屋の美人女将、おたきに八五郎が、惚れられた。すっかり、その気になった八五郎。ところが、おたきは、お府内を荒らしまわっている迅雷組の一味。 まんまと騙された八五郎、そして、また強盗事件が、起きてしまう。十手返上だけでは、済まされないドジ。子分のドジは親分のドジと平次も必死に迅雷組の手がかりを捜す。 ゲスト 渋沢詩子さん(おたき)、北原隆さん(青柳新三郎) 見どころは、八五郎に恋人が出来たことと、平次が、八五郎に2発のビンタをしたことでしょう。 この一件から、八五郎は、女性に対して、トラウマになっちゃったのかも。おたきに会いに行った平次、「しかし、八五郎のどこがよくて……」の台詞には、大笑い。おたきは「純で、気持ちがやさしい」などなど。その通りです。 十手を返上すると、軽々しく言う八五郎に、平次はビンタを2発。迅雷組を召しとってからにしろと。そのあと、平次は、優しく「痛くなかったかい?」と声をかけます。 万七は、八五郎に「部屋を盗っ人に使われた御用聞きなんて、初めて見たよ!」と怒ります。 平次は「八のドジは、俺のドジ、これ以上、八を責めないでくれ」と庇います。 そんな、万七ですが、ラスト、迅雷組に向って「よくも、八をこけにしやがったな!」と八を庇います。八五郎も「人をなめやがって!」と言って、平次よりも先に迅雷組に向かって行きました。 八五郎は、最後まで、おたきをどこかで信じていました。おたきが、根っから悪じゃないことが、わかって、よかったね。 * 八五郎ののろけ。 平次の家。 八「ひどく、あっしを、こう、頼りにしてくれましてねぇ、へへへ」 平次「しまりのねぇ面(つら)すんねぇ」 お静「まぁまぁ、八つあんも、きかせてくれるわねぇ」 平次「おい、八、そいつは、どんな女か知らねぇが、あんまり一途に思い込むんじゃねぇぞ。向こうは、気まぐれかもしれねぇからな」 八「と、とんでもございませんよ。そんな、女じゃありませんよ。当節、まれにみる気だてのいい女でね、なにしろね、あっしの手を、こう握って『八つあん、力になってね』こう、きちゃうんですからね、へへへ」 平次「あ〜ぁ、わかったい、わかったい、いい加減にしてくれよ。おい、お静、出かけるぜ」 お静「ふふふ、はいはい、まぁ〜まぁ〜」 * 平次、八五郎をビンタす 八五郎の部屋。 万七「俺は二十年近く、御用を勤めてるがな、部屋を盗っ人に使われた御用聞きなんて、はじめてみたよ」 平次「おい、三輪の、八のドジは、俺のドジだ。これ以上、八を責めねぇでやってくれ」 八「すいません(涙ぐんで、平次の前で土下座)あっしが、ドジを踏んだばっかりに……今日限り、この十手は、御返し申し上げます」 平次、八五郎の胸ぐらを掴み、ビンタ。 平次「バカ野郎! てめぇは、そんな了見で、御用を勤めてやがったのかい。おい、樋口の旦那だったらな、腹を切るところだったんだ、腹を! 十手を返上したくらいで、申し訳が、立つと思ってやがんのかい。おめぇがな、十手を返したかったら、てめぇの手で、迅雷組を召しとってからにしやがれ」 もう一度、八五郎をビンタ。 平次「この野郎!」 八「(ずっと、泣きじゃくっている)親分〜」 平次「おめぇだけじゃねぇ、俺も一緒だい」 樋口「八五郎、平次の言う通りだ。俺はまだ、その十手を受け取れねぇ……平次、明日、ゆっくりわけを聞こう。行くぞ!」 万七「へい」 樋口、万七、清吉、部屋を出ていく。 平次「(泣きじゃくり続けている、八五郎を見て)八……痛かったかい?」 八「親分、あっしゃ、おたきの奴にねぇ……」 平次「もう、何も言うなよ、俺も見事に一杯、ひっかかったようだぜ」 八「けど、おいら、おいら、どうしても、信じられねぇや。あの、おたきが……(また泣く)」 * ラストシーン 往来。 平次と八五郎が、歩いている。 平次「どうやら、お互い、首がつながったな。樋口の旦那の言う通り、これからもがんばろうぜ」 八「へい」 若い女の声「どろぼ〜う! だれか、だれか、捕まえてくださ〜い!」 平次「(八五郎に)どうする?」 八「いやぁ、もう女は、こりごりです。 親分に任せますよ〜、へっ」 平次「アハハ……」 平次、十手を持って走りだす。 |
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| 305話 | 3月8日 | 夜の終り | 寺田農 北林早苗 柴田p彦 |
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御赦免船で、直次郎が、帰ってきた。これから、まっとうな人間になると固い決心をしている直次郎。しかし、待っているはずの恋人、お袖は、弟佐吉の女房になっていた。それに直次郎の仕事先をことごとく邪魔をする昔の仲間、丑松の存在。直次郎は、再び悪の道を歩むのか。 ゲスト 寺田農さん(直次郎)、北林早苗さん(お袖)、柴田p彦さん(佐吉) 冒頭、浪人たちに襲われ、舌を噛んで死ぬ若い女が、出てきますが、クレジットにもろ「舌を噛む娘」となっていて、悪いけど、可笑しかったです。 ラストの立ち回り、平次は、二丁十手、八五郎は、心を入れ替えたせいか、がんばっていました。 事件の現場で、八五郎たちは、野次馬に文句を言われます。八五郎は、やる気をなくして、ぼやきます。ちっとも悪が、なくならない世の中にも。平次は、捕まえた咎人の中で、ひとりでも、立ち直ってくれれば、御用聞きの冥利だと言います。直次郎は、そのひとりでした。 * 八五郎のぼやき 平次の家。 八「畜生、何も浪人者をのさばらしてるのは、こっちとらのせいじゃねぇやい。それが、どうしてい、あの冷てぇあしらいは! あ〜あ、あんな恩知らずの連中のために危ねぇ橋を渡って、悪人どもを追いまわすのは、もう、やんなっちゃったっすよ」 お静「(お茶を運んでくる)そりゃね、八つあんが、つむじを曲げる気持もわかるけど、おあいこよ」 八「えっ!」 お静「下手人を挙げたときは、拍手喝采してくれるじゃない」 八「それがねぇ得手勝手っていうんですよ。そうでしょ? 親分だって、そう思うでしょ?」 平次、その場から、去って縁側へ 平次「(空を見上げて)この分だと海も凪いでいるだろう……」 八「(平次のそばにくる)親分、この際、海が凪いでいようと、しけてようと……」 平次「おい、八、たいがいにしろい!」 お静「さぁ、お茶でも飲んで……はい」 八「すいません(戻る)」 平次「な〜に、恥をいや、まだ駆け出し時分の俺っちにもあったことさ」 平次も戻って三人でお茶。 平次「おぅ、八、茶を飲んだら、すぐ出かけるからな」 八「ねぇ、親分」 平次「あん?」 八「あっしは、近頃、つくづく思うことが、あるんですがね」 平次「何をだい?」 八「いえね、あっしは、ただね、八百八町の人たちが、枕を高くして寝られるように親分始め、あっしどもは、随分、悪党どもをやっつけてきましたよね、けど、どうです? 相変わらず悪は、はびこっているでしょ?」 平次「果てしのねぇ、いたちごっこだって、いうわけか」 八「そう、そうなんですよ」 平次「そりゃ、おめぇの言う通り、悪党どもは、五万といて、とうてい俺達が、一生かかったって、根こそぎできるもんじゃねぇ」 八「でしょ、そうすると、あっしたちはですよ、命がけで、せっせと無駄骨、折ってるだけの……」 お静「無駄骨? それじゃ、八つあん、おまえさんには、少しもうちの人の気持ち……」 平次「おい、お静!」 お静「いいえ! 相手が八つあんだけに今さらになって、何を言い出すのかと思って、もう情けなくって」 しょぼんとする八五郎。 平次「なぁ、八、そりゃ、確かにおめぇや俺の力で、この世の中をどう変えられるものでもありゃしねぇ。だがな、まぁ、俺達には、今まで、お縄にしてきた何人かのうち、たったひとりでも、真人間に生まれ変わって、出直してくれる者が、ありゃ、俺達の骨折りも、決して無駄じゃなかった。そこに、まっ、御用の手先を勤める者の、俺達の男冥利だと、そう思いてぇじゃねぇか」 お静「八つあん」 八「生まれ変わって、出直してくれる人間ねぇ……生まれ変わってか〜、あっ! 親分、そういやぁ、今日だ!(膝をポンとたたいて)こりゃ〜」 八五郎、急いで外へ出ていく。 平次「アハハ」 * ラストシーン 平次の家。 旅姿の直次郎。 平次「じゃぁ、どうしても行くかい」 直次郎「はい、今日、島から帰った日と思って、もう一度やり直します」 お静「体に気をつけて。佐吉さんとお袖さんには、私からよ〜く言っておきますから」 直次郎「お願いたします。それじゃ、あっしは、これで」 杢兵ヱの声「待ちな」 杢兵ヱが、現れる。 杢兵ヱ「為さんから聞いたんだが、何も上方くんだりまで、出かけなくても、俺の店から出直しゃ、てっとり早いってもんだ」 為吉「けどよ、父つあんの店には、人手はいらねぇって」 杢兵ヱ「人手が、いるようになったんだ。おまえさんの左腕にゃ、同じ傷が(左腕の包帯をとると二本線の入れ墨がある)見てみな、俺の腕にもある。半人前の手を半人前の手で助けてもれぇてぇと言ってるんだ」 直次郎「父つあん……」 杢兵ヱ「思い出したくねぇ昔の為におまえさんの顔を見たくなかった俺だが、寝起きを共にすりゃ、返ぇって、気兼ねが、いらねぇ仲だと、き、気が変わったのさ」 為吉「(直次郎の肩をたたき)よかったよォ、よかったな、直さん」 直次郎「父つあん、その気持ちだけをありがたく受け取っておきます」 直次郎、平次の家を出ていく。 杢兵ヱ「待ちねぇ!それじゃ、おまえさん」 八「(直次郎を掴まえて)直さん!……親分」 直次郎「あっしゃ、やっぱり、世間が、まともな目で、あっしを見てくれるまで、自分の力で、やってみてぇと思います。それが、親分、始め、皆さま方へのご恩返しだと思っています」 杢兵ヱ「(直次郎の肩を叩いて)偉ぇ!」 直次郎「じゃ(頭を下げ、去っていく)」 平次「でぃじょうぶ、直次郎の夜は終わったんだ」 直次郎を見送る平次たち。 |
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| 306話 | 3月15日 | 隅田さわぎ | 藤田弓子 大山克己 鮎川浩 |
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川改番所で、ふたりの役人が、毒殺され、船の検分書が、盗まれた。平戸屋の船頭、仙太が、殺され、同じく船頭の吉兵ヱが、行方知れずになった。平次は、吉兵ヱの残した薬草から、平戸屋に抜け荷の疑いをかける。偶然、知り合った浪人十時七郎太もこの事件に巻き込まれ、吉兵ヱの子供たちが人質となってしまう。子供たちを助けるために十時は、平戸屋へと向かう。平次は、間に合うのか。 ゲスト 藤田弓子さん(お道)、大山克己さん(十時七郎太)、鮎川浩さん(吉兵ヱ) 浪人十時七郎太は、息子の新太郎にせがまれ、出店で、内裏雛を買おうとしている。女雛だけ欲しいのだが、店主は、一対でしか売れないと言います。一対で800文だが、720文に負けると。でも十時は、400文だすから、女雛だけと交渉するもダメ。そこへ、平次、俺が男雛を買うと申し出ます。360文ずつ出して、交渉成立。 優しい平次に新太郎も「いい、おじちゃんだね」と。 十時七郎太、子煩悩で、ほのぼのしてて、そのくせ、腕は立つ。お道さんと一緒になりそうですね。 * 女房の功徳 平次の家。 平次とお静、食後のお茶。 お静「そんな方が、どうして、ご浪人なさったんでしょうね」 平次「あ〜、わからねぇ、わからねぇが、当節、武士の世界は、濁りきっている。その水に合わなかったって、ところじゃねぇかな」 お静「おおいに、そうかもしれませんね」 平次「まっ、とにかく、浪人の中にもやくざの用心棒や、ごろんぼばかりじゃねぇ、ああいう人もいるんだ」 お静「いい奥様だったんでしょうね」 平次「あん?」 お静「その奥様の思い出のためにも、坊やを抱えて、がんばっていらっしゃるんですよ、きっと」 平次「ふ〜ん、女房ってぇのは、死んだあとまで、そんな功徳が、あるもんかねぇ」 お静「大ありですよ、おまえさんだって、私が、死んで、その男雛様みたいに、一人ぼっちになったら……」 平次「バカ! 縁起でもねぇこと、言うんじゃねぇや」 * ラストシーン 普請場。 石運びをしている十時。新太郎をおぶった八五郎、弁当を持ったお道、平次が来る。 八「旦那〜! お弁当! それに坊ちゃん! 十時「やぁ、ありがとう」 八「へへへ」 |
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| 307話 | 3月22日 | びいどろを吹く女 | 清水まゆみ 高毬子 田浦正巳 |
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海産物問屋松前屋の若妻、お蝶は、当主佐兵衛の念願とお蝶の両親が、叶えられなかった夢、公儀御用達の商人になろうと必死。勘定方に賄賂を送るための二千両を運ぶ途中で、三人組に襲われるが、危ういところを平次たちに救われる。二千両の件は、投げ文によって、事前に平次たちの耳に入っていた。お蝶の不審な態度、びいどろを吹く怪しげな女、おこよ……平次の謎解きが始まる。 ゲスト 清水まゆみさん(お蝶)、高毬子さん(おこよ)、田浦正巳さん(佐七) 朝食、平次の好物は、鰯。海産物が高くなったと嘆くお静。平次が公儀御用達の株仲間のせいで、高くなると説明します。よくわかりました。 酔った振りして平次が、鼻歌、♪お互いに 知れぬが花よ 世間の人に 知れりゃ互いの身のつまり〜 お静が、松前屋に女中になって、潜入。 赤い着物で、髷も娘風。 お蝶は、着物の柄も蝶でした。 * 平次の好物。 平次の家。 朝食。 お静「(お勝手から、小皿を持って、平次の所へ)今日は、おまえさんの大好物!(平次のお膳にのせて)はい!」 平次「よっ、鰯かい、えっ、それにしても、またおっそろしく、こじんまりしてやがるなぁ、こりゃ」 お静「これでも、ひとくし、十八文ですよォ」 平次「そいつぁ、安いや」 お静「あらまっ、安い?!」 平次「えっ、いいや、高ぇ、そうだろう?」 お静「去年までは、十二文だったんですよ。近頃は、鰯ばかりじゃなくて、昆布もおかかも、天井知らず……」 平次「まぁ、そりゃぁな、そりゃ、海産物を一手に扱っている公儀御用達の株仲間がよ、てめぇの、その儲けばかり、考げぇている、奴ら、勘定方に冥加金を納め、その見返りとして頂戴した鑑札の威光を傘に品物の値段を決めてやれる」 お静「一握りの株仲間の為に江戸中の人たちが、迷惑してるってわけね」 平次「うん、それだけに、商人たちは、なんとしても、その鑑札を手に入れようと、躍起だ。現に今日、助けてやった松前屋にしてもそうだ。まっ、狙われた二千両も恐らく勘定方にばらまく、鼻薬に違ぇねぇ」 お静「やり手ですからねぇ、あそこの御新造さんは」 * ラストシーン 松前屋佐兵衛の部屋。 平次「おこよと喜三郎に松前屋の乗っ取りを踏み切らしたのは、大旦那と御新造さんに責めは、ありませんぜ。それにうかうか、ふたりの誘いに乗った若旦那にもね」 佐兵衛「親分さんの言いなさる通りだ。私は、公儀御用達という念願にとらわれ過ぎたばっかりに、親子の間の温かい交わりというものが、すっかりなくなってしました。私は、間違っていました」 平次「まぁ、わかっていただけて、あっしも嬉しいでござんす、へい。つきましては、この際、おふたりの願いを叶えてやって、頂けませんか」 佐七「お父つあん」 お蝶「お願いします」 佐兵衛「(何度もうなずいて)おまえたちの望みどおり、御用達の鑑札は、お上に返上しよう。これから、三人で、手を取り合ってまっとうな、商いに身を入れようね」 お静「よかったわねぇ、これで、おまえさんの好物の鰯もたくさん、食べられるわ」 平次「ひとくし、十二文か」 お静「ええ」 皆、大笑い。
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| 308話 | 3月29日 | 稲荷の鈴 | 睦五郎 八並映子 寺島雄作 志乃原良子 |
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伝馬町の牢内で、三次郎は、島送りにされる久蔵から、娘のお近に言づけを頼まれた。お近の秘密は、金になると、牢仲間の藤八と三次郎は、解放しになるや、お近を捜す。しかし、藤八が、殺され、疑いは三次郎に。それでも、三次郎は、なんとか、お近に言づけをするが、内容は、「子守唄」に託されていて、肝心のお近も、意味がわからない。 ゲスト 睦五郎さん(小幡の三次郎)、八並映子さん(おふじ)、寺島雄作さん(久蔵)、志乃原良子さん(お近) 冒頭、平次とお静が、障子張り。何をやらせても様になる平次です。お静が、三三九度の途中で、平次が、奉行所から呼び出され、三日も帰らず、障子張りをしていたと話します。八千草お静のときは、婚礼もあげず、所帯をもったといい、鈴木お静は、花嫁衣装を持っていました。香山お静は、一応、式を挙げたってことですね。原作では、「七人の花嫁」のなかで、祝言を挙げています。仲人は、笹野新三郎の用人で、小田島伝蔵老人、花嫁誘拐事件の囮になるため、予定を早めて式を挙げました。 平次とお静の相変わらずの仲のよさに、八五郎は、気を遣いますね。 渡世人の小幡の三次郎、一昔前なら、橋蔵さんの役かなぁって思いました。 * 障子張り 平次の家。 夫婦で障子張り。 お静「すいませんねぇ、暮れのうちにしとかなきゃならなかったんだけど、町内のとりこみやら、何やらで」 平次「な〜に、血なまぐせえ、犯人(ほし)を追いかけているよりは、この方が、よっぽど気が楽だ」 お静「うふふふ」 平次「なんだい、何が可笑しいんだい」 お静「いえね、私が、おまえさんのところにきたとき、この障子、すすけて、ぼろぼろだったわ。それに、おまえさんったら、三三九度のお盃の途中で、お奉行所からの呼び出しで、飛び出して行ったまま、三日も帰ってこなかった」 平次「仕方がねぇやな。岡っ引きなんていうのは、そんなものよ」 お静「私は、一晩中、おまえさんの帰りを待ちながら、障子の張り替えをしてたわ」 平次「ふん、固めの盃は、まだ、済んじゃいなかったんだ、逃げて帰ぇりゃよかったのに」 お静「あら、まぁ、憎らし〜い(平次の左腕をつねる)」 平次「あ痛! 痛ぇなぁ、もう」 八五郎が、入ってくるが、平次とお静のいちゃつきに当てられ、帰ろうとする。 平次「おぅ、八!」 八「へぇ〜〜」 平次「どこへ行くんだい」 八「え〜、あのう、また、出直してきます、へぇ」 平次「おぅおぅ、つまらねぇ気を回すんじゃねぇや」 お静「ふふふ、お茶でも淹れましょうね」 八「あっ、そうですか、へへへ、これが夜だったらね、お銚子の五、六本も強請るところですがね、へへへ」 平次「おぅ、八、ひと休みしたら、出かけるぜ」 八「お奉行所ですか」 平次「あぁ、伝馬町の大牢から、今日、三人、解放しになるんだ」 * ラストシーン 袖すり稲荷。 平次「これだ、この鈴だ」 お近「三次郎さん、とうとう来てくれませんでしたね」 平次「あいつは、礼を言われるのが、かなわねぇんだい。そういう男だ、あいつは……さぁ、鈴を」 お近、神殿から、鈴をとり、平次に渡す。鈴に「子歳之女」と刻まれている。 平次「子歳の女、子歳生まれは、今年十八、抱き茗荷は、両国屋の紋だ。お近さんは、両国屋の娘だった。久蔵は、おめぇさんの幸せを祈って、これを持って両国屋へ行けと……」 お近「私、両国屋へは、行きません。お金持ちの娘なんかになりたくないんです」 八「えっ、何ともったいないことを」 お近「私の父は、久蔵おじさんです。この鈴は、このまま、ここへ奉納しておきます。そして、お父つあんが、島から帰るまで、久蔵の娘として、留守を守ります」 平次「そうか、おめぇさんの思うようにするがいい。久蔵には、またとねぇ、はなむけかもしれねぇ、島送りもそう長ぇ間じゃねぇ」 お近「三次郎さん……」 三人の様子を遠くから見ていた、旅姿の三次郎。自分を納得させたように去っ | |||