回数 放送日 サブタイトル ゲスト出演者
244話 昭和46年1月6日 猪のくれた百万両 九重佑三子 由利徹 我廼家五郎八 坂口徹

 正月早々、三河屋の娘、お絹がかどわかされた。賊の狙いは、三河屋重代の家宝「七福神」の掛け軸。百万両の隠し場所が、その軸に描かれているらしい。三河屋の女中、お梅は、捨て子だったが、育ててもらった恩返しとばかり、単身、賊のアジトへ乗り込んでいく。

 

 ゲスト  九重佑三子さん(お梅)、由利徹さん(権三)、曾我廼家五郎八さん(鳴海屋儀平)、坂口徹さん(助十)

 

 久々に万七親分が、登場。気のせいか、元気がないようでした。

 

 このエピソードが、放送されたのは、1971年(昭和46年)亥年です。だから、このタイトルがついたのでしょう。

 

 駕篭かきに扮した平次と八五郎、手ぬぐいでほっかぶりした平次が、かわいいです。

 

 タイトルは「狐の呉れた赤ん坊」と似てますね。捨て子が、いいところの出の子だったというのも同じ。ヒントにしたのかも。

 

 下手人は、6年前、十二支組と名乗る賊のかたわれでした。#1「おぼろ月夜の女」で、確かに十二支組が出てきました。6年くらい前です。

 

 駕篭かきの権三と助十。岡本綺堂の作品で、「権三と助十」というのがあるそうです。大岡裁きも絡んでいるそうで、歌舞伎の演目にもあるようです。

 

 

     ラストシーン

 

 神田明神。  鳴海屋儀平と孫娘のお梅ことゆきえが、参拝。見守る平次一家と駕篭かきの権三と助十。

 

儀平「さぁ、行こうか」

お梅「はい。一生忘れません、今年のお正月。何もかも親分さんのお陰です」

平次「いやぁ、お父つあんや、おっ母さんに会いてぇと願ったおめぇの一念が通じたんだ」

 

 顔を見合わせる儀平とお梅。

 

お梅「権三、助十さん、あんなに好きだったいい子を大事にね。会えなくて本当に残念だけど、よろしくね」

 

 権三と助十、困惑顔。

 

お静「さぁ、そろそろ急がないと、いくらでもみんな、引き留めますよ」

お梅「ええ、じゃ、さようなら、八つあん、元気でね」

八「うん、お梅ちゃんもね」

お梅「ええ、じゃぁ」

儀平「はよ、いこ、いこ。ありがとうございました。おおきに」

 

 儀平とお梅が去る。

 

権三「(懐からかんざしをだして)これ、おめぇにやるよ。俺には用がなくなっちまった。おめぇの女にやんな」

助十「(同じく、懐からかんざしを出す)俺にも用なしだい。とうとう、行っちまったい」

権三「えっ! おめぇの惚れた女ってぇのは……お梅ちゃん?」

助十「当然」

権三「俺たちゃ、だめな男だねぇ」

 

 ふたりで、溜息をつく。

 

平次「おぅおぅ、年の始めにあたって、不景気な面すんじゃねぇぜ。今年は亥の年だ。威勢よく猪みてぇに突っ走ってくんな」

お静「そうですよ。かなわぬと思った恋もお梅ちゃんみたいに、正夢になるかもしれませんよ」

平次「ハハハ、おぅ、八の野郎、どこへ行きやがった?」

お静「あら、またおみくじ」

八「(おみくじを読んでいる)え〜、縁談、酉の方角に良縁あり。酉、酉、酉、酉、酉……あっ、あそこだ!」

 

少女が、微笑んで立っている。

 

八「へぇ〜、はぁ〜、当ったらねぇなぁ〜」

 おみくじを吹いて飛ばす八五郎。 皆、大笑い。

 

平次「(八五郎の背中をポンとたたいて)しっかり頼むぞ、おい」

 

 皆、舞台の獅子舞いを見る。 獅子舞アップ。

245話 1月13日 長兵衛の災難 大山克己 渋沢詩子 金内吉男 石井富子

 

 大工の長兵衛は、無類の博打好き。今日も妻のお徳と博打のことで大喧嘩。果ては、友達の為吉から、お金を借りて仕事もぜず、賭場に行く。バチが、当たったのか、長兵衛は、金貸しの勘右ヱ門殺しで、捕まってしまう。無実を訴えるも勘右ヱ門からの借金はあるわ、目撃者はいるわで、不利な条件が揃っている。平次には、、腑に落ちないことがあるが、同心小日向は、深く調べようともしない。そんな小日向に平次は、不審を抱く。

 

 ゲスト  大山克己さん(長兵衛)、渋沢詩子さん(お竜)、金内吉男さん(小日向栄次郎)、石井富子さん(お徳)

 

 病的な賭博好き、殺人、濡れ衣と悲惨な話になるところですが、長兵衛の憎めない人柄だからでしょうか、何でも賭けごとにしてしまったり(往来で、最初に自分に当たるのは男か女か? この賭けで為吉は負けて、お金を取られます)と面白かったです。

 

 長兵衛の罠、畳の焦げ跡、空家のトリック、お茶の葉などなど謎ときのヒントや証拠が、随所にあって、捕りもの帳って感じです。 ラストは、証人の四人の男女の隠れ場所はどこかという謎解き。「人目につかず、無事で、金の要らない場所」答えは「牢屋」でした。

 

 

     思いやり

 

 平次の家の前。 夜中、 御用に出かける平次と八五郎。

 

お静「おまえさん、寒いから気をつけてね」

平次「あぁ」

お静「風邪を引きやすい質(たち)なんだから」

平次「うん」

 

 お静、平次に切り火をかける。

 

八「え〜、どうせ、そうでしょうよね、あっしなんか、何とかは風邪ひかないっていますからね」

お静「まぁ、八つあんたら、ひがむんじゃないの」

平次「ぶつぶつ言ってねぇで、行くぞ」

八「へい」

 

 平次と八五郎、去る。

 

お静「気をつけてぇ〜」

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家の前。  仕事に行く前の長兵衛と為吉。

 

平次「どうだい、長兵衛さん、もう賭けごとは、こりごりだろう」

長兵衛「へぇ〜、もう金輪際、もう賭けごとのかの字もやりませんよ」

 

 皆、笑う。

 

お静「よかったぁ。おかみさんも長吉さんも嬉しいでしょうねぇ」

為吉「本当だぜ、長兵衛さん。今の約束、忘れるんじゃねぇぜ」

長兵衛「わかってるよォ、はばかりながら長兵衛さんだ。一旦こうと決めたら、死んだって守るよ。嘘だと思うんなら、賭けてもいいぜ(あわてて、口を手でおさえる)いっけねぇ」

八「ハハ、これだぁ」

 

 皆、大笑い。

 

為吉「じゃ、親分」

平次「おぅ」

為吉「おぅ、行こうか」

長兵衛「じゃ、これで」

 

 為吉、長兵衛、仕事へ行く。

246話 1月20日 月夜ばやし 河村有紀 和崎俊哉 伊沢一郎

 

 満月の夜に限って、押し込みを働く満月組。賊のひとりの面が割れ、平次が捕らえようとしたとき、芸者の音弥が、邪魔をし、取り逃がしてしまう。口を割らぬ音弥の真意は何なのか。また、満月の夜が近づき、平次はあせる。音弥には、夫同然の小柴征一郎がいたが、仇討に執念を燃やしていた。

 

 ゲスト 河村有紀さん(音弥)、和崎俊哉さん(小柴征一郎)、伊沢一郎さん(両国屋伊兵ヱ)

 

 見どころは、ラストの平次の端唄でしょう。ご機嫌です。お静の喉も聞かせてほしいですね。

 

 八五郎は、芸者音弥の張り込み中、粋な川柳を作ろうとしています。「湯上りの 芸者のすそに 宵の風」 もっとも後半は、平次の作ですが。

 

 お静は、平次に「すっかり、岡っ引きの女房になったな」と言われ「ならされたの。これで、十日もゆっくりご飯を差し向かいで、食べたことない」と。今日こそはと、お膳をもってきたら、八五郎が、来てそのまま、御用へ出かけてしまいます。お静、ごはんを盛った平次の茶碗を手にがっくり。

 

 音弥に仇討をさせようと、平次は、音弥の手をとり、ドスを両国屋に向けます。命乞いをする両国屋。でも平次は「十手持ちの平次は、ここまでしかできません。勘弁してくれ、あとは天下の御法が、仇討をするから」と説得。平次にとっても殺したい位憎い両国屋だったでしょうね。

 

 

     ラストシーン

 

 花街。  見回りをしている平次と八五郎。どこからか、三味線の音が、流れてきて、平次が、ご機嫌に唄い始める。

 

平次「♪梅は咲いたか〜桜はまだかいな」

 八五郎、驚いた表情。

 

八「お、親分、いつからそんな器用な真似を……」

平次「音弥姐さんの直伝だい。♪柳や、なよなよ〜風次第、山吹きゃ、浮気で、色ばっかり、しょんがいな〜」

八「親分、姐さんに会ってんですかい」

平次「時々な」

八「へっ! 親ぶ〜ん」

平次「な〜に、お静も一緒に習ってるんだ。安心しな」

八「はぁ〜」

 

 ふたり、笑う。  お座敷で、音弥が、舞っている(小唄 桜みるとて) 花街を歩いて行く平次と八五郎の後姿。

247話 1月27日 ぎやまん地獄 磯野洋子 永井秀明 中村竜三郎

 

 船乗りの弥吉が、殺された。なぜか、弥吉を屋敷の者と偽って、旗本柏木幾之進が、遺体を引き取った。平次の家を訪ねたお京が、水死体となって、発見される。そして、姉のお京を捜しにきたお美代が、かどわかされる。 平次は、事件が全て、札差日向屋に結びついていることを知る。

 

 ゲスト  磯野洋子さん(お美代)、永井秀明さん(日向屋徳兵衛)、中村竜三郎さん(柏木幾之進)

 

 事件に深く係わっていると思った御家人の柏木幾之進ですが、借金のために町人やヤクザのいいなりになっていたとは、情けないです。 挙句に毒酒を飲まされ、息絶えます。女好き、賭博好きの殿様にも困ったものですね。

 

 ラストの立ち回りは、平次対丑松。 平次は、十手を逆さに握って構えていました。

 

 最後、お美代が、お礼なのでしょう、出前持ち姿で、平次たちにそばを届けに来ます。おきゃんなお美代、#81「質屋の娘」のラストと似ていました。#81は大原麗子さんでした。

 

 お美代は、姉を信じ、自分をかどわかした丑松の心も動かしました。丑松は、女に裏切られ、女不信に陥っていたのです。最後は、下手人の日向屋を刺し違えます。

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  岡もちを持って、お美代がくる。

 

お美代「まいどあり」

八「はぁ〜? あら! お美代ちゃん、な、なんだい、おめぇ、こんな……」

お美代「親分さんのお世話で、今日から、ごらんのとおり、そば屋の出前持ち」

八「へっ」

お美代「御贔屓に」

八「へへ」

平次「おっ、やってるな」

お静「お美代ちゃん、なかなか堂に入ってるわ」

平次「あぁ」

お静「その格好」

平次「あぁ、嫌な思い出を忘れて、せいぜいがんばるんだよ。ん? ん」

お美代「はい。(そばを出しながら)私、お江戸で、働くのが夢だったんです。 親分さん、これ召し上がってください……いけな〜い、こんなところで、油売ってると、怒られちゃう。忙しいんですもの。毎度ありぃ〜」

 

 お美代、去る。

 

八「こうなったら、毎日、そば、食わなくっちゃ」

平次「あぁ、そうだな」

八「(そばを平次に渡しながら)あっちっち〜」

248話 2月3日 なさけ深川 嵐寛寿郎 井上清子 石征一郎

 

 島から帰ってきた人斬り源太。平次にお礼の挨拶に行き、材木問屋武蔵屋で働くことになる。武蔵屋は、日光東照宮改修の御用材を納入することになったが、ヤクザの梵天の松五郎一家に再三、嫌がらせを受ける。裏で糸を引くのは、同業の杉田屋か、松木屋か。松五郎と顔なじみの源太、その腕をかわれて、一家の元へ。平次は、源太の裏切りに憤るが……。

 

 ゲスト  嵐寛寿郎さん(源太)、井上清子さん(お道)、亀石征一郎さん(佐吉)

 

 大物俳優、嵐寛寿郎さんの登場。 いい味を出されていました。ついついヤクザ相手に啖呵をきってしまいますが、かっこよかったですね。一度は、平次を裏切ったかにみえましたが、やはり義理は忘れていません。ラストは「死に花」を咲かせようとします。

 

 平次は、源太に妻のお春は、二十年くらい前に火事で行方不明になったと伝えます。文化5年(1808年)と言ってましたから、今は、文政11年(1828年)位。#184「武家の世の中」で、徳川12代家慶(1793〜1853)の時代って言っていたので、時代は合っています。大火事(丙寅の大火)が、あったのは、文化3年です。

 

 お静が、源太に半纏を作ってあげます。平次が、自分のと勘違いする場面が、面白かったです。その半纏を最後に源太に着せかけてあげるところが、泣かせます。

 

 

     勘違い

 

 平次の家。  平次、長火鉢のところで、十手の手入れ。お静が、お手製の半纏を持ってくる。

 

お静「ねぇ、見て! 今、縫いあがったの(半纏を広げて、平次に見せる)ほら!」

平次「な〜んだい、そんな年寄り染みたもの」

お静「あら、だって、お年寄りじゃない」

平次「誰が!!」

お静「源太さんよォ」

平次「あぁ、何だ、源さんにかい」

お静「ええ、寒いだろうと思って、綿を少し入れすぎちゃったの。ねぇ、おかしかない?」

平次「いや、可笑しいもんか、よく気がついてやってくれたよ」

お静「(微笑んで)ああは、言っても、どんなにか、おかみさんや、お子さんが恋しいことでしょうね」

平次「生きているものなら、会わせてやりてぇが……」

お静「ええ、ほら、よくあるでしょ、神様の引き合わせってこと。私、観音様にお願いしてみようかしら」

平次「お静、おめぇって奴は……」

 

 お静の願いが、通じたのか、源太は、息子の佐吉に会えました。

 

 

     ラストシーン

 

 武蔵屋の材木置場。 大勢の職人が、働いている。 そこへ武蔵屋の親方。

 

武蔵屋「お〜い、気をつけなよ(職人たちに)」

 

 笑い声がする。 お道と佐吉が、材木の陰で、楽しそうにおしゃべり。

 

武蔵屋「やいやい! てめぇたち、そこで何をしてやがるんだ!」

 

 お道と佐吉、驚いて「ハ〜ッ!」と言って出てくる。皆、大笑い。一方、その様子を見ていた、平次、お静、八五郎、源太。源太が、泣いている。八五郎は、源太の心を察してか、何とも切ない顔。

 

平次「源さん、寄せ場で、半年か一年、今度帰ぇってくるときにゃ、あのふたり、かわいいのを抱いてるぜ」

源太「へい、へい、ありがたい……こって……」

平次「さぁ、行こうか、ん?」

 

 平次と八五郎が、去る。お静、持っていた半纏を源太の肩にかけてやる。手を合せる源太。お静も去る。

249話 2月10日 幻の遺言状 三上真一郎 嘉手納清美 島田多恵

 

 札差板倉屋清左衛門が、病死。しかし、遺体が、消えた。 遺言状も見つからず、盛岡藩から苗字帯刀を許された証拠の品もない。跡継ぎのない板倉屋。遺産相続に躍起となる親族。そんな中、女中のお信だけは、悲しい過去を持ちながらも主人を心から弔おうとする。平次は、板倉屋が、旅芸人一座を死ぬ間際まで、贔屓にしていたことに疑問をもつ。

 

 ゲスト  三上真一郎さん(新助)、嘉手納清美さん(お信)、島田多恵さん(おらく)

 

 ひょうたんで、お静、お弓、お勝が、おしゃべり。平次の夜ぴいての仕事にお静も寝ていないよう。お弓とお勝が、同情するが、お静は「所帯をもったときからよ」と苦笑い。そこへ平次。

お静「お帰りなさい」

平次「帰ぇってきたんじゃねぇんで。ちょいとのぞきに寄ったんだ」

お弓「まぁ、憎らしい、その言い方。姐さんはね、夕べからずっと……」

平次「バカ野郎〜。九つすぎたら、かまわねぇから、寝ろと言っといたのに」

お静「すみません」

お弓「何も姐さんが、謝ることないわよ!」

 険悪ムードも八五郎のくしゃみ(噂をしたいたら)の声で和みましたね。

 

 お信が、遺体を隠したと疑われるが、平次が、調べると旦那思いのいい娘。万七が、一生懸命調べていたのにとがっくりします。平次は思わず「すまねぇ」と。万七は「何もおめぇが謝ることない」と言いました。今度は、平次が、謝る番でした。

 

 彫辰が、板倉屋の腕に彫った字を平次の二の腕に筆で書きます。「おちか いのち」

なぜ、わざわざ、平次の腕に? 早く消さないとお静に見つかったら、たいへん!

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。 丸火鉢を囲んで、平次、八五郎、新助。

 

新助「親分さん、この遺言状を親分さんの手で、焼いてください」

八「おぅ、おい、そ、そりゃもったいないよ、おめぇ。江戸札差九十六軒中、指折りの、しかもだよ、苗字帯刀まで、許されたという……」

新助「いいや、私にとっちゃ、見たくない夢です」

八「はぁ?」

新助「お信さんが、せっかく届けてくれたのに、申し訳ない」

八「えっ?」

平次「新助さん、おめぇさん、どうしても板倉屋を継がねぇとなると、この遺言状には板倉屋の全財産は、板倉屋の生まれ故郷の用水工事に寄進すると書いてあるんだが……おめぇさん、無論、読みなすったんだな?」

新助「そうしてやってください。おやじの金も大勢の人の役に立つんですから」

八「いや〜、あのよォ、だから、板倉屋を継いどいて、なっ、その財産の半分ぐれぇを用水工事に寄付するって方法もあるんだよ」

新助「いやぁ、私には、板倉屋を継ぐ気は毛頭ございません」

八「や〜」

平次「わかった。おめぇさんの言う通りにしよう」

新助「ありがとうございます」

八「はぁ〜」

新助「それから、親分さん」

平次「なんだ」

新助「おやじの死体を盗んだのは、私の一存です。手伝ってくれた者には、どうかお咎めのないようにお願いします」

平次「実の子供が、おやじの弔いを遺言通りにしたんだ。お咎めなんか、あるわけねぇ。それから、おめぇさん、遺言のことをもうひとつ忘れてないか?」

新助「えっ?」

平次「お信さんだよ」

新助「親分さん」

平次「あれだけ身よりを嫌っていた板倉屋が、商売仇の娘と知らず、おめぇと一緒に店を継いでくれることを願っていた」

新助「親分さん、その話は……」

平次「肝心なのは、ふたりの気持ちだ。まぁ、ゆっくり考げぇるんだ。おぅ、板倉屋さんの御供養をするために、みんなひょうたんで待ってるんだ。行こうか」

新助「はい」

 

 ひょうたんや。  江州屋伊之吉(お信の父)と板倉屋清左ヱ門の位牌が並べられている。平次、お静、八五郎、お信、お弓、お勝、新助がいる。お信が、焼香。次に平次。

250話 2月17日 わらべ唄殺人事件 山城新伍 松本路子 織本順吉

 

 大黒屋を強請っていた青蛙の伝兵ヱが、殺された。疑いは大黒屋に季節働きに来ていた次郎吉にかかる。次郎吉の唄うふるさとのわらべ唄通りに事が、運んでいるのだ。素朴で純粋な心をもつ次郎吉に大黒屋の娘、お京は心を打たれる。平次は、わらべ唄の言葉の中に隠されたもうひとつのてがかりを見つける。

 

 ゲスト  山城新伍さん(次郎吉)、松本路子さん(お京)、織本順吉さん(大黒屋)

 

 八五郎、事件を知らせに平次の家へ。あわてて、つまずいて、向こうずねを怪我。平次とのやりとりが、面白い。

 

 万七の推理の冴えに清吉は「珍しい、今朝、何を食べてきたんです?」だって。万七が、張り切っていると「よっぽど、おかしなものを食べたんだ」の言葉に大笑いです。

 

 ラスト 平次と八五郎が、久々に将棋を指しています。平次が王手を! 初めて八五郎に勝ったのでは?

 

 次郎吉のふるさとのわらべ唄 ♪ びっき(蛙のこと)、びっき、いつ死んだ 夕べ 酒飲んで 今朝死んだ 和尚様来たから戸を開けろ 今日は何にもないから 油げ一枚 こんにゃく一枚 からからぽん からからぽん

 マザーグースの唄みたいに奇妙ですね。

 

 

     あわてん坊

 

 平次の家。  事件を知らせに八五郎が、駆けこんでくる。

 

八「親ぶ〜ん!(家のなかに入ろうとしたとたん、敷居につまずき、ころぶ)あ痛痛、あ痛ぅ〜、お痛ぇ、あ痛ぇ、うわぁ〜(勢いあまって、長火鉢の上の茶壷を落とす)」

平次「(煙草をふかしていて)おぅおぅ、何してぇんだ! 騒々しい奴だな、えっ、鳴りもの入りじゃねぇと入ってこられねぇのかよォ!」

八「親分の敷居は、危ねぇや。向こうずねを嫌っていうほどぶつけちゃって。あ痛痛」

平次「バカヤロ〜!」

八「はっ?」

平次「てめぇのあわてものを棚にあげやがって、人の家の敷居に因縁つけんのかよ、えっ!おい、それとも何か後ろ暗いことでもして、敷居が、高くなったのか!」

八「(驚いて)あっ、いや、な、なにもあっしゃね〜」

 

 お静が来る。

 

お静「ふふふ、冗談よ。八つあん、うちの人はね、今朝からずっと首を長くして待っていいたのよ。二、三日、八つあんが、顔を見せないともう、寂しくていけねぇ〜って」

八「ヒヒヒヒ、ひどいよ、親分、驚いちゃった。いきなり、ポンポンポンってくるんだもん、へへへ」

平次「(平静になって)おい、ところで何か事件か?」

八「へっ、湯島天神の崖下でね、青蛙の伝兵ヱって男が、死んだんですよ」

平次「何を! 青蛙の伝兵ヱ!」

八「へい、強請、たかりで、飯を食ってる小悪党ですがね、この野郎、また蛙みたいにね、手足をおっ広げてね(手を広げてみせる)」

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  お静が、お茶を運んでくる。 平次と八五郎、将棋を指している。

 

お静「次郎吉さん、今頃どこらあたりまで行ったかしら」

平次「ん〜ん」

お静「みんなの心に美しいものを残して渡り鳥みたいに北の国へ帰って行ったわね」

平次「え〜、びっきい、びっきい、いつ死んだと〜(駒を置く)」

八「夕べ、酒飲んで、今朝死んだ〜と……あら!王様、死んじゃった」

平次「アハハハ」

 

 街道。  お京、猪之助、子供たちが、故郷に帰る次郎吉を見送っている。

 

子供たち「さようなら、次郎吉のおじちゃん、さようなら、さようなら、次郎吉のおじちゃん、さようなら」

次郎吉「おいよォ〜」

子供たち「さようなら、次郎吉のおじちゃ〜ん」

 

 次郎吉、手を振り、おじぎをし、街道を歩いて行く。

251話 2月24日 かどわかし 潮万太郎 二瓶秀雄 八木孝子

 

 札差丹波屋の娘、お咲が、かどわかされた。身代金を持参した丹波屋の前に現れた、かどわかし犯、音吉。音吉の目当ては、金でなく、丹波屋の命だという。音吉から父、丹波屋への恨みを聞かされたお咲は、愕然とする。丹波屋は、正体を知られた音吉を闇に葬ろうとするが……。

 

 ゲスト  潮万太郎さん(丹波屋重左ヱ門)、二瓶秀雄さん(音吉)、八木孝子さん(お咲)

 

 万七親分、平次親分をあげたり、さげたり……

冒頭、切り取り(人を殺して、お金や物を奪うこと)浪人との捕り物中、万七の危ういところを平次が助けます。

平次「三輪の、危なかったな」

万七「余計な手出しを! やられたようにみせて、隙をつく策略だったんだ」(強がり!)

平次「おみそれしたぜ、おい」(寛大!)

 

中盤、冒頭の切り取り浪人が、下手人でない証拠は、音吉を捜すこと。

平次「音吉には、洋弓を使う仲間がいる。矢場で聞きこみゃ、何かがわかるはずだ(と、万七に音吉の人相書を渡す)」

万七「(涙ぐんで)ありがてぇ、やっぱり、持つべきものは、友だなぁ」(平次をもちあげる)

 

ラスト、下手人に縄をかける万七。

万七「御褒美がでたら、おすそわけするぜ」(偉そうに〜! でも万七らしい、不器用なお礼の言葉かも)

 

 平次は、音吉の丹波屋殺人未遂と娘のかどわかしの罪を見逃しました。

 

 かどわかされた当初、お咲きは、ずい分、気が強い娘と思いましたが、事情がわかってからは、神妙になりました。

 

 

     ラストシーン  

 

 尾張屋の庭。  捕り物のあと。 

 

万七「(丹波屋に縄をかけ、平次に向って)御褒美がでたら、おすそわけするぜ。じゃ、旦那(同心)」

お咲「(丹波屋に駆け寄り、万七を見つめる)お父つあん! お願いです。せめて、お白州まで、お父つあんの世話をさせてください」

 

 万七、平次の顔を見る。 頷く平次。

 

万七「いいだろう。悪い奴でも、血のつながった父親だ。目をつぶろう。さっ」

清吉「さぁ、行くんだ」

 

 万七、清吉、捕り方、丹波屋が、去る。

 

音吉「(平次のそばに来て)親分、あっしも、お縄をちょうだいします(両手を差し出す)」

平次「なぁ、八」

八「へっ」

平次「丹波屋の死罪はまぬがれねぇところだ。誰かが、お咲ちゃんを励ましてやらなくっちゃなぁ」

八「へい、誰かが、ねっ」

 

 平次、音吉と目を合わせないようにして去る。 八五郎、音吉の胸をポンとたたき(お咲ちゃんと上手くやれよって感じ)去る。 佇む音吉。

252話 3月3日 地獄街道 内田良平 御木本伸介 伊達三郎

 

 凶悪犯、常五郎を佐渡まで護送するという、危険な役目についた平次。囮の先発隊は、常五郎の仲間に全員殺される。平次は、たったひとりで、常五郎を護送しなけらばならない。道中、様々な手段で、常五郎の仲間が、平次を襲う。しかし、仲間は常五郎の命も狙っているようだ。佐渡に近づくにつれ、常五郎は人間性を取り戻し、平次との友情が芽生えていくが、常五郎には、二度と会えない定めが待っていた。

 

 ゲスト  内田良平さん(常五郎)、御木本伸介さん(世良修平)、伊達三郎さん(蜂の陣十郎)

 

 #95「一本の命綱」と似ていますが、今回の方が、はるかにハードです。凶悪犯を佐渡まで、護送するという大役を引き受け、道中、数々の困難を経て、常五郎と平次の間に芽生えた男の友情物語、アクション編。

 

 黄表紙(江戸後期に出版された大人向けの滑稽な絵本。表紙が黄色だったので、こう呼ばれる)に夢中になっている親分……こういう一面もあっていいよね。

 

 この大役に気丈にふるまっているものの、お静は、平次の前で泣き崩れます。平次のもとへ行きたい気持ちをおさえ、雪の中でのお百度参り。 お静が平次に渡したお守りが平次の命を助けます。

 

 平次の優しさ、心意気。 たとえ凶悪犯でも、顔をふいてやったり、牢の常五郎に寒かろうと布団を差し入れたり(番太があきれていた)、常五郎が、高熱をだせば、自分の体で温めてやったり(この場面は、何だか見ていて恥ずかしかった……)。

 佐渡の与力世良に対する啖呵がかっこよかったです。

 ラスト、常五郎の仲間との立ち回り。平次の左手と常五郎の右手がつながれているので、たいへん。危ういところ、与力の世良が、現れ助けます。常五郎が、平次の腰から銭をとり、ニッとお互い笑うところがよかったです。連携プレーで投げ銭。平次は次の投げ銭を口にくわえてました。

 

 常五郎を引き渡す前夜、与力世良宅で、最後の酒をくみかわします。世良の粋な計らいがいいですね。

 

 

     護送の朝。

 

 平次の家。  平次、神棚に参っている。 お静が、外から帰ってくる。

 

お静「あら、もう起きていらしてたんですか」

平次「どこ行ってたんだ。こんな早くから」

お静「おまえさん、どうか、これを(お守りを差し出す)」

平次「(お守りを受け取って)観音様のお守りだな」

お静「おまえさん……」

平次「お静、伊佐の旦那の奥様はな、今月が、産み月で、今日、明日にでも、赤ちゃんが……」

お静「わかってます。それでも旦那は、お立ちになったんだから、おまえもめそめそするんじゃねぇ、こう、おっしゃりたいんでしょ? めそめそなんか、しちゃいません。私、八つあんにだって、お弓ちゃんの前にだって……でも、でも(涙ぐむ)今の今、ふたりっきりのときだけ……(うなだれる)」

平次「お静……」

お静「(平次のそばに寄って)おまえさん、どうぞ、御無事で」

平次「こいつ(お守り)を肌身離さず、持ってくぜ(袖口から懐に入れる)」

お静「(涙をいっぱいためて)おまえさん……」

平次「なんて顔、するんだい! 新潟まで、行って帰って、二十日あまり。あっという間じゃねぇか、ハハハ。まさか、おまえ一人残して、死にゃしねぇし」

お静「ほんと? ほんと? おまえさん!」

平次「(頷く)ハハハ、ぼちぼち支度だい!」

お静「はい」

 

     平次の心意気を責任感

 

 常五郎の仲間に襲われた平次と常五郎。崖下に落ち、、ようよう、這い上がると佐渡の与力、世良修平が、常五郎のために多くの人たちが、犠牲になったので、常五郎を斬らせろと平次にせまる。

 

平次「存念が、わかりませんね。釈迦に説法もいいところだが、旦那、旦那方やあっしら、何のために十手、捕り縄を持たせて頂いているんでしょう? 殺されたら殺しゃぁいいってぇなら、こんなもの、いりゃしねぇ」

世良「それほど、手柄が立てたいのか」

平次「情けねぇことをおっしゃいますねえん、旦那、佐渡じゃどうか知らねぇが、江戸の十手持ちゃ、けちな手柄と引き換ぇとするような安っぽい命は、持ち合しちゃいねぇんだ。その大事な命でも、天下の御法を守るためには、惜しくはねぇ。千石坂で、斬り死になすった、皆様のためにも、こいつ(常五郎)は、金輪際、渡せねぇ。どうでもとおっしゃるんなら、まず、あっしを斬ってからになさいまし」

世良「負けたよ」

 

 常五郎が、だらしのない役人だというと、平次は「ちっとは、人間らしくなったらどうだ!」と言ってビンタ。のちに世良は、平次の意見に感謝します。常五郎は、徐々に人間の心を戻していきます。

 

 湯沢代官所で、代官が、この先は、江戸ものには、無理だから、二、三日ゆっくりして、江戸へ帰れ、後は我々が、護送すると平次を労います。

平次「参ります。這ってでも参りますから、どうか、あっしにやらせておくんなまし。覚悟はいたしております」

 

 

     お静の心意気

 

 平次の家。 樋口が、湯沢に行くというので、お静の気持ちを察してか、お弓が、お静も連れて行ってと樋口に頼む。わからなきゃ、朴念仁とまで、言われた樋口は、お静を連れ行こうとするが

お静「そんな、はしたないこと……うちの人は、遊びに行ってるんじゃないの。御用に命をかけている。その留守を守るのは私の役目。亡くなった伊佐様の奥さんに心情を思うと出来ない……うちの人に叱られる」

樋口「平次が、羨ましい」

 お静の代わりに八五郎が、同行します。

 

 

     佐渡与力、世良の粋な計らい

 

 世良宅。 平次、頭に包帯。左腕を三角布で吊っている。常五郎の引き渡し前夜。世良、平次と酒を酌みかわそうとするが、平次が常五郎を気にしているので、常五郎の縄を解き、平次とふたりきりにする。

 

世良「江戸から百里の道をくっついてきたおまえたちだ。最後の夜とありゃ、野郎と水入らずになりてぇだろう。俺はあっちで、飲んでるからな。明日の朝は早いぞ(去る)」

 

 平次、驚いたよう、その計らいに、頭を下げる。涙ぐみ、洟をふく。

 

平次「(常五郎に)おい、こっち、来な」

 

 平次、常五郎に酌をする。常五郎、目をつぶって、江戸からの道中で起きたことを思い出している。

 崖から落ちた時、平次が必死に助けてくれたこと、高熱を出した時、平次が、自分の体で温めてくれたこと……。

 

常五郎「(一気に酒を飲みほして)親分さん!(両手をついて、涙ぐんで、平次に土下座)」

平次「(涙ぐんで)やっと仲良しになれたのになぁ」

 

 佐渡おけさが、流れる。♪あ〜、雪の新潟 吹雪に暮れてよ〜 佐渡は寝たかよ 灯が見えぬ

 

 

     ラストシーン

 

 常五郎を護送していく世良たち。常五郎の乗った篭をとめ、垂れをあける世良。

 

世良「常五郎、見ろ」

 

 遠くから、平次が常五郎を見守っている。篭の中の常五郎、達者でなというように手をあげ、微笑む。泣いているのだろう、顔をそむける。

 

世良「行こうか」

 

 見送る平次。帰路につく。 樋口と八五郎が、雪道を登ってくる。八五郎の足取りがおぼつかない。

 

樋口「八五郎、どうした? しっかりしろ」

八「へ〜ぇ」

樋口「もう、一息だ。これを越えれば湯沢だ」

 

 平次の家。 地図を見ているお静。湯沢を指さし、神棚をちらっと見る。(心は平次のもとへ)

雪道を下って行く平次。

253話 3月10日 三度笠の男 里見浩太郎 新井茂子 見明凡太郎

 

 四年ぶりに信州から、江戸へ舞い戻った木場の半次郎。木場問屋武蔵屋の番頭巳之吉が、殺され、集金した金も奪われる。そのとき、三度笠の男が目撃され、疑いは半次郎にかかる。半次郎は、武蔵屋の血を引く男だが、家督を弟の孝之助に譲り、家を出ていたのだ。が、武蔵屋を潰そうとしている奴がいるとの情報が入り、巳之吉や孝之助に知らせるために舞い戻ったのだ。しかし、その孝之助も敵の罠に落ちようとしていた。武蔵屋はどうなっていくのか。

 

 ゲスト  里見浩太郎さん(木場の半次郎)、新井茂子さん(お栄)、見明凡太郎さん(宅兵ヱ)

 

 冒頭、傘をもって、平次を迎えにひょうたんに来たお静、お弓にひやかされます。

 

 ラスト、伊太八になり代わり、三度笠にかっぱからげて、平次登場! 久々の三度笠姿の橋蔵さん! 元祖半次郎! 刀での立ち回り! 相手に「てめぇは誰だ!」と言われ、三度笠を斬られ、平次の顔が現れる。この場面、映画「おしどり道中」のスチール写真にありましたね。里見浩太郎さんも共演じされています。半次郎役を今回は、里見さんに譲ったのでしょうか、橋蔵さんのアイデアかな。

 

 

     相合い傘

 

 ひょうたんや。 雨宿りか、平次と八五郎が、入ってくる。 そして、お静が傘を持って入ってくる。

 

お弓「姐さん、おあいにく様、せっかく親分さんと相合い傘で帰ろうと思ったのに、雨がやんでさ」

お静「嫌なお弓ちゃん」

お勝「八五郎さん、今夜は親分と姐さんのおごりだよ」

八「へっ、ありがてぇ。今夜は、親分と姐さんと合わせて、イヒヒヒ」

平次「え〜っ、バカ野郎〜、(お静に)つまらねぇときに顔、出しやがって」

 

 皆、大笑い。

 

 

     ラストシーン

 

 八幡の境内。  捕り物の後。

 

半次郎「親分さん」

平次「これで、おめぇが江戸へ出てきた用は、済んだはずだ。武蔵屋を潰しにかかっている信濃屋の名前を一族の恥だと最後まで言わなかった心根、平次、しっかり、この胸に受け止めたぜ」

半次郎「親分さん」

平次「だが、半次郎、いかに武蔵屋を守るためとはいえ、おめぇは、信州で何人ものあいつらの仲間を傷つけているはずだ」

半次郎「わかっておりやす。(両手を差し出す)親分さん、お縄を」

平次「俺には、かける縄はねぇ。信州へ帰ぇって、今までの垢をきれいに洗い落してきな」

半次郎「親分さん……」

 

 平次が、信濃屋に目をやる。 正座して、うなだれている信濃屋。

 

 木戸。  平次、お静、八五郎と孝之助、お栄夫婦が半次郎を見送る。 半次郎、皆に頭を下げ、去っていく。

 

孝之助・お栄「兄さ〜ん(後を追おうとする)」

平次「(二人を制して)おっと、行くんじゃねぇ」

孝之助「でも」

八「おい、心配するねぇ。え〜、半次郎が、木曽路に着く前にはな、今回の一件を記した書状が、土地の代官に届いているはずだ」

お栄「それじゃ、兄さんは?」

お静「軽いお咎めで済むそうよ」

八「ん」

お静「よかったわね」

八「へへへ」

 

 往来を歩いて行く半次郎。

254話 3月17日 虎の穴 佐藤允 今井健二 吉田義夫

 

 同心樋口から、五年前の越前屋皆殺し事件の下手人、鉞(まさかり)組の一味を子安で見かけたという情報を得た直後、平次は大山詣りの誘いを受ける。子安は、通り道、平次は、因縁を感じて「虎穴に入らずんば……」とばかり、大山詣りに加わる。早速、同行した、七兵衛の娘、お京が、平次に刃を向ける。が、平次から、七兵衛殺しの真相を聞かされたお京は、一味の残党が、平次を狙っていると警告する。しかし、時すでに遅く、ふたりがいる小屋が、一味と大勢のやくざが包囲していた。

 

 佐藤允さん(的場陣内)、今井健二さん(カミソリの伝次)、吉田義夫さん(竜源)

 

 鉞の七兵衛の娘、お京が、クレジットに出ていませんでした。何と言う名の女優さんでしょうか。あれだけ画面に出ているのに……ミスでしょうか。

 

 「大山詣り」講中姿の親分が、見られました。 大山詣りは、遊びの要素もあって、実際は、職人風の仕事着で、普段着に近いものだったようです。

 

 冒頭、為吉が、鰯を焼いていましたが、やっぱり、やもめみたいです。

 

 今回は、平次とお静の台詞が面白かったです。

出がけに平次は、相撲のふれ太鼓を聞いて「それじゃ、こっちもはっけよいだ。行ってくるぜ」と。

 傘張り浪人を「バリバリ(傘を張るから)とね」と言って励ましたり(今だったら親父ギャグ)

 お静は今月の給金が、なくても(平次は、賞金稼ぎの辻斬りに財布ごとあげちゃったから)「おあしが、なくても怪我さえなけりゃ、まぁみてて、やりくり算段、七つ屋(質屋)通いは、平気、平気、私の腕のみせどころ」と言ってけろり。陣内さん、早くお金を返してね。

 

 

     ラストシーン

 

 大勢のやくざ相手にお京まで、人質にとられ、大ピンチの平次。そこへ的場陣内とお静が来る。

 

平次「旦那!」

お静「おまえさん!」

平次「お静!」

陣内「平さん!」

平次「このお姿は?」

陣内「喜んでくれ、藩に帰参が、叶ったのじゃ、さてと、快い剣の舞いじゃ」

平次「おぅ!旦那! 斬っちゃいけませんぜ!」

陣内「あぁ、心得た」

 

 陣内、峰打ちで、悪人どもをやっつける。

 

平次「旦那〜」

陣内「平さん」

 

「お〜い」との声、土地の役人と捕方が、やってくる。

 

平次「田舎のお役人は、ゆっくりしたもんだ」

お静「おまえさん」

平次「おぅ、おめぇ、何しに来たんだ」

お静「おまえさんが、山から落ちたからって……」

陣内「こいつらの使いが、行きよったんじゃ。人質にするつもりだったらしいな」

平次「ちぇっ、御用聞きの女房が、甘い手に乗りやがって……」

お静「違う! そりゃ一時は、びっくりしたけど、でも道順が変わったのも変だし、そうだとしても、時刻から察して、まだ山へは、差しかかっていやしない」

平次「だったら、どうして!」

お静「けど、おまえさんの身の上に何かが起きたんだ、もしや、もし、そのときは、一緒に死ぬつもりで……」

 

 平次、しょうがねぇ奴だなという表情。

 

陣内「平さんよ、何か言うてやらんかい。好きだとか、惚れているとか」

平次「(困惑顔)へ〜え……(土地の役人たちに)御苦労さまで」

役人「いや、御苦労、御苦労」

平次「こいつらでございます」

役人「うん、あぁ、よし(悪人どもが、皆倒れているのを見て)うん? 何じゃこれは。もう片付いたのか?」

平次「(申し訳なさそうに)へ〜え」

陣内「ハハハハ」

 

 山への階段か、かなり長い石段。陣内、お京、平次、お静がいる。

 

平次「じゃ、旦那、こいつ(木刀)を納めて参りますから」

陣内「あぁ、平さんよ。はよ、戻ってくるんじゃ、でないとお静さん、寂しがっていかん」

お京「ふふふ」

お静「まぁ」

 

 平次とお静、顔を見合わせる。

 

平次「さぁ、お嬢さん」

お京「はい」

 

 平次とお京、石段を登って行く。陣内とお静が、見送る。

255話 3月24日 狂った武士道 菊ひろ子 小林勝彦 不破潤

 

 落石で、俵藤主水が、死んだ。平次は、死因に疑問を持つ。死体確認に来た、主水の妻、浪江の気丈すぎる態度もひっかかる。お家再興、武士の体面に固執する、父、俵藤外記、何か後ろめたさのある道場仲間の新庄鉄馬。影のように様子を窺う町人は、何者? 平次は人間性を失った、がんじがらめの武家社会を目の当たりにする。

 

 ゲスト  菊ひろ子さん(俵藤浪江)、小林勝彦さん(新庄鉄馬)、不破潤さん(俵藤主水)

 

 平次の嫌いな侍社会の非情、理不尽、利己主義など描いたエピソード。

 

 八五郎、大好きなお酒になかなか、ありつけず、思わず「ついてねぇ〜」と。でも通夜に出る酒を当てにするとは、不謹慎ですよ。

 

 家名大事とお家再興のために、心をひとつにしてきたつもりの俵藤家。そのためには、手段を選ばぬ主水。結局、再興のために家族が崩壊してしまうとは、皮肉です。

 

 万七親分、音を上げたふりして、平次をだますとは、したたかですね、ほら、平次の跡をつけようとしたら、見失っちゃって。

 

 

     平次の啖呵

 

 俵藤主水の家。 侍を捨て、妻の浪江と逃げようとする主水。

 

平次「両刀を捨てて、幸せになれるんなら、町人は、万、万歳だ。ねぇ、人の道ってぇのは、そんなもんじゃねぇでしょ」

主水「やかましい! 町人風情が、出る幕じゃない!」

平次「ほ〜う、町人風情ですかい。本音をお出しなすった。お侍なんてぇのは、勝手なもんですね。犬、猫じゃあるまいし、女房を譲るの、譲らねぇの、他人事ながら、腹が立ちましたぜ。その上、てめぇの恨みのために通りがかりのお侍まで、巻き添えにして殺した。あんたっていう人は、なんていう人だ!!」

 

 

     ラストシーン

 

 俵藤外記の墓。 浪江が、墓参り。そこへ平次とお静。

 

お静「奥様、私たち貧しいけど、なんか、こう、血の通ったようなって、いうんでしょうか、人間らしい毎日を送っています。(浪江に近づき)今からでも、遅くはありませんよ」

浪江「今からでも……」

 

 お静が、浪江の後ろに回ると新庄鉄馬が、姿を現す。 目をふせる浪江。

 

お静「奥様」

浪江「せっかくのご厚意では、ございますが」

お静「えっ?」

浪江「あの方は、土壇場になって、約束を反故になすった。武士なればこそ、やっぱり士官が、大事。武士とは、人の世の情けも約束も一切を踏みにじって、省みないとようやく私……あなた方にお会いして、初めて別の暮らしがあることが、わかりました。そのことに早く気が付いていれば、夫をあのように狂わせずに済んだかもしれません」

鉄馬「浪江どの」

浪江「(涙を拭き、鉄馬に近づく)鉄馬様、お侍の世界とは、もう縁が切れた私。あなたとも、もうお会いすることもございません」

 

 浪江、平次とお静に会釈して、去っていく。

 

平次の心の声「お静、今の言葉を聞いたかい。あの人は新しい世界で、きっとりっぱに生きていくぜ」

256話 3月31日 辻占せんべい 大坂志郎 永野裕紀子 芦田鉄雄

 

 社の片隅で、辻占せんべいを売る、盲目の少女、お直。今日もまた、煙草売りの亀八が、せんべいを買いにきた。このふたりの間には、相手を思いやるあたたかい交流だあった。

しかし、亀八の正体は、押し込み強盗黒つむじの一味。世話好きの煙草売りとして目当ての店の内情を探る役目だったのだ。お直が、十二年前の大火事で、はぐれた両親は、湊屋だと亀八は告げる。お直を利用する気なのか。亀八の真意はどこに。平次は、亀八の心底にある情けを感じ取っていた。

 

 ゲスト  大坂志郎さん(亀八)、永野裕紀子さん(お直)、芦田鉄雄さん(般若の仁造)

 

 盲目の少女と悪人との心の交流を描いた人情編。

 

 お直を演じる永野裕紀子さん、六年目から、ひょうたんやの看板娘、お弓に代わっておゆきとして、登場します。

 万七は、亀八に騙されたと思いながらも、後家さんの話(万七の縁談相手)が忘れられなくて面白かったです。

 

 亀八が、怪しいと家を訪ねた平次、そこへ万七が来ます。平次は、亀八の世話好きを利用して万七をさかなに亀八の気持ちに隙をつくり、尻尾を掴もうとします。「万七は、五年来のやもめ暮らし……」と平次は言いますが、二年目(今から三年前)の#93「万七手柄」では、奥さんがいる感じでしたよね。

 

 

     ラストシーン

 

 亀八の墓。 湊屋とおのぶが、墓参り。 そこへ、平次と八五郎。墓前に辻占せんべいが、供えてある。

 

おのぶ「親分さん」

平次「どうやら、おいらの足音を覚えられたようだな」

八「へっ……おっ? 辻占せんべい。こりゃいいや。草葉の陰で、きっと亀八さんも喜んでいるよ」

おのぶ「毎日持ってくると亀八さんに約束したところです」

八「決まって、大吉なんだろう?」

 

 頷くおのぶ。

 

湊屋「それでは、親分、これで」

平次「おぅ」

湊屋「(おのぶに)さぁ」

 

 帰って行く湊屋とおのぶ。見送る平次と八五郎。(見送っている間、平次が、腰の投げ銭を握ったり、放したり、ずっと気にしていたよう、癖になっちゃったのかな)

257話 4月7日 死霊のお告げ 水上竜子 浮田左武郎 藤岡重慶

 

 材木問屋才賀屋彦兵ヱ。おかん婆さんが、行方知れずの長女、お藤の霊を呼び出して息子がいると告げたから、さぁ、たいへん。跡継ぎに決まっていた養子の文造をそっちのけで孫捜し。大番頭が、孫の彦太郎を探し出す。そんなとき、彦兵ヱが、殺され、疑いは文造に。一方、平次の家にお母さん捜してと、幼い与一が、訪ねてくる。意外にも才賀屋殺しと与一の母と係わっていることが、判明する。

 

 ゲスト  水上竜子さん(お滝)、浮田左武郎さん(才賀屋彦兵ヱ)、藤岡重慶さん(仙太)

 

 祈祷師(霊(たま)よせ)まで丸めこんで、店の乗っ取りをしようとした番頭の強欲さを描いたエピソードですが、母親の情けや子供のけなげさが、盛り込まれています。

 

 祈祷の場面は、いくつかのエピソードに出てきますが、どれも何か可笑しくて、滑稽にみえてしまいます。不謹慎ですけど。