回数 放送日 サブタイトル ゲスト出演者
140話 昭和44年1月1日 春姿一番手柄 都はるみ 中村竹弥 坂口祐三郎 ダイナブラザーズ

 

 正月早々、二年ぶりにましら小僧が、出没。 しかし、その手口から、平次は、瓦版売りの狂言と断定。 ところが、ひょうたんから駒、瓦版売りが泊っている芸人宿、秋葉屋の主人、仁助が、ましら小僧だったのだ。 はぐれた父を捜して、十五年、鳥追いのお春もその宿に泊っていた。 お春を思う秀は、仁助が、お春の父と察し、お春には知らせず、自分がましら小僧だと名乗って出る。 平次は、仁助の正体を知るが、仁助のお春への愛情に賭けた。

 

 ゲスト 都はるみさん(お春)、中村竹弥さん(仁助)、坂口祐三郎さん(秀)、ダイナブラザーズ(瓦版売り)

 

 カラー作品。 お正月らしく、ゲストも豪華、オープニングも賑やかでした。 劇中で、都はるみさんが「好きになった人」を歌います。

 

 もてもての平次親分、五人の着飾った娘さんたちとはねつき。 平次がかなわないとお静に助けを求めますが、

静は、拒否。

 

 ましら小僧だと偽って自首をしてきた秀に平次は、声をあらげて叱り、ビンタ!

 

      撮影秘話 1969年元旦に放送された作品で、お正月らしく、都はるみ、中村竹弥、小島宏とダイナブラザーズなど多数のゲストを迎えて、華やかに送る。 主人公、お春を演じる都はるみは、「この番組は、よく見ています。橋蔵さんとは、初めてお会いできて、嬉しくって仕方ありません」と。本当に喜んで語っていたという。 そして、なんと本作の中で、「好きになった人」を歌っている。(時代劇専門チャンネル HPより)

 

*はねつき

 

 平次の家。  平次、はねつきに疲れ、庭に戻ってくる。

 

平次「どうもかなわねぇや。俺の代わりに仇討してくんな」

お静「おあいにく様、敵に後姿を見せるような、おひとになんか、加勢は、できません」

平次「えっ?」

 

 五人の着飾った娘が、入ってくる。

 

娘「おかみさんのところに逃げこむなんてさ~」

 

 娘たち、ワイワイいいながら、平次を囲んで、また平次を外へ連れ出す。

 

平次「あっ、いけねぇ。羽根を忘れちまった。おい、お静、そっから、羽根、投げてくんな」

お静「は~い」

 

 平次、娘たちとのはねつきが、始まる(平次だけを正面から捉えている)

♪ ひとりきな~ふたりきな~みていきな~よってきな~いつきてみても、ななおの帯を やの字にしめて、ここのようで いっちょうよ~(六がない?)

 

      初詣  

 

 神田明神。  平次とお静と八五郎が、境内の茶屋に座っている。

 

八「へへへへ、ざまぁ、ありませんでしたね、三輪の親分、へへへ」

平次「そう言うない。何にしてもめでてぇ正月だ」

お静「本当ね、こうして、お揃いでお参りができるなんて、何年ぶりかしら」

八「(団子を頬張りながら)来年は、きっともうひとり増えていますね」

平次「なんでぇ、おめぇの女房かい」

八「ホホホホ~、どんでもねぇ、赤ちゃんですよ」

お静「いやな八つあん」

 

 平次、お茶を飲もうとして、お静に茶碗の中を見せる。

 

平次「おい、お静、茶柱が立ってるぜ」

お静「あら」

 

      ラストシーン

 

 往来。 瓦版売りが「ましら小僧が、捕まった。三輪の親分の一番手柄だ。ましら小僧は、秀之助~」と報じている。まわりには、買い求める人でいっぱい。 そこへ、万七と清吉が来る。

 

清吉「あっ、親分」

 

 万七と清吉、瓦版売りのところへ行く。

 

万七「おい、やい、やい、やい、やい、やめねぇか、やめねぇか、ばか!」

清吉「違うんだ、違うの!」

万七「夕べ遅く、本物が、自首して出たんだ。秀の野郎は違うんだよォ」

瓦版売り「そんなばかな」

万七「本当だって」

 

 万七、瓦版を破る。

 

万七「みんな、(瓦版を)返ぇしてくれ、返ぇしてくれよ」

 

 買った町人もばかばかしいと瓦版を破って捨てていく。 家の陰で、様子を見ていた紋付姿の平次、お静、八五郎。

 

八「正月早々、あの調子じゃ、三輪の親分、今年もさえませんね、へへへへ」

 

 万七と清吉、地面に散らばった瓦版を拾い集めているが、平次たちに気づいていない。

 

八「(万七に)おめでとう、親分」

 

 万七、あわてて集めた瓦版を後ろに隠す。

 

万七「あぁ、こりゃ、お揃いで~、いい天気だなぁ~」

 

引き返そうと踵をかえすが、隠した瓦版が、平次たちに丸見えになる。 あわてふためいて、万七、走っていく。 平次とお静が、笑う、 特に八五郎は、大笑い。

141話 1月8日 金色の 金田龍之介 伊藤栄子 二瓶秀雄

 

 音信不通となった、姉、おはつを捜しに田舎から出てきたおきみ。 投げ込み寺に葬られた姉に会った時、岡っ引き殺しを目撃。 その岡っ引き、吉兵ヱは、御禁制の金糸の出所を追っていたのだった。 凶器ののみから、大工の政蔵が、疑われる。 偶然、おきみと出会った政蔵は、おきみの純粋な心に魅かれていく。 おはつの眠る寺にまた、娘が投げ込まれた。 その指は、金色に光っていた。 平次は、飯田屋で、金糸が作られていると確信し、単身、乗り込んでいく。

 

 ゲスト 金田龍之介さん(飯田屋和三郎)、伊藤栄子さん(おきみ)、二瓶秀雄さん(政蔵)

 

 平次の家の庭先で、政蔵とおきみが、話をしている。 ふたりのいい雰囲気に邪魔かと思ったのか、平次が、庭木戸からちょこっと、顔を出していました。 なんか、かわいかった……。

 

 ラスト、やはり、飯田屋で、金糸が、作られていて、平次たちが、乗り込んできます。 やけになった飯田屋は、働かせられていた娘たちどもども、火薬で爆発させようとしますが、導火線に火をつけるときの飯田屋役の金田さん、にやりとした顔が、すごみがあって、いかにも悪って感じでした。 平次の投げ銭で、消火されました。

 

      ラストシーン

 

 普請場。  為吉をはじめ、大工仲間にお茶を出しているおきみ。

 

大工「おい、為さん、今度来た女中さん、いい女だねぇ~」

為吉「へっ、よしなよ。もう売約済」

大工「はぁ?」

 

 政蔵にお茶を出すおきみ。 平次と八五郎が来る。

 

平次「おぅ、ふたりとも元気そうだな」

政蔵「おっ、親ぶ~ん、ハハハ、お陰さまで」

平次「おめぇたちに仲人を頼まれたって、お静に話したらな、『あら、もう私たち、そんな年頃かしら?』なんて、言いやがってよォ。もっとも、嬉しそうな声だったが……」

政蔵「へい」

おきみ「どうもすいません。何から何まで」

平次「水くせぇなぁ。相談事があったら、何でも言ってきな、待ってるぜ」

政蔵「へい、ありがとうございます」

八五郎「お~ぅ」

 

 大工仲間が、集まってきて、政蔵とおきみをひやかす。

142話 1月15日 三千両の恋 岡崎二朗 山本弘 滝恵一

 

 踊りの師匠、水本賀奈女が、殺された。 知人のひょうたんのお弓が、第一発見者。 賊は、三千両の隠し場所の手がかりを探していたのだが、師匠の家に手がかりがなく、お弓に疑いの目が向けられる。罠とは知らず、お弓は、賊のひとり、専次に恋をする。 真相を知った平次の心は、傷む。 専次もいつしか、お弓に魅かれていく。そして、人質となった、お弓を助けようと、体を張って仲間に手向かっていくのだった。

 

 ゲスト 岡崎二朗さん(専次)、山本弘さん(辰造)、滝恵一さん(七助)

 

 専次に恋をしたお弓、八五郎は、気が気ではありません。 そうなったのもお弓から、ちょっと目を離してしまったせいもあります。 ひょうたんの店先に陣取って、お弓を見張ったりとたいへんです。

 

 平次から、専次は、賊の一味と聞かせれても、お弓は、信じられません。 でも専次は、命を張って、お弓を守りました。 根は善人だったのですね。 少し、ほっとしました。

 

      ラストシーン

 

 平次の家。  平次、お静、八五郎、こたつの中。 お静は、柿を剥いていて、平次が食べている。

 

八「ねぇ、親分、専次が死んで、あっしは、ほっとしたような、すまねぇような、妙な気持ちなんですがね。お弓ちゃんに何て言ったらいいですかね」

平次「ん~、いつもどおりでいいのさ。 八は、八、どこまでいっても、がらっ八なんだ。妙に神妙にしねぇほうがいい」

お静「そうよ、今度のことは、いい意味でも悪い意味でも、お弓ちゃんにとっては、夢だったのよ」

平次「その通りだ。その夢をさましてやるのは、八、おめぇの役目だ」

八「さっぱりわからねぇな」

お静「にぶいのね、八つあん」

八「はぁ~?」

お静「一緒になぐさめに行きましょう、ねぇ、おまえさん」

 

 ひょうたんや。  お弓、接客をしているが、元気がない。

 

客「お弓ちゃん、(酒の)お代わりぃ」

お弓「はい」

 

 平次、お静、八五郎が来る。

 

八「お弓ちゃん」

 

 お弓、元気なく、会釈。 平次、勘定台に置いてある専次の位牌に気づき、お静に目で知らせる。 平次とお静、顔を見合わせる。

 

お弓「(元気よく)八つあん、何、ぼやぼやしてんのよォ。お客さんみたいな顔しないで、早く手伝ってよォ~」

八「はいはい、……あっ、あっ、あっ」

 

 八五郎、お盆にのせた、お銚子を倒す。

 

お弓「だめねぇ、相変わらず八つあんは」

八「ハハハ、弱ったな」

お弓「その分だけ、八つあんのつけよ!」

143話 1月22日 いれずみ者 東山明美 三上真一郎 鮎川浩

 

 木場人足の由松は、島帰りのため、仕事仲間にいじめられてる。 平次の「どんなことがあっても、くじけちゃいけない」の言葉を心の支えにしてきた。 が、金貸し勘兵ヱが、殺され、下手人として、追われるはめに。 仕出し屋の仙造の証言から、平次は、由松の妹、お照も事件に関わっていると考える。 兄を庇うお照の言葉のなかに平次は、ある疑問が湧いてくる。

 

 ゲスト 東山明美さん(お照)、三上真一郎さん(由松)、鮎川浩さん(仙造)

 

 休暇中の平次、布団に綿を入れるお手伝い。 手ぬぐいをきちんと折ってマスク代わりに、几帳面です。 「(手伝ってくれて)ありがとう」と素直に言えるお静さんが、いいですね。

 

 万七は、功を焦って、為吉が「(勘兵ヱを)ぶっ殺してやりてぇ」とつぶやいたのを聞いて、お縄にしてしまいます。お弓の証言も為吉を庇ってのことだと信じません。 万七親分の前では、うっかりしたことも言えません。

 

 仕出し屋の仙造の嘘のうまいこと! 平次も見抜けませんでした。

 

 お照の親代わりを引き受けた平次。 お静は、挨拶にいくときの晴れ着がないと困り顔。 いつの時代でも女の人は、服装が、気になります。 でも以前、仲人を頼まれたときは、お静さん、どうしたのかしら。

 

      綿入れのお手伝い

 

 平次の家。 布団の綿入れを手伝っている平次。

 

お静「おまえさん、もう少し、端のほうまで、入れてくださいな」

平次「はいよ……(足をを投げ出して)あ~あ、もういけねぇ」

お静「ふふふ、ごめんなさい、せっかくお休みを頂いたっていうのに」

平次「はぁ~ぁ、こんなことするより、下手人を追っかけているほうが、ずっと楽だい(口から手ぬぐいをはずしながら)いけねぇ、本当は、こんなことをしてる穏やかな毎日じゃねぇといけねぇんだ」

お静「本当、ここんとこ休み暇もなかったわねぇ。でも、どうしてこう世の中に悪いことをする人が多いんでしょう」

平次「さぁ、もうひとがんばりやるか」

お静「もういいのよ。ありがとう。あとは、私、ひとりでやれます」

平次「はっ、とすると、おいら、何もすることねぇじゃねぇか」

八の声「たいへんだぁ~」

平次「ちぇっ、どうやら、やっぱり休ませちゃもらえねぇようだ」

 

      ラストシーン

 

 ひょうたんや。

 

八「と、いうわけで、一件落着だい」

お弓「そう、よかったわね」

八「それによ、由松の妹、お照な、感で見込まれた長崎屋へ養女と決まったんだい」

お弓「兄さんという人が、島帰りでも?」

八「あたぼうよ。何もおめぇ、島送りったって、あくどい悪事を働いたってわけじゃねぇし、それによ、身元引受人が、銭形平次親分とくりゃ、へっ、一にも二にも文句はねぇや、へへ」

お弓「そりゃ、そうね」

八「うん」

 

 平次の家。  鏡の前に座っている平次。 平次の髷を整えているお静。

 

お静「えっ、私が?」

平次「あたりめぇよ。行き掛かり上、しょうことなしに引き受けちまったんだがな、親代わりとなりゃ、おめぇ、夫婦揃わなくっちゃ、格好がつかねぇじゃねぇか」

お静「困ったわ~」

平次「何が」

お静「だって、親代わりとか、仲人とかいうのは、男の人は、羽織り袴に紋付……」

平次「あたりめぇじゃねぇか、女はよォ、裾模様で、すーっとこう……(はっと気づき)あっ、そうか、そんなもんは、俺んちには、丸っきり縁のねぇ話だったな」

お静「だからさぁ~」

平次「な~に、かまやしねぇや。人間は、なりふりじゃねぇていうのが、おいらの信条だ。普段着でいいよ(残念そうに)」

お静「でも、いいわ、私に任せておいて!」

平次「えっ! おいおい」

お静「ほら~、♪都都逸は野暮でも、やりくりは~っていうでしょ」

平次「(目を見張って)おまえ、本当か!(ますます、目を大きくする)」

 

 頷くお静。 平次、お静の頼もしさに嬉しそうな顔。

144話 1月29日 消えた御用金 三井弘次 三島ゆり子 永山一夫

 

 甲府より江戸へ運ばれる約五千両分の延べ板金が、道中で盗まれた 現場に身延山参りの格好をした瀕死の旅人がいた。その男は、「江戸」とつぶやいて絶命する。 その男、松五郎と同行していた、留五郎、粂吉。 この三人が、延べ板金を盗み、仲間割れから、松五郎を殺したのだろう。 留五郎の娘、おきちも絡んでくる。 一時の金欲から、身を滅ぼしていく平凡な町人の姿を描く。  

 

 ゲスト 三井弘次さん(留五郎)、三島ゆり子さん(おきち)、永山一夫さん(粂吉)

 

 今回は、最初から犯人をわからせておいて、犯人の心模様や、行動を描いた作品です。平次の活躍も脇にまわります。

 

 八五郎の紋付羽織袴姿は、初めてじゃなかったかしら。

 

 甲州名物「月の雫」、「ころがき」、「水晶玉」……、「月の雫」は今もあるお菓子だそうです。 ブドウに白砂糖の衣をつけたお菓子。

 

      ラストシーン

 

 平次の家。 八五郎、紋付羽織袴姿で、嬉しそうに部屋に入ってくる。

 

八「親分、八五郎、ただいま参りました」

平次「おぅ、なかなか似合うじゃねぇか(平次も紋付羽織袴)」

お静「まるで、人が違ったみたい」

八「馬子にも衣装なんて、言わないでくださいよ、へへ……(神妙に平次の前で正座して)親分、本日は、ありがとうございます。こんな下っぱの手先が、お奉行様にお招き頂くなんて、これもひとえに親分のお陰だと思いますと親分の体から、後光が、射しているみたいで」

平次「ふん、つまらねぇ世辞を言うない」

お静「ふふふ」

八「いや、ほんとでござんすよ」

平次「まっ、甲府勤番方、十一人が、腹を切らずに済んだんだ。南町奉行の面目もたったんで、お招きくださるんだ。たまには、このくらいのことがあったって、いいやな。な、へへ」

お静「でも、お奉行様、じきじきにお役宅に小者をお呼びくださるなんて、初めてなんでしょう?」

平次「そうらしいな。おぅ、八、お膳が出ても、あまりガツガツするじゃねぇぞ」

八「心得ております。おみやげは何でしょう?」

平次「金の延べ板を一枚ずつ、お下げ渡しになるかもしれねぇな」

八「(立ち上がって)へぇ~、本当ですかい!」

平次「欲しいのかい」

八「え~、頂けるもんなら」

平次「バカ、男三人、女ひとり、そのために身を滅ぼしちまった。身の程知らねぇ欲を起こすんじゃねぇ」

八「(がっくりして)へい」

平次「まぁ、とにかく、どんなご馳走がでようと、女房の手作りで、いっぺいやるのが、何たって一番うめぇんだ。おい、帰ぇったら、ふたりで口直しするから、支度をたのむぜ」

お静「はい」

平次「でかけるか」

八「はい」

お静「じゃ、むこう向いて」

平次「(八五郎に)おめぇも向くんだ」

 

 お静、ふたりに切り火をかける。

145話 2月5日 邪魔者 弓恵子 金内吉男 永野達雄

 

 殺し屋稼業の浪人、高野貞次郎。 盗賊仙次を殺した際、かかわったおこん。 生きることに疲れ果てていたおこんに高野は魅かれた。 顔を見られた以上おこんを殺さなければならないが、躊躇する高野。 仙次殺しを依頼した板倉屋からもおこん殺しを催促される。 高野は、おこんより、全てを知っている平次が邪魔者だと平次を斬るため、対決する。 が、その高野を狙っている短筒が。 そう、板倉屋にとって、貞次郎も邪魔者だったのだ。

 

 ゲスト 弓恵子さん(おこん)、金内吉男さん(高野貞次郎)、永野達雄さん(板倉屋十兵ヱ)

 

 八五郎、おこんの家を見張るも、長屋の子供たちと鬼ごっこ。 目隠しをした鬼の八五郎、平次が来たのも知らず、なんと平次にタッチ! 貞次郎が、おこんの家に立ち寄ったのも見逃してしまい、平次に「細い目をよ~く開いて、見張るんだぜ」とお小言。

 

 おこんが、川に飛び込み、平次もあとから飛び込んで、助けますが、真冬(当時 2月5日放送)なのに、寒かったでしょうねぇ。

 

      妙な女

 

 番屋。

 

八「親分」

平次「ん?」

八「はぁ~(ためいき)」

平次「なんでぇ、浮かない顔して。どうしたい」

八「あっしゃぁね、女がわからなくなっちまいました」

平次「ハハハハ、するってぇと、今までは、わかってたというのかい」

八「からかっちゃいけませんぜ。苦しくっちゃ、死ねないけど、寂しいと死にたくなる、とかなんとか、七面倒くさいことを並べて、道々、屋台で一杯ひっかけるやら、一升徳利を買い込むやら……てな具合で、あっしは、酒飲みの女、でぇきれぇなんですがね、おこんは何となく憐れっぽくなっちゃって。帰ぇれなくなっちゃたんですよ。妙な女ですぜ」

 

      ラストシーン

 

 おこんの家。 高野を偲んでいるおこん。 線香の脇には、高野が好んだ寒紅梅が、徳利に挿してある。 平次、立ち上がって、障子を開ける。

 

平次「やけに冷え込むと思ったら、雪になってきた」

おこん「あの人は、私のような女の命を救うために、自分の命を落としました。親分さんも私のために危ない橋を渡ってくださいました。親分さん(涙ぐんで)人の命って、こんなにも大切なものなんですね」

平次「(火箸で火鉢の灰を探ってる)どうやら、今夜、大雪になりそうだ。おぅ、八、隣に行って火種をもらてきな」

八「へい」

 

 八五郎とは平次、外で出ていく。

 

平次「おぅ、八」

八「はい」

平次「火種は、俺がもらいにいく。おめぇは、ひとっ走り、うちへ行ってな、お静を呼んできてくれ。今夜、おこんをひとりっきりにさせるには、ち~と、寂しそうでいけねぇ」

八「そうですね。あっしもおこんさんの顔、見てると」

平次「な~に、おこんさんに人の命の尊さを教えたのは、あの仏さんだ。これから俺達で、力になってやろうじゃねぇか」

八「へい、じゃぁ、ひとっ走り、行ってきまっさぁ」

 

 平次、おこんの家の中をのぞく。

 

おこん「親分さん、すっかりご迷惑をおかけして」

平次「な~に、気にするこたぁねぇや」

 

 平次、戸を閉めて、隣家へ行く。(カメラは、上から撮っている)

 

平次の声「すいませんが、火種をちょいと頂きてぇんですが」

おかみさんの声「はいはい」

 

 降りしきる雪。

146話 2月12日 顔の無い兄貴 穂高稔 樋浦勉 真山知子

 

 岡っ引き勘兵ヱの子分、英造と源太は兄弟だが、すこぶる仲が悪い。 そんななか、川に上がった長持ちの中から、顔を潰された男の死体が、出てきた。 源太は、英造だと証言するが、平次は、何かひっかかる。 小さいときから、兄を恨んで育ってきた源太。 邪心を持ったお紺をの恋も絡み、源太は手柄をあせる。 そんなお紺や、源太の心を開かせたのは、お静と平次の情けだった。

 

 ゲスト 穂高稔さん(英造)、樋浦勉さん(源太)、真山知子さん(お紺)

 

 ラスト、平次は、最後の情けを英造にかけます。 下手人の英造を死んだことにして、上方へ逃がしました。

原作でも、よく下手人を見逃すので「しくじり平次」と呼ばれます。

 

 川谷拓三さんが、英造に殺される役で出ていました。セリフもありませんでしたが、クレジットでは、弥十という役名でした。

 

      ラストシーン

 

 川端。 川へ身投げしようとする英造。 そこへ平次。

 

平次「英造、言い残すことはねぇのか」

英造「(自分の十手を手にとって)何度か捨てようと思ったが……親分、こいつを……こいつを源太に」

平次「わかった。兄貴の分も働いてくれと言ってな」

英造「へい。あっしたちの親は、貧乏職人だった……俺の晴れ着を買うだけが、精一杯だった。あっしには、ひがんでいく弟の気持ちが、手に取るようにわかっていた。弟さえ、弟さえ、りっぱになってくれたら、あっしは、それで……手柄は、源太にやるつもりでした」

平次「英造……」

 

 平次、あごでしゃくって、川下を指す。 そこに小舟が用意されている。

 

平次「川を下れば、品川だ。上方へ行く船があるはずだ」

英造「あっしに、逃げろと?」

平次「英造は、死んだ。お上を欺いた罪にさいなまれて、川へ身を投げたんだ。死骸が、流れていくぶんにゃ、おかまいなしだろうぜ」

英造「親分……」

平次「さっ」

英造「へい」

 

 英造、舟の方に走っていく。 そこへ源太が、出てくる。

 

平次「聞いていたのか」

源太「へい」

 

 平次、英造の十手を源太に渡す。 兄の舟を追う源太。

 

源太「兄貴ぃ~」

 

 英造、気付かない様子で、舟を漕いで行く。

 

源太「兄貴ぃ~」

 

 英造の十手を握りしめている源太の手元のアップ。

147話 2月19日 子供が見た 山田人志 三島耕 田島知子 林真一郎

 

 殺人事件を目撃した大吉。 そばに落ちていた煙草入れから、父親も宇之助が、御用となった。 「犯人は父ちゃんじゃねぇ、おらぁ、犯人の顔を見たんだ!」と叫ぶ大吉。 平次は、子供とはいえ、その言葉を信じ、真犯人を突き止めたものの、大吉は、否定する。 しかし、真犯人のある仕草を見たとき、殺人現場での犯人の様子が、ありありと浮かんでくるのだった。

 

 ゲスト 山田人志さん(大吉)、三島耕さん(宇之助)、田島知子さん(お久)、林真一郎さん(徳三郎)

 

 ゲストの田島知子さんは、田島令子さんのお姉さんだそうです。

 

 八五郎、今度は、子供たちと「かごめ、かごめ」をして、遊んでいますが、なかなか当たらず、鬼の役ばかり。そこへ平次、「ばかに楽しそうじゃねぇか。邪魔して悪かったかな」と茶化します。 いつまでも、幼心が抜けない八五郎です。

 

 万七は、手柄を取るのに必死。 現場に残された煙草入れを平次に見せず、隠したり、宇之助にアリバイが、あるといっても、あ~でもない、こ~でもないとひねくれた考えをして認めません。

 

 ラスト、平次の前で、八五郎が、泥だらけの足を手拭いで叩きます。 平次が、袖でほこりを払う仕草が、色っぽくてよかったです。

 

      とことん信じる

 

 平次の家。 大吉の父を万七がお縄にしたと聞いて。

 

平次「俺の耳に『犯人は父ちゃんじゃねぇ、おらぁ、顔見たんだ!』そう叫ぶ大吉の声が、耳にこびりついて、離れねぇんだい。なぁ、お静、いくら父親を庇うためとはいえ、九つの子供に、そんな嘘がつけるだろうか」

お静「そうですね。それより、子供の言うことを素直に信じてやるのが、本当かもしれませんね」

平次「人を疑うのが、岡っ引きの商売だが、たまには、とことん、信じてやろうと思うんだ」

お静「そこが、おまえさんのいいところですよ。ねぇ、お久さん、夜、働きに出なきゃならないんでしょ?どうかしらん、その間、坊や、うちで預かったら」

平次「そうしてくれっかい」

お静「ええ」

平次「それじゃ、すぐ行ってくらぁ」

お静「これから?」

平次「犯人が、他にいるとすると、いつ何時、大吉が、襲われるかもしれねぇから。大吉が、いる限り枕を高くしておいらたちは、寝られねぇからな」

 

      ラストシーン

 

 奉行所。  宇之助が出てくる。 待っていたお久と大吉。

 

大吉「父ちゃん!」

宇之助「大吉」

お久「おまえさん」

宇之吉「お久、おりゃ、もう一遍、やり直すぜ。右手で、道具が握れなきゃ、左手で、やりゃいいんだ。何年かかっても、きっともとの腕になってみせる。いあ、もと以上の腕になってみせるぜ」

お久「そうですとも。おまえさんは、名人なんだもん」

宇之助「うん、さっ、行こう」

大吉「うん、父ちゃん、おら、嘘、言わなかったろう?」

宇之助「あぁ」

大吉「おら、犯人を見たんだもん」

 

 大吉を挟んで、三人、手をつないで去る。

 

 平次の家。 

 

八「親分!」

 

 泥だらけの足で、部屋に入ってくる。

 

八「う~、寒い、寒い」

お静「まぁ、八つあんの足、泥だらけ! 畳に跡が、つくじゃないのォ」

平次「(こたつの中)あ~ぁ、男のくせにあんまり綺麗好きも感心しねぇが、おめぇのは、ちょいとばかり、いきすぎだぜ」

八「へへへ、すいません(平次の前で、手ぬぐいを使って足をはたく)」

平次「おいおい、何をするんだ! こんなところで(着物の左の袖を振って、ほこりをよける仕草)」

八「あっ、すいません(縁側に出て、はたく)」

平次「たのむぞ、おい」

八「(足をさんざん、はたいて)はい、綺麗になりました(こたつに入る)」

 

 お静、お茶とお菓子を持ってくる。 平次、菓子器のふたを開けるとすかさず、八五郎の手がのびる。 平次、すぐさまふたをしめると、八五郎の手が挟まれる。

 

平次「なんだ、なんだ」

八「いててて……」

 

 お静、大笑い。

平次「こいつ、手が早い」

八「うまい、うまい、おいしいお菓子ですね」

148話 2月26日 九尾の狐 早川保 城所英夫 沢宏美

 

 お千代は、瀕死の雅扇堂の番頭から、紙を渡される。 お千代の恋人で、彫り物師の新助は、背中に狐の彫り物がある親の仇を捜し求めていた。 紙に書かれた絵図面と葛の葉の詩は、お千代と新助の皮肉な巡り合わせを物語っていた。 三万両のありかを突き止めた賊が、手に入れたものは、皮肉にも……。

 

 ゲスト 早川保さん(新助)、城所英夫さん(森戸典膳)、沢宏美さん(お千代)

 

 フジテレビが、開局十周年(1969年2月26日放送)を記念してのカラー放送。

 

 三万両のありかを示す絵図面。 葛の葉の詩が、ヒントになっていました。 映画「恋や恋、なすな恋」を思い出しました。

 

 ラスト、平次が、お静に「言っちゃ、だめ!」と目の表情で、知らせます。 好きなんですよね、この仕草。ぞくっとします。

 

      ラストシーン

 

 平次の家。 新助、お千代が、来ている。

 

お静「お千代さんも新助さんも、いろいろ、ひどい目にあったけど、もう恨みなんぞ、お上に預けてふたりで幸せになることだけを考えるのね」

お千代「はい」

新助「あの三万両も、結局紙切れでよかったんだ。お千代とふたりで、一生懸命働きやす」

お千代「親分さん、世の中には、やっぱり、悪い人は、いないんでしょうか。あの雅扇堂さん、私に謝ったとき、目に一杯、涙を浮かべてました」

 

 お静、真実を話した方がいいという顔をするが、平次、だめと目で合図。

 

平次「その通りだよ、お千代ちゃん。そう思ってやることが、罪を犯した人の供養になるんだい」

 

 八五郎が、入ってくる。

八「へっ、へっ、親分、おみくじを引いたらね、大吉なんですよ、へっ、へっ、いっすか、金運上々、待ち人来たり、へっ、へっ、縁談近しと、へっ、へっ」

平次「どれ、見せてみろ」

 

 平次、八五郎からおみくじを受取り、ごろりと横になる。

 

八「ねっ! 間違ぇねぇでしょ、へへ、縁談近し~、へへへ(はしゃぐ)」

平次「(椿の葉を一枚見せて)八、何だこりゃ? 葉っぱじゃねぇか。さては、てめぇ、狐にばかにされたな」

八「えっ! やっ~、そんなぁ~」

お静「八つあん、あるわよ」

八「へっ」

 

 お静、こたつの上から、おみくじをとって、八五郎に渡す。

 

お静「はい」

八「ひどいや~、(平次を指さして)へへへ」

 

 皆、大笑い。 八五郎、盃を平次の前に差し出すが、平次、八じゃないとばかり、新助に酌をする。 お静が、八五郎に酌をする。

149話 3月5日 胡蝶の印篭 河原崎長一郎 曾我廼家明蝶 矢野潤子

 

 肥前屋に三人の賊が、押し入った。 その一人は、胡蝶の印篭をつけた侍だという。 平次は、その印篭の持ち主、医学生の高山を捕える。 高山には、アリバイがあったが、言えないわけがあった。 そして、それを利用して、高山を罠にかけた男がいた。 高山の不運を嘆く、恋人のおしん。 なぜ、高山は、真実を話そうとしないのか、そのわけとは、何か。

 

 ゲスト 河原崎長一郎さん(高山真之助)、曾我廼家明蝶さん(高野英次郎)、矢野潤子さん(おしん)

 

 お静、風邪でも引いたのか、粉薬を飲んでいました。 それが、ヒントになって、平次は、捜査範囲を医学生まで広げることになります。

 

 高山が、隠れキリシタンと関わっていたという、シリアスなエピソードのなか、塾長の高野の豪快さに救われます。 ラスト、高野の質札付きの紋付きには、笑ってしまいました。

 

      ラストシーン

 

 平次の家。  平次、お静、八五郎、こたつでみかん。

 

お静「高山様は、長崎からお帰りになったらゆくゆくは、将軍様、お近くの偉いお医者様におなりになるんでしょうね」

平次「へへへ、ところが、高山さんは、