回数 放送日 サブタイトル ゲスト出演者
244話 昭和46年1月6日 猪のくれた百万両 九重佑三子 由利徹 我廼家五郎八 坂口徹

 正月早々、三河屋の娘、お絹がかどわかされた。賊の狙いは、三河屋重代の家宝「七福神」の掛け軸。百万両の隠し場所が、その軸に描かれているらしい。三河屋の女中、お梅は、捨て子だったが、育ててもらった恩返しとばかり、単身、賊のアジトへ乗り込んでいく。

 

 ゲスト  九重佑三子さん(お梅)、由利徹さん(権三)、曾我廼家五郎八さん(鳴海屋儀平)、坂口徹さん(助十)

 

 久々に万七親分が、登場。気のせいか、元気がないようでした。

 

 このエピソードが、放送されたのは、1971年(昭和46年)亥年です。だから、このタイトルがついたのでしょう。

 

 駕篭かきに扮した平次と八五郎、手ぬぐいでほっかぶりした平次が、かわいいです。

 

 タイトルは「狐の呉れた赤ん坊」と似てますね。捨て子が、いいところの出の子だったというのも同じ。ヒントにしたのかも。

 

 下手人は、6年前、十二支組と名乗る賊のかたわれでした。#1「おぼろ月夜の女」で、確かに十二支組が出てきました。6年くらい前です。

 

 駕篭かきの権三と助十。岡本綺堂の作品で、「権三と助十」というのがあるそうです。大岡裁きも絡んでいるそうで、歌舞伎の演目にもあるようです。

 

 

     ラストシーン

 

 神田明神。  鳴海屋儀平と孫娘のお梅ことゆきえが、参拝。見守る平次一家と駕篭かきの権三と助十。

 

儀平「さぁ、行こうか」

お梅「はい。一生忘れません、今年のお正月。何もかも親分さんのお陰です」

平次「いやぁ、お父つあんや、おっ母さんに会いてぇと願ったおめぇの一念が通じたんだ」

 

 顔を見合わせる儀平とお梅。

 

お梅「権三、助十さん、あんなに好きだったいい子を大事にね。会えなくて本当に残念だけど、よろしくね」

 

 権三と助十、困惑顔。

 

お静「さぁ、そろそろ急がないと、いくらでもみんな、引き留めますよ」

お梅「ええ、じゃ、さようなら、八つあん、元気でね」

八「うん、お梅ちゃんもね」

お梅「ええ、じゃぁ」

儀平「はよ、いこ、いこ。ありがとうございました。おおきに」

 

 儀平とお梅が去る。

 

権三「(懐からかんざしをだして)これ、おめぇにやるよ。俺には用がなくなっちまった。おめぇの女にやんな」

助十「(同じく、懐からかんざしを出す)俺にも用なしだい。とうとう、行っちまったい」

権三「えっ! おめぇの惚れた女ってぇのは……お梅ちゃん?」

助十「当然」

権三「俺たちゃ、だめな男だねぇ」

 

 ふたりで、溜息をつく。

 

平次「おぅおぅ、年の始めにあたって、不景気な面すんじゃねぇぜ。今年は亥の年だ。威勢よく猪みてぇに突っ走ってくんな」

お静「そうですよ。かなわぬと思った恋もお梅ちゃんみたいに、正夢になるかもしれませんよ」

平次「ハハハ、おぅ、八の野郎、どこへ行きやがった?」

お静「あら、またおみくじ」

八「(おみくじを読んでいる)え〜、縁談、酉の方角に良縁あり。酉、酉、酉、酉、酉……あっ、あそこだ!」

 

少女が、微笑んで立っている。

 

八「へぇ〜、はぁ〜、当ったらねぇなぁ〜」

 おみくじを吹いて飛ばす八五郎。 皆、大笑い。

 

平次「(八五郎の背中をポンとたたいて)しっかり頼むぞ、おい」

 

 皆、舞台の獅子舞いを見る。 獅子舞アップ。

245話 1月13日 長兵衛の災難 大山克己 渋沢詩子 金内吉男 石井富子

 

 大工の長兵衛は、無類の博打好き。今日も妻のお徳と博打のことで大喧嘩。果ては、友達の為吉から、お金を借りて仕事もぜず、賭場に行く。バチが、当たったのか、長兵衛は、金貸しの勘右ヱ門殺しで、捕まってしまう。無実を訴えるも勘右ヱ門からの借金はあるわ、目撃者はいるわで、不利な条件が揃っている。平次には、、腑に落ちないことがあるが、同心小日向は、深く調べようともしない。そんな小日向に平次は、不審を抱く。

 

 ゲスト  大山克己さん(長兵衛)、渋沢詩子さん(お竜)、金内吉男さん(小日向栄次郎)、石井富子さん(お徳)

 

 病的な賭博好き、殺人、濡れ衣と悲惨な話になるところですが、長兵衛の憎めない人柄だからでしょうか、何でも賭けごとにしてしまったり(往来で、最初に自分に当たるのは男か女か? この賭けで為吉は負けて、お金を取られます)と面白かったです。

 

 長兵衛の罠、畳の焦げ跡、空家のトリック、お茶の葉などなど謎ときのヒントや証拠が、随所にあって、捕りもの帳って感じです。 ラストは、証人の四人の男女の隠れ場所はどこかという謎解き。「人目につかず、無事で、金の要らない場所」答えは「牢屋」でした。

 

 

     思いやり

 

 平次の家の前。 夜中、 御用に出かける平次と八五郎。

 

お静「おまえさん、寒いから気をつけてね」

平次「あぁ」

お静「風邪を引きやすい質(たち)なんだから」

平次「うん」

 

 お静、平次に切り火をかける。

 

八「え〜、どうせ、そうでしょうよね、あっしなんか、何とかは風邪ひかないっていますからね」

お静「まぁ、八つあんたら、ひがむんじゃないの」

平次「ぶつぶつ言ってねぇで、行くぞ」

八「へい」

 

 平次と八五郎、去る。

 

お静「気をつけてぇ〜」

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家の前。  仕事に行く前の長兵衛と為吉。

 

平次「どうだい、長兵衛さん、もう賭けごとは、こりごりだろう」

長兵衛「へぇ〜、もう金輪際、もう賭けごとのかの字もやりませんよ」

 

 皆、笑う。

 

お静「よかったぁ。おかみさんも長吉さんも嬉しいでしょうねぇ」

為吉「本当だぜ、長兵衛さん。今の約束、忘れるんじゃねぇぜ」

長兵衛「わかってるよォ、はばかりながら長兵衛さんだ。一旦こうと決めたら、死んだって守るよ。嘘だと思うんなら、賭けてもいいぜ(あわてて、口を手でおさえる)いっけねぇ」

八「ハハ、これだぁ」

 

 皆、大笑い。

 

為吉「じゃ、親分」

平次「おぅ」

為吉「おぅ、行こうか」

長兵衛「じゃ、これで」

 

 為吉、長兵衛、仕事へ行く。

246話 1月20日 月夜ばやし 河村有紀 和崎俊哉 伊沢一郎

 

 満月の夜に限って、押し込みを働く満月組。賊のひとりの面が割れ、平次が捕らえようとしたとき、芸者の音弥が、邪魔をし、取り逃がしてしまう。口を割らぬ音弥の真意は何なのか。また、満月の夜が近づき、平次はあせる。音弥には、夫同然の小柴征一郎がいたが、仇討に執念を燃やしていた。

 

 ゲスト 河村有紀さん(音弥)、和崎俊哉さん(小柴征一郎)、伊沢一郎さん(両国屋伊兵ヱ)

 

 見どころは、ラストの平次の端唄でしょう。ご機嫌です。お静の喉も聞かせてほしいですね。

 

 八五郎は、芸者音弥の張り込み中、粋な川柳を作ろうとしています。「湯上りの 芸者のすそに 宵の風」 もっとも後半は、平次の作ですが。

 

 お静は、平次に「すっかり、岡っ引きの女房になったな」と言われ「ならされたの。これで、十日もゆっくりご飯を差し向かいで、食べたことない」と。今日こそはと、お膳をもってきたら、八五郎が、来てそのまま、御用へ出かけてしまいます。お静、ごはんを盛った平次の茶碗を手にがっくり。

 

 音弥に仇討をさせようと、平次は、音弥の手をとり、ドスを両国屋に向けます。命乞いをする両国屋。でも平次は「十手持ちの平次は、ここまでしかできません。勘弁してくれ、あとは天下の御法が、仇討をするから」と説得。平次にとっても殺したい位憎い両国屋だったでしょうね。

 

 

     ラストシーン

 

 花街。  見回りをしている平次と八五郎。どこからか、三味線の音が、流れてきて、平次が、ご機嫌に唄い始める。

 

平次「♪梅は咲いたか〜桜はまだかいな」

 八五郎、驚いた表情。

 

八「お、親分、いつからそんな器用な真似を……」

平次「音弥姐さんの直伝だい。♪柳や、なよなよ〜風次第、山吹きゃ、浮気で、色ばっかり、しょんがいな〜」

八「親分、姐さんに会ってんですかい」

平次「時々な」

八「へっ! 親ぶ〜ん」

平次「な〜に、お静も一緒に習ってるんだ。安心しな」

八「はぁ〜」

 

 ふたり、笑う。  お座敷で、音弥が、舞っている(小唄 桜みるとて) 花街を歩いて行く平次と八五郎の後姿。

247話 1月27日 ぎやまん地獄 磯野洋子 永井秀明 中村竜三郎

 

 船乗りの弥吉が、殺された。なぜか、弥吉を屋敷の者と偽って、旗本柏木幾之進が、遺体を引き取った。平次の家を訪ねたお京が、水死体となって、発見される。そして、姉のお京を捜しにきたお美代が、かどわかされる。 平次は、事件が全て、札差日向屋に結びついていることを知る。

 

 ゲスト  磯野洋子さん(お美代)、永井秀明さん(日向屋徳兵衛)、中村竜三郎さん(柏木幾之進)

 

 事件に深く係わっていると思った御家人の柏木幾之進ですが、借金のために町人やヤクザのいいなりになっていたとは、情けないです。 挙句に毒酒を飲まされ、息絶えます。女好き、賭博好きの殿様にも困ったものですね。

 

 ラストの立ち回りは、平次対丑松。 平次は、十手を逆さに握って構えていました。

 

 最後、お美代が、お礼なのでしょう、出前持ち姿で、平次たちにそばを届けに来ます。おきゃんなお美代、#81「質屋の娘」のラストと似ていました。#81は大原麗子さんでした。

 

 お美代は、姉を信じ、自分をかどわかした丑松の心も動かしました。丑松は、女に裏切られ、女不信に陥っていたのです。最後は、下手人の日向屋を刺し違えます。

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  岡もちを持って、お美代がくる。

 

お美代「まいどあり」

八「はぁ〜? あら! お美代ちゃん、な、なんだい、おめぇ、こんな……」

お美代「親分さんのお世話で、今日から、ごらんのとおり、そば屋の出前持ち」

八「へっ」

お美代「御贔屓に」

八「へへ」

平次「おっ、やってるな」

お静「お美代ちゃん、なかなか堂に入ってるわ」

平次「あぁ」

お静「その格好」

平次「あぁ、嫌な思い出を忘れて、せいぜいがんばるんだよ。ん? ん」

お美代「はい。(そばを出しながら)私、お江戸で、働くのが夢だったんです。 親分さん、これ召し上がってください……いけな〜い、こんなところで、油売ってると、怒られちゃう。忙しいんですもの。毎度ありぃ〜」

 

 お美代、去る。

 

八「こうなったら、毎日、そば、食わなくっちゃ」

平次「あぁ、そうだな」

八「(そばを平次に渡しながら)あっちっち〜」

248話 2月3日 なさけ深川 嵐寛寿郎 井上清子 石征一郎

 

 島から帰ってきた人斬り源太。平次にお礼の挨拶に行き、材木問屋武蔵屋で働くことになる。武蔵屋は、日光東照宮改修の御用材を納入することになったが、ヤクザの梵天の松五郎一家に再三、嫌がらせを受ける。裏で糸を引くのは、同業の杉田屋か、松木屋か。松五郎と顔なじみの源太、その腕をかわれて、一家の元へ。平次は、源太の裏切りに憤るが……。

 

 ゲスト  嵐寛寿郎さん(源太)、井上清子さん(お道)、亀石征一郎さん(佐吉)

 

 大物俳優、嵐寛寿郎さんの登場。 いい味を出されていました。ついついヤクザ相手に啖呵をきってしまいますが、かっこよかったですね。一度は、平次を裏切ったかにみえましたが、やはり義理は忘れていません。ラストは「死に花」を咲かせようとします。

 

 平次は、源太に妻のお春は、二十年くらい前に火事で行方不明になったと伝えます。文化5年(1808年)と言ってましたから、今は、文政11年(1828年)位。#184「武家の世の中」で、徳川12代家慶(1793〜1853)の時代って言っていたので、時代は合っています。大火事(丙寅の大火)が、あったのは、文化3年です。

 

 お静が、源太に半纏を作ってあげます。平次が、自分のと勘違いする場面が、面白かったです。その半纏を最後に源太に着せかけてあげるところが、泣かせます。

 

 

     勘違い

 

 平次の家。  平次、長火鉢のところで、十手の手入れ。お静が、お手製の半纏を持ってくる。

 

お静「ねぇ、見て! 今、縫いあがったの(半纏を広げて、平次に見せる)ほら!」

平次「な〜んだい、そんな年寄り染みたもの」

お静「あら、だって、お年寄りじゃない」

平次「誰が!!」

お静「源太さんよォ」

平次「あぁ、何だ、源さんにかい」

お静「ええ、寒いだろうと思って、綿を少し入れすぎちゃったの。ねぇ、おかしかない?」

平次「いや、可笑しいもんか、よく気がついてやってくれたよ」

お静「(微笑んで)ああは、言っても、どんなにか、おかみさんや、お子さんが恋しいことでしょうね」

平次「生きているものなら、会わせてやりてぇが……」

お静「ええ、ほら、よくあるでしょ、神様の引き合わせってこと。私、観音様にお願いしてみようかしら」

平次「お静、おめぇって奴は……」

 

 お静の願いが、通じたのか、源太は、息子の佐吉に会えました。

 

 

     ラストシーン

 

 武蔵屋の材木置場。 大勢の職人が、働いている。 そこへ武蔵屋の親方。

 

武蔵屋「お〜い、気をつけなよ(職人たちに)」

 

 笑い声がする。 お道と佐吉が、材木の陰で、楽しそうにおしゃべり。

 

武蔵屋「やいやい! てめぇたち、そこで何をしてやがるんだ!」

 

 お道と佐吉、驚いて「ハ〜ッ!」と言って出てくる。皆、大笑い。一方、その様子を見ていた、平次、お静、八五郎、源太。源太が、泣いている。八五郎は、源太の心を察してか、何とも切ない顔。

 

平次「源さん、寄せ場で、半年か一年、今度帰ぇってくるときにゃ、あのふたり、かわいいのを抱いてるぜ」

源太「へい、へい、ありがたい……こって……」

平次「さぁ、行こうか、ん?」

 

 平次と八五郎が、去る。お静、持っていた半纏を源太の肩にかけてやる。手を合せる源太。お静も去る。

249話 2月10日 幻の遺言状 三上真一郎 嘉手納清美 島田多恵

 

 札差板倉屋清左衛門が、病死。しかし、遺体が、消えた。 遺言状も見つからず、盛岡藩から苗字帯刀を許された証拠の品もない。跡継ぎのない板倉屋。遺産相続に躍起となる親族。そんな中、女中のお信だけは、悲しい過去を持ちながらも主人を心から弔おうとする。平次は、板倉屋が、旅芸人一座を死ぬ間際まで、贔屓にしていたことに疑問をもつ。

 

 ゲスト  三上真一郎さん(新助)、嘉手納清美さん(お信)、島田多恵さん(おらく)

 

 ひょうたんで、お静、お弓、お勝が、おしゃべり。平次の夜ぴいての仕事にお静も寝ていないよう。お弓とお勝が、同情するが、お静は「所帯をもったときからよ」と苦笑い。そこへ平次。

お静「お帰りなさい」

平次「帰ぇってきたんじゃねぇんで。ちょいとのぞきに寄ったんだ」

お弓「まぁ、憎らしい、その言い方。姐さんはね、夕べからずっと……」

平次「バカ野郎〜。九つすぎたら、かまわねぇから、寝ろと言っといたのに」

お静「すみません」

お弓「何も姐さんが、謝ることないわよ!」

 険悪ムードも八五郎のくしゃみ(噂をしたいたら)の声で和みましたね。

 

 お信が、遺体を隠したと疑われるが、平次が、調べると旦那思いのいい娘。万七が、一生懸命調べていたのにとがっくりします。平次は思わず「すまねぇ」と。万七は「何もおめぇが謝ることない」と言いました。今度は、平次が、謝る番でした。

 

 彫辰が、板倉屋の腕に彫った字を平次の二の腕に筆で書きます。「おちか いのち」

なぜ、わざわざ、平次の腕に? 早く消さないとお静に見つかったら、たいへん!

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。 丸火鉢を囲んで、平次、八五郎、新助。

 

新助「親分さん、この遺言状を親分さんの手で、焼いてください」

八「おぅ、おい、そ、そりゃもったいないよ、おめぇ。江戸札差九十六軒中、指折りの、しかもだよ、苗字帯刀まで、許されたという……」

新助「いいや、私にとっちゃ、見たくない夢です」

八「はぁ?」

新助「お信さんが、せっかく届けてくれたのに、申し訳ない」

八「えっ?」

平次「新助さん、おめぇさん、どうしても板倉屋を継がねぇとなると、この遺言状には板倉屋の全財産は、板倉屋の生まれ故郷の用水工事に寄進すると書いてあるんだが……おめぇさん、無論、読みなすったんだな?」

新助「そうしてやってください。おやじの金も大勢の人の役に立つんですから」

八「いや〜、あのよォ、だから、板倉屋を継いどいて、なっ、その財産の半分ぐれぇを用水工事に寄付するって方法もあるんだよ」

新助「いやぁ、私には、板倉屋を継ぐ気は毛頭ございません」

八「や〜」

平次「わかった。おめぇさんの言う通りにしよう」

新助「ありがとうございます」

八「はぁ〜」

新助「それから、親分さん」

平次「なんだ」

新助「おやじの死体を盗んだのは、私の一存です。手伝ってくれた者には、どうかお咎めのないようにお願いします」

平次「実の子供が、おやじの弔いを遺言通りにしたんだ。お咎めなんか、あるわけねぇ。それから、おめぇさん、遺言のことをもうひとつ忘れてないか?」

新助「えっ?」

平次「お信さんだよ」

新助「親分さん」

平次「あれだけ身よりを嫌っていた板倉屋が、商売仇の娘と知らず、おめぇと一緒に店を継いでくれることを願っていた」

新助「親分さん、その話は……」

平次「肝心なのは、ふたりの気持ちだ。まぁ、ゆっくり考げぇるんだ。おぅ、板倉屋さんの御供養をするために、みんなひょうたんで待ってるんだ。行こうか」

新助「はい」

 

 ひょうたんや。  江州屋伊之吉(お信の父)と板倉屋清左ヱ門の位牌が並べられている。平次、お静、八五郎、お信、お弓、お勝、新助がいる。お信が、焼香。次に平次。

250話 2月17日 わらべ唄殺人事件 山城新伍 松本路子 織本順吉

 

 大黒屋を強請っていた青蛙の伝兵ヱが、殺された。疑いは大黒屋に季節働きに来ていた次郎吉にかかる。次郎吉の唄うふるさとのわらべ唄通りに事が、運んでいるのだ。素朴で純粋な心をもつ次郎吉に大黒屋の娘、お京は心を打たれる。平次は、わらべ唄の言葉の中に隠されたもうひとつのてがかりを見つける。

 

 ゲスト  山城新伍さん(次郎吉)、松本路子さん(お京)、織本順吉さん(大黒屋)

 

 八五郎、事件を知らせに平次の家へ。あわてて、つまずいて、向こうずねを怪我。平次とのやりとりが、面白い。

 

 万七の推理の冴えに清吉は「珍しい、今朝、何を食べてきたんです?」だって。万七が、張り切っていると「よっぽど、おかしなものを食べたんだ」の言葉に大笑いです。

 

 ラスト 平次と八五郎が、久々に将棋を指しています。平次が王手を! 初めて八五郎に勝ったのでは?

 

 次郎吉のふるさとのわらべ唄 ♪ びっき(蛙のこと)、びっき、いつ死んだ 夕べ 酒飲んで 今朝死んだ 和尚様来たから戸を開けろ 今日は何にもないから 油げ一枚 こんにゃく一枚 からからぽん からからぽん

 マザーグースの唄みたいに奇妙ですね。

 

 

     あわてん坊

 

 平次の家。  事件を知らせに八五郎が、駆けこんでくる。

 

八「親ぶ〜ん!(家のなかに入ろうとしたとたん、敷居につまずき、ころぶ)あ痛痛、あ痛ぅ〜、お痛ぇ、あ痛ぇ、うわぁ〜(勢いあまって、長火鉢の上の茶壷を落とす)」

平次「(煙草をふかしていて)おぅおぅ、何してぇんだ! 騒々しい奴だな、えっ、鳴りもの入りじゃねぇと入ってこられねぇのかよォ!」

八「親分の敷居は、危ねぇや。向こうずねを嫌っていうほどぶつけちゃって。あ痛痛」

平次「バカヤロ〜!」

八「はっ?」

平次「てめぇのあわてものを棚にあげやがって、人の家の敷居に因縁つけんのかよ、えっ!おい、それとも何か後ろ暗いことでもして、敷居が、高くなったのか!」

八「(驚いて)あっ、いや、な、なにもあっしゃね〜」

 

 お静が来る。

 

お静「ふふふ、冗談よ。八つあん、うちの人はね、今朝からずっと首を長くして待っていいたのよ。二、三日、八つあんが、顔を見せないともう、寂しくていけねぇ〜って」

八「ヒヒヒヒ、ひどいよ、親分、驚いちゃった。いきなり、ポンポンポンってくるんだもん、へへへ」

平次「(平静になって)おい、ところで何か事件か?」

八「へっ、湯島天神の崖下でね、青蛙の伝兵ヱって男が、死んだんですよ」

平次「何を! 青蛙の伝兵ヱ!」

八「へい、強請、たかりで、飯を食ってる小悪党ですがね、この野郎、また蛙みたいにね、手足をおっ広げてね(手を広げてみせる)」

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  お静が、お茶を運んでくる。 平次と八五郎、将棋を指している。

 

お静「次郎吉さん、今頃どこらあたりまで行ったかしら」

平次「ん〜ん」

お静「みんなの心に美しいものを残して渡り鳥みたいに北の国へ帰って行ったわね」

平次「え〜、びっきい、びっきい、いつ死んだと〜(駒を置く)」

八「夕べ、酒飲んで、今朝死んだ〜と……あら!王様、死んじゃった」

平次「アハハハ」

 

 街道。  お京、猪之助、子供たちが、故郷に帰る次郎吉を見送っている。

 

子供たち「さようなら、次郎吉のおじちゃん、さようなら、さようなら、次郎吉のおじちゃん、さようなら」

次郎吉「おいよォ〜」

子供たち「さようなら、次郎吉のおじちゃ〜ん」

 

 次郎吉、手を振り、おじぎをし、街道を歩いて行く。

251話 2月24日 かどわかし 潮万太郎 二瓶秀雄 八木孝子

 

 札差丹波屋の娘、お咲が、かどわかされた。身代金を持参した丹波屋の前に現れた、かどわかし犯、音吉。音吉の目当ては、金でなく、丹波屋の命だという。音吉から父、丹波屋への恨みを聞かされたお咲は、愕然とする。丹波屋は、正体を知られた音吉を闇に葬ろうとするが……。

 

 ゲスト  潮万太郎さん(丹波屋重左ヱ門)、二瓶秀雄さん(音吉)、八木孝子さん(お咲)

 

 万七親分、平次親分をあげたり、さげたり……

冒頭、切り取り(人を殺して、お金や物を奪うこと)浪人との捕り物中、万七の危ういところを平次が助けます。

平次「三輪の、危なかったな」

万七「余計な手出しを! やられたようにみせて、隙をつく策略だったんだ」(強がり!)

平次「おみそれしたぜ、おい」(寛大!)

 

中盤、冒頭の切り取り浪人が、下手人でない証拠は、音吉を捜すこと。

平次「音吉には、洋弓を使う仲間がいる。矢場で聞きこみゃ、何かがわかるはずだ(と、万七に音吉の人相書を渡す)」

万七「(涙ぐんで)ありがてぇ、やっぱり、持つべきものは、友だなぁ」(平次をもちあげる)

 

ラスト、下手人に縄をかける万七。

万七「御褒美がでたら、おすそわけするぜ」(偉そうに〜! でも万七らしい、不器用なお礼の言葉かも)

 

 平次は、音吉の丹波屋殺人未遂と娘のかどわかしの罪を見逃しました。

 

 かどわかされた当初、お咲きは、ずい分、気が強い娘と思いましたが、事情がわかってからは、神妙になりました。

 

 

     ラストシーン  

 

 尾張屋の庭。  捕り物のあと。 

 

万七「(丹波屋に縄をかけ、平次に向って)御褒美がでたら、おすそわけするぜ。じゃ、旦那(同心)」

お咲「(丹波屋に駆け寄り、万七を見つめる)お父つあん! お願いです。せめて、お白州まで、お父つあんの世話をさせてください」

 

 万七、平次の顔を見る。 頷く平次。

 

万七「いいだろう。悪い奴でも、血のつながった父親だ。目をつぶろう。さっ」

清吉「さぁ、行くんだ」

 

 万七、清吉、捕り方、丹波屋が、去る。

 

音吉「(平次のそばに来て)親分、あっしも、お縄をちょうだいします(両手を差し出す)」

平次「なぁ、八」

八「へっ」

平次「丹波屋の死罪はまぬがれねぇところだ。誰かが、お咲ちゃんを励ましてやらなくっちゃなぁ」

八「へい、誰かが、ねっ」

 

 平次、音吉と目を合わせないようにして去る。 八五郎、音吉の胸をポンとたたき(お咲ちゃんと上手くやれよって感じ)去る。 佇む音吉。

252話 3月3日 地獄街道 内田良平 御木本伸介 伊達三郎

 

 凶悪犯、常五郎を佐渡まで護送するという、危険な役目についた平次。囮の先発隊は、常五郎の仲間に全員殺される。平次は、たったひとりで、常五郎を護送しなけらばならない。道中、様々な手段で、常五郎の仲間が、平次を襲う。しかし、仲間は常五郎の命も狙っているようだ。佐渡に近づくにつれ、常五郎は人間性を取り戻し、平次との友情が芽生えていくが、常五郎には、二度と会えない定めが待っていた。

 

 ゲスト  内田良平さん(常五郎)、御木本伸介さん(世良修平)、伊達三郎さん(蜂の陣十郎)

 

 #95「一本の命綱」と似ていますが、今回の方が、はるかにハードです。凶悪犯を佐渡まで、護送するという大役を引き受け、道中、数々の困難を経て、常五郎と平次の間に芽生えた男の友情物語、アクション編。

 

 黄表紙(江戸後期に出版された大人向けの滑稽な絵本。表紙が黄色だったので、こう呼ばれる)に夢中になっている親分……こういう一面もあっていいよね。

 

 この大役に気丈にふるまっているものの、お静は、平次の前で泣き崩れます。平次のもとへ行きたい気持ちをおさえ、雪の中でのお百度参り。 お静が平次に渡したお守りが平次の命を助けます。

 

 平次の優しさ、心意気。 たとえ凶悪犯でも、顔をふいてやったり、牢の常五郎に寒かろうと布団を差し入れたり(番太があきれていた)、常五郎が、高熱をだせば、自分の体で温めてやったり(この場面は、何だか見ていて恥ずかしかった……)。

 佐渡の与力世良に対する啖呵がかっこよかったです。

 ラスト、常五郎の仲間との立ち回り。平次の左手と常五郎の右手がつながれているので、たいへん。危ういところ、与力の世良が、現れ助けます。常五郎が、平次の腰から銭をとり、ニッとお互い笑うところがよかったです。連携プレーで投げ銭。平次は次の投げ銭を口にくわえてました。

 

 常五郎を引き渡す前夜、与力世良宅で、最後の酒をくみかわします。世良の粋な計らいがいいですね。

 

 

     護送の朝。

 

 平次の家。  平次、神棚に参っている。 お静が、外から帰ってくる。

 

お静「あら、もう起きていらしてたんですか」

平次「どこ行ってたんだ。こんな早くから」

お静「おまえさん、どうか、これを(お守りを差し出す)」

平次「(お守りを受け取って)観音様のお守りだな」

お静「おまえさん……」

平次「お静、伊佐の旦那の奥様はな、今月が、産み月で、今日、明日にでも、赤ちゃんが……」

お静「わかってます。それでも旦那は、お立ちになったんだから、おまえもめそめそするんじゃねぇ、こう、おっしゃりたいんでしょ? めそめそなんか、しちゃいません。私、八つあんにだって、お弓ちゃんの前にだって……でも、でも(涙ぐむ)今の今、ふたりっきりのときだけ……(うなだれる)」

平次「お静……」

お静「(平次のそばに寄って)おまえさん、どうぞ、御無事で」

平次「こいつ(お守り)を肌身離さず、持ってくぜ(袖口から懐に入れる)」

お静「(涙をいっぱいためて)おまえさん……」

平次「なんて顔、するんだい! 新潟まで、行って帰って、二十日あまり。あっという間じゃねぇか、ハハハ。まさか、おまえ一人残して、死にゃしねぇし」

お静「ほんと? ほんと? おまえさん!」

平次「(頷く)ハハハ、ぼちぼち支度だい!」

お静「はい」

 

     平次の心意気を責任感

 

 常五郎の仲間に襲われた平次と常五郎。崖下に落ち、、ようよう、這い上がると佐渡の与力、世良修平が、常五郎のために多くの人たちが、犠牲になったので、常五郎を斬らせろと平次にせまる。

 

平次「存念が、わかりませんね。釈迦に説法もいいところだが、旦那、旦那方やあっしら、何のために十手、捕り縄を持たせて頂いているんでしょう? 殺されたら殺しゃぁいいってぇなら、こんなもの、いりゃしねぇ」

世良「それほど、手柄が立てたいのか」

平次「情けねぇことをおっしゃいますねえん、旦那、佐渡じゃどうか知らねぇが、江戸の十手持ちゃ、けちな手柄と引き換ぇとするような安っぽい命は、持ち合しちゃいねぇんだ。その大事な命でも、天下の御法を守るためには、惜しくはねぇ。千石坂で、斬り死になすった、皆様のためにも、こいつ(常五郎)は、金輪際、渡せねぇ。どうでもとおっしゃるんなら、まず、あっしを斬ってからになさいまし」

世良「負けたよ」

 

 常五郎が、だらしのない役人だというと、平次は「ちっとは、人間らしくなったらどうだ!」と言ってビンタ。のちに世良は、平次の意見に感謝します。常五郎は、徐々に人間の心を戻していきます。

 

 湯沢代官所で、代官が、この先は、江戸ものには、無理だから、二、三日ゆっくりして、江戸へ帰れ、後は我々が、護送すると平次を労います。

平次「参ります。這ってでも参りますから、どうか、あっしにやらせておくんなまし。覚悟はいたしております」

 

 

     お静の心意気

 

 平次の家。 樋口が、湯沢に行くというので、お静の気持ちを察してか、お弓が、お静も連れて行ってと樋口に頼む。わからなきゃ、朴念仁とまで、言われた樋口は、お静を連れ行こうとするが

お静「そんな、はしたないこと……うちの人は、遊びに行ってるんじゃないの。御用に命をかけている。その留守を守るのは私の役目。亡くなった伊佐様の奥さんに心情を思うと出来ない……うちの人に叱られる」

樋口「平次が、羨ましい」

 お静の代わりに八五郎が、同行します。

 

 

     佐渡与力、世良の粋な計らい

 

 世良宅。 平次、頭に包帯。左腕を三角布で吊っている。常五郎の引き渡し前夜。世良、平次と酒を酌みかわそうとするが、平次が常五郎を気にしているので、常五郎の縄を解き、平次とふたりきりにする。

 

世良「江戸から百里の道をくっついてきたおまえたちだ。最後の夜とありゃ、野郎と水入らずになりてぇだろう。俺はあっちで、飲んでるからな。明日の朝は早いぞ(去る)」

 

 平次、驚いたよう、その計らいに、頭を下げる。涙ぐみ、洟をふく。

 

平次「(常五郎に)おい、こっち、来な」

 

 平次、常五郎に酌をする。常五郎、目をつぶって、江戸からの道中で起きたことを思い出している。

 崖から落ちた時、平次が必死に助けてくれたこと、高熱を出した時、平次が、自分の体で温めてくれたこと……。

 

常五郎「(一気に酒を飲みほして)親分さん!(両手をついて、涙ぐんで、平次に土下座)」

平次「(涙ぐんで)やっと仲良しになれたのになぁ」

 

 佐渡おけさが、流れる。♪あ〜、雪の新潟 吹雪に暮れてよ〜 佐渡は寝たかよ 灯が見えぬ

 

 

     ラストシーン

 

 常五郎を護送していく世良たち。常五郎の乗った篭をとめ、垂れをあける世良。

 

世良「常五郎、見ろ」

 

 遠くから、平次が常五郎を見守っている。篭の中の常五郎、達者でなというように手をあげ、微笑む。泣いているのだろう、顔をそむける。

 

世良「行こうか」

 

 見送る平次。帰路につく。 樋口と八五郎が、雪道を登ってくる。八五郎の足取りがおぼつかない。

 

樋口「八五郎、どうした? しっかりしろ」

八「へ〜ぇ」

樋口「もう、一息だ。これを越えれば湯沢だ」

 

 平次の家。 地図を見ているお静。湯沢を指さし、神棚をちらっと見る。(心は平次のもとへ)

雪道を下って行く平次。

253話 3月10日 三度笠の男 里見浩太郎 新井茂子 見明凡太郎

 

 四年ぶりに信州から、江戸へ舞い戻った木場の半次郎。木場問屋武蔵屋の番頭巳之吉が、殺され、集金した金も奪われる。そのとき、三度笠の男が目撃され、疑いは半次郎にかかる。半次郎は、武蔵屋の血を引く男だが、家督を弟の孝之助に譲り、家を出ていたのだ。が、武蔵屋を潰そうとしている奴がいるとの情報が入り、巳之吉や孝之助に知らせるために舞い戻ったのだ。しかし、その孝之助も敵の罠に落ちようとしていた。武蔵屋はどうなっていくのか。

 

 ゲスト  里見浩太郎さん(木場の半次郎)、新井茂子さん(お栄)、見明凡太郎さん(宅兵ヱ)

 

 冒頭、傘をもって、平次を迎えにひょうたんに来たお静、お弓にひやかされます。

 

 ラスト、伊太八になり代わり、三度笠にかっぱからげて、平次登場! 久々の三度笠姿の橋蔵さん! 元祖半次郎! 刀での立ち回り! 相手に「てめぇは誰だ!」と言われ、三度笠を斬られ、平次の顔が現れる。この場面、映画「おしどり道中」のスチール写真にありましたね。里見浩太郎さんも共演じされています。半次郎役を今回は、里見さんに譲ったのでしょうか、橋蔵さんのアイデアかな。

 

 

     相合い傘

 

 ひょうたんや。 雨宿りか、平次と八五郎が、入ってくる。 そして、お静が傘を持って入ってくる。

 

お弓「姐さん、おあいにく様、せっかく親分さんと相合い傘で帰ろうと思ったのに、雨がやんでさ」

お静「嫌なお弓ちゃん」

お勝「八五郎さん、今夜は親分と姐さんのおごりだよ」

八「へっ、ありがてぇ。今夜は、親分と姐さんと合わせて、イヒヒヒ」

平次「え〜っ、バカ野郎〜、(お静に)つまらねぇときに顔、出しやがって」

 

 皆、大笑い。

 

 

     ラストシーン

 

 八幡の境内。  捕り物の後。

 

半次郎「親分さん」

平次「これで、おめぇが江戸へ出てきた用は、済んだはずだ。武蔵屋を潰しにかかっている信濃屋の名前を一族の恥だと最後まで言わなかった心根、平次、しっかり、この胸に受け止めたぜ」

半次郎「親分さん」

平次「だが、半次郎、いかに武蔵屋を守るためとはいえ、おめぇは、信州で何人ものあいつらの仲間を傷つけているはずだ」

半次郎「わかっておりやす。(両手を差し出す)親分さん、お縄を」

平次「俺には、かける縄はねぇ。信州へ帰ぇって、今までの垢をきれいに洗い落してきな」

半次郎「親分さん……」

 

 平次が、信濃屋に目をやる。 正座して、うなだれている信濃屋。

 

 木戸。  平次、お静、八五郎と孝之助、お栄夫婦が半次郎を見送る。 半次郎、皆に頭を下げ、去っていく。

 

孝之助・お栄「兄さ〜ん(後を追おうとする)」

平次「(二人を制して)おっと、行くんじゃねぇ」

孝之助「でも」

八「おい、心配するねぇ。え〜、半次郎が、木曽路に着く前にはな、今回の一件を記した書状が、土地の代官に届いているはずだ」

お栄「それじゃ、兄さんは?」

お静「軽いお咎めで済むそうよ」

八「ん」

お静「よかったわね」

八「へへへ」

 

 往来を歩いて行く半次郎。

254話 3月17日 虎の穴 佐藤允 今井健二 吉田義夫

 

 同心樋口から、五年前の越前屋皆殺し事件の下手人、鉞(まさかり)組の一味を子安で見かけたという情報を得た直後、平次は大山詣りの誘いを受ける。子安は、通り道、平次は、因縁を感じて「虎穴に入らずんば……」とばかり、大山詣りに加わる。早速、同行した、七兵衛の娘、お京が、平次に刃を向ける。が、平次から、七兵衛殺しの真相を聞かされたお京は、一味の残党が、平次を狙っていると警告する。しかし、時すでに遅く、ふたりがいる小屋が、一味と大勢のやくざが包囲していた。

 

 佐藤允さん(的場陣内)、今井健二さん(カミソリの伝次)、吉田義夫さん(竜源)

 

 鉞の七兵衛の娘、お京が、クレジットに出ていませんでした。何と言う名の女優さんでしょうか。あれだけ画面に出ているのに……ミスでしょうか。

 

 「大山詣り」講中姿の親分が、見られました。 大山詣りは、遊びの要素もあって、実際は、職人風の仕事着で、普段着に近いものだったようです。

 

 冒頭、為吉が、鰯を焼いていましたが、やっぱり、やもめみたいです。

 

 今回は、平次とお静の台詞が面白かったです。

出がけに平次は、相撲のふれ太鼓を聞いて「それじゃ、こっちもはっけよいだ。行ってくるぜ」と。

 傘張り浪人を「バリバリ(傘を張るから)とね」と言って励ましたり(今だったら親父ギャグ)

 お静は今月の給金が、なくても(平次は、賞金稼ぎの辻斬りに財布ごとあげちゃったから)「おあしが、なくても怪我さえなけりゃ、まぁみてて、やりくり算段、七つ屋(質屋)通いは、平気、平気、私の腕のみせどころ」と言ってけろり。陣内さん、早くお金を返してね。

 

 

     ラストシーン

 

 大勢のやくざ相手にお京まで、人質にとられ、大ピンチの平次。そこへ的場陣内とお静が来る。

 

平次「旦那!」

お静「おまえさん!」

平次「お静!」

陣内「平さん!」

平次「このお姿は?」

陣内「喜んでくれ、藩に帰参が、叶ったのじゃ、さてと、快い剣の舞いじゃ」

平次「おぅ!旦那! 斬っちゃいけませんぜ!」

陣内「あぁ、心得た」

 

 陣内、峰打ちで、悪人どもをやっつける。

 

平次「旦那〜」

陣内「平さん」

 

「お〜い」との声、土地の役人と捕方が、やってくる。

 

平次「田舎のお役人は、ゆっくりしたもんだ」

お静「おまえさん」

平次「おぅ、おめぇ、何しに来たんだ」

お静「おまえさんが、山から落ちたからって……」

陣内「こいつらの使いが、行きよったんじゃ。人質にするつもりだったらしいな」

平次「ちぇっ、御用聞きの女房が、甘い手に乗りやがって……」

お静「違う! そりゃ一時は、びっくりしたけど、でも道順が変わったのも変だし、そうだとしても、時刻から察して、まだ山へは、差しかかっていやしない」

平次「だったら、どうして!」

お静「けど、おまえさんの身の上に何かが起きたんだ、もしや、もし、そのときは、一緒に死ぬつもりで……」

 

 平次、しょうがねぇ奴だなという表情。

 

陣内「平さんよ、何か言うてやらんかい。好きだとか、惚れているとか」

平次「(困惑顔)へ〜え……(土地の役人たちに)御苦労さまで」

役人「いや、御苦労、御苦労」

平次「こいつらでございます」

役人「うん、あぁ、よし(悪人どもが、皆倒れているのを見て)うん? 何じゃこれは。もう片付いたのか?」

平次「(申し訳なさそうに)へ〜え」

陣内「ハハハハ」

 

 山への階段か、かなり長い石段。陣内、お京、平次、お静がいる。

 

平次「じゃ、旦那、こいつ(木刀)を納めて参りますから」

陣内「あぁ、平さんよ。はよ、戻ってくるんじゃ、でないとお静さん、寂しがっていかん」

お京「ふふふ」

お静「まぁ」

 

 平次とお静、顔を見合わせる。

 

平次「さぁ、お嬢さん」

お京「はい」

 

 平次とお京、石段を登って行く。陣内とお静が、見送る。

255話 3月24日 狂った武士道 菊ひろ子 小林勝彦 不破潤

 

 落石で、俵藤主水が、死んだ。平次は、死因に疑問を持つ。死体確認に来た、主水の妻、浪江の気丈すぎる態度もひっかかる。お家再興、武士の体面に固執する、父、俵藤外記、何か後ろめたさのある道場仲間の新庄鉄馬。影のように様子を窺う町人は、何者? 平次は人間性を失った、がんじがらめの武家社会を目の当たりにする。

 

 ゲスト  菊ひろ子さん(俵藤浪江)、小林勝彦さん(新庄鉄馬)、不破潤さん(俵藤主水)

 

 平次の嫌いな侍社会の非情、理不尽、利己主義など描いたエピソード。

 

 八五郎、大好きなお酒になかなか、ありつけず、思わず「ついてねぇ〜」と。でも通夜に出る酒を当てにするとは、不謹慎ですよ。

 

 家名大事とお家再興のために、心をひとつにしてきたつもりの俵藤家。そのためには、手段を選ばぬ主水。結局、再興のために家族が崩壊してしまうとは、皮肉です。

 

 万七親分、音を上げたふりして、平次をだますとは、したたかですね、ほら、平次の跡をつけようとしたら、見失っちゃって。

 

 

     平次の啖呵

 

 俵藤主水の家。 侍を捨て、妻の浪江と逃げようとする主水。

 

平次「両刀を捨てて、幸せになれるんなら、町人は、万、万歳だ。ねぇ、人の道ってぇのは、そんなもんじゃねぇでしょ」

主水「やかましい! 町人風情が、出る幕じゃない!」

平次「ほ〜う、町人風情ですかい。本音をお出しなすった。お侍なんてぇのは、勝手なもんですね。犬、猫じゃあるまいし、女房を譲るの、譲らねぇの、他人事ながら、腹が立ちましたぜ。その上、てめぇの恨みのために通りがかりのお侍まで、巻き添えにして殺した。あんたっていう人は、なんていう人だ!!」

 

 

     ラストシーン

 

 俵藤外記の墓。 浪江が、墓参り。そこへ平次とお静。

 

お静「奥様、私たち貧しいけど、なんか、こう、血の通ったようなって、いうんでしょうか、人間らしい毎日を送っています。(浪江に近づき)今からでも、遅くはありませんよ」

浪江「今からでも……」

 

 お静が、浪江の後ろに回ると新庄鉄馬が、姿を現す。 目をふせる浪江。

 

お静「奥様」

浪江「せっかくのご厚意では、ございますが」

お静「えっ?」

浪江「あの方は、土壇場になって、約束を反故になすった。武士なればこそ、やっぱり士官が、大事。武士とは、人の世の情けも約束も一切を踏みにじって、省みないとようやく私……あなた方にお会いして、初めて別の暮らしがあることが、わかりました。そのことに早く気が付いていれば、夫をあのように狂わせずに済んだかもしれません」

鉄馬「浪江どの」

浪江「(涙を拭き、鉄馬に近づく)鉄馬様、お侍の世界とは、もう縁が切れた私。あなたとも、もうお会いすることもございません」

 

 浪江、平次とお静に会釈して、去っていく。

 

平次の心の声「お静、今の言葉を聞いたかい。あの人は新しい世界で、きっとりっぱに生きていくぜ」

256話 3月31日 辻占せんべい 大坂志郎 永野裕紀子 芦田鉄雄

 

 社の片隅で、辻占せんべいを売る、盲目の少女、お直。今日もまた、煙草売りの亀八が、せんべいを買いにきた。このふたりの間には、相手を思いやるあたたかい交流だあった。

しかし、亀八の正体は、押し込み強盗黒つむじの一味。世話好きの煙草売りとして目当ての店の内情を探る役目だったのだ。お直が、十二年前の大火事で、はぐれた両親は、湊屋だと亀八は告げる。お直を利用する気なのか。亀八の真意はどこに。平次は、亀八の心底にある情けを感じ取っていた。

 

 ゲスト  大坂志郎さん(亀八)、永野裕紀子さん(お直)、芦田鉄雄さん(般若の仁造)

 

 盲目の少女と悪人との心の交流を描いた人情編。

 

 お直を演じる永野裕紀子さん、六年目から、ひょうたんやの看板娘、お弓に代わっておゆきとして、登場します。

 万七は、亀八に騙されたと思いながらも、後家さんの話(万七の縁談相手)が忘れられなくて面白かったです。

 

 亀八が、怪しいと家を訪ねた平次、そこへ万七が来ます。平次は、亀八の世話好きを利用して万七をさかなに亀八の気持ちに隙をつくり、尻尾を掴もうとします。「万七は、五年来のやもめ暮らし……」と平次は言いますが、二年目(今から三年前)の#93「万七手柄」では、奥さんがいる感じでしたよね。

 

 

     ラストシーン

 

 亀八の墓。 湊屋とおのぶが、墓参り。 そこへ、平次と八五郎。墓前に辻占せんべいが、供えてある。

 

おのぶ「親分さん」

平次「どうやら、おいらの足音を覚えられたようだな」

八「へっ……おっ? 辻占せんべい。こりゃいいや。草葉の陰で、きっと亀八さんも喜んでいるよ」

おのぶ「毎日持ってくると亀八さんに約束したところです」

八「決まって、大吉なんだろう?」

 

 頷くおのぶ。

 

湊屋「それでは、親分、これで」

平次「おぅ」

湊屋「(おのぶに)さぁ」

 

 帰って行く湊屋とおのぶ。見送る平次と八五郎。(見送っている間、平次が、腰の投げ銭を握ったり、放したり、ずっと気にしていたよう、癖になっちゃったのかな)

257話 4月7日 死霊のお告げ 水上竜子 浮田左武郎 藤岡重慶

 

 材木問屋才賀屋彦兵ヱ。おかん婆さんが、行方知れずの長女、お藤の霊を呼び出して息子がいると告げたから、さぁ、たいへん。跡継ぎに決まっていた養子の文造をそっちのけで孫捜し。大番頭が、孫の彦太郎を探し出す。そんなとき、彦兵ヱが、殺され、疑いは文造に。一方、平次の家にお母さん捜してと、幼い与一が、訪ねてくる。意外にも才賀屋殺しと与一の母と係わっていることが、判明する。

 

 ゲスト  水上竜子さん(お滝)、浮田左武郎さん(才賀屋彦兵ヱ)、藤岡重慶さん(仙太)

 

 祈祷師(霊(たま)よせ)まで丸めこんで、店の乗っ取りをしようとした番頭の強欲さを描いたエピソードですが、母親の情けや子供のけなげさが、盛り込まれています。

 

 祈祷の場面は、いくつかのエピソードに出てきますが、どれも何か可笑しくて、滑稽にみえてしまいます。不謹慎ですけど。

 

 

     ラストシーン

 

 才賀屋の材木置場。  木戸から、魚とり網を持って、与一と彦太郎が走り出てくる。その後ろに文造、お菊、平次、お静、八五郎。

 

与一「あの川へ行って、魚、捕ろう」

彦太郎「行こう、行こう」

与一「うん」

 

 川へ走って行く与一と彦太郎。

 

文造「親分さん、一時の迷いで、ご迷惑をおかけしました。与一が、お藤さんの子供とわかりゃ、私も納得いたします」

お菊「私たちには、子供もありませんし、与一を養子にして、お父つあんの意志どおり、ゆくゆく才賀屋の跡目は、あの子に継がせます」

平次「おぅ、そりゃ結構なことだ。危険を悟って、いち早く子供を逃がして、命を落としたお藤さんもきっと浮かばれる」

お静「(川の方を見て)あっ」

お菊「あっ」

 

 文造とお菊が、川の方へ走って行く。川へ入ろうとしたのか、与一と彦太郎、着物の裾をまくっている。

 

お菊「彦太郎! 与一!」

文造「そこに入っちゃだめだよ」

お菊「危ないですよ」

お静「よかったわねぇ、おまえさん、お滝さんが、つとめを終わって戻るまで、彦太郎ちゃんは、お菊さん夫婦が、引き取って面倒をみることになって」

平次「おぅ、見ねぇ、子供の世界にゃ、偽物も本物もねぇや。今のあの子供たちにとっちゃ、才賀屋の身代と鮒一匹取り替えても惜しいと思っちゃいねぇだろう」

 

 文造とお菊、子供たちと楽しそうに魚とりをしている。 それを見守る平次、お静、八五郎。

258話 4月14日 どくろ駕籠 長山一夫 桜田千枝子 原健策

 

 駕籠甚の宝泉寺駕籠から、白骨化した死体が出てきた。身元は、着衣から、浅野屋の番頭兼吉と判明。しかし、兼吉の女房、お巻の行動に平次は、不審を抱く。平次は、お静のことばをヒントに死体は、兼吉ではなく、行方知れずの駕籠かき、弥八と確信する。兼吉は生きているのか、駕籠甚を巡る怪奇な謎に平次の冴えた推理がせまる。

 

 ゲスト  長山一夫さん(弥八)、桜田千枝子さん(お巻)、原健策さん(甚兵ヱ)

 

 ラスト、下手人を捕まえ、平次が番屋に来て、樋口と会い、平次が、事件の説明をするという設定。かなりの長いシーン。その直後に平次の家の場面に代わります。いつもと違う方法だと思いました。

 

 お静「死体は、兼吉ではないのでは?」という言葉が、ヒントになり、事件は一気に解決に向かいます。お静のお手柄。

 

 娘可愛さとはいえ、人殺しまでしてしまう父親、甚兵ヱ、親ばかが過ぎますね。

 

     宝泉寺(法仙寺)駕籠…普通、四手(よつで)駕籠と呼ばれる竹の柱と割竹を編んだ簡単な駕籠を使います。時代劇で大名が、使っているような四方板張りで、屋根は黒塗り、三方に簾が、掛っているようなものを宝泉寺駕籠といい、四手駕籠よりも高級な乗り物として料金も高くなっていました。(HPより)

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。 お静、お銚子を運んでくる。

 

お静「ねぇ〜ぇ、そのお巻さんと兼吉さんは、どういう風に知り合ったんですの?」

 

 お静、平次にお酌(徳利のはかまが落ちた!)

 

平次「ふたりは、同じ八軒町で育った幼馴染みだ。嫁に行って一年になるや、ならずで亭主に死に別れたお巻が、兼吉とどっかの往来で、出会ったのがことの始まりさ(一杯、飲んで)逢瀬を重ねるうちに、男も女も離れがてぇ仲になって、娘は親に打ち明け、親は娘不憫さに男を口説いて女房と別れさせたんだ」

お静「まぁ、それじゃ、兼吉さんのおかみさんが、あんまりかわいそうじゃないですか」

平次「な〜に、手切れ金を五十両も受け取って、あんな男に未練はねぇとさ、女なんてもんは、みんな、そんなもんかなぁ(お静を見て)おぅおぅ、おめぇも五十両手にはいりゃ、俺なんか、さっさとこっから、出てってもらった方がいいって、言うんじゃねぇかァ? おぃ」

お静「まぁ、この人ったら! ねぇ、八つあん」

八「へっ」

お静「うちの人は、たった五十両の値打ちしかないのかしら? 私は、千両も万両も値打ちのあるご亭主だと思っていたのに、あ〜あ、情けない!」

八「ハハハ」

平次「うめぇこと言ってやがる、ハハハ」

 

 八五郎と平次に酌をするお静。

259話 4月21日 七年目の十手 太田博之 江夏夕子 加賀邦男

 

 南部藩若槻英之進は、同心だった父の仇を捜しに江戸へ出てきた。仇の顔を知る大沢を訪ねるも何者かに殺されていた。危く下手人にされるところだった英之進。平次と平次の知り合いの娘、お竜に助けられ、七年目にして、親の仇、佐川伝十郎をお縄にすることができた。国元へ帰る英進と大沢の娘、八重。その陰でお竜の淡い恋は消えた。

 

 ゲスト  太田博之さん(若槻英之進)、江夏夕子さん(お竜)、加賀邦男さん(国分屋金右ヱ門)

 平次は、下手人を捕えるだけでなく、若者も立ち直らせます。お竜は、不良少女だったのですが、平次が意見して、立ち直りました。そして平次から「どんなことでもいい、人に喜ばれるいいことを一遍だけでもしてみろ」と言われ、英之進の手助けをしようとがんばります。淡い恋は消えますが。

 

 最初は、英之進は、町方の手は借りぬ(父親が同心だったというプライドもあったのでしょう)と突っ張っていましたが、やっぱり、平次の手助けが必要でした。ラスト、平次は、自分の十手を英之進に投げ、仇の伝十郎を捕まえさせました。

 

 

     意外な仇の正体

 

 番屋。  英之進がいる。そこへ、平次、続けて八五郎が、駆けこんでくる。

 

八「親分! 伊勢屋の奴ね、あれからすぐにあわてて、両替商国分屋金右ヱ門の家に行きました」

平次「やっぱりそうか」

英之進「平次殿」

平次「英之進さん、七年前、商家に押し入って、あなたのお父様を斬ったのは、佐川伝十郎だが、そのとき、一緒に国元を逐電した男は、いませんでしたか」

英之進「押し入られた油問屋の番頭、嘉助と申し者が、内通、手引き、佐川共々姿を消しております」

平次「これで、読めた。飛脚問屋伊勢屋は、その嘉助だ。奴は、あなたから飛脚を頼まれたとき、わざと時を稼いでおいて、一角を使って、あなたより先回りして、大沢を殺した。両替商国分屋金右ヱ門は、その佐川伝十郎だ!」

英之進「平次殿、かたじけない」

平次「いや〜、礼には及びません。これが、あっしらの仕事ですから」

 

 そこへお竜が、決まり悪そうに入ってくる。

 

平次「どうした?」

お竜「心配で……」

英之進「お竜、おまえにも礼を言わなきゃならんな」

お竜「そんなこと……あたいなんか、何のお役にも立てなかったんですもの」

英之進「違う、おまえは、見も知らぬ私に心から暖かい力添えをしてくれた。私は、それでどれだけ励まされたかわからん」

 お竜、思わず顔をそむける。

 

平次「お竜、欲得ずきでなく、人のために尽くそうという今の気持ち、いつまでも忘れるんじゃねぇぞ」

 

 お竜、深く頷き、涙ぐむ。

 

平次「さぁて、これからが、最後の仕上げ。相手もこっちの動きを知ってるはずだ。どっちが先手をとるか……」

 

 

* ラストシーン

 

 ひょうたんやの前。 旅姿の英之進と八重。国元に帰るのだろう。平次と八五郎、お弓が、見送る。叶わぬ恋に用心桶の陰から、英之進を涙ながらに見送るお竜。平次たち、お竜の気持ちを知ってか知らずか、ほっとしたように店の中に入る。

260話 4月28日 親子の絆 柴田p彦 吉川佳代子 須藤健

 

 呉服商河内屋の一人息子、由次郎が、行方知れずになった。そして、身代金五百両の脅迫状が、届く。どこでどう間違ったのか、河内屋の番頭から、身代金のことを聞いて驚いたのは、当の本人、由次郎。そして、身代金を預かった番頭が、殺されてしまった。疑いは、大工の岩五郎、由次郎が訪ねた男だが、その息子、松吉にかかる。捕えられた松吉に由次郎は、「兄さん!」と叫んだ。

 

 ゲスト  柴田p彦さん(由次郎)、吉川佳代子さん(お浅)、須藤健さん(河内屋庄右ヱ門)

 

 今回、万七は、平次にひとあわも、ふたあわも、ふかせてやると意気込んだものの、ドジばかり。誤認逮捕は、するし、清吉と呑気にゆで卵なんか食べていて、見張りを怠って肝心の男を見逃します。松吉を捕まえた理由を樋口に説明しても(身振り手振りで面白かった)通じず、樋口は「どうも解せねぇな」と言って番屋を出ていく始末。

 

 平次の聞き出し上手が光ってました。松吉の家を訪ねたお節に何気なく話しかけ、松吉の恋人と確信。 平次を狙った短刀に柿渋の匂いがするのに気づきます。松吉の前の家が、葛籠職人(柿渋を下塗りや防水に使う)なので、おかみさんにこれまた、何気なく短刀を渡し、そこの家の物とわかり、下手人とあたりをつけました。

 

 経緯はどうあれ、由次郎の実父、岩五郎と息子の松吉は、由次郎の生活を羨むことなく、本当にいい人でした。

 

 

* ラストシーン

 

 平次の家。

 

八「八五郎、帰ぇりやした」

 

 平次の肩を揉んでいるお静。平次は、煙草。

 

お静「八つあん、帰ったわ」

平次「はん、おぅ」

八「(平次たちの所へ来て)あ〜ふぅ〜」

お静「御苦労さん」

八「へへへ、親分、へへへ、親分ね、三輪の親分、へへへ、すっかりしょげちまいまして、あの大きな図体を端っこの方に、この、しょんぼり、顔もあげられねぇんですよ、へへへ」

平次「松吉は、どうした?」

八「あの、松倉町まで、送ってきやした」

平次「ほぅ、おぃ、お静、一本つけてやんな」

お静「はい。そうだ! 八つあんに鰹のおいしいのが、とってあるのよ」

八「いや〜、こりゃどうも、へへへ」

 

 お静、お勝手へ。

 

八「今日はいい日だなぁ、イヒヒ」

平次「おい、岩五郎は、誰かみてやってんのか」

八「へっ、お節ちゃんが、ついておりやした」

平次「そうか、ありゃ、いい娘さんだ」

八「ええ、へへ。親分」

平次「ん?」

八「河内屋の由次郎が、松吉を兄さんと呼んだり、岩五郎をお父つあんと呼んでましたが、ひょっとしたら、由次郎は……」

平次「余計なことを詮議がましく、しゃべるんじゃねぇや」

八「へっ? へい」

平次「つまらねぇことをほじくり出したりして、誰がどんな泣き目をみるとも限らねぇや、他人事だ、そんなことは、ほっとくんだ、いいか」

八「へい、わかりました」

お静「(鰹の刺身を運んでくる)はい、おまちどうさま」

八「いや〜、へへへ」

お静「今ね、鯛のあらいも作ってますから、そのつもりで飲んでてちょうだい」

八「へへへ、ごちそうになりやす。いい姐さんですね。よく気がついて、気持ちが温たかで、へへ、親切で、べっぴんで……(手酌で飲み始める)親分、冥加につきますね、へへ」

平次「バカ野郎、こんなときに限って、おめぇは、もう歯の浮くようなお世辞を言いやがって。いくら俺にそんなこと言ったって、何も出やしねぇよ」

八「え〜え〜、姐さんにもらいますよ」

平次「何だと!」

八「いえ、こっちの話で……わさびをつけて、じゃ、ごちになりましょ」

平次「ああ」

 

 八五郎、刺身を食べる。

 

八「(わさびが)きいた、きいた〜あ」

 

 八五郎、わさびが、効きすぎて、もがく。平次、大笑い。

261話 5月5日 母子つばくろ 藤間紫 大川辰五郎 高田浩吉 有吉ひとみ

 

 はるばる母をたずねて、上方から出てきた市松とおすみ。平次が、やっと見つけた市松の母、お斗勢は、会おうとせず、子供はいないとさえ、言い張る。目の前にいるわが子に母と名乗れぬ深い悲しみを背中に彫られた弁天が、物語っていた。しかも、今や、お斗勢は、女賊弁天のお駒として、お白州で裁かれようとしている。お斗勢の無実を命がけで、奉行に訴える平次。証人さえ、来れば……。やがて、証人、彫師の彫常が、来るが、その口から出たことは……。

 

 ゲスト  藤間紫さん(お斗勢)、大川辰五郎さん(市松)、高田浩吉さん(榊原右京)、有吉ひとみさん(おすみ)

 6年目、突入。オープニングが少し変更。クレジットのバックも静止画像から、動画へ。途中、銭マークが出る時の曲のアレンジが変わりました。

 

 橋蔵さんと長男、大川辰五郎さんのテレビ初の父子共演です。

 

 橋蔵さん、気心のしれた紫さんと息子さんとの共演で、表情が、とてもよかったです。涙ぐむシーンが多かったですね。

 

 鈴が森を通りかかった、おすみと市松。歌舞伎の(幡随院)長兵衛と(白井)権八の話をしていて、雲助と言うと本当に雲助が出てきて、襲われてしまいます。そこへ平次! 権八よろしく(映画「くれない権八」では、権八役の橋蔵さん)雲助をやっつけました。目の前で、かっこいいお父さんを見られて、辰五郎ちゃん、どう思ったのでしょうか。もちろん、誇りに思ったとは思いますが。

 

 お白州シーンで、お斗勢の心境を表現するのに、スポットライトが当たりました。舞台のよう。新しい試みですね。

 

 

     ラストシーン

 

 お白州。 真犯人、文左が、捕まったあと。

 

奉行榊原右京「平次、なろうことなら、今夜、おまえと一献酌み交わしたいところだが、武士とは、窮屈なものでのう」

平次「恐れいります」

榊原「罪なき者に命を賭けたその方の働き、右京、しかと心に留め置くぞ」

 

 平次、涙をためて、榊原を見上げる。

 

榊原「さらばじゃ」

 

 

 平次の家。  旅姿のおすみ、お斗勢、市松が、出てくる。

 

お斗勢「親分さん」

平次「幸せになんなさいよ。この三年分を取り返しなせぇ」

お斗勢「ありがとうございます」

 

 市松を見て、微笑む平次とお静。

 

お静「市ちゃん、いい? あんまり生水を飲まないのよ」

市松「うん」

お静「それからね、夜は早く寝るの、わかった?」

平次「おいおい、よさねぇか、もうちゃんとおっ母さんが、ついていなさるんだぜ「

お静「そうでしたわね……すみません」

お斗勢「いいえ、市松、皆さんにご挨拶して」

市松「うん、おじちゃん、おばちゃん、こっちのおじちゃん(八五郎)、ありがとう(お辞儀をする)」

平次「坊や、元気でな」

 

 八五郎、洟をすする。お静、涙ぐむ。

 

市松「さようなら」

お斗勢「お世話になりました」

 

 お斗勢、市松、おすみが、帰って行く。見送る平次、お静、八五郎。

 

262話 5月12日 黄金の罠 若林豪 梅津栄

 

 一夜のうちに、三人の男が、別々の場所で殺された。三人の共通点が、千両の当たりくじであることを突き止めた平次。しかし、その富くじには、醜い罠が、仕掛けられていた。町人をたぶらかし、命まで奪う者は、一体何者! 平次の行く先々で、様子を窺う占い師の青雲堂も気にかかる。平次は、どうあっても、この下手人は、赦せないと命を張って、敵地へ乗り込む。

 

 ゲスト  若林豪さん(青雲堂)、梅津栄さん(粂の市)

 

 セルビデオ化されたエピソードです。

 

 一番好きな場面は、ラスト、平次が浪人たちに囲まれたとき、「出やがったな〜」と言って、白装束になり、背中に書かれた「南無阿弥陀仏」を見せるところです。「おい、見やがれ、町人の心意気だい!」と。かっこいい。立ち回りも十手で襖や畳を返し(映画「血槍無双」の十平次のよう)かなり、ハード。

 

 敵地に出向くとき、平次は、お静に「今度ばかりは、生きて帰ると思うんじゃねぇぞ」と覚悟の台詞。お静は、悲しみをぐっとこらえて「心置きなく……」と言って支度をします。泣かせます。

 

 八五郎、お弓が、故郷へ帰って嫁ぐというので、がっくり。今回で、お弓の土田早苗さんは、卒業。次回から、看板娘は、(今回のラストに出てきます)おゆき(永野裕紀子さん)になります。

 

 

     お静でさえ……

 

 平次の家。

 

お静「でも、誰かひとりは、その千両を当てるのでしょうね、そんな大金、芝居の文句じゃないけれど、思いがけなく手に入る百両、それが、十倍の千両ですからね」

平次「こわいもんだなぁ」

お静「あら、何が?」

平次「おめぇみたいな、しっかりした女でも、千両、千両というたびに顔の色が変わるぞ」

お静「まぁ、いやだぁ」

平次「そういうもんなんだ、金っていうもんはな。まともな人間をも狂わしてしまう。富くじなんて、いけねぇや。千両なんて、とんでもねぇや、う〜ん(怒ったように煙草をふかす)」

 

 

     覚悟

 

 平次の家。  思いつめた様子で、平次が家の中に入る。

 

お静「えっ、千両、受け取りにですって!」

平次「うん……坊やの為にもな(長火鉢の前に座る)」

お静「素直に渡してくれるでしょうか」

平次「そんな相手じゃねぇだろう。金を受取に、とは、寺社奉行を通さずに神社に乗り込む方便だ」

お静「(驚いて)じゃぁ、おまえさん……」

平次「お静、おりゃ、千両なんて途方もねぇ富くじで八百八町の人々をたぶらかし、挙句、何の罪もめぇ人たちを無残に殺しやがった、今度の一件の下手人だけは、どうあっても赦せねぇ。相手は、恐らく、れっきとしたお侍だろう。おまけに寺社奉行の扱いだ。どっちにしても、おいら町方じゃ、手が出せねぇ。それを承知で、乗り込むからは、お静、今度ばかりは、生きて帰ると思うんじゃねぇぞ」

お静「おまえさん」

平次「お静、てめぇの亭主は、こんなバカな男だ。わかってくれ」

お静「(うつむいて)私……(顔をあげ、平次を見る)バカな亭主をもって、果報者だと思っています。おまえさん、どうぞ、心置きなく……」

平次「(お静を見つめて)おしず、ありがとう(頭を下げる)」

お静「支度をしてきます(立ち上がり、隣室へ。涙ぐんでいる)」

 

 

     心意気

 

 神社。 千両を取りにきた平次と八五郎。浪人どもに囲まれる。

 

平次「出やがったな〜(羽織をぬぐ)おい、見やがれ、町人の心意気だい!(着物も上半身をぬぐと、白装束。背中に「南無阿弥陀仏」と書かれている。十手を取り出し)八、てめぇは、死ぬんじゃねぇぞ!」

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  

 

平次「おい、お静、帰ぇったぜ」

お静「(嬉しそうに)おかえりなさい」

八「はい、ただいま」

平次「(お静の顔を見て)なんでぇ、何をそんなに締まりのねぇ顔してやがんだ」

お静「(声をひそめて)一件落着でしょ?」

平次「うん、まぁ、そんなところだな」

お静「じゃぁ、じゃぁ、来て、早く(平次を奥の部屋に引張る)ねぇ、八つあんも」

平次「おぅ、何でぇ。どうしたっていうんだ」

 

 お勝とお弓が、座敷に座っている。

 

お勝・お弓「お帰りなさい」

平次「おや?」

八「あ〜ぁ」

お静「待っていらしたんですよ、おまえさんや八つあんに挨拶したいって」

平次「へぇ〜、そりゃまた、どういうわけだ」

お弓「(居ずまいを正す)親分さん、長い間お世話になりました」

平次「えっ」

お勝「この娘(こ)、今度、国元へ帰って、嫁ぐことになりまして、それで……」

平次「えっ、本当かい?」

お静「ええ」

平次「ほう」

 

 平次、八五郎を見る。 八五郎、がっかりしている様子。

 

平次「急にそんなことに?」

お勝「いいえ、前々から。実は、明日立つことになりまして」

平次「(お静に)なんだよ、だったら、もっと早く聞かしてくれりゃ、よかったのに」

お静「だって、おまえさん、仕事で怖い顔してたんですもの。ねぇ、お弓ちゃん」

お弓「ええ」

平次「ハハハ、そうか、そいつは、悪かった、お弓ちゃん」

お弓「いいえ」

平次「いや、(お辞儀をする)おめでとう、いいお嫁さんになるんだよ」

お弓「(涙をためて、頷く)親分さん……」

八「(情けない顔をして、平次を見る)親分……」

平次「バカ! お弓ちゃんのめでてぇ門出に、なんて声出しやがる! 男だろう? 男じゃねぇのか」

八「へん、こんな女は、ありませんよ。男ですよ!」

平次「あ〜、そうだ、そうだ、その調子だ。それで、もう少し、こう、ニコっと(口端を上げて)笑うんだよ」

八「は〜ぁ」

お弓「八五郎さん、長い間ありがとう」

八「まぁ、亭主が、別れるようなこと言ったらよ、おいらのところに言ってこいよな」

お弓「ええ、八つあんのところに一番に」

八「へへ、うん、へへへ(やっと笑いが出る)」

 皆、笑う。

 

平次「しかし、お勝さん、あとあと、ひとりじゃ……」

お静「ひとりじゃないのよ。それがね、お勝さん」

 

 お勝、襖を開けると、隣室に少女が、座っていて、平次たちのところにくる。

 

お勝「やはり、私の遠縁の娘でして」

おゆき「おゆきと申します。どうぞ、よろしく〜〜。ひゃぁ〜! 親分さん! あたいの憧れていた通りの人だわ!」

 

 平次とお静、あっけにとられ、顔を見合わせる。

 

おゆき「あ〜ら、お姐さん、ごめんなさい」

八「ハハァ、こりゃ、先が思いやられますね、へへ」

 

 皆、大笑い。おゆきだけ、きょとんとしている。

263話 5月19日 影を踏む女 浜木綿子 長谷川明男 中田浩二

 

 高家衆石橋邸に賊が押し入り、三百両とギヤマンの皿が奪われた。意外にも石橋邸の納戸係、村上惣之助が、町方に捜査依頼をしてきた。殺された賊のひとり、五味と書役の篠塚仙三郎が、昔なじみだったことが判明。 その陰にお駒という女の存在が、浮かび上がる。お駒と仙三郎との間に何があったのか。平次は、村上のかけた罠に気づき、逆に村上を嵌めようとする。

 

 ゲスト  浜木綿子さん(お駒)、長谷川明男さん(篠塚仙三郎)、中田浩二さん(村上惣之助)

 

 石橋邸からの帰り、平次は「狙った奴は、必ずどっかに隙をみせる。だが、時にはてめぇで、こしらえた罠にいい気になって、嵌りこんでいることもある」と言います。後者の方に今回は、ドンピシャ。

 

 武家社会についての説明が入っていて、勉強になります。ひとつは、高家衆の仕事など、平次が、石橋邸からの帰り、八五郎に説明していました。もうひとつは、町人の娘が、お侍に嫁ぐときのしきたり。お静が、おゆきに教えていました。

 

 お駒は、ましらの伝次としゃべるときは、鉄火肌のしゃべりかた、他の人には、ていねいな話し方、その落差がすごかったです。 べらんめぇ調の浜さん、いいですね。

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  お屋敷奉公するお駒の髪を結っているお静。

 

お静「さぁ、できましたよ」

 

 お駒、鏡の前から立ち上がり、お勝達の方に振り向く。

 

おゆき「わぁ〜きれい! あたいもあんな格好してみたいなぁ〜」

お勝「おまえなんか、いみじくも着られやしないよ」

おゆき「おばさん、嫌い! おばさんなんかの年頃を嫌がらせの年っていうのよ!」

お勝「まぁ、口のへらない子だよォ、アハハ」

 

 平次と八五郎が来る。

 

平次「おっ、できたな」

お駒「親分さん(うつむく)」

お静「ねぇ、おまえさん」

平次「うん?」

お静「お駒さんのお屋敷奉公、そんなに長い間じゃないんでしょう?」

平次「あ〜あ、まぁ、形だけのことだ。半年かな」

お静「お駒さん、仙三郎さんのいいお嫁さんになるためのお屋敷奉公、しっかり、おつとめしてね」

お駒「はい」

おゆき「好きな同士なら、すぐ一緒になればいいのに」

お静「お侍さんのお嫁さんになるには、そうは、いかないのよ。ちゃんとしたお屋敷へ、ある間御奉公に上がるか、名前だけでも養女になるとか、そこへくとお駒さんは、高家衆の石橋様が、お肩入れ……」

お駒「親分さん、私、もったいなくて」

平次「おめぇの今までの苦労を思えば、当たり前のことだ。いいか、お駒さん、おめぇにゃ、もう過ぎた昔の影は、ねぇんだ。誰にも踏まれることもなきゃ、自分で踏むこともない」

 

 涙ぐむ、お駒。

 

おゆき「あらあら、泣いたら、お化粧が、台無しよ」

平次「あ〜、泣きたいだけ泣くがいいや。明日っから、お駒さんにゃ、笑顔しかねぇんだからな」

 

 お駒、平次に深く頭を下げる。

264話 5月26日 命を売った男 加藤嘉 高須賀夫至子 亀石征一郎

 

 川止めの船宿の賭場で、与之吉は、負け続き。とうとう自分の体まで張ると言い出した。それを見兼ねてか、居合わせた料理屋の主人、伊兵ヱが、与之吉の体を買った。しかし、その伊兵ヱの死体が、発見され、財布もなくなっていた。疑われる与之吉。何も知らない与之吉は、五年ぶりに父、仁助のもとに帰ってくる。 仁助は、与之吉のていたらくに邪険にする。それが、息子に対する愛情の裏返しと与之吉が気付くのは、いつだろうか。

 

 ゲスト  加藤嘉さん(仁助)、高須賀夫至子さん(おえん)、亀石征一郎さん(与之吉)

 

 父子の情を描いた作品。 加藤嘉さん、いい味を出していました。

 

 息子への愛情から与之吉を再び、訴にすると思ったら、仁助は、息子の身代りに自訴する気だったのです。意表を突かれました。

 

 番屋にお弁当を持ってきたお静。平次がおえんと伊兵ヱ夫婦のことをいったのに、お静が、自分たちのことと勘違い。気づいた平次は、正すことなく「おめぇのは、苦労のうちにはいらないかもしれないな」と流しました。お静は、?マーク。 お弁当も平次は御用で、食べられませんでした。

 

 与之吉に博打を止めろといさめる伊兵ヱ。伊兵ヱに深いわけがあったのです。

 

 

     ラストシーン

おえんの店。

 

おえん「ありがとうございました……いらっしゃいませ……まぁ、親分さん」

 

 平次と八五郎が、入ってくる。

 

平次「おぅおぅ、ハハハ。こいつが、腹を空かせて、うるさくてしょうがねえんだ。何か食わせてやってくんないか」

八「へっ?(きょとんとして)」

おえん「ふふふ、はい。でも私が、作ってるんですから、味の方は覚悟してくださいね、ふふふ」

平次「な〜に、口にへぃりさえすりゃ、何だっていいんだ」

八「そりゃないですよ。親分、へへへ」

おえん「おまちどうさま。(酒をもってくる)……ねぇ、親分さん」

平次「え〜」

おえん「この店にも板前さんが、来てくれることになっているんですよ」

平次「そうか、ふ〜ん」

おえん「といっても、その人、包丁の研ぎ方から修行しなければならないから、なかなか大変ですわね」

平次「(目を見開いてあっけにとられたよう)あ〜ん?」

八「へっ、誰です?」

おえん「ふふふ、(平次の顔を見る)」

 

 平次、誰だか察しがついた様子。

 

八「へっ、よくわかんない」

 

 店の奥で与之吉が、不器用に包丁を研いでいる。傍らで、煙草をふかしている仁助。

 

仁助「プハ〜、見ちゃいられねぇや」

与之吉「じゃ、教えてくれりゃいいじゃねぇか!」

仁助「キッ、そんな、なまくらな腕で包丁が、研げると思ってんのか!」

 

 与之吉、再び、不格好に包丁を研ぎ始める。

 

仁助「おい、もっと腰、据えんだよ!……バカ! それじゃ、蛙の小便だ」

 仁助、見ていられず、立ち上がって自分で研ぎ始める。

 

 仁助「おい、どいてみろい、いいか、よ〜く、見てろ! 腰据えるっていうのはな、こうやってやるんだよ……何、よそ見してやがるんだ、この野郎!」

与之吉「へへ、おやじ〜」

仁助「うん?」

与之吉「足の方は、だいぶ、いいようだな」

仁助「道楽息子を持つとな、満足に寝ちゃいられねぇよ」

 

 顔を見合わせて、笑うふたり。仁助、笑いながらも嬉し涙をこらえる。 それを見た与之吉も感無量の様子。

 

与之吉「親父! もう一度やらせろ!」

仁助「性根、入れてやれ! (与之吉を背中をポンとたたく)」

与之吉「わかってるよォ、もう〜」

 

 仁助の笑い声。 その様子を戸口の陰で見ている平次と八五郎。そして、満足して往来を歩いて行く。

265話 6月2日 子供たちの城 二木てるみ 桑山正一

 

 孤児になった子供たちの面倒をみているお救い小屋。その孤児のひとり、千吉は、饅頭屋「えびすや」の女中、お光に引き取られ、その店で働くことになった。しかし、えびすやに押し込みが入り、千吉が、疑われる。千吉もお光も店を辞め、お救い小屋を手伝うことになる。孤児たちを悪の手先に使おうと悪人どもの手が千吉に伸びる。

 

 ゲスト  二木てるみさん(お光)、桑山正一さん(磯村勘兵ヱ)

 

 貫太役の蔵忠芳さん、「アッチャン」という番組で、主役を演じていました。よく見ていた番組ですが、早世されました。(平成13年 享年45歳)。

 

 「面倒見切れん」が口癖。ぶつぶつ文句ばっかりいうので、ついたあだ名が「蟹平」。お救い小屋の役人ですが、根はとてもいい人で、子供達のことを一番に考えている人です。

 

 ラストの立ち回り。 一部、平次、目線で、悪人にせまる場面がありました。ん〜、親分になった気分!

 

 平次が、ビンタ! 押し込み強盗の手引をしたのは、なんとその店の道楽息子。どうせ、俺のものになる店だと開き直ったのが、平次の気に障ったのです。

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家の前。  為吉が、千吉を連れてくる。 出迎える平次、お静、八五郎、お光。

 

為吉「どうも」

お静「為さん、どうだった?」

為吉「ええ、快く引き受けてくれましたよ」

平次「ほう」

為吉「今日から、大工の見習いだ」

八「そいつは、よかったな、へへ」

お静「じゃ、お父つあんの跡継ぎができるわね」

為吉「最初はね、正直、使い走り、弁当運びとまぁ、いろいろ追い回されますが、な〜に、この子は、根性がありますからね、ものになりますよ」

お光「千ちゃん、しっかりがんばってね」

千吉「(力強く)うん」

お光「では、私は、これで」

平次「どうしても行くのかい」

お静「えびすやさんじゃ、本当に悪かった、詫びるからまた元通り、働いてくれって、そうおっしゃっているのよ」

お光「でも子供たちが、待ってくれてますから」

平次「ハハ、そうかい。あの蟹平の旦那が、仏頂面して、きっとこう言うだろう。『なんて、バカな娘だい。わしは、もう面倒見切れんわぁ。売れ残っても知らんぞ』ハハハ」

 

 ほほ笑むお光。

 

 お救い小屋。  お光が帰ってくる。

 

男の子「姉ちゃん!」

子供たち「姉ちゃん!」

 

 子供たちが、お光のまわりに集まってくる。 勘兵ヱも顔を出す。 お光、頭を下げる。

 

勘兵ヱ「なんて、バカな娘だ。わしゃもう、面倒見切れん。売れ残っても知らんぞ」

 

 お光、平次の言った通りのことばを勘兵ヱが、言うので思わず微笑む。勘兵ヱも微笑む。子供たちに囲まれ嬉しそうなお光。

266話 6月9日 魔がさした祝言 岸久美子 松本錦四郎

 

 祝言前の若い娘が、次々と貼り文強盗の犠牲となっていく。伏見屋の一人娘、お美代も祝言の当日、「祝言をすれば、殺す」という貼り紙をされた。しかし、お美代の態度が、おかしい。娘の一途な恋心を巧みに利用した貼り文強盗。平次の投げ銭が、その仮面を剥いで行く。

 

 ゲスト  岸久美子さん(お美代)、松本錦四郎さん(津村伊織)

 

 祝言前のお美代の態度が、ひっかかる平次。お静は、祝言前の娘心は、嵐が吹きまくっていて、そのくせ、開き直っていて……と不安なものと説明しますが、お美代の場合は、違いました。

 

 万七が、仁助を逮捕。 平次は、仁助は、白だと思っています。

万七「仁助が、白だったら、三偏回ってコン(貼り文強盗は、狐の面をつけていたから)と啼いてやる。その代り、黒と出たら、銭形の、おめぇにコンと啼いてもらうぜ」

八五郎「(平次を心配して)親分……」

平次「捕り物は、コンコン啼いて、恥をかきながら、覚えていくもんだ」

 結局、仁助は無実。万七親分、ちゃんと約束を守って、三偏回って「コン」。両手で狐の形をつくって、かわいかったです。

 

 強盗が、落して行った伏見屋の見取り図。お美代の匂い袋の匂いがして、不審に思う平次。ラストは、匂いに関連付けて、お静の鬢付け油の匂いが、話題に。(お熱いシーン)

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  お静、平次の肩を揉んでいる。 平次は、煙草。 

八「親ぶ〜ん、殺生ですぜ、こりゃ、殺生だと思うんですよ」

平次「あ〜、何だい(面倒くさそうに)どうしたい?」

八「いえね、伏見屋の旦那が、世間様に申し訳ないってんで、とうとう、お嬢さんを根岸の寮へ封じ込めちゃったんです」

平次「ん〜、そうかい。いやぁ、お美代は、本来、お牢入りのところを八丁堀の旦那の特別のおめこぼしで、おかまいなしになったんだ。当分の間、根岸の寮で、謹慎している方がいいさ」

八「でもね、お嬢さん、、せっかく目が覚めたんだから、またまたお預けじゃ、辰吉が、かわいそうですよ」

お静「心配いりませんよ。雨降って、地固まる。あの二人は、きっと仲のいい夫婦になりますよ、ねぇ、おまえさん(平次の顔にすり寄る)」

平次「ん? おい、お静、鬢付け油、変えたのかい?」

お静「いいえ、どうして?」

平次「(にやけて)何だか、いい匂いがするから」

 

 お静、自分の鬢にさわる。 あてられた八五郎、いたたまれなくなって、隣室へ行く。いちゃついている平次とお静。

 

平次「(隣室の八五郎に気づいて)八、どうしたい?」

八「いえね、あっしにも毒を持ってくるような娘さんがね、あっしの嫁さんになってくれるような人が、いないかなと思ってね」

お静「いますよ」

八「えっ、ど、どこにですか! (急いで、平次たちのところにもどる)」

お静「今にきっと、いい娘さんが、見つかりますよ」

八「あ〜あ、そんな娘がいたらね、あっしは、毒入りの盃でも何でも、どんどん、飲んじゃう。死んだってかまうもんか、へへ」

平次「バカ、死んだら、おしめぇじゃねぇか」

八「あっ、そうだ、へへへ」

 

 三人、お笑い。

267話 6月16日 十手の無い平次 藤田佳子 穂高稔

 

 木曽屋の息子、作次郎が、おたずね者の辰次に殺された。平次が、辰次を捕まえる直前に辰次も殺される。世間では、恩ある木曽屋の息子の仇討を岡っ引きがしたと大騒ぎ。しかし、平次は、そのことで、十手、お預かりの身となり、謹慎を申し渡される。平次の無実を知るお秀は、なぜか、口をつぐんでしまう。果たして、平次は十手を取り戻すことが、出来るのだろうか。

 

 ゲスト  藤田佳子さん(お秀)、穂高稔さん(市造)

 

 仇討をしたことになってしまった平次、世間は、大騒ぎ。お勝は、平次が錦絵になると大喜び。でもお上からは、岡っ引きが殺人を犯すとは、威厳にかかわると真偽が、はっきりするまで、十手お預かりに。

 十手お預かりの沙汰を平次に伝えるときの樋口様の苦悩に満ちた顔が、よかったです。

 平次に対するみんなの気持ちがよく出ていました。

八五郎「十手が、なくても捜索はできる。一蓮託生」と言って、自分も十手をお預かりに。

樋口様が「十手をもたない御用聞きが、どれだけの働きをするか、見守ってやろう」というと、万七「もとより、そのつもりでさぁ、いつも手柄を横取りされてますが、なぜか、心から憎めねぇ奴で」と。

 

 平次が、噂にびっくりして、飛んできたお静に「バタバタするねぇ。娘っこみてぇに唐変木め!」だって。お静は「どうせ娘っこですよ! 唐変木ですよ!」といじけますが、肝心の平次の好物、くさやを買い忘れてしまいました。

 

 平次が、あせっていることに気づいたお静「いつものおまえさんなら、もっと筋道をたてて、謎を解くのに」と助言。平次は、それに気づき、筋道を立てて考えると、おのずから、道が開けました。さすが、お静さん。

 

 

     ラストシーン

 

 ひょうたんや。 

 

平次「木曽屋の旦那だがな、もう、跡目は、養子をもらって継がせることに決めたそうだ」

八「替え玉をすっかり信じこんでいたから、さぞ、辛かったでしょうなぁ」

平次「うん、だが、そこは年の功だ。慰めるおいらを制して、逆に十手を取り戻したことを祝ってくれたよ」

八「はぁ」

お静「そ〜う、とにかくこれでまた、しがない十手稼業が続くってわけね、ふふふ」

平次「そういうことだ。なんだかんだと言ってはいるが、樋口様に十手を召し上げられたときにゃ、さすがのおいらも肩の力が、すっかり抜けちまった。おいらにとっちゃぁ、十手は命だぜ」

八「いや〜、その命を取り戻して、あっしも仕事を失わずに済みました、へへへ」

おゆき「(料理を運んでくる)親分、仇討の噂は、嘘だったんですってねぇ」

お勝「錦絵にならなくて、残念ですよ」

お静「とんでもない。私は、御用聞きの女房の方が、よっぽどいいわ。十手が、取り戻せて、お頭つきで、祝いたいほどよ」

おゆき「そう思って……さぁ」

 

 おゆき、持ってきた料理を食卓に置く。 お頭つきの鯛の塩焼き。驚いて平次とお静が、顔を見合わせる。

 

お勝「もちろん、お勘定は、親分もち!」

平次「えっ、おいら、くさやでいいぜ、くさやで」

 

 皆、大笑い。平次も顔がほころび、照れくさそうに頭をかく。食卓に置かれた十手のアップ。

268話 6月23日 指政の死 宗方勝己 二本柳敏恵 美川陽一郎 樋浦勉

 

 スリの指政が、殺され、一緒にいた手下の栄吉が、疑われる。栄吉は、姉のお早代とともにスリだったが、今は、堅気だ。朝次が、栄吉の無実を訴える。捕えられた栄吉は、牢を破るが、またも殺しの現場に居合わせてしまう。 平次は、丸に辰の字が入った財布が、謎ときの鍵と確信する。そして、元スリの仙蔵に疑いを向ける。

 

 ゲスト  宗方勝己さん(朝次)、二本柳敏恵さん(お早代)、美川陽一郎さん(仙蔵)、樋浦勉さん(栄吉)

 

 元スリの親分、仙蔵、今は足を洗い、仏師となっています。 一見、優しそうな好々爺。平次もそう思っていました。でも事件を追っていくうちに……恐ろしい爺さんでした。

 

 #266で、平次はお静に肩を揉んでもらい、今回は、耳かき。幸せな親分です。

 

 

     ラストシーン

 平次の家。 八五郎が入ってくる。

 

八「親ぶ〜ん、おや……」

 

 平次、お静の膝枕で、耳かきをしてもらっている。平次、うたたねをしている様子。

 

お静「(口に指をあてて)し〜っ。(小声で)また何か事件?」

八「いえ、そうじゃねぇんですよ。あの例のね、朝次とお早代のふたりが、めでたく夫婦(めおと)になったとお知らせにきたんです」

お静「そ〜う、そりゃよかったわね」

八「ええ、やっぱり、春というものは、結ばれるものは、結ばれるんですねぇ」

平次「八、おめぇには、どうやら、春はこねぇようだな」

八「まったくでさぁ〜……えっ?」

 

 三人、大笑い。

269話 6月30日 名宝安土の茶碗 服部妙子 神田隆 井上博嗣

 

 讃岐屋が、茶室開きのため、三千両で買った安土の茶碗を店から茶室のある寮に運ぶという。その茶碗は、織田信長が、朝廷に献上したと言われている由緒あるもの。それを三人の男が、盗もうとしていた。ひょんなことから、男たちの人質となってしまった、何の関係もない町人の子、仙太。茶碗のことばかりで、子供の命を考えもしない、傲慢で冷酷な讃岐屋。平次は、讃岐屋の娘、お絹の協力を得て、一か八かの勝負に出る。

 

 ゲスト 服部妙子さん(お絹)、神田隆さん(讃岐屋三右ヱ門)、井上博嗣さん(仙太)

 

 あこぎで、非情な父親とは、娘お絹は、正反対。優しい心を持った人でよかったです。お絹の協力があってこそ、仙太も無事戻りました。

 

 茶碗が盗まれるかもしれないと、敵を欺くため、讃岐屋は、偽物を作り、それを盗ませようと算段します。でも店のなかに裏切りものがいて、本物が盗まれるようにします。それを知った平次がまた入れ替えて……複雑でした。面白かったけれど。ほんと頭いいなぁ、平次親分。

 

 

     平次の啖呵

 

 讃岐屋の茶室。

 

平次「奈良屋さん、三人の盗っ人は、何もかも白状しましたぜ。あんたに金で、買われて、茶碗を盗んだってんで、盗っ人どもは、今、八五郎が、お奉行所へ連れて行きました。あんたにも同様の戸を開けて待ってるはずですぜ」

奈良屋「わしゃ、茶碗が欲しくて盗ったんじゃないんだ。そのうち、返してやるつもりだった。ただ、讃岐屋に赤っ恥をかかせれば、それでよかったんだ」

平次「何ですって! 泰平の世の有難さで、あぶく銭が、ありあまっているからって、おごりたかぶるのも、いい加減にしなせぇ! あんたたちのつまらねぇ意地の張り合いや道楽のために危く人の命が、奪われるところだったんですぜ! 子供をさらわれた親の気持ちが、どんなものか、ちょっとでも考えたことが、ありますかい……讃岐屋さん、あんたもですぜ、娘さんの意見をよ〜く肝に銘じておくんなさいよ」

 

 

     ラストシーン

 

 伊之助、お菊夫婦の長屋。  おゆきがくる。

 

伊之助「本当ですか!」

おゆき「さぁ、早く!」

伊之助「お菊!」

お菊「仙太〜」

 

 平次、八五郎、為吉が、仙太を連れてくる。 両親のもとに駆け寄る仙太、抱き合う親子。お菊が泣く。それを見たおゆきも嬉しそう。平次も満足そうな顔。

 

仙太「あっ、いけねぇ、おら、母ちゃんの薬、もらってくるの忘れちゃった」

お菊「薬なんか、もういいのよ。仙ちゃんの無事な顔を見て、病気なんか、治ってしまった」

仙太「本当にもういいのかい?」

 

 強く頷くお菊。

 

おゆき「まぁ」

 皆、笑みがこぼれる。 平次、八五郎、為吉、長屋をあとにする。

270話 7月7日 女湯の十手 宮園純子 長谷川哲夫 高津住男

 

 的屋の島之内一家と台場一家の縄張り争いの真っただ中。 二年ぶりに佐吉が、島之内一家に帰ってきた。まもまく、台場一家の吉次が、殺され、疑いは佐吉に。そして、同心樋口が、朝風呂に入っている間に十手を盗まれてしまう。樋口に届いた脅迫状から、平次は縄張り争いを利用した台場一家の直助の犯行ではと目星をつける。

 

 ゲスト  宮園純子さん(お小夜)、長谷川哲夫さん(佐吉)、高津住男さん(直助)

 

 酒の腕を上げたお静? お静が「一本つけましょうか」と言うと平次「本音は、おめぇが飲みてぇんだろう。近頃、めっきり腕をあげやがったからな」ですって。今回は、縞の着物姿のお静、鉄火肌の姐ご?。

 

 「八丁堀の七不思議、女湯に刀掛」平次が、説明していましたが、付け加えて……町方同心は、おしゃれで、出勤前に朝風呂に入る習慣があったとか。それで、八丁堀界隈の銭湯では、一般客と一緒にならないよう、女湯を提供したようです。それで、女湯に刀掛があったのです。銭湯は、明け六つから暮れ五つまでの営業(午前6時から午後8時)。男湯は、一般客が朝風呂に入るからでしょう。

 

 平次、八五郎の話を聞きながら、こよりを作って、キセルの掃除。こより作り、上手でしたね。

 

 八五郎が、耳の遠い釜焚き甚兵ヱにどんな人が、湯に入りにきたか、聞くため、身振り手振で、、棒手振りやら按摩さんやら、駕籠かきやらの真似。可笑しかったし、上手かった、さすが、落語家。

 

 ラストは、捕り返した樋口の朱房の十手で平次が立ち回り。

 

 

     ラストシーン

 

 島之内一家の家。  化粧をしているお小夜。三吉が、手紙をもってくる。

 

三吉「姉ちゃん、これ」

お小夜「ん?」

 

「お世話になりました。なんの御恩返しもできませんでしたが、お別れをさせていただきます」

 茫然とするお小夜。

 

 ひょうたんや。  平次と佐吉がいる。 上からのカメラアングル。おゆきが酒を運んでくる。

 

平次「あっ、おゆきちゃん、こいつは?」

おゆき「一件落着でしょ、おばさ〜ん」

お勝「あいよ」

おゆき「あの的屋のかわいい、二代目さんのところに行ってくるから、あと頼んだわよ。(平次に)どうぞ、ごゆっくり」

平次「あぁ」

 

 店を出ていく、おゆき。

 

お勝「ホホ、ほんとうにしょうがない子だよ。(平次たちに)どうぞ、ごゆっくり」

平次「朝っぱらからだが、まぁ、いいだろう(佐吉に盃を勧める)」

佐吉「いえ(盃をうける)」

平次「それで、同業の島之内一家から出ていくのかい」

佐吉「へい。お世話になった島之内の親分さん、そして、親父の墓参りも終わりました。樋口の旦那からも、身に余るお詫びの言葉を頂き、今、恥ずかしい思いをしております」

平次「うん、まぁ、台場一家は、今度のことで、とり潰し。まぁ、縄張りは全部、島之内一家が引き受けるんだが、江戸八百八町に八丁嵐の名啖呵を聞かせる気にはならねぇか?」

佐吉「島之内一家には、りっぱな姐さんが」

平次「さぁ、その姐さんが、どうでもおめぇを引きとめにきたら……」

佐吉「えっ?」

平次「ハハハ、たった今、ここの女の子が、お小夜さんを迎けぇにいったよ。あ〜」

佐吉「親分さん」

平次「(自分の盃を佐吉に渡す)さぁ、飲みねぇ、へへへ」

佐吉「親分さん(一気に飲み干す。涙を流す)」

平次「帝釈天様の坂町(?)おめぇの八丁嵐の啖呵、楽しみにしているぜ」

 

 平次を見つめる佐吉。

 

平次「いや、樋口の旦那ももうすぐ来なさる。(十手を腰から抜いて、食卓に置く)今は、十手もちの平次じゃねぇ、飲もうぜ」

佐吉「ありがとうございます」

 

 食卓の上の十手のアップ。

271話 7月14日 虚無僧絵図 舟木一夫 新藤恵美 曾我廼家明蝶

 

 連続して起こる押し込み強盗事件。 平次は、三月寺が、怪しいと睨むが、寺では、町方は、出だしができない。寺社奉行御用人結城孫太夫に訴えても埒があかなかった。そこへ、遊び人風の男、小弥太が、寺に現れた。どうも、何かを探っているようだ。結城は、藩の事情もあり、表立っての捜査はできないものの、ある企てをしていたのだ。

 

 ゲスト  舟木一夫さん(小弥太)、新藤恵美さん(花世)、曾我廼家明蝶さん(結城孫太夫)

 

 平次の家の暖簾が、えんじの地色に違い柏になりました。

 

 舟木一夫さんが、ゲスト、4作目です。 侍が町人に扮して、何かを探る役が多いですね。

 

 強盗のアジトが、寺では、平次は、手が出せません。樋口様に内緒で、八五郎と三月寺を見張ります。連日の朝帰りにお静は、平次が痩せたと心配しますが、お勝は、平次の浮気を疑いました。

 

 平次は、植木屋に扮して、結城孫太夫の家に潜り込みます。直接、結城と話したいからです。茶室え、お茶をよばれますが、結城のお手前も平次の作法も決まっていました。平次は、不正を寺社奉行が、見逃がすとは! と怒りをぶつけますが、結城は、逆に平次が、骨のある男と感心し、御政道の歪みにしばらく目をつぶってくれと頼みました。藩の立場を守るためなのですが。

 

 ラスト、平次は、虚無僧に扮して(髷は、町人髷のままで、残念)三月寺に乗り込みます。

 

     ラストシーン

 

 結城孫太夫邸の庭。 高山数之進と花世が、散歩。 平次が、結城に事件後の報告。

 

平次「妻木一味は、町方の裁きを受けました。主だったものは、死罪。残りも遠島を言い渡されました」

結城「ん、全ては、そちのお陰じゃ(頭を下げる)、礼を言うぞ、平次」

平次「へい。ですが、一番の手柄は、結城様です。なんせ、お嬢さんを囮にして、高山様を走らせた張本人ですから」

結城「これ、平次」

平次「へへへへ、へい」

結城「これ」

 

 数之進と花世が、小走りに結城たちの所へ来る。

 

数之進「これは、聞き捨てになりませんな」

花世「平次殿、どういう意味ですか」

平次「つまり、お嬢様を妻木に嫁がせると話せば、高山様は、必ず、捨て身の策に出る。結城様は、そこまで読んでいたんですよ」

花世「お父様」

数之進「それは、真ですか」

結城「う〜ん、まぁな、寺社奉行が、表立って捜査できぬ以上、やむを得なかった。いわば、苦肉の策じゃな」

花世「お父様、この貸しは、必ず、返していただきますわよ」

結城「う〜ん、う〜ん、一難去って、また一難。これでは、一生悩まされるわい、アハハハ(豪快に鯉のえさを撒く)」

 

 皆、笑う。

 

平次「では……へい、では……では」

 

 平次、去る。

272話 7月21日 幽霊殺人事件 沢井佳子 野口ふみえ 綾川香

 女の幽霊が、源助を殺したのを見たと八五郎が、腰を抜かして、ひょうたんやで茫然としている。が、平次は、八五郎に事件を任せる。幽霊は、心中をしたお喜代と思われる。相手の男、与之助は、生きていて、経師屋の若旦那におさまっていた。お喜代の恨みを晴らすため、誰かが幽霊になりすましたのか、哀れなお喜代だが、もうひとり、与之助に泣かされた女がいた。

 

 ゲスト  沢井佳子さん(お浜)、野口ふみえさん(お町)、綾川香さん(与之助)

 

 時節は、お盆。お静が、盆提灯にはたきをかけたり、廻り灯篭を吊ったり、うちわ、蚊帳、迎え火……と季節を感じさせてくれます。

 事件の発生が、六月末。盆提灯を吊るすのは、六月のみそかからが、ならわしと、お静が言ってました。お静が、みそかで、掛け取りが、来てたいへんだったと平次に言うと分が悪い平次、「湯へ行こう」と逃げようとするとおゆきが「たいへ〜ん」と飛び込んできます。

 

 八五郎は、幽霊の話を聞いてくれる平次に感激。事件を任されますが、結局、平次が解決しました。

 

 万七は、幽霊が、怖くて震えてしまい、御用ができませんでした。それを清吉のせいにして、やけ酒。

清吉「ひでぇ親分だなぁ。銭形の親分は、何とかして、八の奴の手柄にしてやろうと思ってなさるのに。うちの親分ときたら、自分の失敗を子分のせいにするんだから」

 なんと酒代も割り勘。でも、ラストの捕り物では、清吉のピンチを万七が、助けます。やっぱり、子分思いの万七親分です。

 

 

     ラストシーン

 

 根岸の寮。 

 

お町「それは、私でございます」

平次「尚古堂の女中のお町だい。おめぇは、無骨だが、腕のいい、清兵ヱが、好きだった。ふたりで所帯を持つことを夢見て、十年もの間、こつこつ貯めた二十両もの金をこともあろうに与之助に……おそらく与之助は、力づくで、おめぇの体を奪い、甘い言葉をぶっつけて、だましたんだ」

お町「清兵ヱさんをあれほど好きだったのに、ふと与之助さんの誘いに乗ってしまった私、あぁ、なんと愚かな女だったんでしょう。清兵ヱさんの奇麗な気持ちを思うにつけ、申し訳なくて、せめてものお詫びがしたかったんです。若旦那は、いずれ、清兵ヱさんをお店から追いだすつもりでした。私が、もし、若旦那の罪を暴くことが、できるなら、清兵ヱさんが、尚古堂さんの跡継ぎになれる……そう思って」

 

 万七、清吉、八五郎もお町のところにくる。

 

万七「お喜代殺しをどうやって、知ったんだ」

お町「源助という人が、若旦那のところにお金を取りに来て、話しているのを聞きました。でも、ちらっと耳にしただけで、詳しいことはわかりませんし、何の証拠もありません」

八「それで、幽霊に化けて源助の口から、聞き出そうとしたんだね」

お町「はい。若旦那が、お縄になったので、もう何も思い残すことはありません。(平次に)親分さん、どうか、大旦那様に清兵ヱさんを尚古堂の跡継ぎになさるよう、お願いしてください。お願いです。清兵ヱさん、私を赦して、私を……」

 

 お町、急に倒れ、口から血が流れている。

 

平次「(お町を抱えて)お、お町、おい、しっかりしろ! どうしたんだ! あ、おめぇ、毒を飲みやがったな。初めっから、死ぬ覚悟だったのかい。お町、おめぇ、早まったことを、おめぇは、源助を手を下して殺したんじゃねぇ。えっ、源助は、自分の犯した罪におびえ、自分で足を滑らせて、川に落ちたんだぜ。俺はおめぇを見逃すつもりだったんだぞ、えっ」

お浜「(駆け寄って)お町砂さん、あなたのお陰で、お喜代姐さんの仇をとれたのよ。私にひとこともお礼を言わせないで、どうして死んだのよ」

 

 ひょうたんや。  店先で、お勝、おゆきが、迎え火を焚いている。 

 

八「あ〜ぁ、与之助みたいに、いい男ってぇのも罪つくりなもとだな」

おゆき「自分がちょうどいいって、言いたいんでしょ」

八「そう、あっ、ばれたか、ハハハハ」

 

 お勝、おゆきも笑う。

 

平次「(しみじみと)この世には、男と女がいる。そして、いろんな悲しいことが、起るんだなぁ」

お静「でも、素晴らしいことだって、いっぱい起こりますよ」

 平次、お静の顔を見つめ、頷き、笑顔を見せる。 迎え火のアップ。

273話 7月28日 金座から消えた三千両 内田朝雄 川島育恵

 

 高利貸しが、吹き矢で殺された。その手口から、平次は七年前の金座で、発生した三千両強奪事件と関係があると確信。 賊の三人は、未だ捕まっていない。そして、俳諧師梅風、あんまの波の市と次々と吹き矢で殺された。残るひとりが、吹き矢使いの賊だと平次は必死に犯人を追いつめる。一方、十手に怯え、八丈島送りになった無実の父に涙する娘がいた。

 

 ゲスト  内田朝雄さん(梅風)、川島育恵さん(お鶴)

 

 純な心を持っているひとのいい八五郎。平次は、八五郎は、いいやつなのに、どうして嫁が来ないのか、お江戸の七不思議と言います。

八「がってんです。お鶴さんの無実を晴らすためなら、あっしゃぁね、何十日だって、寝ずに食わずに籠城しますよ」

平次「バカだな。お鶴には、利助という先口がいるよ」

八「いいんです。それだって、あっしは、いいんですよ」

平次「おめぇのようないい奴に、ど〜して嫁の来てが、ないのかな。お江戸の七不思議だぜ」

八「へっ、違ぇねぇや」

 

 ラストの立ち回り。 下手人ひとりに、平次、万七、八五郎、なかなか手ごわい悪者で、捕まりません。下手人、吉兵ヱが、とんぼをきると、平次も負けじととんぼをきります。平次の投げ縄でやっと御用に。

 

 お静が、紙屋の主人に、利助とお鶴の仲人を頼まれたと平次に報告。 平次は、ふたつ返事ですが、「高砂や〜」は自信がついたんでしょうか。

 

 

     ラストシーン

 

 御金銀政所。 平次、役人にボディチェックされている。門外で、お静と八五郎が、怪訝宗な顔で待っている。

 

役人「よし、行け」

平次「ありがとう存じます(門から出てくる)」

お静「おまえさん」

平次「あの門を出る時にゃ、どんなお偉い方だって調べられるんだ。金が、木端みたいに積んであるんじゃ、誰だってひとつかみぐれぇ、ちょいとこう、懐に……」

八「で、どうでした、首尾は?」

平次「何の首尾だ?」

お静「お鶴さんのお父つあんのことですよ、八丈島の」

平次「おぅ、上首尾だ。一番早い御赦免船に乗れるようにしてくれるそうだ」

お静「あ〜よかった」

八「お鶴ちゃん、泣いて喜びますよ、へっ」

お静「あっ、紙屋の御主人に頼まれたんですけどね、利助さんとお鶴さんの祝言には、是非お仲人になっていただきたいんですって」

平次「おいらが?」

お静「おまえさんと私にですよ!」

平次「あっ、そうか、いいね、喜んで引き受けよう」

八「あっしひとりは、いつもはみだしますね。でもいいんだ、これでいいんだ。どうせ、あっしゃね、お江戸の七不思議ですからね」

お静「お江戸の七不思議って何のこと?」

八「えっ、いや〜、あのね、何でもないんです、へへへ」

平次「ハハハ」

 

 夏空のアップ。

274話 8月4日 墓荒し 桜むつ子 小栗一也 汐路章

 

 検校の位をめざして、貯め込んだ三十両。あんまの久助が、この世を去った。あの世まで、金を持っていこうとして久助の意を汲んで、棺桶にその金を入れたのが、事件の始まり。なんとその金が、釘にすり替えられていた。一体誰が、どうやって……。しかも同じ長屋の倉三が、殺された。平次は、八五郎を実験台に殺しの立証を試みる。

 

 ゲスト  桜むつ子さん(お源)、小栗一也さん(大家の庄兵ヱ)、汐路章さん(あんまの久助)

 

 平次、倉三殺しの実証検分するため、八五郎を使います。何もしらない八五郎、平次は、八五郎の忠義心を確認すると、いきなり、首根っこをつかんで、川の中に顔を何回もつけました。いきなりやらないと正確な証拠にならないとのことですが、八五郎、とんだ災難。

 

 ラスト、八五郎は、お酒が入るとずいぶん、おしゃべりになるようで。ほとんど、ひとりしゃべくり。

 

     検校(けんぎょう)…昔、盲人に与えられた最上の官名。もともとは、琵琶法師の称号として呼ばれた、「検校」「別当(べっとう)」「勾当(こうとう)」「座頭(ざとう)」の順。平家物語を語る職業人として、鎌倉時代ごろから、当道座といわれる団体を作るようになり、上記の4つの位階と73の段階に分けられたという。江戸時代に入ると当道座は、盲人団体として、幕府の公認と保護を受けるようになった。この保護は、明治時代に廃止。(ウィキぺディア HPより)

 

 

     実証検分

 

 倉三の亡くなっていた川。

 

平次「ところで、おめぇをここに呼んだのは、ほかでもねぇ。お静の話によると、おめぇは、いつも口癖のようにこの平次のためなら、命を捨てても惜しいとは、思わねぇと言っているそうだが、そりゃ本心か?」

八「へ〜、そりゃもう」

平次「健気な心意気だ。嬉しいぜ」

八「ハハハ」

平次「実は、おりゃ、今日はおめぇのその心意気をみせてもらおうと思って、ここに呼んだんだが、いいか?」

八「へい、あの、みせろって、どんな?」

平次「まかり間違えりゃ、おめぇに死んでもらわにゃならねぇかもしれねぇ」

八「えっ?」

平次「こいつも役にたつためだ。覚悟はいいな」

八「へへ、親分、(しどろもどろ)あっしをどうするんで?」

平次「どうもこうもねぇ、俺のする通りにすりゃいいんだ」

 

 平次、いきなり、八五郎の首根っこを掴み、川にうつぶせにして、顔を何度も水につける。「勘弁しろ」「がまんしろ」と言いながら。

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  平次と八五郎が、酒を酌み交わしている。

 

平次「そりゃ、俺だって、いざとなりゃそのくらいのくそ力は、出るさ」

八「いやぁ、ハハハ、いやね、あっしも最初、何が何だかわからねぇうちに、ガーッとなって、グァ〜と(平次に川の水に顔をつけられたことを身振り手振りで表現)やられちまったもんですからね、ゴボゴボ〜と水を飲んじゃって……もうあとは、どうなって何になったんだか、さっぱりわかんねぇんですよ、へへへ。苦しかったな、いえ、苦しいって、親分、死ぬっていうのは、苦しいもんですね」

平次「その苦しみを罪もねぇ奴にさせようって奴がいるんだからなぁ」

八「へぇ、大家のせがれで、納まってりゃいいものを、欲に目がくらみやがって(かなり酔っている)ねぇ、へへ、徳之助もバカな野郎でさぁ、ねぇ、世の中、悪いことをして、目こぼしでもすると思ってやがんですがね、あの素っ頓狂めが、へへ」

お静「本当ね」

八「でも、姐さん、頼りにしていたせがれを殺されたお源さんが、一番可哀そうなんじゃありませんかね」

お静「ええ、そりゃ、まぁ、そうよ」

八「ねっ」

平次「あっ、そうそう、お源さんは、大家さんが、生涯面倒みさせてくれるよう、言ってるそうだ」

八「当たり前ですよ。床の間に置いてね、三度三度、据え膳で養っても、え〜、バチは当たりません」

平次「八は、だいぶ酔ってるな」

八「へへ」

お静「酔ったついでにね、川の水をがぶがぶ飲んだように、存分に飲んでね」

八「へへへ、姐さん、がぶがぶ飲んで、おぼれ死んじゃっても、ようござんすか」

お静「ええ、いいですとも。それじゃね、今夜は、私が、八つあんの首根っこを押さえて寝ましょうか」

八「えっ、こりゃ嬉しい。お願いします。へへへ」

 

 楽しい雰囲気の酒盛りが続く。

275話 8月11日 浮世花火 笹みどり 江夏夕子 山村弘三 渚健二

 

 江戸一番の花火職人、直助が、さらわれた。お加代の店に血だらけのやくざ、仙太が、転がり込んで息絶えた。平次は、仙太が、元花火職人だったことから、直助の一件と係わりがあると推理。美しい花火の裏に直助の新工夫の花火を巡って、花火屋同士の醜い争いがあったのだ。仙太殺しの疑いをかけられた佐吉だが、苦い過去を背負っていた。

 

 ゲスト  笹みどりさん(お加代)、江夏夕子さん(お町)、山村弘三さん(直助)、渚健二さん(佐吉)

 

 下手人のひとり、よしぞう(大神真さん)と劇中では、言われていましたが、クレジットは幸助になっていました。

 

 笹みどりさんが、劇中で唄を披露。♪昨日 北風 今日は 南風 明日は 浮き名の立つ風 恋の風なら 色ばっかり しょんがいな(江戸端唄「梅は咲いたか」の三番)

 芸者姿で、踊りもみせてくれますが、日舞が、特技だそうです。

 

 お町は、平次の「直助(お町の父)を必ず、助け出す」という力強い言葉にもやはり、父のことが心配。お静が「私の亭主を何だと思ってるの!」と啖呵。冗談でしたけど。

 

     江戸の名物両国の花火…享保18年(1733年)から始まり、全国的に有名であった。5月28日(川開き)から8月28日mで、花火のパトロンさえつけば、毎夜、打ち上げられた。両国の花火の演出者は、花火師の鍵屋と玉屋。両国橋の上流に玉屋、下流に鍵屋の花火船が陣取った。この花火見物に大群衆が、夕涼みがてらやってくる。両国橋は、人で埋まり、隅田川は、納涼船でいっぱいになった。当時は赤色花火だけで、今のような色とりどりの花火を楽しめるようになったのは、明治になって、化学薬品を輸入するようになってからのこと。当時は、主に塩硝と木炭と硫黄を原料とし、配合に工夫をこらした。(小学館 江戸時代館 より)

 

 

     お静の啖呵。

 

 平次の家。 お町が匿われている。 父の身を案じて食事が通らないお町。

 

お静「食べないんですか!」

お町「お父つあんが……(うつむく)」

お静「あら、私の亭主を何だと思っているんです? 銭形平次は、十手を持ったときだけは、地獄の閻魔様も縮みあがってしまうという……」

お町「すいません! 私、そういうつもりじゃ……」

お静「ふふふ、冗談ですよ。さぁ、元気をだしておあがりなさい」

 

 

     ラストシーン

 

 川開き。 夜空に花火があがっている。

 

お町「うわぁ、きれい!」

 

 佐吉が、土手を登ってくる。

 

お町「あっ、佐吉さん」

佐吉「(直助の手をとって)おやじさん!」

直助「おまえさんの花火だよ」

伍平「若旦那、すごいぞ! 多賀屋〜! 多賀屋〜!」

 

 お町とお加代、顔を見合わせて微笑む。

 

お町「うわぁ〜」

 

 ひょうたんやの店先。  平次、お静、八五郎、お勝、おゆきが、花火をみあげている。

 

みんな「うわぁ〜」

おゆき「いいぞ〜! 日本一!」

八「アハハハ、また来たぞ!」

 

 夜空の花火。

 

お静「今まで見たことのないような見事な花火だわ」

平次「あたりめぇよ。あの花火にゃ、人の真心がこもってるんだ」

 

 夜空に大輪の花火。

276話 8月18日 お化け土蔵 高田次郎 小杉真理 森健二

 越後屋の土蔵に女の幽霊が出るという。蔵に押し入った賊に半造が、殺され、そばに地蔵が彫られた賽が、落ちていた。土蔵を作った左官の与兵ヱが、丑松に襲われ、その丑松も殺される。丑松も地蔵の賽を持っていた。真実を知っているはずの与兵ヱは、がんとして、口を割らない。平次は、賽から、加賀様の御金蔵破りの事件を探りだした。土蔵との関係が、浮かび上がる。

 

 ゲスト  高田次郎さん(吾平)、小杉真理さん(おふみ)、森健二さん(与兵ヱ)

 

 与兵ヱの息子、新吉、土蔵を見回りにきた平次に「おいら、親分の大の贔屓なんだよ」と。平次は「気も強いが、お世辞もうめぇや」と苦笑。

 

 やくざに襲われた与兵ヱを助けようとした新吉。荷車に轢かれ、川へ落ちます。追いかけてきた平次が、川へ飛び込み、新吉を助けます。

 

 平次は、菊五郎縞(三代目尾上菊五郎が、用いて広まった柄。「キ 九 五 呂」が表された判じもの。菊五郎格子ともいう)の浴衣を着ていました。うちわは下がり藤の紋でした。

 

 万七は、噂の幽霊をみて、熱を出してダウン。 丑松殺しで、与兵ヱを捕まえたものの、口を割らない。万七は、思わず与兵ヱに「おまえの殺したのは誰だ」なんて、トンチンカンな質問を。清吉もあきれて「たまには、自分で考えてみたら〜」と。

 

 ラスト、 新吉の歩行練習をさせる平次は、父親みたいでした。

 

 

     ラストシーン

 

 祠のある原っぱ。  おいしそうなお弁当のアップ。 木の下で、お静、おふみ、八五郎が、お弁当を広げて、座っている。

 

八「(巻きずしをつまんで)うん、うめぇ」

お静「おふみちゃんが、作ったのよ、これ」

八「ふ〜ん、これだけできりゃ、てぇしたもんだよ。今にきっといいお嫁さんになるぜ。へへ。それと亭主が浮気したらよォ、こんな格好(幽霊の真似)……」

おふみ「もう、やめて!」

お静「でも、よかった、与兵ヱさんも罪が軽く済んで。来年の春には、寄せ場を出られるし」

おふみ「ええ、でも新吉の足が……」

お静「今に歩けますよ。歩いてみようという気になれば、きっと」

八「そうとも、お、親分が、あんなに一生懸命に……」

 

 平次、少し離れたところで、新吉の歩行練習をさせようとしている。平次、着流し。

 

平次「さぁ、いいか、下を見るんじゃねぇ、空を見るんだ、なぁ、新坊、ちゃんが、帰ぇってくるまでに仕事の腕をあげとかなくっちゃ、ならねぇんだろう?」

新吉「でも、足が……」

平次「歩ける。おめぇ、土蔵で姉さんを必死にかばったとき、ちゃんと歩けたんだぞ」

 

 心配そうに見守るお静、おふみ、八五郎。

 

平次「さぁ、気持ちを強く持つんだ。見ろい、こんな小さな草や花でも、地面に足をふんばって、伸びようとしてるじゃないか、なっ、踏まれても、踏まれても、ちゃんとお日さんに向って顔をあげてるんだ。さぁ、新坊、やってみよう、ん?」

 

 頷く新吉。

 

平次「(新吉の体から、そっと手を放す)そうだ、そうやって、立ってるんだぞ」

 

 平次、後ずさりして、新吉から離れる。

 

平次「さぁ、歩いてみるんだ、人の力を当てにしてたら、立派な職人になれねぇぞ。さぁ、ここまで(両手を差し出す)歩いてみろ」

 

 新吉、おそる、おそる、痛みをこらえて歩み始める。

 

平次「そうだ、その調子だ」

 

 思わず、お静、おふみ、八五郎、立ち上がって、新吉の所へ行く。

 

平次「よ〜し、新坊、歩けたじゃないか、さぁ、がんばるんだ、それ」

 

 新吉、平次のところまで、たどりつく。 平次、新吉を抱く。

平次「おう、よしよしよし」

新吉「歩ける、歩けるよね」

平次「ん、偉ぇぞ、新坊、ほれもう一度忘れねぇうちに」

 

 平次、再び新吉から離れる。

 

平次「いいか、来るんだぞ、さぁ、ここまで来るんだ」

おふみ「新吉」

八「よっ、うまい!」

 

 新吉、平次のところまで、たどり着く。皆、嬉しそう。

277話 8月25日 狼が死ぬ時 吉田輝雄 真屋順子 高原駿雄

 

 土蔵破りの一味を浪人津雲半兵ヱが、切捨てた。津雲も一味なのだろうか。その手口から、平次の頭に錠前破りの宗之助が、浮かぶ。宗之助には、目の不自由な妻、お美和と息子の長一郎がいたが、ふたりとも元津雲の妻子。忠義のためとはいえ、妻子を捨てた津雲、皮肉にも今度は、その忠義のために裏切りが待っていた。

 

 ゲスト  吉田輝雄さん(津雲半兵ヱ)、真屋順子さん(お美和)、高原駿雄さん(宗之助)

 

 侍の忠義と虚しさを描いた作品。

 

 忠義のため、妻子を捨て、浪人となった津雲半兵ヱ。士官の見込みがつくや、妻子を迎えにくるとは、なんと身勝手な。脅かされて、罪を犯した宗之助だけれど、心から、お美和と長一郎のことを思ってのこと、平次じゃないけれど、きっとこの三人は、幸せになるでしょう、なってもらいたいですね。

 

 

     ラストシーン

 

 お美和の家。 捕り物のあと。

 

宗之助「お縄を」

長一郎「おじちゃん!」

平次「外へ出よう」

 

 平次たちが、外へ出ると、津雲半兵ヱが、やってくる。殺気のある鋭い目で、弥七と勘助をみると刀を抜く。

 

勘助「助けてくれ!」

平次「待て!(津雲を止める)」

津雲「どけ! 邪魔をするな!」

平次「そうは、いかねぇ! たとえ、悪党でも命は尊いんだ。勝手な真似はさせませんぜ」

 

 睨みあう平次と津雲。津雲、あきらめたように刀をおろすが、急に宗之助の手首めがけて、斬りつける。

 

宗之助「わぁ〜!」

長一郎「あっ、おじちゃん! おじちゃん(宗之助のところに駆け寄る)おじちゃんが、斬られた」

お美和「あなた……何ということを、卑怯な!」

 

 津雲、黙って刀を納め、去っていこうとするが、腰に血が……大怪我をしているようす。

 

平次「その傷は?」

津雲「言うな!」

平次の心の声「そうだったのか、宗之助の右手を傷つければ、もう二度と錠前破りの腕を悪い奴に利用されねぇように」

 

 津雲、よろよろと近くの木に寄りかかる。

 

平次「おい、八!」

八「へい」

平次「おめぇは、そのふたりを連れて、ひと足先に行ってくれ」

八「へい、さぁ、来るんだ」

平次「おい、おめぇ(宗之助)は、これからすぐに奉行所に行って、名乗り出るんだ。その方が罪が軽くなる。おかみさん、坊やと一緒にお奉行所の門まで送っていきなせい」

お美和「親分さん、私が、この人の帰りを待っています。罪の償いをして、帰ってくるまで。いつまでも、待っています」

 お美和、宗之助、平次に深く頭を下げると長一郎をまん中に、手をつないで去っていく。平次、三人の姿が、見えなくなるまで、佇んでいる。長一郎が、急に振り返る。

 

長一郎「あのおじちゃん(津雲)、悪い人? ねぇ、そうだろう」

お美和「(しばし、考えて)そうよ、悪いおじちゃんよ、さぁ、行きましょう」

 

 宗之助、複雑な表情。平次、木に寄りかかっている津雲のところへくる。

 

津雲「行ってしまったか?」

平次「もう、見えなくなりましたぜ」

津雲「そうか……」

平次「あんたの狙い通り、あの三人は、きっと幸せになるでしょう。あっしもできる限り力になりますよ」

 

 津雲、安心したのか、急に崩れ落ち、絶命。 平次、津雲を見つめ、佇む。

278話 9月1日 竜神の棲む海 光川環世 工藤堅太郎 美川陽一郎

 

 平次、八五郎、万七、清吉、久々の休みに海へと旅に出る。村八分にされている娘、お袖と出会うが、父の弔いもひとりぼっち。その死は、謎だ。この村に竜神が棲んでいて、そのたたりだという。人身御供、村八分、茂平の死、みこのお告げ、恐ろしい竜の鳴き声……一体この村の秘密は何なのか。

 

 ゲスト  光川環世さん(お袖)、工藤堅太郎さん(源吉)、美川陽一郎さん(与吉)

 

 海辺への旅。平次は、手ぬぐいを吉原被り、万七は道中被り、いつもふたりの被り方が、違いますね。

 

 旅先なので、ほとんど浴衣姿の平次。 美しいおみ足をたくさん披露してくれました。十手の出番はなく、村人たちに襲われたときも投げ銭は一枚だけ。浴衣だったので、どうも懐から銭を出して投げたようです。投げた後、懐に手をいれてましたから。真犯人は、村人たちが、やっつけました。

 

 竜の鳴き声にたたりと怯える村人たち。平次は、竜の鳴き声に聞こえる謎ときもしました。物理学にも長けている平次です。

 ラスト、甚五郎を殺したのは、源助の父、与作でしたが、十年前に死んだことになっていた甚五郎、平次は「おめぇの殺したのは、幽霊だ」と言って与作を見逃します。

 

 

     ラストシーン

 

 浜辺。  江戸へ帰る平次、八五郎、万七、清吉を見送る源吉とお袖。

 

万七「え〜、どうだ、おまえたちも、こんな古くせぇ村を捨てて、江戸へ出てきちゃぁ」

清吉「そうだよ、そうしなよ。おまえ、あんなに江戸に憧れていたじゃねぇか」

源吉「いえ、私たちは、村にいることに決めたんです。これからは、村も変わっていくでしょう」

平次「そうだとも。おめぇたち、若けぇもんが、新しい村をつくっていくんだ」

 

 そこへ、与作が走ってくる。

 

与作「親分さん」

平次「おぅ、父つあん、いい嫁ができたじゃねぇか。似合いの夫婦だぜ」

八「へへへ」

 

 照れくさそうな源吉とお袖。

 

清吉「じゃ、しっかりやんなよ」

お袖「はい、……さようなら」

八「いい旅でしたね」

平次「うん、うん……じゃぁな」

 

 手を振る源吉、お袖。 浜辺を歩いて行く平次たち。

279話 9月8日 旗本無頼 中野良子 天津敏 富田仲次郎

 

 どう考えても、一番の悪、黒門の助五郎。何とその悪を旗本石川大学が、身元引受人となり、助五郎は、自由の身に。旗本の地位を利用して、石川は、助五郎ご手を組み、悪行三昧。そんな理不尽なことが、あってたまるか! しかし、町方は、手出しができない。旗本は何をやってもいいのか、一体十手は何のためにあるのか、平次は、無茶を承知で単身、石川と対決する。

 

 ゲスト  中野良子さん(お光)、天津敏さん(石川大学)、富田仲次郎さん(黒門の助五郎)

 

 お静は、縫物をしながら、旗本の悪行に腹を立てています。それを聞いて、平次は「俺の言いたいことをそこまで言ってくれる」と。お静は「女房ですもの」と誇らしげ。でもお静が「(このことを)うっちゃとくんですか?」と聞くと平次「うっちゃとくもんか、女房のおめぇが、そんなことをわからなくてどうする」だって。お静さん、一本やられましたなぁ。

 

 前回(#278)は、十手の立ち回りが、なかったけれど、その分、今回はすごかったですね、対浪人、対石川。ラストは、途中から二丁十手となり、身をかわすときもクルクル回って。あれだけの殺陣、橋蔵さんは、本番一回でOKだったのかな。

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  お静、平次の身を案じ、ひたすら、神棚に手を合わせている。やがて、夕日が、射しこみ、カラスが鳴く。長い間、祈っているのだろう。お静、何かを察し、急いで外へ出る。玄関の戸を開けると、丁度平次と八五郎が来る。

 

お静「おまえさん」

平次「すんだぜ(お静のところにくる)」

お静「(思わず、涙が流れる)ごめんなさい」

平次「お光さんは?」

お静「(袂で涙をふく)発ちました、信州へ。あたし、留めなかった、もし、おまえさんが、戻らなかったら、お光ちゃん、辛がるでしょうし、私もひとりで泣きたかった」

八「あのう、親分、あっし、ひとっ走り行って、呼んできましょうか」

平次「よしな、おめぇが行くこたねぇ」

お静「じゃぁ、おまえさん」

平次「与吉が、ちゃんと迎えに行ってるはずだい」

 

 頷くお静。 

 

 大木戸。  三島屋と番頭の佐平(お光の父)が、待っている。平次、お静、八五郎が来る。木戸の向こうから、旅姿のお光と与吉が、来る。

 

八「来ました! ちきちょう、ふざけやがって、へへへ」

 

 三島屋と番頭が、嬉しそうに顔を見合わせ、お光たちのところへ走っていく。

280話 9月15日 雨が憎い 葉山葉子さん(菊太夫)、沢宏美さん(お冬)、椎名勝己

 

 四日も降り続いている雨。平次は、一年前の橋場の渡しの事故を思い出した。そして今、次々と殺人事件が、起きている。それぞれの事件に浮かぶ、紫頭巾の女は何者? 平次は、この連続殺人事件が、橋場の事故と係わっていることを突き止める。その事故の真相は意外にも……。

 

 ゲスト  葉山葉子さん(菊太夫)、沢宏美さん(お冬)、椎名勝己さん(橋場の勘助)

 

 菊太夫役の葉山さん、このような気の強い役は、珍しいですね。もっとも、菊太夫の心根は優しいのですが。

 

 ラストに流れる曲、映画のよう、場面をすごく盛り上げていました。

 

     橋場…今も地名が、残っています。(東京都台東区橋場)大川(隅田川)を浅草から北にのぼった西岸に南北に細長く発達した町。手前に今戸という地名があり(現在もあります)焼き物(素焼)で、有名。(今戸焼)橋場は、江戸に出入りする物資の集積地。千住や川越あたりまで、船が行き来して荷物を運びました。江戸で最も古い渡し場。

(小学館 江戸時代館  参照)

 

 

     ラストシーン

 

 坂本新兵ヱ邸の庭。 坂本にドスを突き立てている菊太夫。

 

平次「そいつを殺しても、おっ母さんや妹は、生き返らねぇぜ、菊太夫! おめぇは、本当は、気の優しい娘なんだい。植辰とできていた雛太夫に事情を探るために勘助に近づけたのは、おめぇだ。三人の間がもつれ、ついに殺し、おめぇは何も知らねぇ雛太夫を巻き込んだことに悔んだに違ぇねぇ。そして、何とかして、おいらに嘘をついた。ひょっとしたら、軽業小屋から逃がしたのも、おめぇなんじゃねぇのか、菊太夫、思い出してくれ、その優しい気持ちを!」

菊太夫「うるさい! 私は、優しい娘なんかじゃない、復讐の執念に燃えた鬼!」

平次「とんでもねぇ、そんなことありゃしねぇ、なっ、その優しい気持ちを思い出してくれ!」

 

 菊太夫の力が抜けた一瞬の隙に坂本が、逃げ、平次の投げ銭が、肩に当たる。そこへ再び菊太夫が、ドスを突き付けるが、平次の投げ銭で、ドスが落ちる。菊太夫、座敷へ逃げる。

 

八「親ぶ〜ん!」

平次「おぅ、八」

 

 坂本は、八五郎と捕方に捕まる。平次、菊太夫の後を追う。

 

 座敷。

 

菊太夫「平次親分、お気持ちは涙がでるほど、嬉しゅうございます。お別れします」

 

 菊太夫、天井裏へ逃げる。 平次の顔のアップ。 何か言いたそうだが、言えない。

 

 大川端。  菊太夫、かんざしで、喉を突き、息絶えている。その後、平次たちが、建てたのか、菊太夫の亡くなった場所にふたつの墓標。

「橋場の渡し遭難受難者の霊」

「菊太夫母子三人之墓」

 

八「考えてみりゃ、この人たち、一人残らず死なねぇでよかった人たちなんですねぇ」

お静「あの四人が、小判に目がくらみさえしなければ(涙ぐむ)」

平次「奴らだって、長雨で大川の水さえ、増えなければ、こんな恐ろしいことは、考えなかったかもしれねぇ。菊太夫は、さぞ、雨が憎かったろうよ」

281話 9月22日 流人船 金井由美 田口計

 

 島送りの咎人たちの護送中、不知火の三右ヱ門ら、四人が脱走。その中のひとり、伊之吉が、誰かに刺され、大怪我をする。失敗に終わったかにみえた脱走計画。しかし、三右ヱ門たちは、次の計画を着々と進めていた。脱走の責めを受け、樋口は、平次や万七とともに、流人船を見届けるため、伊豆下田まで、出かける。 咎人たちの脱走計画とは……。

 

 ゲスト  金井由美さん(お信)、田口計さん(不知火の三右ヱ門)

 

 逃亡しようとして、仲間に刺された伊之吉、八五郎は、大慌て。そばにいた恋人、お信に「命を助けたかったら、その辺を走り回って、晒と焼酎……じゃねぇや、医者だ! 医者だ!」と言いつけます。平次は「バカ野郎! そんなことは、てめぇが、自身番に行って段取りするんだ!」と叱ります。八つあん、何年、御用聞きしてるの、しっかりして!

 

 流人船が、本土を離れるまで見届けるため、平次たちは下田まで、出かけます。今回は皆、菅笠(?)を被っています。平次親分、何でもお似合いです。

 

 ラスト、万七は、刀を振り回しての立ち回り。でもすぐアウト! 万七が刀を持つのは珍しい。

 

 平次は、鼻も利きます。平次の家をうかがっていた者が、落した手ぬぐい。汐の匂いがすると。脱出するため、醤油を飲んで黒死病のふりをした咎人。醤油の匂いを嗅ぎだし、仮病を暴きます。

 

 ラスト、戸にもたれて庭先を見ている平次の後姿、足の曲げ方といい、格好よく見せるすべを知りつくしていますね、素敵。

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  旅から帰ったばかりの平次、お膳にかけてある布きんをちょっとめくる。

 

平次「あっ、なんだ、バカに手回しがいいじゃないか」

お静「それは、だめ!」

平次「えっ?」

お静「陰膳なんですもの」

 

 お静、照れくさそうにうつむき、平次をうちわで仰ぎ始める。

 

平次「バカ野郎、おめぇ、ご大層な真似をしやがって。おい、へへへ(嬉しそう)」

お静「それで、そのう……伊之吉さんていう人は、一体どうなるんですか」

平次「(手甲と脚絆をはずしながら)いやぁ、事情がわかってみりゃ、お裁きにだって、おめぇ、お情けがあらぁ。それに越後屋はじめ、町内の歎願があってよ、樋口の旦那の話じゃ、江戸十里四方、三年の所払いくらいで済むんじゃないかと」

お静「そう、あ〜ぁよかった。やっぱり、おまえさんの十手に曇りは、なかったんですねぇ」

平次「何を言ってやがんでぇ。おう、おいおい、それより、飯の方は、どうなってんだよ。さっきから腹がへってるんだ。おっ、八も、おめぇ、すぐ番屋から帰ぇってくるぜ、おい、うん」

お静「ごめんなさい! 一本つけましょうね」

平次「そうしてくんな」

 

 立ち上がり、お勝手に行くお静を愛おしそうに見る平次。平次、立ち上がり、縁側に行く。花火の音がする。

 

八の声「八五郎、只今帰りました」

お静の声「ごくろうさん、ごはんの支度、もうすぐですからね」

八の声「へへ、すいませんね」

 

 戸にもたれるように立っている平次。どこからか、笛、太鼓の音が聞こえてくる。

 

平次「おぉ、そうか、今日から、あっちこっちの八幡様でお祭りか……」

282話 9月29日 祭りの殺人 谷口香 青柳三枝子 二瓶秀雄

 

 宵祭りの夜、万屋が殺された。万屋の文箱から、呪いのわら人形と日誌が出てきた。日誌に書かれた謎の文字は何を意味するのか。万屋の死体のそばに落ちていたクルス(十字架のペンダント)から、平次はキリシタンとの関係を疑う。そして、真田屋も殺される。元長崎の吟味役服部は、恐ろしくも悲しい事件を平次たちに話始める。それは第三の殺人事件が起こることを示唆するものだった。

 

 ゲスト  谷口香さん(お千代)、青柳三枝子さん(お秋)、二瓶秀雄さん(忠太郎)

 

 宵祭りで、賑わっているひょうたんや。平次とお静が、一杯やっています。お静が、「おゆきちゃん、きれいにして」と言うと平次「若いというのは、花だな」などと言いながら、お静に気を遣ったのか「おめぇだって、きれいだよ」と言ってお静に徳利を傾けました。平次親分って、すんなり、こういうことが言えるんですよね。いつもより、お酒が入っていたのか、ちょっとロレってましたが。

 

 八五郎が、忠太郎と大村屋の女将が会っていたとの情報を仕入れてきます。(忠太郎と女将は姉弟なんですが)八五郎は、平次がそのことを確かめに行くと思っていたら、平次「大村屋へ行って、女将さんに昨日は浮気してましたか? なんて言えるか!」だって。この台詞、もっともだけど、可笑しかった。万七親分だったら、女将さんに聞いちゃいそう!。

 

 忠太郎の父は、キリシタンの疑いで、処刑されました。キリシタンではなく、ただマリア像やクルスを集めるのが趣味だっただけ。でもこの時代、信者とされても仕方ない気がしますね。

 

 

     ラストシーン

 

 境内の裏手。 平次、八五郎、忠太郎が歩いている。

 

八「女の細腕というが、どうして、どうして、え〜っ、こぶはできるし、目は回るし、その上親分にドジなんて怒鳴られちゃねぇ、あっしゃぁ、女に弱いのが、玉にきずなんですよ、イヒヒヒ」

忠太郎「すいません、八五郎さん、このお詫びは……」

八「そうさな、大福できっぱり、けりをつけてもらおうかな」

忠太郎「えっ?」

平次「忠太郎さん、こいつはだらしねぇ野郎で、大福に目がねぇのよ」

 

 皆、大笑い。 お静とお秋が待っている。

 

八「忠太郎さん、噂の主……へへへ」

お静「八つあん! また何か蔭口言ってたんでしょ」

八「今日はいびられるなぁ」

忠太郎「(お秋に)おめぇの力、強ぇってさ」

お秋「あら、すいません」

八「おぅ」

平次「忠太郎さん、祭りのあとに本当の祭りが来たぜ。お白州は、明日だ。服部様のお口添えもあって、忍ばずして牢から出られるようになるだろう。今日一日、ゆっくり羽根を伸ばしてこい。これが、せめて出来る俺たちの償いだ」

忠太郎「償いだなんて、親分さん」

平次「あぁ、口幅ってぇようだが、これだけは、胸に留めといてくれ。おめぇは、今まで憎しみだけで、生きてきた。だが、これからは、人を愛して生きていくんだ。この方がどれだけ苦しいか、今にわかる。大村屋さんを赦してやれるかい」

忠太郎「へい、赦してやります」

平次「よかった。なぁ、お静、おぅ、俺達も忠太郎さんを習って祭りのあとを楽しむか」

お静「まぁ、ほんと! 嬉しいわ、おまえさん」

 

 八五郎、いじけている様子。

 

平次「(八五郎の様子を見て)八、どうしたんだい」

お静「私たちじゃ、不足なの?」

八「い、いいえ、姐さんに悪いなって思って」

お静「柄にないこと言って、八つあんたら」

 

 皆、大笑い。去っていく。

283話 10月6日 おかめとひょっとこ 児島美ゆき 太田博之 河津清三郎 丹下キヨ子

 

 深川八幡の祭礼。犬猿の仲の材木商飛騨屋と駒形屋。今日も喧嘩が始まろうとしていた。しかし、飛騨屋の息子菊太郎と駒形屋の娘お千代は、秘かに心寄せ合う恋人同士。親同士の仲の悪さに頭を痛めている。そんなとき、お千代の兄が、殺され、続いて半次が、殺される。半次の握っていた根付から意外な犯人が、浮かび上がる。

 

 ゲスト  児島美ゆきさん(お千代)、太田博之さん(菊太郎)、河津清三郎さん(与兵ヱ)、丹下キヨ子さん(お豊)

 

 「あだ(艶)は深川 いなせは神田」とお静。あだは八五郎が、深川芸者を見て色っぽいと、いなせは、平次の啖呵ですね。

 

 深川八幡のお祭り。平次夫婦は、出かける予定が、御用でおじゃん。ひょうたんやのお勝が、おゆきと一緒に行こうとお静を誘います。お勝は、飛騨屋と駒形屋との喧嘩みたさのようでした。境内で、御用中(見回り)の平次と八五郎にばったり会います。ちょうど喧嘩が始まり、平次は仲裁に。啖呵がいいですね、でもお勝は、喧嘩が中止になって「せっかく、お江戸の花が咲かずじまいですよ」とぶつぶつ。

 

 平次の企てが、大成功。下手人は捕まり、若いふたりは、親の許しを得、両家の仲もよくなりました。万、万才!

 

 ラスト、平次は紋付での(違い柏)立ち回り。お静は留袖を着ていましたが、違い柏の紋が入っていたような。

 

 

     平次の啖呵。

 

 深川八幡。 喧嘩の仲裁に入る平次。

 

平次「おぅ、待ちない、待たねぇか……明神下の平次だ! この喧嘩、預かるぜ(かかってきたふたりをやっつけて)いいか、祭りはおめぇたちのもんだけじゃねぇんだ。年に一度の息抜きを楽しんでいる町の方々に迷惑をかける奴は、この平次が赦さねぇ!」

 

 

     ラストシーン

 

 往来。 辰巳屋与兵ヱと駒形屋の勘助が、捕まる。

 

平次「おぅ、八」

 

 八五郎、お縄にした勘助と与兵ヱを連行する。

 

八「へい」

平次「悪党どもにつけこむ隙を与えたのは、おめぇさんたちだ。せいぜい肝に銘じるんだぜ」

飛騨屋辰造「はい、何もかもおっしゃるとおりで。自分たちの愚かさ加減が、十分身に沁みました。なぁ、お豊さん」

駒形屋お豊「角突き合いは、きっと控えます。次の代には、飛騨屋も駒形屋もひとつなんですから」

お千代「じゃ、ふたりの仲を認めてくれるのね」

辰造・お豊「うん」

菊太郎「しめた! そうと決まりゃ、こんな窮屈なもんなんか」

お千代「うん」

菊太郎「え〜い」

 

 菊太郎とお千代、婚礼衣装を脱ぎ捨てる。

 

お豊「何もこんなところで」

菊太郎「お千代ちゃん、よかったな」

 

 婚礼衣装の下に祭りの半被を着ていた菊太郎とお千代、解放された!と両手をのばして「あ〜あ」と伸び。 衣裳を片づけている辰造とお豊。

 

菊太郎「(辰造の肩をたたき)お父つあん、祭りはまだ、終わっちゃいねぇよ」

辰造「あぁ」

菊太郎「親分さん」

平次「おぅ」

お千代・菊太郎「ありがとう(頭を下げる)」

飛騨屋の若い衆の声「お〜い、若旦那〜」

 

 菊太郎、お千代、うちわを受け取る。

 

菊太郎「行こうぜ」

 

 飛騨屋の衆に見送られ、菊太郎とお千代、参道を走っていく。

284話 10月13日 白い粉 天知茂 芦屋雁之助 金田竜之助

 

 河内屋が、首を吊った。手には、白い粉の入った赤い包みが、握られていた。医師伊藤北陽は、御禁制のモルヒネと断定する。モルヒネを売りさばき、大金を得ていた上方の薬屋、弥六が、殺された。そのことから、危険な薬と知りながら、保有していた北陽に平次は怒りの十手を向ける。しかし、平次は、モルヒネは、使いようによって、善にもなることを思い知らされる。

 

 ゲスト  天知茂さん(伊藤北陽)、芦屋雁之助さん(弥六)、金田竜之助さん(佐久間定太郎)

 

 井筒屋からの帰り道。お静は、平次と一緒になる際、不安でいっぱいだったとか。もう少し辛抱すれば、もっと素敵な人に会えるかもと考えたらしい。平次親分以上に素敵な人はいませんよ! ちょっぴり、意地悪を言いたくなるのも女の性(さが)かしら。そのあと、お静は、平次に甘えるんですよ〜。

 

 平次が、北陽を捕まえたことで、患者たちは怒り心頭。平次の家に石やら、野菜を投げ込みます。そこへ、万七と清吉が来ます。万七は珍しく平次に味方します。「平次に間違いはない」と。

 

 危険だし御禁制の品だからとモルヒネを取り締まろうとする平次、医師として、人の命を救うためにモルヒネを必要とする北陽、悪用して金欲に走った同心佐久間、三人三様でした。

 

 

     結婚前は

 

 往来。 平次とお静、井筒屋の娘、おそのの婚約祝に行った帰り道。

 

お静「おそのさんって、本当に幸せな娘(こ)ね。人の口にのぼるほど思い、思われた相手と一緒になれて。その上、どこからも文句のでない家柄同士ですものね」

平次「それはそうと、変に沈んでいたな。あんなに明るくてお茶目だった娘が」

お静「うふふ、それでいいんですよ」

平次「はぁ?」

お静「いえね、私にも覚えがありますけどね、もうとにかく、胸が不安で一杯なの。それにいろいろと考えちゃうし」

平次「いろいろって?」

お静「今、もう少し辛抱していたら、もっと素敵な人に巡り合えるんじゃないかしら……とか」

 

 平次、驚く。お静、さっさと平次の前を歩いて行く。

 

平次「なにを〜!」

お静「そりゃそうですよ。女にとっては、一生のことですからね」

平次「すると何かぁ、おめぇも俺とのとき、あんな、しおらしい面(つら)して、そんなこと考えていやがったのか、もっと辛抱してりゃいいとか、なんとか」

 

お静、ツンとして、先に歩いて行く。

 

平次「はぁ〜あ」

お静「(立ち止まって)ねぇ、おまえさん。ちょっと寄り道して、仲見世の方へ行ってみましょうよ、ねっ、(道の真中で、平次の腕にしがみつく)」

平次「おいおい、よさねぇか、みっともねぇ」

お静「八つあんのたいへんだぁも、このところ鳴りをひそめているし、ねぇ、いいでしょ?」

 

 平次、仕方ないというふうだが、嬉しそう。

 

お静「うふふ」

平次「ハハハ」

 

 ふたり、仲見世向うが、八五郎の「親ぶ〜ん」の声が!

 

 

     万七の啖呵

 

 平次の家。  平次の家に石や野菜を投げ込んでいる北陽の患者たちに向って。

 

万七「やいやいやい、てめぇら何をしやがるんだ、この野郎! 平次に石を投げる奴は、俺が相手だ! だいたい、てめぇらに何がわかる。銭形平次のすることに間違ぇはねぇんだ!」

清吉「三輪の万七もだい!」

万七「(小声で)そりゃそうだ、もちろん、俺もだ。八丁堀で、銭形平次と三輪の万七に限って、お調べに間違ぇはねぇんだ!」

 

 

     ラストシーン

 

 奉行所の前。  自首をするため、北陽が平次と来ている。

 

平次「先生、どんなものでも、使う人の心によって、毒薬にもなるし、良薬にもなるってことを、はっきりこの目で、見極めました。あっしゃ、先生の為になるなら、お白州へでもどこへでも出て行って、そのことを話しますぜ」

北陽「ありがとう」

 奉行所の門をくぐる、北陽。見送る平次。

285話 10月20日 八丁堀の女 扇千景 谷村昌彦 高野浩幸

 

 強請り屋、すっぽんの勘八が、墓場で殺されていた。凶器は、由緒ある短刀。その近くに同心加倉井左近の墓があったことと短刀から、加倉井の未亡人、志乃が、疑われる。しかし、志乃は、強請の原因を頑として言わない。一人息子、孝太郎の秘密が、露見するのを恐れていたのだ。が、孝太郎は、十歳とはいえ、立派な志をもった男に育っていた。

 

 ゲスト  扇千景さん(志乃)、谷村昌彦さん(源助)、高野浩幸さん(孝太郎)

 

 加倉井の息子、孝太郎に平次は、投げ銭を教えてくれと言われます。平次は、「立派な役人になるには、まず、学問を」と諭しますが、子供にもよくわかる、説得力のある話し方だと思いました。

 

 甚八の女、お紋に話を聞こうとして、平次は手首を噛みつかれ、そのあと浪人村木半太夫にいいがかりをつけられ、ビンタをくらいます。親分、散々な日でした。

 

 万七と清吉、やたら食べている場面がありました。丼ものに、握り寿司、寿司を食べているとき、脇にそばのせいろが重なっていました。

 

 平次とお静が、漬物の樽を運んでいました。なにをやっても様になる平次です(裾をはしょって、たすき掛け)。樽の中身は白菜かなて……(#44でお静が白菜を漬ける場面がありました)

 

 

     投げ銭を教えてほしい

 

孝太郎「平次、頼みがある」

平次「何です?」

孝太郎「投げ銭を教えてもらいたいんだ」

平次「投げ銭を? 覚えてどうするんです?」

孝太郎「俺は、捕り物名人になりたいんだ。父上のような、りっぱな役人になって、母上に喜んで頂くんだ」

平次「そいつは感心ですね、坊ちゃん、おいくつです?」

孝太郎「十歳」

平次「そうですか、ねぇ、坊ちゃん、立派な役人になるには、投げ銭が得意なだけじゃ、あっしら岡っ引きと変わりありません。坊ちゃんの父上は、物事の道理をわきまえて、吟味にあたったからこそ、名同心とうたわれたんだ」

孝太郎「じゃ、物事の道理をわきまえるには、どうしたらいいんだい?」

平次「そうですね、まず、書物をたくさん読んで、学問を身につけるんです」

孝太郎「ふ〜ん、学問か、じゃ学問を身につけたら、投げ銭を教えてくれるかい?」

平次「へい、お約束しますよ。へっ、さぁ、もうお帰りなさい。母上が案じていらっしゃいますよ」

孝太郎「うん」

 

 孝太郎が、去る。 平次、辺りを見回す。

 

平次「八丁堀か……」

 

 平次、去る。

 

 

     八丁堀の女

 

 平次の家。  平次とお静、漬物の樽を勝手口に運ぶ。 平次、裾をはしょり、手ぬぐいでたすき掛け。(片側)お静もたすき掛け。

 

お静「よいしょ……八丁堀の女の人っていうのは、みんな美人なんですってね」

平次「なにも、おめぇ、取り立てて美人が、集まってるわけじゃねぇ。ただ、着てるものや使う言葉が、垢ぬけてるんだ。いわゆる八丁堀風といってな」

お静「あぁ、それじゃ、武家の上品さと商家の華やかさを兼ね備えているっていう、あれですか」

平次「それというのも、住んでいるのは町方のお役人だ。あぁ堅苦しい武家の作法を押し通そうにも、俺たち町人が、許しゃしねぇからな」

お静「うふふ、おまえさんにかかると、この世で一番偉いのは、町人ということになるのね、うふふ」

平次「まっ、そういうわけだ。だがな、たったひとつ、おいらたちが、見習っていいものがある」

お静「何かしら」

平次「心意気だよ(漬物石を樽の上にのせる)いや、町方の同心にゃ、定回り方、本所方吟味方など様々あるがな、みんな、一年ばかりの、いわば年季奉公だ。それだけに頼りになるのは、自分の力だけだという心意気が、沁み込んでいるんだ。十やそこらの子供のうちからな」

 

 平次、漬物石を押さえつけている。

 

お静「あっ、おまえさん、もうその手を離していいわ」

平次「あぁ、おめぇに任せるが、でぇじょうぶか?」

お静「大丈夫、大丈夫、頼りになるのは、自分の力だけ〜と」

 

 平次、家の中に入る。お静、漬物樽を動かそうとする。

 

お静「よいしょ、あっ(転ぶ)おまえさ〜ん、助けて〜」

 

 

     ラストシーン

 

 番屋。  牢から源助を連れてくる、平次。 八五郎、志乃、孝太郎がいる。

 

源助「奥様」

志乃「源助、苦労させたわね」

源助「はい、いいや! あっしは、また出過ぎた真似をしたんでしょうか?」

志乃「いいえ、おまえのお陰で、私は、苦しみから、救われたのよ。ありがとう」

源助「奥様、も、もったいない」

孝太郎「源助、さぁ、帰ろう、自慢の花が枯れちゃうよ」

源助「へい」

志乃「ありがとうございました」

 

 志乃たち、平次に頭を下げる。

 

孝太郎「源助、行こう」

 

 志乃たち、番屋から出ていく。 後姿を見つめる平次と八五郎。

 

八「あの人たち、これからどうなるんでしょうかね」

平次「そのことは心配するこたねぇよ、三人とも、見事な八丁堀の住民だぜ」

 歩いて行く志乃たちの後姿。

286話 10月27日 お母(か)んかんにん 岡八郎 山田桂子

 

 上方生まれの由松は、母親泣かせのドラ息子。今日は、博打の罪で奉行所の前で、軽敲き(五十回)の罰を受けている。そのせいで、奉公先の米問屋江戸屋を首になる。が、平次の計らいで、再就職。しかし、江戸屋は、裏で御蔵奉行と手を組んで、ひと儲けしようと悪だくみ。由松は、仕組まれた罠に嵌まってしまう。

 

 ゲスト  岡八郎さん(由松)、山田桂子さん(おてつ)

 

 平次の紋付袴姿が、見られましたが、袴のこと、窮屈袋なんて言ってました。

 

 平次、おてつが、作った大福を「おいら、大好物だ、おおきに、おおきに」と言って(本当は苦手)もらってきます。中にふたつほど、地面に落ちた大福が混じっているのですが、そしらぬ顔で、お静に食べさせてしまいました。お静が、二つ目の大福を食べたとき「ジャリって……砂みたい」と。そのときの親分の顔ったら〜。

 

 平次の衿足を剃っているお静。そこへ八五郎が来て「姐さん、代わりましょうか」と申し出ますが、お静「邪魔しないで〜」と。ごちそうさま、八五郎もこけました。

 

 ラスト、由松とおてつが、徳三郎の供養にと仏壇の前で、「河内音頭」と唄います。由松ったら、仏壇の鈴を、お囃子代わりにたたくんです。可笑しかった。調子に乗って、手拍子をしてしまう八五郎。それを見た平次のあきれ顔。お静が、ひとり冷静でしたが、返って浮いていて、ちょっと変でした。いっしょに苦笑したほうが、自然だったのに。

 

 

     ラストシーン

 

 由松の家。  徳三郎の供養に、平次、お静、八五郎、由松、おてつが来ている。

 

由松「(おてつの袖を引っ張って)おかん、徳ちゃんが、楽しみにしてた、おかんの河内音頭、あれ、一度、聞かしたりいなぁ」

おてつ「親分さん、かましまへんやろか」

平次「ああ、いいとも。何よりの供養だ。おぅ、由松さん、おめぇも唄ってやんな」

由松「へっ、ほいなら、おかん」

 

 由松、おてつ、仏壇の前に並んで座る。

 

由松「(鈴を鳴らして)徳ちゃん、聞いとれよ」

由松・おてつ「♪エ〜、さぁ、あては、この場の皆さまえ〜 ちょいと出ました あたしもえ〜 おみかけどおりの若輩でえ〜 よォ ホイホイホイ エンヤコラセ〜ドッコイセ」

 

 由松、仏壇の鈴で、拍子をとって、チンチンチン〜と鳴らす。八五郎も調子にのって、手拍子。平次、それを見て呆れた顔、そして苦笑。八五郎、ばつが悪そう。お静ひとりが、真面目な顔をしている。

287話 11月3日 宿場のつむじ風 野川由美子 平井昌一 沼田曜一

 

 濃州浪人相良惣右ヱ門が、殺され、埋立地の払い下げ目論み書が、盗まれた。相良は、埋立地に養生所を移転させようと寺社奉行に申し出る矢先だったのだ。しかし、その利権を巡り、欲の突っ張った悪が動き出す。亡き父のため、養生所建設に必死になる娘、早苗。平次は、材木問屋武蔵屋重兵ヱの正体を見破る。

 

 ゲスト  野川由美子さん(早苗)、平井昌一さん(小川栄之助)、沼田曜一さん(郷田甚十郎)

 

 早苗役の野川由美子さん、武家娘ですが、芸者に出て、啖呵もきって、大活躍。野川さんは、錦之介さんに憧れて女優になられたとか。啖呵も錦之介さんの啖呵に惚れて、参考になさったようです。

 

 そんな早苗ですが、平次に芸者姿を見られた時、栄之助だけには、この姿を見せたくないといいます。平次は「人間、正しく強く生きるためには、曲がったことさえしてなきゃ、何も恥ずかしいことはありません」と諭します。

 

 ラストは、大捕り物。捕方は、いっぱいいるし、樋口様も万七も清吉もいます。たくさんの道具が使われていました。大八車、目潰し、はしご、縄(縄を張って走ってくる悪党の足を引っかける)、投げ縄、六尺棒、網などなど。

 

 ドジな場面、万七が目潰しを受け、清吉と八五郎は、お互いに投げ縄をかけあい、お互いの首を絞めることに。

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家の外。 平次たちが、家を出ると早苗と栄之助が来る。

 

平次「おぅ」

早苗「親分さん、本日、寺社奉行からお呼び出しがあり、埋立地の一部、養生所設置のため、無償でお払い下げとの御沙汰……」

平次「ほう、そうかい、そりゃよかった」

栄之助「これも、みんな平次殿の……」

平次「な〜に、そりゃ二人の真心でさぁ」

お静「ねぇ、おまえさん」

平次「えっ」

お静「何のおもてなしも、できないけれど。今夜、うちへ来て頂いて」

平次「おぅ、そりゃいいな」

早苗「それなら、私どもが」

平次「な〜に、どうせ、御香にめざしだ。御遠慮なさるほどのことじゃござんせんよ」

お静「あらぁ、もう少し、御馳走できますよォ」

平次「えっ、なんだい、どっか、へそくってやんな、ちくしょう」

 

 皆、大笑い。

 

八「そうすると、今度はおふたりの御婚礼のめでてぇお盃ですな、へへへ、まぁいいじゃないすっかぁ」

 

 八五郎、林家三平師匠の「どうもすいません」(右手のこぶしを額にあてる)のアクション。

288話 11月10日 明暗一筋切(ひとよぎり) 田崎潤 岡田由起子 沢村宗之助

 

 娘が、次々と行方知ずに。そこには、いつも尺八の音が聞こえてくる。篤志家の平戸屋の奉公人伍平の娘、お町も行方知れずに、そして、伍平が、殺される。平次は、虚無僧が、事件に係わっていると確信し、町方には手出しのできない、普化宗総本山一月寺に命をかけて赴く。

 

 ゲスト 田崎潤さん(竜耳軒)、岡田由起子さん(お町)、沢村宗之助さん(平戸屋)

 

 今日は、お静と平次が挙式した日(五年前)。ヒントを与えても、なかなか思いださない平次にお静はふくれっ面。結婚当時も今も、お金に苦労しているよう、偶然、樋口様の耳に入って、ばつが悪そうなふたり。

 

 またまた、町方の手出しができない寺に、危険を承知で赴く平次。その前夜、平次を送り出すお静、「やっぱり、俺の女房だとほめて」と涙を流します。

 

 樋口様は、尺八に興味があったのですね。

 

 虚無僧に扮した平戸屋の官次は、催眠術や、媚薬、尺八の音で、娘たちを誘いだします。危く平次も催眠術にかかりそうになります。何とか相手に投げ銭をして、難を逃れます。

 

 娘たちを助けにきた竜耳軒、悪人かと思っていたら、元同心で、いい人でした。かっこよかったですね、尺八を吹いて、すっと去って行くなんて、憎い。

 

 八五郎さん! ふられた金太をバカにして……あなたもでしょ!

 

 

     今日は何の日?

 

 平次の家。  平次とお静が、食後のお茶を飲んでいる。

 

お静「おまえさん、今日のお帰りは?」

平次「うん、南のお奉行所の月番は、今日からだ。初日は、早々、そう遅くはならねぇと思うが……なんだい? 何か用事でもあるのか」

お静「今日は、何の日か、忘れちまってるんでしょ」

平次「あん?」

お静「五年前の今日」

平次「五年前……はてな?」

お静「うん、薄情者! ふたりのお式を挙げた日じゃありませんか」

平次「あっ、そうそう」

お静「知らない! (平次に背を向けてしまう)」

平次「そうだったなぁ、おい、アハハ、すまん、すまん。いや、早ぇもんだなぁ。あの頃は、大家に店賃も払ぇねぇでよォ」

お静「あら、この節だって、もうふたつも溜まっちまってるんですよ、お家賃」

平次「あ〜そうかい。こりゃ、とんだやぶへびだなぁ」

 

 ふたり、笑う。 玄関の戸が開く音。

 

男の声「ごめん」

平次「お、おい、大家じゃねぇか、おい」

お静「大家さん? あいすいませんけど……あのう」

男の声「大家じゃねぇよ」

お静「じゃ、あのう、三河屋さん? 悪いんですけどね、今度のまわりにしてくださいな」

男の声「平次! あがるぞ!」

平次「あっ、なんだ、樋口様じゃねぇか」

 

 平次とお静、あわてて、玄関へ。

 

平次「あっ、どうもいらっしゃいまし」

樋口「あっちこっち、だいぶ払いが、溜まっているらしいな、アハハ」

平次「つまらねぇことお耳に入れちまいまして(お静の顔を見て)なんでぇ、バカ野郎、おめぇ」

樋口「まぁ、仕方がねぇやな。何もかも値上がりで、上がらねぇのは、お手当だけっていう当節だからな、アハハ。なっ、お静さん」

お静「いえ……ごゆっくり」

 

 

     不吉な月夜

 

 平次の家。  晩酌。

 

平次「(一杯飲んで)明日っから、六年目か……」

お静「えっ?」

平次「ん、夫婦になってからよォ、まぁ、末長く、よろしく頼むぜ」

お静「こちらこそ……あら、鈴虫かしら(縁側に出て、、夜空を見上げる)……まぁ!」

平次「どうしたい」

お静「気味の悪い。お月様、血の色みたい」

 平次も来て、空を見上げる。 不吉の前兆だったのか、伍平が、殺される。

 

 

     旅立ち前夜

 

平次の家。  平次、長火鉢の前で、腕組をして、考えこんでいる。 隣室のお静、不安そう。

 

平次「お静、明日は早いぜ」

お静「下総行きですね」

平次「うん」

お静「下総、小金、一月寺……そうでしょ?」

平次「お静、勘弁してくれ」

お静「いいんです。樋口様が、いくらいけないとおっしゃったって、それでやめる、おまえさんじゃない」

 

 じっと、お静を見つめる平次。

 

お静「ほめて、おまえさん、(涙ぐんで)やっぱり、俺の女房……」

平次「お静……」

 

 

     ラストシーン

 

 神社。  参拝を終えて、平次、お静、八五郎が、境内を歩いている。島造とおたきに出くわす。

 

平次「おぅ」

島造「こりゃ、どうも」

平次「目は、治ったかい」

島造「へい、お陰さまで」

平次「ほぅ、そりゃよかった。まともに稼ぐんだぜ」

島造「へい……行こうか、ごめんなすって」

平次「あぁ」

 

 参道を歩いている平次たち。人待ち顔のお町に会う。金太が、後ろからお町の目を手で覆う。

 

お町「あっ、いや〜ん」

金太「へへへ、いや〜んって、あの、お町ちゃん、あの、お汁粉でもどうだい」

お町「(迷惑そうに)ええ」

金太「あの、お町ちゃん、ねっ」

 

 伊之が、かんざしを持ってお町のところにくる。

 

伊之「おまちどう〜(かんざしをお町に見せて)どう?」

お町「これ?」

伊之「うん……さぁ」

 

 伊之とお町、去っていく。

 

金太「ちくしょう〜、あ〜ぁ」

八「また、ふられやがって、ば〜か、イヒヒ」

 

 八五郎、平次とお静が、先に歩いて行っているのに気づく。

 

八「あっ、親ぶ〜ん」

 

 八五郎、金太にもう一度「ばか」とでも言っているようす。嘆く金太。

289話 11月17日 いつか青空 西村晃 大川辰五郎 海老名泰葉

 

 薄幸な過去をもつ、角兵衛獅子良太とお久。厳しいながらも優しい親方、伝兵ヱものとで、芸を披露している。ある雨の日、偶然、親方が拾った財布から、殺人事件に巻きこまれる。疑われる伝兵ヱ。しかし、良太が、下手人らしき浪人を目撃していた。やがて、魔の手が、良太たちに伸びてくる。

 

 ゲスト  西村晃さん(伝兵ヱ)、大川辰五郎さん(良太)、海老名泰葉さん(お久)

 

 橋蔵さんと辰五郎さん、親子共演第二弾。 泰葉さんは、林家三平師匠の次女です。

 

 万七が、浪人に扮し、清吉は、やくざに扮して、怪しい浪人を捜しに賭場に潜入。あとから来た平次に「三輪の、さすがだ、一歩先を越されたぜ」と言われ、ご満悦。でも結果は、平次が、一歩先に行っていたのでした。

 

 万七が、伝兵ヱをお縄にしたとき、「下手人らしい名前」だの、「悪い事しそうな顔」だのと伝兵ヱに理不尽なことを言って可笑しかったです。

 

 伝兵ヱを解放した平次。ひょうたんやで、伝兵ヱ、良太、お久にごはんをおごります。お静を呼んで「勘定奉行が、来たから、安心して食べろ」ですって。

 

 良太たちが、浪人に襲われ、平次が助けます。 またまた、かっこいいお父様を見られた辰五郎さん、幸せですね。

 

 ラストは、平次と良太のツーショット。父子共演ならではの素敵な、おまけのシーンでした。

 

☆撮影秘話…レギュラーの八五郎、林家珍平は、「なにしろ、あっしの師匠の大事なお嬢さん、ええ、もう痩せる思いでしたよ」と笑いながらも撮影の合間には、二人を金閣寺や三千院に連れて行くなど、師匠林家三平ゆずりの好人物だったそうな(時代劇専門チャンネルHP H.14 から)

 

 

     ラストシーン

 

 宿「大野屋」。 伝兵ヱたちが、出てくる。

 

お松「寂しくなっちまうねぇ」

大熊団ヱ門「来年の春には、また戻ってくるよ……おぅ」

 

 平次、お静、八五郎が、来る。

 

伝兵ヱ「親分さん」

平次「おぅ」

伝兵ヱ「いろいろ、お世話になりました」

八「なんだ、もうみんな、立っちゃうのか」

源五郎「あっちこっちで、秋祭りが始まりますんで」

甚六「村から村へ渡り鳥。行方定めぬ 旅道中だ」

お静「それで、坊やは?」

伝兵ヱ「ええ、今から、お屋敷へ送っていくんでさ。どうも聞き分けてくれねぇんで」

お静「無理もないわ」

良太「おいら、親方と一緒にいく。おじちゃん、親方に頼んでください」

平次「おめぇの気持ちは、おじちゃんにもよ〜くわかるよ。だがな、人間には、それぞれ道というものがあるんだ」

伝兵ヱ「おっ」

 

 お駕籠がきて、宗方の奥方が出てくる。

 

奥方「良太郎を迎えに参りました。夕べのことは、平次殿より伺い、夫も心より恥じております。良太郎は、たとえ、名目は、養子でもきっと、宗方の跡目を継がせるようにいたします」

大熊「よかったなぁ、良太」

源五郎「わざわざ、迎えに来てくださったんだぜ」

良太「お姉ちゃんは?」

伝兵ヱ「良太……」

奥方「お久も一緒に屋敷に引き取り、行儀見習いとして、養育したいと思いますが」

伝兵ヱ「ええ、そうして頂ければ、ほんとうに」

お松「よかったわねぇ、お久ちゃん」

お久「うん」

良太「親方はどうするの?」

伝兵ヱ「どうするって、おめぇ、決まってるじゃねぇか」

良太「じゃ、おいらも親方と一緒に行く」

伝兵ヱ「バカ! 何てこと言うんだ。せっかく、お屋敷に帰れるというのに、バチ当たりなこと、言うもんじゃねぇ」

良太「だって、親方、寂しそうだもん」

お久「あたいたちがいないと、角兵衛獅子が、できないでしょ?」

良太「へたくそって、言ってもいいよ、柏餅で寝たっていいよ、親方と一緒に行きたいんだ」

伝兵ヱ「うるせぇ! 甘えんじゃねぇ、俺はな、おめぇたちみたいなのと別れられて、サバサバしてるんだ」

良太「嘘だ! 親方、泣いている」

伝兵ヱ「てやんでぇ、こお俺が泣いてたまるけぇ、それによ、俺はもう角兵衛獅子、やめにしたんだ。源五郎のな、弟子入りしたんだ。いいか、聞かせてやっから、よく聞いてろよ、いいか、♪あ、とんとん、とんがらしの粉、ぴりっと辛いは、山椒の粉、そわそわ辛いは、胡椒の粉、けしの粉、ごまの粉……(流れる涙を手で覆う)もう何だか知らねぇが、唐辛子が、目に沁みて、(奥方の所へ行く)奥方様、良太、じゃねぇ、坊ちゃん、好きなもんはね、卵と豆腐なんで、たったひとつ、嫌いなもんはね、らっきょうで……それにお久は、これから寒くなるってぇと風邪引きやすくなるんで、へい」

奥方「わかりました。きっと気をつけます」

大熊「じゃ、俺達は……」

源五郎「良太…いや、坊ちゃん、達者でな……お久坊もな」

 

 三人の後を追って、伝兵ヱも名残り惜しそうに去っていく。

 

良太「親方!(伝兵ヱの後を追う)」

 

 あとから、平次。良太と伝兵ヱたちの後姿をみつめる。

 

平次「坊や、おめぇは、男の子なんだ、侍の子なんだ。これからだって、世の中にゃ、もっともっと辛ぇことや、悲しいことも起こるだろう。だがな、負けちゃいけねぇ、歯をぐとくいしばって、堪えるんだ。堪えて、乗り越えて行かなくっちゃ、いけねぇよ、ん?」

 

 平次と良太、再び伝兵ヱたちの行く先をみつめる。

 

290話 11月24日 死者の証言 佐藤允 磯野洋子 原健策

 

 大工の棟梁勘五郎が、屋根から落ちて、瀕死状態に。今わの際に平次を呼び寄せ、「源太郎殺しは、俺だ」と言ってこと切れる。弟子の乙松を下手人として、伝馬町に送った平次。誤認逮捕か、平次は進退をかけて、乙松を解放す。しかし、九紋竜の伝造が、現れたことで、事は急変する。 乙松と源太は、深い関わりがあったのだ。 平次はどうなる!

 

 ゲスト  佐藤允さん(乙松)、磯野洋子さん(お美代)、原健策さん(甚五郎)

 

 平次が、誤認逮捕? 八五郎も大あわて。 万七が、平次を慰めます。誤認逮捕が、日常茶飯事(笑)の万七ですが、平次の場合は、深刻です。樋口様に十手返上覚悟で乙松を解放してくれと頼みます。

 

 平次の家。 丸火鉢のそばで、思案中の平次、カメラアングルが、茶ダンスから、そのあと着替えの場面は、タンスの陰からと珍しいアングルでした。 平次が、着換える時、帯の締め方、素人の私が見てもよくわかりました。

 

 乙松を解放したことで、もうひとつの事件が浮上。けがの功名。

 

 

     ラストシーン

 

 甚五郎の墓。 平次とお静が、墓参りに来る。

 

お静「甚五郎親方、今わの際にどうして、あんな嘘を」

平次「一人娘の嘆きを見るに見かねたんだろうな。足場を踏み外して落ちた時、どうせ死ぬ命ならと、乙松の身代わりになる決心をしたんだい」

お静「いつの世も親が子を思う心は、変わらないのね」

 

 すでに、お美代が墓参りに来ている。 お美代は、丸に勘の字が入った印半纏を着ている。

 

お美代「あっ、親分さん」

平次「お美代さん、おめぇさん、お父つあんの跡を」

お美代「はい。女だてらにと世間の笑いものになるかもしれませんけど、どうか見守ってくださいまし」

平次「あぁ、いいとも」

お静「親方への供養の花が、お美代さんの門出をお祝する花に。草葉の陰で、きっと喜んでいなさいますよ」

 

 平次、お静、勘五郎の墓参りを始める。 そばにお美代。

291話 12月1日 蒲鉾の板 小畠絹子 池信一 佐納達也

 

 清吉とそっくりの男が、大川に浮かんだ。胸の傷から、殺しと断定される。清吉だと思いこんだ万七は、がっくり。そして、びっくり、清吉に美しいおかみさんと子供がいたのだ。葬式の後、ひょっこり、旅から帰った清吉にまた、びっくり。御金蔵破りの鍵となった、蒲鉾の板を巡って、次々と殺人が起きる。亡くなった男の正体は?

 

 ゲスト  小畠絹子さん(お仙)、池信一さん(清吉、清吉の弟)、佐納達也さん(清太郎)

 

 今回は、清吉が主役。葬式の帰り道、万七も平次も紋付袴姿、二人とも借りものだって。

 

 清吉にそっくりな男は、別々に育てられた弟でした。

 

 清吉の生い立ち…雷門に捨てられていた。左官の松助という老人に拾われ、育てられたが、七つのとき、死に別れた。あっちこっちとたらい回しされ、浅草でぐれていたところを万七に拾われ、下っ引きに。守り袋には、九十九里の魚師清兵衛の子と書かれてある。

 

 万七は、蒲鉾の板に不審をもつ清吉に、「食ったあとの蒲鉾の板は、おめぇと一緒で、役に立たない」と。残念ながら、とても重要な役割でした。

 

 ラスト、清太郎に真実を打ち明ける場面は、ありませんでしたが、どう話したのか、知りたかったです。

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家の前。  おゆきとお静が、清太郎を遊ばせている。そこへ、平次、八五郎、万七、清吉、お仙が、来る。遊んでいる清太郎を見て、立ちどまる。

 

平次「誰が、清坊に事実を話すかだな」

清吉「それも、あっしの役ですね」

万七「清吉……」

平次「そうだな。じゃ、しばらく、ちゃんのふりをしていて、折りを見て、えっ」

清吉「へい」

 

 清吉、清太郎のところへくる。

 

清吉「さぁ、坊主、肩車しよう、なっ」

お静「いいわね」

 

 清太郎、清吉に肩車され、嬉しそう。 平次たちも二人の所に来る。

292話 12月8日 平次撃たれる 谷啓 天津敏

 

 座頭の辰ノ市から借金をした為吉。無謀な高利で、返済できない。花井良庵とひと芝居うとうとした矢先、毒殺された。良庵が、下手人とばかり、必死に追いかける万七。辰ノ市の貸金から、ニセ小判が、出てきたため、ニセ金絡みの殺人事件となる。平次は、黒幕が竜神組と確信し、対決するが、胸に短筒の玉を受けてしまう。 平次は、あることから、メスを握るのを止めてしまった良庵にあえて、自分の手術を依頼する。

 

 ゲスト  谷啓さん(花井良庵)、天津敏さん(龍神の五郎蔵)

 

 平次は、ぬかみそ漬が、お好きなようです。それを食べた良庵が、亡き妻を思い出します。

 

 良庵は、妻の手術に失敗し、死なせた過去を持っていました。それから、医者は開店休業状態で、さみしさを紛らわすため、ばくちや酒におぼれています。平次は、そこから立ち直らせるために、自分の手術を良庵に頼みました。「俺の傷を治して、ついでに自分の古い傷を治すんだ」と言って。成功してよかった。

 

 龍神組に潜入するため、平次は、アイパッチをして、やくざに扮しました。

 

 龍神組との対決。平次は髷(元結いのあたり)から、銭を出し、投げました。相手に命中したものの、平次は、短筒で、撃たれてしまいます。

 

 

     ラストシーン

 

 賭場。 龍神組との戦いのあと、平次が、短筒で撃たれてしまう。万七、清吉が、見守る中、良庵が、玉を取り出す手術をしている。無事、玉を取り出した良庵。 そこへ八五郎が、お静とともに駆けつける。

 

万七「おぉ、お静さん」

お静「(平次のそばに駆け寄り)おまえさん!」

八「親分!」

平次「でぃじょうぶだよ」

清吉「玉は取れましたよ」

平次「良庵先生は、藪医者じゃねぇ、たいへんな名医だぜ」

お静「先生! ありがとうございました(手をついて頭を下げる)」

良庵「あぁ、いやいや、名医になるってことは、剣呑なものだねぇ」

万七「いやぁ、全く。名岡っ引きになる方が、楽だよ」

清吉「親分は、藪岡っ引きですよ」

万七「なにを! ハハハ」

良庵「包帯は、姐さんに任せるよ。あっ、その前に傷口を洗わなくては」

 

 良庵、焼酎を口に含み、平次の傷口に吹きかける。

 

平次「あ痛ぅ、お痛ぅ……」

万七「たまんねぇや、アハハハ」

 

 平次、泣き笑い。

 

お静「おまえさん、(平次の手を取り、握って)よかったわねぇ」

293話 12月15日 お鯉の仇討 弓恵子 三島耕 本郷秀雄

 

 刀剣商鎌倉屋のお鯉が、夫の仇、鈴木又兵ヱを見事に討った。世間ばかりでなく、平次たちもその仇討を讃えたが、お鯉の裁きを案じていた。そして、鎌倉屋に川松屋の船頭文吉が、現れ、殺されてしまう。平次は、刀剣商と船頭との妙な組み合わせに不審を抱く。謎が明かされるにつれ、お鯉の仇討にも疑問が出てくる。

 

 ゲスト  弓恵子さん(お鯉)、三島耕さん(佐七)、本郷秀雄さん(忠助)

 

 殺人を夫の仇討という美談にしてしまう、恐ろしい女の話でした。 平次ですら、すっかり騙されてしまいました。

 

 この仇討に平次は、しみじみ、酒を飲みながら「夫婦とは……」と考えたり、お鯉のお解放しという吉報に万七も清吉も樋口様も喜んで、平次の家でドンチャン騒ぎまでしたのにねぇ〜。

 

 そろそろ、平次の家もリフォームが必要? 玄関の戸が開かなかったり、外れたり。

 

 ラスト、平次と八五郎が、将棋を指していますが、また平次が負け。 八五郎は、お茶菓子のあんころ餅を平次にひとつ、あげる代わりに事件の種明かしをせがみます。講釈師みたいで、説明も長かったですね。

 

 

     夫婦は不思議なもの

 

 平次の家。 晩酌している平次。

 

平次「おい、(酒が)ねぇぞ」

お静「おや、また今日は、ばかにはかがいくんですね」

平次「う〜ん、なんかこう、しみじみ飲みたくなっちまってな」

お静「(酒を徳利に入れながら)わかってますよ」

平次「わかってる?」

お静「お鯉さんのことを考えているんでしょ」

平次「あっ、こいつは、見通しだな。いやぁ、おりゃ、柄にもなく、夫婦なんてものは……なんて、考えちまったんだ」

お静「不思議なものですね、こうして、おまえさんと見ず知らずの他人同士が……」

平次「全くだ」

お静「これからも幸せ、お願いします」

平次「うん」

 

 八五郎が、駆けこんできて、お鯉が解放されたと吉報を持ってくる。

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  平次と八五郎、将棋をさしているが、平次が負ける。「また、俺の負けか」と平次。八五郎、事件の種明かしをしてくれたら、あんころ餅をひとつあげると、交換条件を出す。

 

平次「種明かしだ?」

八「お鯉さんと鈴木様のこと」

平次「お鯉はな、店に姿を見せていた鈴木様を好きになって、主人の目を盗んで、会っていたんだ。船遊びは、金がかかるが、人目にはつかねぇ。費用はいつも、お鯉が、払っていた。だが、お鯉には、金がままならねぇ。そこで、鈴木様と相談してよォ、その鈴木様は、店にあった定宗の名刀を質屋にもってって、金に換えた。後で、取り戻そうという気はあったんだろう」

八「なるほどね」

平次「そのうちに旦那は、気付いた」

八「うん……旦那は、鈴木様のところへ再三掛け合いに行った」

平次「まぁ、そうだろうな。旦那は、前からお鯉のこと、知っていたんだな。それで、鈴木様を罵ったのが、いけなかった。『無礼者!』っていうんで、一刀のもと……」

お静「ひどいわねぇ」

平次「あぁ、それでもお鯉は、これから鈴木様にいつでも会えると思ったのが、女の怖ぇところだ」

お静「へ〜ぇ」

平次「ところが、鈴木様の方がよォ、そんなことから嫌気がさして、心変わりをした。もうお鯉はそれが、憎かったんだな。半年もの間、秋山の道場に猛稽古に通ったってんだから、おめぇ、おい、八、女をだましたりすると、ひどい目にあうぞ」

八「こっちとら、だますより、だまされてぇや、へへへ」

平次「そこで、お鯉は、鈴木様を夫の仇と討てば、罪を受けても、せいぜい、島流し。首をはねられることはねぇと踏んだ。恩赦でもあずかりゃ、また江戸の灯が、見られるってもんだ」

八「へ〜ぇ、悪賢い女ですねぇ」

平次「文吉は、その事情を察して、お鯉を脅した。ところが、反対にお鯉は、帯揚げで、文吉の首を絞めて殺しやがった」

お静「ねぇ、おまえさん、ひとつ、わからないことが、あるんだけど」

平次「何だ」

お静「佐七さんは、文吉さんよりももっと事情を知っていたんでしょ?」

八「あ〜、なるほどね、なぜ、佐七を殺そうとしなかったのか」

平次「わからねぇか」

お静「ええ」

平次「佐七にとっては、お鯉は、主人であるよりも神様みてぇな、奴だった。だから、お鯉は、佐七は、裏切ることのねぇ貝のように思ったんだ」

お静「男と女が、好きになったり、好かれたり、本当に怖いことですね」

平次「そうだ、ちょっとしたはずみが、気違いのようになっちまう」

八「う〜ん、考えてみると、お鯉さんも可哀相ですね。あんな侍にだまされなきゃねぇ〜……あっ、親分、じゃ、ひとつ(種明かしのお礼にあんころ餅を平次にあげる)」

平次「ひとつ、取り返すかな」

お静「まぁ、うふふ」

 

刀剣商鎌倉屋。 佐七が、働いている。 そこへ平次と八五郎。

 

佐七「親分さん」

平次「やぁ」

佐七「いらっしゃいませ。お〜い、お茶」

奉公人の声「へ〜い」

平次「おい、大旦那様は、おめぇに店をくれたそうだな」

佐七「へい」

平次「どうだ、景気は」

佐七「さぁ、あんな事があった後ですから、よかろうはずが、ありません。しかし、ぼちぼち、あせらずにやっていこうと思います。この店は潰すわけにはまいりません。大旦那様のためにも」

平次「おぅ、八、行こうか」

八「へい」

平次「邪魔したな」

佐七「親分さん」

平次「なんだ」

佐七「(何か言いたそうだが)いいえ、もういいんです」

平次「おかみさんのことは、もう忘れるんだな」

 

 平次、八五郎、去る。

294話 12月22日 八五郎が縛られた 加藤治子 池田秀一 高須賀夫至子 二瓶康一

 

 銭形平次をギャフンと言わせようとひょうたんのおゆきを連れ出し、乱暴を働こうとしたチンピラ少年たち。助けに入った八五郎。逃げるチンピラどもにドスを投げたのが、悪かった。チンピラのひとり、伊吉が、死体となって発見され、八五郎が、お縄になる。もうひとりのチンピラ、弥市は、上総屋の跡取り息子、母親の再婚でぐれている。平次は、上総屋を乗っ取るため、伊吉と弥市が、間違って殺されたのではと推理する。

 

 ゲスト 加藤治子さん(おきぬ)、池田秀一さん(弥市)、高須賀夫至子さん(お松)、二瓶康一(現 火野正平)さん(伊吉)

 

 鶴見まで、平次は寺社奉行の手伝いで旅立ちます。帰ってきたら八五郎が、たいへんなことになっていました。

伊吉役の二瓶康一さん、のちの火野正平さんです。二瓶康一は本名。1973年「国盗り物語」(NHK)から、芸名に。

 

母親が、再婚したのが(相手は番頭)が、気に入らず、ぐれてしまった弥市。よくある話ですが、父親の死の真相もわかって、丸く納まり、よかったですね。

 

平次は、お静のことを#289「いつか青空」では、勘定奉行と呼び、今回は、大明神、山の神ですって。お静さんもお役目がいっぱいあって、たいへんですねぇ。

 

 

     山の神様

 

 平次の家。  八五郎が、お解放しになり、平次の家へ。お静、縫物。

 

八「姐さ〜ん、姐さん、あれ?」

お静「ここよ」

八「姐さん、ごらんください、ほどいてもらったんすよォ」

お静「まぁ、よかったわねぇ、八つあん」

八「へぇ、あの、姐さんのお陰なんすってねぇ、ありがとうございました」

お静「あら、私?」

平次「そうよ、善人の八五郎に間違っても、人殺しなんかできるわけねぇという御託宣をお告げくださったのは、お静大明神だからな」

お静「まぁ〜、いやだわ、お静大明神だなんて、う〜ん、(平次の肩をポンとたたく)」

平次「ふ〜ん、それとも、お静山の神様かな」

お静「知らない」

平次「ハハハハ」

お静「うふふふ」

八「へへへ、今日は、よござんすよ。いっくら、見せつけられてもね。あっしゃぁね、ありがたく(柏手をする)拝ませてもらいます。へへへ」

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家。  丸火鉢を囲んで、平次と八五郎。八五郎、こよりを鼻の頭にのせて、遊んでいる。お静が、お茶を運んでくる。

 

お静「(八五郎の仕草に)泰平楽ねぇ〜」

平次「(煙草をふかしながら)岡っ引きが、おめぇ、泰平楽なら、世の中、うまく行っている証拠だよ、アハハ」

八「あぁ、だけどね、親分、あの、縛られるっていうのは、あんまり、いい気持ちじゃ、ございませんね」

平次「それじゃ、悪い奴も縛らずにおけって、言うのかい」

八「えっ、いいえ、そういうわけじゃ、ござんせんですがね……そういうわけじゃござんせんけど……あっ、そうか、だから岡っ引きはですね、いい奴と悪い奴をとっちげぇねぇで、こう縛らなくっちゃいけねぇってことですね」

平次「あたりまえの話じゃないか、おめぇ」

八「でも、時々、とっちがえるからなぁ〜」

平次「だから、いけねぇんだよ」

八「へぇ、すいません」

お静「八つあんは、謝ることはありませんよ。八つあんは、うっかりして、縛られてしまった方なんですからね」

八「あっ、そうだ、親分、あっしはね、さっきから、それが、言いたかったんですよォ」

平次「違ぇねぇや。そうだったな、おい」

 

 三人、大笑い。八五郎が、こよりを鼻の穴に入れたとたん、大きなくしゃみの連発。迷惑そうな平次。

295話 12月29日 餅搗きの音 小野恵子 小野川公三郎

 

 井筒屋に賊が押し入り、千五百両を強奪された。奉行所から、年内に解決せよとの命に町方は、総動員される。そんな折、三島屋手代の源太が、掛け取り金、三両を盗られた。番屋に駆け込むが、千五百両の事件に大わらわの番屋では、ちっぽけな事件と目もくれない。ただ、平次だけは、違っていた。

 

 ゲスト  小野恵子さん(お小夜)、小野川公三郎さん(源太)

 

 損徳なしで、弱い者も助けてくれる、平次の心意気を十二分に描いた作品。

 

 最初のうち、八五郎は、大手柄を取りたくて、小さな源太の事件にかかわりたくないようでした。「親分じゃなくても、役に立たねぇ、年寄りの岡っ引きが、いくらでもいる……」(ちょっと言いすぎです)八五郎のことを案じてくれる、平次の気持ちを知ると、号泣して、「親分の行くところなら、どこでもついていく」と改心。

 

万七は、相変わらずの減らず口。お静に「(平次のこと)あれじゃ、いつまでたっても、出世はしないし、金も貯まらねぇ、別れるんだったら、今のうちだぜ」なんて言うのです。もちろん、お静は、受け流します。

 万七が、下衆の勘ぐりをするものだから、源太は、やけを起こしてしまうし。でも、最後は自分が手柄を取ったと天狗になってました。

 

 樋口様は、平次に「そっち(源太の件)の方は、片がついたか」と聞きます。平次から犯人を捕まえたことを聞くと、「うん、そうか」と言葉は少なかったけれど、平次を誇りに思っている表情でした。

 

 ラストの餅搗き、橋蔵さん、マジで楽しそうでした。為吉のこさえた門松、平次の家にしては、立派過ぎ。

 

 

     平次の心意気

 

 平次の家。

 

平次「上野広小路へ行こう。昨日、源太と約束したんだ」

八「源太? あぁ、あの三両の。あのちっぽけな、割りの合わない事件に首、突っ込んでたら……」

平次「事件に大きいも小さいもねぇよ。世間の目を引く大きな事件だったら、誰でもやる。みんなが、その事件ばかり追っていたらどうなるんだ。地味で割の合わない事件だって、誰かがやらなきゃならねぇんだ」

 

 番屋。 井筒屋付近を調べろと樋口様に命じられる平次だが。

 

平次「本当に力を必要としているのは、源太でございます。大きな事件の陰に隠れて誰にもすがることのできない弱い者のために少しでも、力を貸してやりとうございます。それが、十手を持つ者の生きがいってもんだと、あっしは、思っておりやす」

樋口「もし、おめぇが、捕り物に加わっていねぇことが、あとでわかれば、やっかいなことになるかもしれねぇんだ。俺は、それを心配しているんだ」

平次「覚悟は、できておりやす。ただ、八五郎だけは、あっしの巻き添えにしたくありません。どうか、樋口様の下で手柄をたてさせてやってくださいまし」

 

 立ち聞きしていた八五郎、号泣。番屋に飛び込む。

 

八「親分、あっしが、あの、間違えてました。どうか一緒に連れてってください」

平次「八……割の合わない仕事だぜ」

八「親分の行く所なら、どこだって、ついていきますよ」

 

 往来。  大捕り物行く樋口様に出くわす平次。 樋口様に一緒に行くよう、言われる。

 

平次「あっしは、いけません。今、ひとりの若者が、世の中のすべての望みを失って、師走の町をさまよっておりやす。どんな罪を犯さないとも限りません。一刻を争うのでございます」

樋口「せっかくの手柄をふいにするのか」

平次「へい。お気持ちは、身に沁みますが、どうか、あっしのわがままだと思って、目をつぶってくださいまし」

 

     平次の啖呵

 

平次「(三両を盗んだ犯人に)バカ野郎! 三両ぽっちとは、なんて言い草だ! てめぇたちのように、汗水たらして、働きもしねぇ、ごく潰しにゃ、三両はおろか、三文も笑う値打ちもねぇんだ。てめぇのお陰で、危うくひとりのまっとうな若者を台無しにするところだったぜ」

平次「(三両が戻って泣き崩れる源太に)世の中には、確かに醜いものが、たくさん、詰まっている。だがな、そればかりだと思いこんじまっちゃぁ、いけねぇよ。やけを起こしちまったら負けになるんだぜ」

 

 

     ラストシーン

 

 平次の家の前。  お静、為吉が、餅搗きを始めている。 おゆき、お勝も手伝いにきている。

 

為吉「さぁ、いくぞ」

おゆき「親分さんだ!」

お静「あぁ、お帰りなさい。ちょうど今、蒸しあがったところなんです」

平次「よし、ひとつ、搗くか」

 平次、お静のたすきで、たすき掛け。八五郎は、鉢巻き。

 

お勝「八つあん、大丈夫かしらね」

平次「さぁ、行くぞ」

 

 平次が。杵を振りあげる。 八五郎は、臼とり。皆、拍子をとって、景気をつける。

 

為吉「もうひとつ、来年もきっといい年になりますぜ」