回数 放送日 サブタイトル ゲスト出演者
555話 昭和52年1月5日 凧凧あがれ 森昌子 新井つねひろ 高橋仁 上田忠好
 身寄りのない子たちが、お互いに助け合って健気に生きている。貧しくともお救小屋は、暖かく、居心地がいい。年長のおきよが、幼子たちに子守唄を唄ってやっている。子供たちの夢は、江戸で一番大きい凧をお正月にあげること。そんなとき、ひとりの少年が迷い込んでくる。盗人の見張り役をした悪だが、夢は同じく凧をあげること。しかし、その少年、鉄に御用の手が延びる。

 ゲスト 森昌子さん(おきよ)、新井つねひろさん(鉄)、高橋仁さん(石松)、上田忠好さん(弥助)

 1977年お正月の放送。555話で、5日の放送とは、「5」づくし。Go!Go!Go!Go!

 鉄役の新井つねひろさん、どこかで見た顔と思ったら、新井康弘さん(もと、ずうとるびのメンバー)の弟さんでした。

 森昌子さんの美声で子守唄が聞けました。

 万七親分、初仕事は自分の手柄にしたいと見張り役の鉄を目撃した蕎麦屋の親爺さんに他言はするなと釘を刺します。でも、また誤認逮捕。しかし、蕎麦屋に口止めをしたことから、情報が漏れたのは、番太の弥助とわかり、事件解決に至りました。怪我の功名。

 ラストはおきよたちが、念願の凧あげ。八五郎と清吉は「喜らく」でタコづくしの料理を食べている(たこ、つながり)


☆ 御救小屋…貧民救済施設。1657年の大火、天保の飢饉(1833〜1839年)
       などに設けられ、食料を給するなどをした。(小学館 えどたん より)


* ラストシーン

 土手。 おきよと子供たちが、凧を持って走っていく。

 喜らく。 八五郎と清吉が来ている。

おせん「ふ〜ん、ほなら、そのおきよって人が、身元引受人になって、お叱りだけで堪忍してもうたの?よかったなぁ」
清吉「お奉行所から、ご褒美はでるし…」
八「その金で凧は買えたし、初春早々縁起がいいや、へへへ」
おつる「はい、お待っとうさん(料理を運んでくる)」
長吉「お待っとうさん、はい、どうぞ」
清吉「おぃおぃ、注文、間違ってやしねぇか?なんだこりゃ、タコわさにタコ酢にタコの煮付け…タコづくしじゃねぇかよ」
おつる「今日はこれでええの」
清吉「えっ」
八「冗談じゃねぇや、べらぼうめ!おめぇら、上方もんで知らねぇだろうけどよ、芋、タコ、かぼちゃ、こりゃ女の食い物と決まってんだよ。いきのいい江戸っ子が、食えるかってんだ!おぅ、作り直して来い!」
清吉「そうだよ」
長吉「あ、あの、あいにく、今日はね、ネ、ネタ切れでんねん、へへ」
おつる「どないしても、食べへんちゅうんやったら…」
八「何だよ」
おせん「今までのツケ、全部払ろってもらおか!」
八「えっ、た、食べるよ」
清吉「い、いただきます」

 土手。 おきよと子供たちの凧揚げ風景。青空に元気よく凧があがっている。

子供たち「あがれ、あがれ、天まであがれ、あがれ、あがれ、天まであがれ、あがれ、あがれ、天まであがれ、あがれ、あがれ、天まであがれ」

 平次の家。  縁側に出て、凧を見上げている平次とお静。

お静「わ〜ぁ、どれが、おきよさんたちの凧かしら」
平次「決まってるじゃないか」
お静「どれ?」
平次「あの一番立派な、一番高くあがってるやつが、そうだい」
お静「あ〜ぁ」

 大空に元気よくあがっている凧。その中におきよたちのひときわ大きな凧があがっている。お静、平次に寄り添う。ふたりとも微笑んで凧を見上げている。

556話 1月12日 居酒屋 藤間紫 内藤武敏 寺島雄作
 平穏な生活を捨て、なぜ、自ら崖っぷちに立とうとするのだ!平次は目の前のお葉に詰め寄る。十数年ぶりに偶然幼馴染の伊之助に出会ったお葉…昔の伊之助への思いが募る。伊之助もまた、お葉に思いを打ち明ける。しかし、伊之助はご禁制の品に手をつけた犯罪者。いつお上の手が延びてくるやもしれない。ふたりで、上方へ逃げよう!旅立とうとした、まさにその時、平次がお葉の居酒屋の戸を激しく叩いた。

 ゲスト 藤間紫さん(お葉)、内藤武敏さん(伊之助)、寺島雄作さん(六兵ヱ)

 藤間紫さんとの共演、7作目。

 見かけは、明るく面倒見のよい姉御肌の居酒屋の女将、お葉。でも薄幸な人生を歩んできた…藤間紫さん、このような女性の役柄が多いですが、本当に上手いですよねぇ。回り道をしたけれど、伊之助が島から戻ったら、きっと幸せになってくださいね。
 ラスト、平次がお葉と二人きりで、居酒屋でしみじみ語る場面がよかったです、胸がじーんとしました。大人って雰囲気で。平次とお葉が見つめ合うシーンは結構長かったですね。目は口ほどに?
 雪の降りしきる中、帰っていく平次の後姿、哀愁があって、素敵でした。


* ラストシーン

 お葉の居酒屋。 外は雪。囲炉裏を挟んで、お葉と平次。

お葉「(平次に酌)ふぅ、親分さん、あたしゃ、罪を犯すところを親分さんのお陰で助けて頂きました。ふぅ、また波風のない平穏な日々が戻ってきました。ふぅ、でも今のあたしゃ、なんの望みもない抜け殻みたいなもんですよ」
平次「俺は、そうは思わねぇよ。おめぇさんの胸に描いていた通り、伊之助は、いい男だった……三宅島へ遠島が決まったが、恐らく二年か、長くて三年で、ご赦免になるだろう」

 平次、酒をひと口飲む。

平次「罪を償って、きれいな体になって戻ってくる。そのときにゃ、ふたりの心の中にわだかまっている、おときの面影も薄れていることだろうよ。時っていうものは、解決してくれるんだよ、そうじゃねぇかい?」

 お葉、涙をいっぱいためて、頷く。見つめ合うふたり。

 平次、酒代をポンと囲炉裏端に置き、店を出る。雪空を見上げ、両腕を袖の中に入れ、降りしきる雪の中を帰っていく。お葉、平次の後姿を見送る。
557話 1月19日 みそっかすの唄 佐藤仁哉 渡辺やよい 小栗一也 佐伯徹
 私の命は、もうすぐ終わる…その前に息子の清次郎に謝りたい!償いをしたい…材木問屋駒形屋の主人、惣右ヱ門は、今まで清次郎を疎ましく思っていたことを悔やんでいた。駒形屋の跡を継いでくれたら…ぐれて、勘当されていた清次郎はしぶしぶ家に戻る。それを快く思わないおばのお峰。そして清次郎を利用して駒形屋を乗っ取ろうと企む奴もいる。惣右ヱ門の気持ちを清次郎にわからせたい…平次は清次郎に惣右ヱ門の命がいくばくもないことを伝える。

 ゲスト 佐藤仁哉さん(清次郎)、渡辺やよいさん(おしん)、小栗一也さん(惣右ヱ門)、佐伯徹さん(七五三造《しめぞう》)

 平次の襟足にかみそりを当てているお静。平次は駒形屋の相続問題に「金持ちはやっかいだ」というとお静は「そこへいくと貧乏人はそんなもめごとはない」と貧乏でよかったという返事。すると平次「ありがたく思え」ですって。お静は「まぁ、威張ってるぅ」と平次を叩こうとしたら手にかみそり!おぅ、危ない!

 万七親分、清次郎を誤認逮捕しましたが、随分平次をこきおろしていました。黒を白と言うようになったらおしまいだの、七五三造のいいなりになってるだの、嫌味な男だの…
 平次は殺されたお峰の傷口は、刀傷で、それもかなり腕の立つ者と推理し、直接清次郎が手を下してはいないと確信したのです。万七親分、傷から凶器を推理するのは、捕り物のイロハです〜。


* ラストシーン

 駒形屋。 惣右ヱ門が苦しんでいる。そばに清次郎。捕り物が終わった平次が部屋に飛び込んでくる。

平次「旦那!あぁ、おぃ、清次郎、医者だ!道庵先生を呼んで来い!」

 清次郎、急いで部屋を出ようとする。

惣右ヱ門「その必要はない…こ、ここに清次郎、ここにいてくれ…」

 八五郎が来る。

平次「八!道庵先生だ!」
八「へい!」

 八五郎、去る。

清次郎「お父つあん、お父つあん(惣右ヱ門の手を握る)、俺が悪かった、勘弁してくれ」
惣右ヱ門「謝るのは、私の方だ…よかった、その、その、ひとことを聞いて、もう思い残すことはない、あ、あとは平次親分の言うことをよくきいて…駒形屋の暖簾を…」
清次郎「お父つあん!」
惣右ヱ門「親分さん…」

 強く頷く平次。惣右ヱ門、こと切れる。

清次郎「お父つあん、お父つあん、お父つあん」

 清次郎、号泣。やるせない平次の顔のアップ。


 駒形屋の材木置き場。  平次と八五郎が来る。

平次「おぅ、清次郎、旦那自ら、陣頭指揮かい?」
清次郎「へへ、照れるな、なに、親爺の、ほんの真似事ですよ」
平次「それが、大旦那への何よりの供養だ。しっかりやるんだぜ」
清次郎「へぃ…そいじゃ」

 清次郎、去る。見送る平次と八五郎。
558話 1月26日 花いちもんめ 上村香子 大川功次郎(丹羽貞仁) 今福正雄 西沢利明
 十手ひとすじ二十五年、千住の岡っ引き文三。そんな父親を娘のお澄は、あの人と呼び、反発して家を出ている。千住を荒らしまわった強盗殺人犯、ましらの卯吉が、再び現れた。文三は、今度こそお縄にと必死だが、その心中はなぜか複雑だ。文三は卯吉の妻子のいる長屋を見張る。文三がふと口ずさんだ、わらべ唄「花いちもんめ」卯吉の妻の家から聞こえてきた「花いちもんめ」ただの偶然だろうか、平次は何かに気づき、卯吉の妻を洗い始めるが…

 ゲスト 上村香子さん(お澄)、大川功次郎(丹羽貞仁)さん(友吉)、今福正雄さん(文三)、西沢利明さん(卯吉)

 久々に橋蔵さんの次男、丹羽貞仁さんが登場。今回は大川功次郎の芸名で初登場。友吉は4歳の設定ですが、功次郎さんは、満7歳。ちょっと大きかったですね。

 平次親分の思いやり、情けがよく伝わったエピソードだと思いました。お澄の心の奥に潜む気持ちもわかっていました。父親への反発は甘えたいの裏返しだと…。

 ラスト、平次は友吉を抱き上げて、笑顔を見せます。実の父子のツーショット。いいですねぇ、意図的な気もしますが、子煩悩の橋蔵さんを垣間見た気がしました。


* ラストシーン

 川端。捕り物が終わって。

平次「(腕を怪我した文三に)父つあん!でぃじょうぶですかい」
文三「あぁ、」

 平次、文三の傷の手当をする。

文三「銭形の…五年前…おらぁ、…あの卯吉を…」
平次「あ〜あ、いいんでさぁ、何も言わなくて」
文三「銭形の…」
平次「文三親分は、根っからの十手持ち。立派な岡っ引きだ。そいつを一番よく知っているのは、きっとお澄さんでさぁ」

 文三と平次、様子を見に来たお澄母子を見る。

文三「お澄…」

 お澄、目に一杯涙を浮かべて、文三を見つめる。文三もお澄を見つめる。平次、立ち上がり、お澄に文三のところに行けとあごをしゃくる。

お澄「お父つあ〜ん!(文三に駆け寄り、抱きつく)」

 父娘をじっと見つめるお澄の息子、友吉。平次、友吉に気づき、そばに行く。

平次「おぅ、坊や、腹、減ったろう?その辺でおじちゃんと一緒にそばでも食おうか」
友吉「うん!」
平次「ん、よ〜し、よしよし」

 平次、友吉を抱き上げ、笑顔で文三とお澄を見つめる。
559話 2月2日 悪い奴がいっぱい 大村崑 頭師佳孝 藤尾純
 般若の仁兵ヱが殺された。表向きは金貸しだが、博徒の親分。金貸しもかなり阿漕なものだ。万七は、凶器のドスと動機があることから、丑松を捕らえる。平次は、万七の幼馴染、岩吉が妙に丑松のことを気にかける態度が気にかかった。無実を叫ぶ丑松。仁兵ヱの跡目を狙う弥太郎が、真犯人と確信した平次だが、アリバイが立証され、肩を落とす。やがて、平次が一番下手人にしたくない人物に絞られていく。

 ゲスト 大村崑さん(岩吉)、頭師佳孝さん(健太)、藤尾純さん(般若の仁兵ヱ)

 今回は、万七が幼馴染の岩吉をお縄にするという、切ないお話でした。万七の目に涙が光ります。
 「岩吉をどうか助けてくれ」と手を合わせる万七に平次は「罪を見逃すことが、岩吉を救うことになると思わない」と言って、万七の申し出を拒否。でも平次の心中は、やはり岩吉を見逃したかったのです。いくら丑松が刺青者で小悪党でも無実の罪を着せるわけにはいきません。

 私は、最後まで岩吉は、仁兵ヱを傷つけただけで、だれかが、致命傷を負わしたと思っていたのですが、待てども待てどもほかに犯人が出てこなくて、残念。平次親分の言葉じゃないけれど、ほんと今の世の中も悪い奴はいっぱいいるのに、なぜ、あんないい人が…と思うことがありますね。岩吉は、情状酌量の余地がいっぱいあるので、すぐ家族と一緒に暮らせるようになるでしょう。


* 不条理

 平次の家。 岩吉が下手人と確信した平次、気落ちしている様子で長火鉢の前に座っている。

お静「おまえさん、何とかして岩吉さんを見逃してあげることはできないのかしら」
平次「…」
お静「ほんのふとした行きがかりで、心ならずも罪を犯してしまったんでしょ」

 平次、立ち上がって縁側へ。

平次「殺された仁兵ヱも悪党だった。代貸しの弥太郎も女房のお銀もヘドの出るような腐った奴らだ。悪い奴がいっぱいいやがるというのに法に触れる罪を犯したのは、貧しいが心の優しい家族と平和な生活を営んでいたひとりの平凡な男なんだ」

 平次、涙を堪えて、十手を取りに神棚へ。

お静「可哀想…捕まる岩吉さんも…捕まえなきゃならないおまえさんも…」

 平次、気の進まない様子で玄関へ。切り火するお静。平次、外へ出て行く。


* ラストシーン

 般若一家の家。捕り物が終わって。

平次「(岩吉に)さぁ、行こうか」
岩吉「へぃ」

 平次と岩吉、般若一家の家を出て、往来を歩いて行く。平次、ふと足を止める。

平次「俺とは、この先で別れよう。名乗ってでりゃ、お情けがあるだろう」

 岩吉、涙ぐむ。

平次「できることなら、おめぇを見逃してやりたかった。だが、そうしなかった俺をむごい奴だと恨んでくれ」
岩吉「とんでもねぇ、あっしは、自分の臆病さとあとに残る子供の心配とで名乗ってでる決心がつかなかったんでさぁ。だが、あの丑松さんていう人を死罪にまでして、ほっかむりしていたら、一生あっしは、心の闇に苦しんで一日とて、気の休まるときは、なかったでござんしょう」

 大きく頷く平次。

岩吉「親分さんのお陰で、あっしは命も心の苦しみも救われたんですよ」
平次「それを聞いてほっとしたよ。子供たちのことは心配いらねぇ。万七と俺が棟梁や木場の旦那にお願げぇして、きっとこれまで通り面倒をみてもらうようにしてもらうぜ」
岩吉「ありがとうございます。どうかよろしくお願いいたします(深く頭を下げる)」

 哀しそうな顔つきの平次、岩吉と再び歩き出す。万七と清吉が岩吉の妻お里を連れ、反対側から走ってくる。

万七「岩吉!」
平次「さぁ、行くんだ、万七のところへ」

 岩吉、万七のところに行く。

お里「お父ちゃん!」

 岩吉と妻、手を取り合う。

岩吉「子供たちを頼むぜ」
お里「うん」

 岩吉、万七の前に両手を差し出す。

万七「岩吉…」
岩吉「万七、せめてこんな俺でもお縄にして、手柄にしてくんな」
万七「バカヤロー!俺ぁな、おめぇを捕まえてまでも手柄はほしくねぇんだ。それならいっそ、へぼ目明しの方がよかった…」

 万七、涙を流す。岩吉の手に縄をかける。泣きじゃくるお里。やるせない表情の平次。涙をぬぐう清吉。万七と清吉が岩吉をしょっ引いていく。

平次「(岩吉の妻に)きっと帰ってこられるよ。そいつを楽しみに待ってるんだ」
お里「はい…」

 万七たちの後姿を見送る平次とお里。
560話 2月9日 おひさという女 市原悦子 蜷川幸雄
 殺しの下手人を目撃したおひさ。後姿だったが、自信はあった。面通しに現れた男の後姿……間違いない! 「親分、あの男……」振り向いた男の顔を見て、おひさは絶句する。そして、口から出た言葉は「違います」その様子を平次は見逃さなかった。そして第二の殺人が起きる。平次はおひさに詰め寄る「あの男は政吉じゃない!人違いだ。なぜかばう」おひさは言う「かばってなんかいない!たったひとつしかない思い出を誰にも壊されたくない。守っていきたい」おひさは、幼いころ、政吉にもらった思い出の竹笛を握りしめるのだった。

 ゲスト 市原悦子さん(おひさ)、蜷川幸雄さん(政《政吉》)

 明るく振舞っているが、気の毒な人生を歩んできたおひさ、藤間紫さんとは、雰囲気は違いますが、市原さんもこのような役、上手ですよね、そうそう、どじょうすくいも上手かった。

 下手人の政は、おひさの慕う政吉と同一人物?違う人物?最後まで、わかりませんでした。平次も違うと確信していたのですが、調書を見て同一人物と判明します。政吉は政を殺して、風貌が似ていることから10年も政になりすましていたのです。決め手は政は左利きなのに政になりすました政吉は右利きだったのでした。


* ラストシーン

 番屋。

おひさ「すいません、親分さん。人殺し、かばったりして」
平次「けど、その男も死んだよ……こいつも壊れちまったが」

 平次、竹笛をおひさに渡す。

おひさ「いいんです、もう……」


 おひさ、竹笛を囲炉裏のなかに放る。

おひさ「こんなものにすがって生きるのは、もうやめました」
平次「おひさ……」
おひさ「いいんです、もう……。あの人、私の政吉さんじゃなかったもの、いいんです、これで(涙ぐむ)」

 平次、燃えていく竹笛を見つめる。

 小料理「きくや」

 おひさ、二階の座敷で、お得意のどじょうすくいを陽気におもしろおかしく踊っている。客や仲居に大うけしている。

 堀端。

 平次と八五郎が「きくや」のそばを通りかかる。見上げるとおひさの踊っている影が障子に映し出されている。

八「親分、どういうことかね、あれからおひさ姐さんね、人が変わったみたいに明るくなったそうです。やっぱりあの男が政吉だったってこと、言わなくてよかったですね」
平次「そうじやねぇんだ」
八「はっ?」
平次「おひさは、わかってたんだ。あの男が本当の政吉だってことがな」
八「はぁ?」
平次「だがな、おひさが思っていたような政吉じゃなかった。そいつがはっきりわかったから、笛を捨てて、きれいな思い出だけを胸に納めてな、もう一度人生をやり直す気になったんだ」
八「はぁ、なるほどねぇ、そういうもんですかね」

 平次と八五郎、もう一度「きくや」の二階を見上げる。平次、ふと目を落とすと何かに気づく。

平次「おぅ、八」
八「えっ、……はっ」

 二人の視線の先。伸助(第二の殺人で濡れ衣を着せられた)夫婦が、お腹の子をかばいながら仲良く歩いている。

平次「(笑顔で)おぅ、八、行こうか」
八「へっ」
平次「おいらもお静の酌で、一杯やりたくなってきた」
八「ありがてぇ、ついでにあっしもゴチになって、へへへ」

 平次は、懐手、八五郎は、袖の中に手をいれ、寒そうに家路につく。
561話 2月16日 八五郎大いに嘆く 竹井みどり 剣持伴紀 勝部演之 里木佐甫良
 八五郎に二つの縁談が舞い込んだ。ひとつは、万七から。もうひとつは何と江戸に出てきた八五郎の伯父、茂七からのもの。茂七に、八五郎は親分になったと嘘をついていたので、それこそ、たいへんだぁ!平次の着物を借りて、親分のふりして、大わらわ。そこへ、盗賊仁助一味が江戸に潜入したとの知らせ。まもなく、仁助一味の仕業とみられる盗難事件が発生。闇の仁助はどこに?そして八五郎は妻をめとれるのか?

 ゲスト 竹井みどりさん(おこう)、剣持伴紀さん(与吉)、勝部演之さん(三次郎《闇の仁助》)里木佐甫良さん(茂七)

 八五郎、一度に二つの縁談が!結果は二兎追うものは一兎も得ず。残念。八五郎は、おこうに限らず、いつも人を思いやる心があって、素晴らしいですね。平次も「偉い」って褒めていました。
 「喜らく」のおつるが、八五郎の縁談をきいて「(八五郎を)滑り止めにしてたのに(放送が受験シーズンだったから?)」とぼやきます。いっそ、八つあんと一緒になったらよかったかも。

 「喜らく」でおこうと八五郎の話を立ち聞いていたのでしょう、八五郎が出てきて、目を合わせたときの平次の表情、姿がなぜか、ジーンと来てしまいました。子分を思う気持ちが出ていたからでしょうか。

 事件の一ヶ月後に平次とお静と八五郎が、与吉の店を訪ねます。もうおこうは、与吉のおかみさんになっていました(丸髷に変わってました)早〜い。


* ラストシーン

 蕎麦屋信濃屋。平次とお静と八五郎が来る。

お静「(店内をちょっと覗いて)おまえさん」
平次「ん?」
お静「なかなか流行ってるようですよ」
平次「おぅ、そうかい」
八「あのぅ〜、へぇるんですかぁ?(気乗りしない様子)」
平次「おめぇ、まだこだわってるのか?あれから、ひと月も経ってるじゃねぇか、男らしくねぇぞ」
八「だって、ふられたんですからねぇ。照れくさいですよォ」

 庭箒を持った茂七が来る。

茂七「あっ、八じゃねぇか、あっ、これは親分さん、どうもどうも、さぁどうぞ」
平次「さぁ(お静の肩を押す)おぃ、八」
八「へ、へぇ」

 平次たち店に入る。

おこう「あっ、いらっしゃい」
茂七「さぁ、どうぞ」
おこう「あっ、親分さん、いらっしゃい」
平次「おぅ」
与吉「(調理場から出てくる)これは、ようこそ。腕によりをかけて作ります。何にしましょうか」
お静「え〜と、私は、とろろそば」
平次「おっ、俺も同じだ」
与吉「へぃ」
おこう「八五郎さんは?」
八「うん、うん、俺は……あの……考えらぁ、考えとく」
おこう「はい」
お静「八つあん、八つあんの気持ちは、よくわかるわよ」
八「姐さん、親分、あのう……佐久間町の乾物屋のおよしさんっていう娘さんの話……よろしくお願いします(机に手を着いて頭を下げる)」

 平次とお静、顔を見合わせる。

平次「あれは、おめぇが断ったっていうから、わざわざ三輪が断りに行ったそうだ」
八「……あっ、そうかぁ……」
お静「あっ、八つあん(誰かを見つけ、指をさす)あそこ」

 およしが、男の人とそばを食べている。

八「あれがおよしさんか……あ〜あ(また気落ちする)」
平次「さぁ、八、早く注文しな」
八「へぇ、あっしは、あの……胸が……いや、腹がいっぱいで」
平次「そんなこと、あるもんか、おぃ、お静」
お静「はい」
平次「今日はな、八にうんとご馳走してやんな」
お静「はい」
平次「さ、さ、元気をだして、うんと食いな」
八「へぃ……」

 おこう、とろろそばを二つ運んで来る。

おこう「おまちどうさまでした」
平次「おぅ」
お静「はい、ありがとう」
八「あ、おこうちゃん、俺にとろろそば、三つ!」
おこう「はい」

 平次とお静、呆れ顔。

おこう「とろろそば、三つ〜」
お静「あ、八つあん、私の先に食べていいわよ」

 お静、八五郎にそばを譲る。

八「あっ、そうですか、すいませんね、いただきます」

 ぞばを食べ始める平次と八五郎。
562話 2月23日 風車の唄 左時枝 田口計 柄沢英二 栗又厚
 木更津から母をたずねて江戸へ出てきた朝吉とその父滝蔵。今日も神社にお参りしたり、尋ね人の紙をはったり……。一方、盗賊鬼火の喜三郎一味が市中を荒らしまわっていた。どの店も合鍵を作られ、蔵を破られていた。平次は、共通の手口に気づく。犯行前に女が現れ、店先で喧嘩が始まるのだ。やがて、平次は、一味と思われる女を見つけ、逃げる女に投げ銭をしようとするが、「おっ母ぁ!」と叫んだ朝吉の声に愕然とし、その手が止まった。

 ゲスト 左時枝さん(おとよ)、田口計さん(鬼火の喜三郎)、柄沢英二さん(滝蔵)、栗又厚さん(朝吉)

 #105「風車(かざぐるま)の唄」と同じタイトルですが、リメイクではありません。

 万七親分、樋口様に大目玉をくらいました。女の罠にはめられて、賊を取り逃がしてしまったからです。大きな体を小さくして、樋口様の前に正座していました。「(女に)優しいのもつれぇな〜」なんてぼやきながら。

 しかし、そのドジが手がかりになるかもと平次。鬼火一味は手の内を明かさなかったのが、今回、女が絡んでいるとわかったからです。万七親分、けがの功名。

 ラスト、万七親分が、現場に早く踏み込まないと!じれったいと言ってイライラしてました。勇み足をして、平次の一網打尽計画がパーになるのではとヒヤヒヤしましたが、我慢してくれて、無事全員お縄にできました。

 平次はたとえ、遠く離れていても血の繋がりはなくても母子の絆はしっかり繋がっているとおとよを諭します。タイトルの風車はおとよが朝吉に買ってあげたものです。


* ラストシーン

 往来。館山・木更津の道標。

 風車を手にした朝吉の手をひいて、滝蔵が歩いてくる。平次とお静、木更津に帰るこの父子を見送りに来ている。

朝吉「じゃぁ、おっ母ちゃん、また旅に出かけたんだね」
お静「でもね、今度こそ、きっと朝坊のところへ帰ってくるわよ」
朝吉「ほんと!」
平次「あぁ、本当だとも」
朝吉「それなら、我慢するよ」

 物陰から、朝吉たちを見つめるおとよ。

滝蔵「どうか、おとよのことはよろしくお願いします(深く頭を下げる)」
平次「二年の歳月は、おめぇさんたちにとっちゃ、長げぇだろうが、まぁ、笑って会える日も来るかと思えば気も晴れるってもんだぃ」
お静「元気でね」
朝吉「うん!」
滝蔵「ありがとうごぜえます、では」

 滝蔵と朝吉、去っていく。八五郎とおとよが走り出てくる。朝吉、風車を持って嬉しそうに滝蔵のまわりをまわりながら、歩いていくのが見える。涙を浮かべるおとよ。

平次「(おとよに)遠く離れた母と子も子を思い、母を思う心はひとつ。母子(おやこ)に絆はしっかり繋がってるんだよ。昨日までの悪い夢は、二年ののち、春風に風車がくるくる回るそのときにゃ、親子三人、水入らず、楽しい暮らしが巡ってくる」

 帰っていく父子を見つめる平次たち。

平次「どうだ、あの朝坊の嬉しそうな顔は!」

 父子の姿が見えなくなる。平次と八五郎、おとよを連行する。
563話 3月2日 おふくろ 酒井修 たうみあきこ 広瀬昌助
 母の病をきっかけに小間物行商として、まっとうに働くようになった喜助。昔のチンピラ仲間で、今は大工の勘次が殺されてから、過去のあやまちに怯える。勘次の家から出てきた一枚の刻印入りの小判……平次は、三年前、三河屋に押し入った四人組の行方を追う。仲間のひとり伊之吉もまた喜助を追う。喜助の家を訪ねた伊之吉。喜助の病床の母に亡き自分の母の面影を重ねていた。

 ゲスト 酒井修さん(伊之吉)、たうみあきこさん(おはる)、広瀬昌助さん(喜助)

 万七親分、相変わらず、平次の情報を横取りして手柄をたてようなんて、楽なことを考えています。平次の家に行って盗み聞きをしようとしたら、ちょうどお静が出てきて失敗。お静に事件のことを聞いても手がかりはありません。自分の足で稼いでくださいね。

 ラスト、平次は、伊之吉の亡骸を見つめ、「人殺しの極悪人か……」とつぶやきます。このあとに続く隠された言葉はなんでしょう。母思いの若者じゃないか……悪人であろうと善人であろうと母を思う気持ちは同じで重い……


* ラストシーン

 柳原堤の舟小屋付近。

仙太郎「(舟小屋の床下に埋めてあった千両箱を開けて)金だってちゃんとあるんだ!お父つあんに言って三年前にことは、なかったことにしてもらう。そうすりゃ私を捕まえることなんか、できないさ、アハハハ……」
平次「そうはいかねぇ、仙太郎!おめぇって奴は、どこまで……」
伊之吉「(刺されたのか、下腹を押さえて)親分さん、お願ぇです、こいつの、こいつの言うとおり三年前のことはなかったことにしてください……うっ、(その場に倒れる)」
平次「お、おう、伊之吉!」
伊之吉「あ〜っ、俺は勘次と芳三を殺したのは、つまらねぇ逆恨みからでさぁ……三年前の押し込みがなかったら、そんなもん……なかったんです」
平次「おめぇは……」
伊之吉「ただ喜助は何も知っちゃいねぇ……何も……うっ」
喜助「(伊之助を抱いて)伊之吉!」
伊之吉「お願ぇです、親分さん」
平次「わかった……おめぇのその気持ち、無駄にはしねぇよ」
喜助「伊之吉、おめぇ……」
伊之吉「喜助、バカな話よなぁ、俺もおめぇも所詮ただの人の子、鬼になれるような男じゃなかったよな」
喜助「伊之!おぃ、しっかりするんだぃ!伊之!」
伊之吉「喜助、お、おっ母さんを大事にするんだぞ」
喜助「あっ」

 伊之吉、こと切れる。

喜助「伊之!伊之吉!おい!」

 喜助、伊之吉の亡骸をそっと横たえる。

喜助「伊之吉!(遺体にすがって号泣)」
平次「喜助、押し込みの一件、おかまいなしというわけには、いかないが、ひとつだけ聞かしてくんな。おめぇ、盗み出した刻印入りの二千両、五両か十両の分け前をもらったのか?」
喜助「いえ、盗んだ金が刻印入りの小判とわかるとこいつは一枚も使えないと若旦那が……あっしは、一両も……」
平次「もらってねぇんだな」
仙太郎「親分さん!それは嘘だ!盗んだものを戻すことはねぇと喜助や死んだ芳三に脅されて、それで金をここへ……」
平次「(キッと仙太郎を睨む)仙太郎!もともとそれがてめぇの企みだったんだ。刻印があるから使い物にならねぇと喜助たちを諦めさせ、その実ここに埋めて、ほとぼりの冷めたころ、そっくり潰して、金の細工師に流す……今さら、言い訳はやめな!三年前の押し込みも伊之吉を殺そうとしたのも、みんな下手人はてめぇだ!芳三と勘次を殺したのも本当はてめぇなんだ!」

 八五郎を振り切って逃げ出す仙太郎の足元に平次の投げ銭。倒れたところを八五郎がお縄に。

仙太郎「くそ〜っ、離せ!離せ!くそっ」

平次「さっ、おふくろさんが待ってるぜ。早いとこ帰ぇってやんな。ただし、番所から呼び出しがあったら、すぐ顔を出すんだ、いいな」
喜助「はい、ありがとうございます。ありがとうございます」

 喜助、伊之吉を見つめる。八五郎、仙太郎を引っ立てていく。喜助、平次に深く頭を下げ、肩を落としてゆっくり去っていく。平次、守り袋(母の戒名が入っている)を伊之吉の手にしっかり握らせる。立ち上がって羽織を脱いで、伊之吉の亡骸に掛けてやる。

平次「(伊之吉をみつめ)人殺しの極悪人か……」

 平次、まなざしを遠くに向ける。
564話 3月9日 狙われた獄門首 小島三児 江見俊太郎
 たてづづけに何者かが、囚人を逃亡させる事件が起きる。その巧妙な手口に町方もお手上げ状態。平次は、これらの事件に共通点を見いだす。そして盗っ人煙小僧になりすまし、敵が網にかかるのを待った。首尾よく平次は、敵地に潜入できたが、煙小僧の顔を知る者が現れ、窮地に立たされる。

 ゲスト 小島三児さん(源兵ヱ《煙小僧新助》)、江見俊太郎さん(弥五郎)

 平次が煙小僧の名をかたります。しけのあるむしりの髷、左の頬と左腕に傷。久々のやくざ姿ですが、相変わらず綺麗。

 囚人を逃亡させ、命と引き換えに囚人が盗んだ金などを手に入れるという斬新な手口の自称「お助け組」面白いといってはなんですが、ユニークな手口だと思いました。逃亡させるときのリスクは大きいですが。

 平次が事件のことを考えているうちに長火鉢のところでうたたね。夜が明けてしまいます。うたたね姿が可愛かったな。

 平次が許可なく寺に入って十手取り縄返上の憂き目に。事件解決まで3日の猶予しかないとはいえ、勇み足だと思いましたが、全ては平次の思惑。敵を油断させんがためのもの。敵を欺くには味方から。何も知らない八五郎もお静もただ、びっくり仰天、心配顔。

 ラスト、お静がシャボン玉を飛ばしています。源兵ヱがシャボン玉売りをしていたので、そのつながりですね。八五郎が、お静にあげたとか、八五郎は源兵ヱと顔見知りだったので、思いがあったのでしょう。

 源兵ヱ役の小島三児さん。東八郎さん、原田健二さんとトリオスカイラインというお笑いグループで活躍していました。ボケ役でしたが、ここでは、悪だけど機知にとんだ役柄でした。リーダーの東さんは、コントのなかで、銭形平次の仕草をして「大川橋蔵!」なんて言ってましたよ。東さんも平次に2回ほどゲストで出られています。


* ラストシーン

 辻堂。お堂に隠してあった千両箱を運び出した源兵ヱ。そこへ平次。

平次「わざわざ、運び出してくれて、ご苦労だったな。煙小僧新助」
源兵ヱ「銭形の親分!なんで、あっしが、煙小僧と……」
平次「それを見な」

 源兵ヱ、あわてて、左腕の傷を隠す。

平次「いつか、仙右ヱ門の死体があがったとき、おめぇは、木の陰に立って、泣きながら拝んでいたっけな。察するところ、よほどゆかりのある人間に違ぇねぇと睨んでいた」
源兵ヱ「ええ、夜鴉の父つあんは、俺が捨て子だったのを拾ってきて、おむつの世話までして、育ててくれた。俺にとっちゃ、かけがえのねぇ、たったひとりの育ての親なんですよ」
平次「そうだったのかい。その仙右ヱ門が奴らに責め殺されたと知って、おめぇは怒りに燃えて、あだ討ちを誓った。だが、盗っ人根性は、争えねぇ、あだ討ちするなら、盗っ人らしくと奴らの横取りした金をそっくり根こそぎひっさらって、一泡ふかしてやろうと考え、おめぇは奴らの仲間にもぐりこんだ。にせの煙小僧が捕まったと聞いて、おめぇも一度はびっくりしたろうが、面通しして、にせ者の正体がこの平次と見抜いたおめぇは、これ幸い、俺に奴らを召し取らせ、その騒ぎに紛れて金をひっさろうとこねこね知恵を働かせやがって、わざと俺の急場を救ったんだ。どうだ、違うか?」
源兵ヱ「恐れ入りやした。お察しの通り、全てうまくいくと思ったんですが、銭形の親分にあっちゃ、形無しだ。お縄をちょうだいいたしやす(両手を差し出す)」
平次「……」
源兵ヱ「でもね、親分、あっしの敵討ちは、しくじったが、親分のお陰で憎い仇どもは、一網打尽。夜鴉の父つあんもあの世で、さぞかし喜んでいることでしょう。いえ、負け惜しみじゃありません。心の底からそう思ってるんで」

 平次、源兵ヱをじっと見つめる。

 平次の家。

 お静、縁側でシャボン玉を飛ばしている。

平次「おぅ、シャボン玉なんか、どうしたんだい?」
お静「八つあんが、くれたの。子供の時分を思い出しちゃったわ」
平次「ほぅ、八がね、ハハ(空を見上げる)あ〜、よく晴れやがった。穏やかないい日になりそうだぜ」
お静「ええ」

 平次、庭に降りて、盆栽をいじり始める。
565話 3月16日 親心、涙ひとすじ 田中明夫 水原ゆう紀 溝田繁 牧冬吉
 なぜ、お父つあんは、こんなにまで私をかばうのだろう。殺意はなかったが、仙次郎をあやまって崖から落としたのは、この私。お照は不審に思う。自首をすることすら仁兵ヱは許さない。実は仁兵ヱには、お照にそうしなければならない深い訳があったのだ。
 一方、死罪に決まった伝造がもらした「人並みの情け」の一言が平次の心に深く残る。やがて、お照に隠されていた秘密が明かされる時がきた。

 ゲスト 田中明夫さん(上総屋仁兵ヱ)、水原ゆう紀さん(お照)、溝田繁さん(伝造)
     牧冬吉さん(安五郎)

 今回も平次の情けが光ってました。お照の罪が軽くなるようお上に口ぞえすると約束したり、お照をすぐ捕まえず、実の父に会う時間を与えたりと。役人は冷たいと信じていた仁兵ヱも平次のような岡っ引きがいるとわかって涙を流します。

 仁兵ヱは、できればお照に実の父が罪人であることを知らせたくなかったのです。でも父伝造は死罪、最後に娘に会わせたのです。私はもう少し、さりげなく会わせるのか(伝造が娘の顔を馬上からみるだけとか)と思ったら、仁兵ヱがお照に「どうやらわかっちまったようだな」と言うまでもなく、事情がすぐ飲み込めるほどでした。

 晴れて無罪になったお照ですが、仙次郎の死体を自殺に偽装したり、手下にその罪を押し付けた仁兵ヱにお咎めはなかったのでしょうか。


* ラストシーン

 日本橋。蕎麦屋。 罪人伝造が実の娘お照と再会後。

役人「出た〜つ!」

 馬上の伝造、暖簾越しに見つめるお照を見て、去って行く。

仁兵ヱ「どうやら、わかっちまったようだな。あの男はな……」
お照「言わないで!」
仁兵ヱ「お照……」
お照「私……お父つあんに謝らなきゃ」
仁兵ヱ「謝る?」
お照「ん、私、わかったの。御番所へ行くことも許さなかったのも土蔵へ押し込めたりしたのも今日のこの引き合わせのためだったのね」
仁兵ヱ「そうなんだ。だがな、私はどうしてもおまえに本当のことを知らせたくなかったんだよ」
お照「いいのよ。返ってはっきりした方が……。ごめんなさいね、お父つあん」

 店の外で二人の会話を立ち聞いていた平次、安心したように去って行く。

 江戸奉行所前。 仁兵ヱが心配そうに待っている。平次が奉行所から出てくる。続いて八五郎、お照。

仁兵ヱ「お照!」
平次「おめぇさんとの約束は果たしたぜ」
仁兵ヱ「そ、そいじゃ、お照は無罪に?」
平次「お奉行様のおっしゃるには、自らの非を悔いて名乗り出た事実に免じて、その罪は敢えて咎めぬということだ」
仁兵ヱ「どうもありがとうございます」
お照「ありがとうございます」
仁兵ヱ「(お照に)さっ」

 お照と仁兵ヱ、去って行く。何度も振り返って平次たちに頭を下げる。

平次「これで赤猿の伝造も成仏するだろうぜ」
八五郎「そうですね」

 空を見上げる平次の顔のアップ。
566話 3月23日 奇妙なお礼参り 和埼俊哉 森秋子 中井啓輔
 両替商上総屋から奪った一万両。辰次郎はそのありかを吐かぬまま、解放しとなる。一万両の行方を求め、町方は総力をあげて辰次郎を尾行する。辰次郎は、自分をお縄にした平次に奇妙なお礼参りを企てていた。「平次の目の前から、一万両をそっくり持ち出してみせる! 平次と勝負する」勝負場所は辰次郎のなじみの小料理屋丸福。しかし、この一万両を狙う奴が目を光らせていた。

 ゲスト 和埼俊哉さん(辰次郎)、森秋子さん(お甲)、中井啓輔さん(治平)

 盗んだ小判を釘にして樽に入れておくとは、凝った隠し方です。登場人物が悪ばかり。盗難にあった上総屋もニセ金にかかわっていたり、岡っ引きの目を辰次郎からそらすために罪のない一家を皆殺しにしたり。辰次郎が信用していたお甲も出来心だとしてもお金を自分のものにしようとしていました。

 辰次郎は妹のおみつが既に亡くなっていたと聞かされ、気をすっかり落としてしまいます。上総屋の手下に刺され、「(平次に)勝負は生まれ変わるまで、お預けだ。一万両はそれまで、お預け……」と言って絶命します。そのあとにお甲がお金をネコババしていたことがわかるのだけれど、盗人とはいえ、辰次郎が一番憐れに感じました。

 平次がお静の膝枕で耳かきをしてもらっている、お熱いシーンがありました。

 ラスト、平次が珍しく投げ銭の回収に躍起となっていました。お甲の店への道しるべに投げ銭を道に落としていったのです。それを拾った人から返してもらおうとしていたのでした。

* ラストシーン

 平次の家。

 平次、一文銭を一生懸命磨いている。長火鉢のところでお静、お茶の用意。八五郎はまんじゅうを食べている。

お静「そう〜、すごい数だったでしょうねぇ」
八「すごいの何のって、ザーッですからね、へっ、少しぴっと(手を懐に入れくすねる仕草)やりたくなった……へへ」
平次「おぅおぅ、八」
八「へっ」
平次「くだらねぇ話してねぇで、早いとこ大番屋へ行って銭を返ぇしてもらってこねぇかい」
八「親分、たった六文くらい、どうってことないじゃないですか」
平次「なにィ、おめぇ、半造なんぞにくれて、うっちゃっておけるかい! おぅおぅ、お静」
お静「はい」
平次「おめぇ、三文だったな。銭三文、早く、早く返ぇしてくれよ」
お静「はいはい」
八「どうだろうねぇ、一万両捜しと六文捜しじゃ、気が乗らねぇや……行って来ます」
お静「はい、おまえさん(財布からお金をだす)」
平次「おぅ」
お静「三文ね(平次の手のひらにお金を乗せ)確かにお返ししましたよ……うふふふ」
平次「おぅ、お静、おめぇ、何が可笑しいんだ、え?俺にとってはだな、十手が命なら投げ銭だって、おめぇ……」
お静「いえ、そうじゃありませんよ。途方もないお金を捜しているよりも一文、二文を捜してる方が、おまえさんには、ぴったりですよ。ハハハ…」
平次「何を!(銭を投げようとする)」
お静「(思わず、手で顔をかばう)あ痛!」
平次「へへへ、(銭は手に持っていて投げていない)」
お静「あ〜、おまえさん(そばにあったお饅頭を平次に投げようとする)」

 平次、避けようとする仕草。

567話 3月30日 涙の帰り花 ひし美ゆり子 北條清嗣 六本木真
 島抜けした三人の男たち。伊之吉は他の二人とともに「喜らく」のおせんを人質にとり、堺屋へたてこもる。「宗三郎を連れて来い」と。伊之吉は堺屋の娘お縫と一緒になるはずだった。今は、宗三郎の妻となり、赤ん坊まで生まれていた。そう、それでわかった……と伊之吉は思う。店の金を横領した廉で島送りになった伊之吉だが、すべては、宗三郎が仕組んだ罠だったのだ。しかし、何も知らないお縫や赤ん坊になんの罪があろう、伊之吉は再び島へ帰る決心をするが……。

 ゲスト ひし美ゆり子さん(お縫)、北條清嗣さん(伊之吉)、六本木真さん(宗三郎)

 お静が、水茶屋時代の友達、おちかの家へ一晩泊まりに行くことに。家の中のことをこまごま平次に頼むお静に平次は、子供じゃねぇとうるさそう。どちらの気持ちもわかりますね。でも帰宅したお静の見たものは、散らかった部屋に着替えもせず、寝ている平次と八五郎でした。

 お静がおちかのところに行くのは、長く待ち望んだ子供ができたから。あやかりたいと願い、今度は私たちの番とお静は甘えた声で平次にべったり寄り添って……見ている私の方が恥ずかしくなるほどでした。

 前回#566「奇妙なお礼参り」で平次はお静に饅頭を投げられそうになり、今回はみかんです。おせんとおつるの姉妹喧嘩に巻き込まれ、みかんが平次のところに飛んできます。帰宅したお静はちらかった部屋で着替えもせず、寝ている平次に思わず、落ちていたみかんをぶつけます。平次は人に投げ銭、自分にみかんでした。


* お静の外泊

 平次の家。 平次、庭で盆栽の手入れをして、家の中に入って来る。

平次「おぅ、なんだい、まだいたのかい」
お静「あらいやだぁ。おまえさんたら早く行け、早く行けって、まるで私が一晩家を空けるのが嬉しくてしょうがないみたい」
平次「何言ってんだい、おちか姐さんにあやかりてぇって、おめぇ、はしゃぎまわっていたのは、おめぇじゃねぇか」
お静「ん〜、だってぇ、お互い水茶屋勤めで苦労した分、亭主運には恵まれて」
平次「おぅ、ありがとよ」
お静「ただ、子宝が授からないのだけが玉に瑕だった。それが、とうとう……おちか姐さんったら、うふふ」
平次「それみろ、え、諦めちゃいけねぇっていい見本だぜ」
お静「ほんと」
平次「ハハハ」
お静「ん〜、ねぇ〜、おまえさ〜ん(平次に甘えてくる)」
平次「あ〜あ、わかったい、わかったい、次は俺たちの番だっていうんだろ?夕べっから、おめぇ、そればっかり言ってやんの」
お静「だってぇ〜」
平次「おぅおぅ、早く行かねぇかい。もたもたしてたら目黒に行くうちに日が暮れちまう」
お静「あっ、たいへん! じゃ、おまえさん……あっ、そうそう、おかずは水屋に、八つあんの分も」
平次「ああ」
お静「食べ終わったら、あの、流しに運んどいてくれさえすれば、明日私が帰ってから……」
平次「それもさっき聞いたよ」
お静「え〜と、火の用心のことは……」
平次「聞いた!」
お静「あの、もし八つあんが泊まるようだったら……」
平次「ちゃんと寝巻きに着替えさ・せ・る!」
お静「おまえさんもですよォ」
平次「あ〜ぁ、子供じゃあるめぇし」
お静「うふふ、じゃ、おまえさん、行って来ます」
平次「よろしくな」
お静「はい」

 平次が詰め将棋をしていると、おせんが飛び込んできて、後から来たおつると激しい姉妹喧嘩が始まる。長吉も加わって大騒動。おまけに「たいへんだぁ〜」と八五郎まで飛び込んでくる。平次、我関せずとばかり、横になって将棋本を顔に伏せる。

 帰宅したお静。

お静「ただいまぁ〜(部屋を見て唖然とする)あっ」

 散らかった部屋に着替えもせず、文机に伏せて寝ている平次。そばに八五郎も着のままで寝ている。

お静「ちょっと、おまえさん……八つあん……これは一体……もう、知らない!」

 お静、思わず、平次に落ちていたみかんをぶつける。平次気づかず、寝ている。


* ラストシーン

 江戸町奉行所。  平次、伊之吉、八五郎が出てくる。

平次・八「(役人に)どうも」
平次「さ〜て、これからの身の振り方だが、つもりはあるのかい」
伊之吉「別に……」
平次「あれから、ひと月。堺屋は火が消えたみたいだ。先代が生きていたら、どう思いなさるか」
伊之吉「私もそれだけが、心残りです」
平次「それだけ?……それだけかい」
伊之吉「……」

 お堂付近。

平次「お縫さんにゃ強い支えがいる。その支えになってやれるのは、おめぇの他にはいねぇ」
八「残された赤ん坊かかえて、どんな思いでいるか、おめぇにも察しはつくだろうよ」
伊之吉「……」
平次「そうは言うものの、堺屋へ戻っていくってことは、島へ送り返されるよりも、おめぇにとっちゃもっと辛ぇことに違ぇねぇ。それは、お縫さんも同じことだろうがね」
伊之吉「……」
平次「だがな、伊之吉。涙のない幸せは、ねぇともいうぜ。その苦い涙の味をおめぇもお縫さんも世の中の誰にもまして味わったんだ。おめぇも今までのことは、きれいさっぱり忘れて、出直すんだ。決してくじけるんじゃねぇぞ」
伊之吉「親分…」

 平次、伊之吉の肩に手を置く。八五郎、泣き笑い。伊之吉、晴れ晴れした表情で遠くを見つめる。その様子を見てうなずく平次。
568話 4月6日 ひとり心中 関根世津子 大竹修造 中田博久
 加賀屋の若旦那清太郎と別れ話が出ていたおちかが、殺された。清太郎と会う約束の場所、刻限に。当然清太郎が疑われ、お縄となるが、清太郎はアリバイを主張する。その刻限におときと会っていたと。おときは、加賀屋の元下女で、捨てられた女のひとりだ。しかし、おときは今でも、清太郎に心底惚れている。おときは言った「会ってはいない」と。なぜ、嘘をつくのか、意趣返しか、それとも……平次は女心を計りかねていた。

 ゲスト 関根世津子さん(おとき)、大竹修造さん(清太郎)、中田博久さん(仁助)

 清太郎は、本当にご都合主義で、自分のことしか考えないし、女にだらしがないし、どうしようもない男ですね。平次親分に一発殴ってほしかったです。
 あんな男と思っても女心は複雑で、切ないですね。清太郎に罵声を浴びせられても「あの世で清太郎さんと幸せになれるかしら」なんて言うのです。清太郎を刺して心中しようとするのですが、心中する価値もないような男なのに。もう少し考えてほしかったな。
 平次親分の言うようにいつかおときのことを見に沁みて思うときが、清太郎に早く来てくれるといいのですが。

 立ち回りのときの音楽が変わりました。

☆お仙の茶屋……ラストに流れた手まり唄は、明和の三美人のひとり、谷中笠森稲荷の水茶屋に勤めていたお仙のことを歌ったもののようです。ライバルの浅草寺境内の楊枝屋本柳屋にいたお藤に対抗してご贔屓が流行らせた歌とか。化粧が濃い目の都会美人、お藤より自然派のお仙の方が人気があったということです。


* ラストシーン

 柳原の舟着き場。捕り物のあと。清太郎を刺し、自害を図ったおとき。おときを抱くお静。

おとき「私……あの世で清太郎さんと幸せになれるかしら……」
お静「ええ、きっと幸せになれるわよ……」

 おときを見つめる平次。傍らで清太郎の手当てをする八五郎。

清太郎「(八に)早くお医者を……」
八「わかってらい、畜生」
おとき「あたい……あたい」

 お静の腕の中でおときが息を引き取る。

お静「おときさん!」

 堀端。 平次とお静が歩いている。

お静「死んでいく人に嘘をついちゃ……やっぱりいけなかったのかしら」
平次「時と場合によるさ。なぁ、お静、おらぁ、おめぇには、ありがてぇ、よく言ってくれたと腹の中じゃ思ってるんだぜ」
お静「おまえさん……」
平次「おときさんにゃ、ああ言ってやるのが何よりの手向けだったんだ」
お静「これでよかったんですね」
平次「うん」
お静「清太郎さんは?」
平次「いや、死にゃしねぇさ。いや、死なせちゃならねぇんだ。ああいう男は、生きて生き恥をさらして、いつの日か、おときさんを懐かしく身に沁みて思う日まで、そう、死なしちゃならねぇんだ」

 手まり唄が流れる。

お静「おときさん、ひとりで死んでいったんですね」
平次「あぁ、ひとり心中さ」
お静「ひとり心中……」
平次「うん」

 平次とお静、しばし立ち止まり、遠くに目をやる。再びゆっくり歩き始める。手まり唄の声が大きく流れる。

♪ むこう横丁のお稲荷さんへ
  一銭あげて ちょいと拝んでお仙の茶屋へ
  腰をかけたら 渋茶を出して
  渋茶 よくよく横目で見たら
  米の団子か 土の団子か お団子 団子
  犬にやろうか 猫にやろうか とうとうとんびにさらわれた
569話 4月13日 可愛げのない娘 森川千恵子 三上真一郎 西朱実 夢大作
 相模屋の大番頭、善兵ヱが水死体となってあがる。自殺で片付けた万七だが、相模屋の娘、おさんは「身投げをするはずがない」と言いきる。この娘が気にかかる平次。そして、相模屋の主人、伍兵ヱが刺し殺される。下手人は左利きの者。内部犯行と断定した平次は、相模屋の身代を巡って醜い欲望が渦巻くなかで、片意地を張って生きているおさんを見ることとなる。

 ゲスト 森川千恵子さん(おさん)、三上真一郎さん(孝助)、西朱実さん(おうら)
     夢大作さん(婿はんー特別出演)

 #235「河内念仏」のリメイク版です。

 丹次(三次)の女に会うため、平次は弟分のふりをして、神奈川宿に入ります。右目にアイパッチをしたやくざ風の男に扮しました。

 脚気で思うように御用が出来ない万七親分に代わって清吉が大活躍しました。偶然ですが、万七の代参で川崎大師に行ったことが、アリバイ崩しにつながりました。
 清吉、自らの考えで、あんまに扮して相模屋に乗り込みます。相模屋のなかで誰が左利きか捜すために。丹次をからかったら、清吉の頬にビンタが飛んできましたが、なんと左手だったのです。痛い思いをしましたが、報われました。

 平次は万七に手柄を譲ります。「体を張って、いろいろと探り出してくれた清吉をほめてやってくんな」と言い残して。

 特別出演となっていた夢大作さん。「喜らく」で八五郎と清吉が事件のことを話しているとき、奥の座敷にいた客の役。例のごとく、おせんとおつるが口喧嘩をして、おせんがおつるに「婿はんの顔がみたいわ」といったとき、ちらっと振り向きました。
 本当に婿はんだったんですね、おつる(海原万里さん)の。知りませんでした。洒落ででていらしたのですね。


* お静は強し

 平次の家。

お静「(行灯をつけながら)へ〜ぇ、随分ときつい娘さんなんですねぇ」
平次「(煙草をふかして)あぁ、昔のおめぇとそっくりだったぜ」
お静「えっ、何ですって!」
平次「ん(キセルの灰をポンと火鉢に落として)いや、ん(誤魔化そうとして顔の前で何かを払う仕草をする)蚊じゃねぇかなぁ……」
お静「まだ、蚊はいません!」
平次「そうだったなぁ(バレタ!という表情)」
お静「うふふ」

 ーーーーーーーーーーーーー

 長吉と八五郎が帰ったあと。

お静「(お茶を入れながら)おまえさん、また忙しくなりそうですね」

 平次、目を閉じて、長火鉢に頬杖をついている。

平次「う〜ん」
お静「おやりになるんでしょ?今度の一件」
平次「どうして?ありゃ、三輪に任せときゃ、いいことだぜ」
お静「あら、じゃ、うっちゃとくんですかぁ。がっかり」
平次「何!」
お静「いえね、長吉さん、さぞかしがっかりするでしょうね。はい、お茶」
平次「お静」
お静「えっ」
平次「亭主の尻を叩くとは、やっぱりおめぇも気の強い女だぜ」
お静「あら、まっ、ひど〜い」
平次「アハハ……」

* ラストシーン

 墓地。うぐいすが鳴いている。善兵ヱの墓参りをしている平次と八五郎。帰ろうとすると。

八「あれ?親分(指差す)」
平次「ん?」

 おさん、おうら、佐吉が、なごやかに話しながら、墓参りに来るのが見える。

平次「おぅ、八」
八「へっ」
平次「あの娘の今日の顔」
八「へぇ」
平次「あぁ、よくよく考えてみりゃ、今度の一件、俺たちはあの娘の笑顔を見てぇばっかりに駆けずり回ったようなもんだぜ」
八「ほぅ〜」
平次「どうだ、八、可愛げのなかったあの娘も、めっぽう可愛くなりやがったじゃねぇか」
八「へぇ」
平次「ハハハ」

 平次と八五郎、帰っていく。
570話 4月20日 明神下に来た女 岡まゆみ 入川保則
 「文七を殺したのは、平次だ!文七の仇をとれ」恋人文七を一途に思っていたおさきは、弥助にそうそそのかされた。文七との思い出の鈴を身につけて、平次を殺す機会を狙っていた。弥助に操られているとも知らずに。一方、盗賊はやぶさ組の頭目銀造が再び江戸に姿を現したとの情報が入る。おさきが、平次に匕首を向けたとき、平次は弥助と銀造の姿が重なった。

 ゲスト 岡まゆみさん(おさき)、入川保則さん(弥助《はやぶさの銀造ー当て字です》)

 八五郎の恋は、また片思いで終わってしまいました。「おさきちゃんが、あっしに惚れても、日頃お世話になっているからと恋心を自分で無理につつんでしまうのでは」などと取り越し苦労して、悩んでいましたが、取り越し苦労で終わってしまいました。残念。

 #567「涙の帰り花」同様、お静の留守中の事件でした。今回は板橋の親戚の法事という設定。留守の間に若い女性を泊めるのは、まずいんじゃないかなと思っていたら、案の定万七と清吉が、おさきを見てしまって平次の恋人だと騒ぎました。前回と違ってお静が帰宅しても部屋は片付いていましたが、おさきのお陰ですね。

 平次はたすきがけで夕飯作り。「ありあわせでこしらえている」と言って何やらお鍋をかき回していましたが、何でしょうね。「味の保証はしねぇ」って言ってましたが、きっとおいしかったんだろうな。

 夜中におさきは起き出して、平次のそばにより、匕首を出そうとして気づかれてしまいます。とっさにごまかした言葉は「亡きお父つあんの夢を見て、となりにいるような気がして」でした。平次じゃないけど、お父つあんはショックです。

 ラストの立ち回りは、十手、投げ銭を捨てさせられたので、どうするかと思ったら手拭でした。そして手拭になんと銭が十枚ほど縫い付けてあって、一枚ずつとって投げていました。まさかのときのためにいろいろなところに銭を隠すのもたいへんですね。

 一件落着。平次と八五郎は将棋をしています。今回は平次の勝ち!腕をあげたようです。

* ラストシーン

 境内。捕り物のあと。おさきが、片隅でかんざしで胸を突こうとしている。平次が手拭を投げる。

平次「はやまるんじゃねぇ!」
おさき「死なせて、死なせてください!」
平次「なぜ、死ななきゃならねぇんだ。俺とおめぇとの間には、何もなかったんだ。文七も心の中じゃ死ぬまでおめぇのことを思ったに違ぇねぇ。その証拠には、最後まで同じ鈴を肌身離さず持っていたじゃねぇか。悪い夢は早く忘れて幸せを掴むんだ。道を踏み外しちまった文七の分まで……いいな」
おさき「(泣きながら)親分さん……」

 うなずく平次。おさきを見つめる八五郎の切ない顔。

 平次の家。 平次と八五郎が将棋を指している。

八「おさきちゃん、今頃どの辺でしょうかね」
平次「う〜ん、まっ、そろそろ千住に着く時分だろう」
八「あぁ、田舎に帰ぇったら、もとの奉公先でがんばるって言ってましたね」
平次「あぁ」

 玄関の戸の開く音。

お静の声「ただいまぁ」
八「お帰りなさい」
お静「すいませんでした、長いこと留守にしちゃって」
八「へへへ」
お静「八つあん(隣室で巾着をたんすにしまいながら)あの話、どうなったの?ほら、好きな人ができたとかの話」
八「へぇ、それが……あのぅ、いろいろありまして……姐さん、それより何か匂いません?」
お静「えっ……何かって?ん〜、別にいつもと同じだけど」
八「へっ、匂わない!いや、姐さんが留守の間、ここに若けぇ娘さんがいたんですよ、へへへ」
お静「若い娘さん?」
八「え〜え〜、三輪の親分ったらね、うちの親分のこれ(右手の小指を立てる)じゃねぇかって、パッパと噂飛ばしちゃって」
平次「おいおい、バカなこと言うなよ。本気にするじゃねぇかよ」
八「イヒヒヒ」
お静「(平然と)お腹すいてるんでしょ、すぐお昼こさえますからね」

 お静、前掛けを締めながらお勝手へ。

八「はぁ〜、びくともしねぇや」
平次「アハハハ」
八「姐さん、親分のことあんなに信じてるんですねぇ」
平次「おっ、おぃ、(駒をおいて)詰みだ」
八「えっ!ちょっと親分、そ、そんな……あ〜あ」

 平次、庭に降りてのびをする。

八「将棋は負けるし、親分と姐さんはこんなに仲がいいし……ひとりものは、辛ぇなぁ」

 平次、空を見上げる。
571話 4月27日 清吉の十両 倉野章子 柴田光彦 西山嘉孝
 「喜らく」で万七たちが、飲めや歌えやの大騒ぎ。清吉が十年間掛け続けた頼母子の金が明日入るのだ。なんと十両!その前祝だった。しかし、清吉の幼馴染、宇之助にその金を預けてあったのだが、使い込んでしまったと謝りにきたではないか。あの真面目一方の男が!まさか!しかも、昔の女、お昌のために。そして、女房お豊殺しの疑いまでかかった。
 調べを進める平次だが、回り道をしてしまった宇之助とお昌の幸せを願わずにはいられない。

 ゲスト 倉野章子さん(お昌)、柴田光彦(光は人偏です)さん(宇之助)、西山嘉孝さん(仙右ヱ門)

 11年目、最終のエピソード。次回予告の音楽(アレンジ)が変わりました。

 お昌が宇之助のためと身を引いたのが、裏目に出てしまい、不幸な二組の夫婦を作ってしまいました。平次の言うとおり、長い回り道をしましたが、今度こそ、やり直して幸せになってほしいものです。

 清吉は毎日16文ずつ(そば一杯分)10年欠けることなく積み立てて、10両もらえるはずでした。偉いですねぇ。そんなに苦労したのに、使い込みされてもまた始めますよとはあきらめがいいですね。

 冒頭、平次の家に近所の子供でしょうか、三人遊びに来ていて、平次は竹とんぼを作ってやり、お静は飴をあげていました。珍しい場面です。ほのぼのとしたいいシーンでした。

 ラスト おつるがお嫁に行くことになり、「喜らく」では前祝。平次が、妹のおせんに「今度はおめぇの番」と言うとおせんは照れて、何やら平次に耳打ち。何と言ったか気になるところです。
 実生活では、妹の方が先にお嫁に行きました。


* ラストシーン

 平次の家。

お静「おまえさん。たいへん、たいへん!」
平次「ん?」
お静「もう前祝が始まってるんですよ」
平次「おぅ、また頼母子講があたったのかよ(キセルの灰をポンと長火鉢に落とす)」
お静「何言ってんですよォ。ほら、喜らくのおつるちゃんがお嫁にいくんですよ」
平次「あっ、そうだったな。うっかりしてた」

 喜らく。 長吉、八五郎、清吉、万七、着飾ったおつるをしげしげ見ている。

おせん「ちょっとあんたら、そんなやらしい目で見んといてあげてよ」
万七たち「イ〜〜ッ、ハハハ」

 平次が入って来る。

八「あっ、親分、親分(平次の手を引いて、中ほどへ入れる)」
皆「待ってましたぁ」
平次「おつるちゃん、おめでとう」
おつる「ありがとうございます。親分さん、長い間お世話になりました」
平次「な〜に、こっちこそ、おめぇ。おつるちゃんなら、きっといいおかみさんになれると思うよ」
おせん「要するに、親分さんとこのお静姐さん、見習ろうたらええのやね」
おつる「わかってるがな」
平次「それほどでもねぇがよ」
皆「イェ〜ッ」
八「親分、照れてやんの、アハハ、あっ、今日はね、ただし割り勘ですからね」
平次「もちろん、俺も、それからお静の分も出させてもらうぜ」
皆「イェ〜ッ」
万七「それにしても、清吉のこの十両は、どうなるんだろうな」
平次「宇之助は、入船の店を手放すそうだから、清吉、いずれは戻ってくるさ」
清吉「いやぁ、十両ったってね、もともと十六文ずつ積み立てたんですから、また始めますよ」

 清吉、万七の煙草に火をつけようとする。

万七「あっ、この野郎!また俺の煙草を!」
清吉「いいじゃないか!このケチンボ」
万七「ケチンボとは、なんでぃ、この野郎!」
清吉「何ですかぁ、あんた……」
平次「まぁまぁ、いいじゃねぇか、今日はともかく、めでてぇんだからよ、ひとつ揃ってみんなで、こう盃をあげようじゃないか」

 みんな、お互いに酌をする。

平次「おぅ、おめでとう!」
皆「おめでとう!」

万七、清吉、八五郎「♪めでた、めでたぁ〜の、若松さまよォ〜」
万七「さぁ、みんな」

 万七、清吉、八五郎、長吉、おつるを外へ連れ出し、四人で担ぐ。平次、おせんも外へ出る。

万七たち「わっしょい、わっしょい」
平次「ハハハ……(おせんに)今度は、妹の番だぞ……ハハハ」

 おせん、照れてうつむく。そして、平次に何やら耳うち。

平次「ほぅ……お静には内緒だぞ」

 おせん、照れて暖簾に顔をうずめる。

平次「アハハ」

 平次の笑顔のアップ。
572話 5月4日 むささび小僧 財津一郎 正司花江 木村元 灰地順
 上方で空飛ぶ化け物と名高かった怪盗むささび小僧一味。三年の沈黙を破って江戸に姿を現した。しかし、盗みはすれど殺生はしない一味だったが、江戸では盗みに入って皆殺しにするという残忍な手口だ。平次はひょんなことから、上方から来た屋台そばや、長吉と出会う。貧乏なくせに捨て子まで育てようかという、気の優しい男だが、むささび小僧について、やけに詳しいことから、平次は、長吉に不審を抱く。

 ゲスト 財津一郎さん(長吉《元 むささび小僧》)、正司花江さん(お峰)、木村元さん(清次郎)、灰地順さん(松五郎)

 12年目を迎え、オープニングが、ガラッと変わりました。テーマソング、劇中の曲、銭が出るときの音楽などアレンジが変わりました。

 新しい居酒屋は「つるや」看板娘は双子の女性歌手、ザ・リリーズです。つばめ奈緒美さん(おなお)、つばめ真由美さん(おゆみ)、板前兼主人は大橋壮多さん(壮吉)です。
 早速、双子ゆえのハプニングがありましたが、これからも騒動がありそうですね。

 平次が赤ん坊を抱くシーンがありました。前にもありましたが、ほのぼのします。


* ラストシーン

 伊勢屋の庭。捕り物のあと。過って、張られた綱から庭に落ちた長吉。

長吉「足の骨、折ってもうた〜、情けないなぁ、もう」
平次「それでいいんだよ、長吉」
長吉「はぁはぁ、親分さん」
平次「おめぇは、もうその装束は似合わねぇってことよ。昔のむささび小僧は、死んだんだ。あれを見ろ」

 八五郎と下っ引きが、清次郎(現 むささび小僧)を引っ立ててくる。清次郎の右目は潰れていない。

長吉「あ〜っ、若旦那の目、畜生、あのど悪党、人をだまししくさって!」
平次「長吉、済んだことは忘れて、一、二年寄せ場に行き、新しい骨に変えてくるんだ。今度こそ、まちがいのねぇすっ堅気のどしゃっ(?)骨なな」
長吉「親分さん、おおきに(ほっかむりをとって)わいは……どうもすんまへん」
平次「おぅ、八、腕を貸してやれ」
八「へぃ」

 八五郎、長吉を抱えて行く。

八「気をつけてな」


 つるや。 おなおが折り詰めをもって、調理場から出てくる。平次に中身を見せる。

おなお「親分さん、これ、どう?」
平次「おぅ、なかなかうまそうじゃないか、え」

 八五郎が店に入ってくる。

八「あっ、親分、へへ、花見に行こうってんですね、へへへ」
おなお「そうよ、石川島のお花見にね」
八「石川島か……石川島?」
おゆみ「親分さんはね、これから、お峰さんと一緒に長吉さんに会いに寄せ場に行くのよ」
八「これ、長吉に食わせんのか?」
おゆみ「そうよ」
おなお「長吉さん、赤ちゃんに会うの楽しみにしてるんだろうなぁ」
八「なるほどな……(平次に)あっしも、あっしもお供しますよ」
平次「行ったって、折り詰めの中身は、おめぇの口にへぇらねぇぜ」
八「え〜!それじゃつまんねぇなぁ。おなおちゃん、俺になんか旨いもん、食わしてくれよォ」
おなお「はい、おゆみ、八つあんに、沢庵にめざしにお味噌汁よ」

 おゆみ、調理場へ。

八「なんだよ、なんで沢庵とめざしなんだよォ」

 おなお、平次に折り詰めを渡す。平次、折り詰めを持って出て行く。

八「親分、半分でも置いていって……」

 平次、にこやかに折り詰めを持って、往来を歩いて行く。
573話 5月11日 誰がための命 三好美智子 花上晃
 伏見屋の主人が殺された。自首をしてきた宇三郎。病弱な我が身、金のための犯行と言い張る。が、平次は宇三郎の供述に疑問を抱く。伏見屋は上総屋に高利の借金をしていた。宇三郎夫婦は上総屋に恩があった……次第に繋がっていく事件の糸。宇三郎の妻、お島はお金とは比べものにならないほどの重い夫の気持ちに耐えかね、平次の家を訪ねるのだった。

 ゲスト 三好美智子さん(お島)、花上晃さん(宇三郎)

 宇三郎は病弱なため、せめて家族にお金を残そうと身代わり下手人を五十両で請け負っていました。気持ちはわかりますが、平次の言うとおり、家族は、下手人の妻、子という負い目を背負います。それに悪人共がますます、はびこってしまいますね。お島が早く気づいてよかったです。

 万七親分、また早とちりと調べの甘さから誤認逮捕。「わけがわからなくなっちゃった」
なんて言ってましたが、手柄をあせるとろくなことになりません。

 上総屋を罠にかけるため、お静を料亭の女将に、「つるや」のおゆみを下働きに仕立てます。平次はお静に「なかなか板についている」と冷やかし、八五郎は「姐さんなら評判の店になる」と太鼓判。自信のなさそうなお静ですが、平次が控えているとはいえ、悪人相手に立派なものでした。


* 汚名

 平次の家。 お島が訪ねてくる。

平次「宇三郎もおめぇとも大変なことを忘れていたな。二人の子供は人殺しといういわれもねぇ汚名を生涯背負うことになる。我が子のあの叫びを聞きゃ、おめぇさんなら必ずそこに気がつくと思った。女房、子のために宇三郎は金で幸せを買おうとしたそうだな」
お島「はい」
平次「いくらの金と引き換ぇに宇三郎は身代わりの下手人を背負ったんだ」

 お島、金包みを渡す。

お静「病気がちな体では、行く末かわいい女房、子供を幸せにすることが返って、お荷物になると、それならいっそ……きっとそう考えたんでしょ」
お島「(泣きながら)その五十両、あの人がどんな思いで、私と子供たちに残そうとしたか、その気持ちを思うと黙って歯をくいしばって……それがあの人の気持ちに答えることだと」
平次「それで宇三郎の無実を知りながら、じっと耐えようとしていたんだな」
お島「はい。でも五十両の重さなどとは比べものにもならない、あの人の重さが骨身に沁みて、親分さん、どうか、どうかあの人を……」
お静「おまえさん」
平次「お島さん、この五十両の出所がわかるかい?」

 首を振るお島。

平次「上総屋だ」
お島「えっ、まさか!」
平次「家族思いの宇三郎に金と恩、二重のかせをかけられるものが、他にいるかい?」

 ガ〜ン(効果音)

* ラストシーン

 上総屋。 捕り物のあと。

平次「天につばを吐きゃ、己にかえる。重なる悪事の始末は、上総屋!てめぇにつけてもらうぜ」


 奉行所前。

 八五郎、お島母子を連れてくる。平次と宇三郎が奉行所から出てくる。

健太「ちゃん!」
宇三郎「健太!(抱きしめる)」

 見つめ合う宇三郎とお島。平次、大きく頷く。

宇三郎「ありがとうございました」

 宇三郎とお島、平次に深く頭を下げる。親子四人去る。見送る平次の顔のアップ
574話 5月18日 大泥棒平次 和泉雅子 梅津栄 富田仲次郎
 下田からの帰り道。渡し舟の中で平次は女に財布をすられた。見事な腕だ……年の頃といい、盗っ人梅鉢一味に違いない。平次は巧みにその女、おりんに近づく。おりんもまた、岡っ引きとも知らず、平次に惚れこんで手下になれと言う。平次は梅鉢一家に潜入し、一網打尽の機会を狙う。しかし、敵も一枚上手、正体がばれ、大ピンチの平次だが……。

 ゲスト 和泉雅子さん(おりん)、梅津栄さん(喜佐松)、富田仲次郎さん(伊勢吉)

 旅姿の平次。下田へ来たわけをナレーションで説明してました。

 平次が盗みに(下調べに)入るとは、面白いですね。おりんに泥棒指南を受けるところがまた面白い。平次は「なるほど盗みにへぇるって気分はこんなもんか」と感心したり。
 おりんも言っていましたが、平次の盗っ人かぶり、よく似合います。

 おりんと平次の仲を誤解して心配する八五郎。八五郎だけでなく、万七や清吉も浮気じゃないかと平次をとっちめる場面がありました。真相をしるや、ころっと皆の態度が変わりました。平次を信じるお静の株もあがりました。

 平次は正体がばれて、後ろ手に縄で縛られてしまいます。一文銭の半分をのこぎり状に刻んだ銭で縄を切っていました。この銭は#852「逆転」でも使います。

 ラスト、立ち回り前に平次の姿がシルエットで浮かび上がります。かっこいいですね。舞台を観ているようでした。


* ラストシーン

 尾張屋の庭。捕り物のあと。おりん、植木の下でうずくまり、身を隠している(頭隠して尻隠さず)平次、おりんを見つけ、お尻をポンと叩く。

平次「おぅ」
おりん「わぁっ、(振り向いて)あんた……ほんとうに銭形の……」
平次「アハハハ」
おりん「私としたことが、なんてそそっかしいことを……」
平次「いくらそそっかしくとも、おめぇは奴らの殺しを止めたんだ。お上にもお慈悲はあるぜ」

 おりん、神妙になって、両手でこぶしを作って平次の前に差し出す。

平次「おぅ」

 平次、出したのは、取り縄でなく、手拭。おりんの怪我をした左手に手拭を巻く。

おりん「親分さん……これで私もやっと真人間になれそう……」

 頷く平次。

おりん「でもよりによって、こんな人に……」
平次「おりん、おめぇと所帯を持つことはできねぇ相談だが、おめぇが罪を償って、出てきたら小商いくらい出来るようにしてやるぜ」
おりん「小商い?」
平次「そうよ、女白波はもう店じまいだ。なぜなら、おめぇの手口はこの大泥棒平次が、すっかり盗んじまった」

 涙をためているが、微笑み頷くおりん。

平次「アハハハ……」
575話 6月1日 雀に餌をやる女 赤座美代子 新倉博 黒部進
 市中に出回るご禁制の品。同心樋口は極楽河岸を牛耳る重兵ヱが怪しいと睨み、証拠を掴めと平次に命ずる。聞きしに勝る荒れた河岸。やくざに身を変え、難なく重兵ヱの手下に加わる平次。境内で雀に餌をやる女、お喜代。やくざ嫌いだが、傷ついた雀を憐れに思う平次に心を開く。平次は抜け荷の生き証人として、富三をかくまうが、なぜかお喜代は富三を逃がしてしまう。正体のばれた平次は、重兵ヱの手下に襲われ、崖から足をすべらせ、まっさかさまに……。

 ゲスト 赤座美代子さん(お喜代)、新倉博さん(富三)、黒部進さん(夜烏の孫四郎)

 前回同様(#574)平次はやくざに扮して、敵に潜入します。むしりにしけのある髷、鮮やかな青色の着物、名前は平助。ほんとうに綺麗ですね。

 傷ついた雀をお喜代に渡すとき、平次の左手の甲に三箇所くらい傷があるのがみえました。立まわりでの傷でしょうか、その激しさを物語っているようです。

 立ち回り前、重兵ヱたちの耳に妙な音が聞こえます。「チュン、チュン」というような。雀の鳴き声みたいですね。そのあと平次が登場するので、平次が出したのでしょうが、銭をこする音にしては変だし、何でしょうか。


* ラストシーン

 牢。 雀の入った鳥かごを抱えているおりん。樋口様と番太が来る。

樋口「お喜代、おめぇの措置が決まったよ」
お喜代「伝馬町?じゃないわね、寄せ場……それとも島流し。どっちにしても覚悟はできてますよ。銭形の親分さんの大事な生き証人を逃がしちまったんですものね」
樋口「お解放しだ。無罪だ。さっ、出てきな」
樋口「悪の一味を逃がした罪はあくまで罪だと与力の方は主張されたが、平次は頑として、わざと逃がしたんじゃねぇと言い張った。あんな平次は今まで見たことねぇ」
お喜代「おせっかいなこったねぇ」
樋口「ふざけるな!平次はな、この願いがとりあげられなきゃ、当分はお上の仕事はできねぇとまで、言い張ったんだぞ!」

 唖然とし、雀を見つめるおりん。

 境内。  平次が待っている。おりんが鳥かごを抱いて来る。平次とおりん、見つめあう。おりんの目に涙。

平次「俺を勘弁してくれるかい」
お喜代「謝るのは、私の方です」
平次「(鳥かごを見て)きっとここへ来ると思ったよ」

 お喜代、鳥かごのふたを開け、雀を逃がす。元気に大空へ飛んでいく雀を目で追うふたり。

平次「ひとつ、聞きてぇことがあるんだ。あれほど憎んでいた富三をなぜ逃がしたんだね?」
お喜代「バカな私が親分さんに面当てしたんです。すいません」
平次「それだけだったのかい」
お喜代「あんとき、私……富三を逃がすつもりはなかったの」
平次「それで?」
お喜代「あの男、私と一緒に逃げてくれって懸命に頼んだんです。その姿をみていたら、昔小さかったとき、蔵前の米蔵の前で落ちこぼれ米を拾い集めていた私のこごえた手の指にあったかい息を吹きかけてくれた富三の姿が浮かんできたんです(泣きながら)たまらなかったんです」
平次「働き口は俺に世話させてくれるね」
お喜代「ええ、この近くで働きます。そうしないとここの雀たちが、かわいそうですもの」
平次「わかった」

 平次、懐から小袋を出す。

平次「餌だ」
お喜代「はい」

 お喜代、早速餌を雀たちに撒く。

お喜代「ほら、ほら……」

 お喜代の姿を見つめる平次。
576話 6月8日 人情寄席ばなし 多々良純 楠侑子 田口計
 蔦本亭に繰り出した平次一家。二枚目で評判の手妻師、花川戸助八が舞台上で突然倒れた。死因は毒殺。一体誰が?下足番の留吉、蔦本の女将、お春、その娘で助八の恋人、お香代、馴染みの同心、勝田十蔵……平次は蔦本亭に何か秘密があると確信する。そして、二十年前のある事件に突き当たる。

 ゲスト 多々良純さん(留吉)、楠侑子さん(お春)、田口計さん(勝田十蔵)

 今回は平次一家(平次、お静、八五郎、おなお、おゆみ)で寄席見物。合間にあられをつまんだり、みかんが回ってきたりと和やかで庶民的。でも平次の行くところに事件あり。舞台で手妻師が突然血を吐いて絶命してしまいます。

 お静はお香代が、十五、六歳のとき、お針を教えたことがあるそうです。平次も思い出しますが、お香代のことを「ちょっぴりおませで、気まぐれで、何を考えてるかわかんねぇとこがあったな」という評。平次には、お香代の印象がよくなかったみたいですね。

 ラスト、留吉とお春は二十年前の夫殺しを自首するために、雨の中、相い合い傘で奉行所に赴きます。留吉が、手妻師のころ編み出した「助六春雨傘」と名づけたネタを取り入れた場面でしょう。


* 平次の啖呵。

 蔦本亭。 下手人の同心勝田十蔵に向かって。

平次「往生際が悪いぜ。てめぇは、おいら岡っ引きに手本にならなきゃならねぇ立場の人間じゃねぇか! お紋が自分自身の恨みで助八を殺そうとした、あのゆずは、ただのゆず。あんなもんじゃ人は殺せねぇ。そのお紋の仕業に何の係わりもねぇ、てめぇがつけこんで罪を被せようとまでしやがった。何が赦せねぇって、てめぇの地位を利用して弱い者いじめする奴ほど赦せねぇ奴はいねぇんだ。もうこれまでだと思って、観念しろい!」

* ラストシーン

 蔦本亭の前。 雨が降っている。ひとつの傘に留吉とお春。軒下に平次、八五郎、お香代。

お香代「おっ母さん」
お春「あと頼んだよ」

 頷くお香代。

平次「な〜に、心配いらねぇよ。二十年前の一件でお縄にするほどお奉行様も、もうろくしちゃいねぇや」
八「父つあん、破れ傘がよく似合うぜ」

 留吉とお春、お辞儀をして、去る。 見送る平次、八五郎、お香代。堀端を相い合い傘で歩いて行く留吉とお春。

 蔦本亭。  お香代が元気に客の呼び込みをしている。繁盛しているようす。

お香代「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ〜」

 堀をはさんで反対側から、お香代の様子をみている平次とお静。

お香代「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ(平次たちに気づき)あっ(お辞儀をする)……おふたりさん、ご案な〜い」
平次「今にいい婿が見つかるといいがなぁ」
お静「おまえさんのよ・う・に?」
平次「あたりめぇよ」
お静「まぁ(平次の肩をつねる)」
平次「あ痛ぇ、あ痛ぇ〜」

 平次の笑顔のアップ。
577話 6月15日 女親分と五人の子供 園佳也子 小鹿番 清川新吾
 女親分と言われるほど気風が良くて、情にもろいお松。五人の子供を抱えて今日も仕事に精を出す。突然、三年ぶりに亭主の六兵ヱが帰ってきた。女を作って家を出たのだから、追い返されても当然。だが、質屋の番頭殺しの疑いがかかってると聞いては、放ってもおけぬ。子供たちのためにも亭主の無実を証明しなければと女岡っ引きよろしく子供たちと真犯人探し。果たしてどうなることやら。

 ゲスト 園佳也子さん(お松)、小鹿番さん(六兵ヱ)、清川新吾さん(本善坊)

 10年前、平次の家の隣人、お民役だった園佳也子さん。久々の登場です。今回は大阪弁でなく、女親分と言われるほど頼もしい江戸っ子母ちゃんです。

 質屋の番頭が殺され、その店にかかっていた看板から八五郎がしゃれのある看板について話します。平次の家に目のパッチリした看板を出して「目明し」なんてとしゃれ。でも本当に出したら面白いなぁ。駄じゃれは、江戸っ子の看板みたいなもの。浴衣の模様にもありますね、鎌と輪とぬの模様で、かまわぬとか、斧と琴と菊で良きこと聞くなど。
 平次もちょっと駄じゃれを「(お松の家に大小ならんだ草履を見てきて)これが本当の足がつくってやつだ」


* 看板

 平次の家。

平次「殺しだと?」
八「へぃ。黒門町の質屋でね。番頭の仙右ヱ門さんってぇのが、殺されたんですよ。外から戻った女主人が見つけたんですがね」
お静「(お茶を運びながら)黒門町の質屋なら私も一、二度行ったことがあるわ」
平次「あん」
お静「いつも店に座っていたのは、五十過ぎの番頭さんだったけど」
八「え〜え、そ、その番頭なんですよ」
お静「まぁ〜、あの横丁に入り口があって、大きな将棋の駒がつるしてあった……」
八「へいへい、そうです」
お静「まぁ〜〜」
八「近頃、ああいう看板が流行ってんですかね。質屋はね、入れたら何でも金(きん)になるって、しゃれなんですがね。こないだなんかね、お団子屋にね、じゃじゃ馬のこう絵が描いてある看板が掛かってたんすよ」
お静「それ、どういう意味?」
八「あら、旨い(荒馬い)てんですって」
お静「荒……馬……うふふ」
八「へへ、そうかと思いましたらね、寄席の前にね、あの白い狐の、こう尻尾のこう出ている看板があって、この看板、何だって言ったらね……」
お静「ん」
八「おもしろい(尾も白い)てんで……ハハハ。親分、どうでしょ、この家でもね、表にこう目のパッチリした看板、出すんですよ。この看板何だって言ったら、目明しっていうの、どうです?」
お静「まぁ、アハハ」
平次「アハハ……いいかげんにしねぇか」


* 女房がしっかりしすぎ?

 平次の家。 食事中。

平次「三輪の見た、しおたれた中年男ってぇのは、六兵ヱなんだろうが、六兵ヱは、女にはだらしがねぇが、あんな残酷な殺しができる男じゃねぇや。ところが顔を見られているし、ひょっとしたら、小銭ぐらいは、くすねたかもしれねぇ。まぁ、それで下手人にされる怖さに女房に泣きついたんだ。まっ、そんなところじゃねぇかな」
八「なるほどねぇ」
平次「お松は、おめぇ、亭主を助けるために子供たちを大勢引き連れてよ、現場をめちゃめちゃにしちまったんだ、へっ」
八「あの女、全く頭にきますよ。煮ても焼いても食えねぇんですから」
平次「だが、憎めねぇや。自分で下手人を捜しに出かけたくせに可哀相なおかみさんの話をきいて、銭までおいて帰ぇった」
お静「まぁ、そう〜」
平次「へっ、土間に泥だらけの草履が大きいのから小さいのまでずらっ〜と並んでるのを見たら、おめぇ、怒る気もしなかったぃ。これが、本当の足がつくってやつだ」
お静「うふふ」
八「アハハ」
お静「お松さんは、私も知ってるけど、ほら、あの一番小さい女の子……」
平次「ん」
お静「捨て子なんですってねぇ。それを拾って育ててるなんて、あんなに子沢山なのに」
平次「あぁ、全くだ。自分もさんざん苦労してるのにな」

 頷くお静。

平次「だが、男気があって、女親分というあだ名の通りだよ」
お静「三人の男の子は、確か大工の見習と炭屋の丁稚、それに納豆売り。みんなよく育てて、あんなにしっかりもののご亭主がどうして他の女の人と駆け落ちしたりするんでしょうね」
平次「そうよな、まぁ、六兵ヱが、悪いには、違ぇねぇが、お松さんがあんまりしっかりしすぎるんじゃねぇのか」
お静「えっ」
平次「亭主が息が詰まって、たまには息抜きがしたくなるもんだ」
お静「あっ、あら、そんな、男の勝手ですよ」
平次「朝から晩まで、ギャァ、ギャァ、ギャァ、ギャァ、言われてみろ、なぁ(八五郎に同意を求める)」
八「へぇ、へへへ」
お静「あっ、あら、なによ。何よ! 八つあんまで、その笑いかた!」
八「いえ、あたしゃ、違うんです。あっ、すいません、おかわりお願いします」

 お静、平次と八五郎の顔を見比べる。

平次「おれじゃねぇよ」


* ラストシーン

 湯島天神境内。 捕り物のあと。

平次「(お松たちのところに来て)よくやってくれた。ん、だが、もうこんな危ねぇまねは、いけねぇぜ」
お松「あんた、本当によかったね」
六兵ヱ「(お松の手を握って)本当にそう思ってくれるか」
お松「思わないで、どうするんだよ」
六兵ヱ「実はな、お松……」
お松「うん」
六兵ヱ「頼みがあるんだ」
お松「う、うん」
六兵ヱ「……もうひとり子供ができちゃったんだよ……木賃宿の女将に預けてあるんだけどな。今年二つになるんだぃ」
お松「何だって!そんな魂胆があったのかい!」
六兵ヱ「それとこれとは話が別だよ」
お松「何が別だよ!人をバカにしやがって!……なんだい!」

 平次と子供たちがお松を見つめているので、ばつが悪くなったお松。

お松「子供が五人あるのも六人になるのも同じですよね」
平次「さすがは女親分だぜ。その代わり、六兵ヱさん、おめぇさんもしっかりしなくっちゃいけねぇよ」
六兵ヱ「へえ!……へへへ」

 普請場。  地ならし作業。

人足たち「母ちゃんのためなら、エンヤ、コ〜ラ」
お松「子供のためなら、エンヤ、コ〜ラ」
人足たち「もひとつ、おまけに、エンヤ、コ〜ラ」

 お松の子供たち、平次、八五郎が作業を見ている。

お松「お父ちゃんのためなら、エンヤ、コ〜ラ」

 お松が、初めて「お父ちゃんのため」と言ったので、人足がずっこける。

お松「(それを見て)ざまみろってんだ。お父ちゃんのためなら、エンヤ、コ〜ラ」

 平次の笑顔のアップ
578話 6月22日 はしりがねの女 池波志乃 石山律雄 近江俊輔
 出会い茶屋で、男が殺された。 そこから、逃げ去る女。 私じゃない、一体誰が? でも私の暗い過去を強請っていた奴が殺された、助かった……とお梶は思う。 その安堵もつかのま、お梶の宿、菊屋に鳥羽屋佐兵ヱ一行が、やってきた。 平次は鳥羽屋の動きに不審を抱く。やがて、下手人が、浮かび上がってくるが、平次は、お上の御法を忘れたい思いにかられる。

 ゲスト 池波志乃さん(お梶)、石山律雄さん(弥助)、近江俊輔さん(鳥羽屋佐兵ヱ《渡鹿野の仁兵ヱ》)

 夫婦の絆を描いた作品でしたが、夫役の石山さんは、見るからに優しい旦那さんでした。

 お梶役の池波志乃さん、中尾彬さんの奥様でお馴染みですね。落語一家の出です。祖父は五代目古今亭志ん生さん、叔父は三代目古今亭志ん朝さん、父は十代目金原亭馬生さんです。 一時、女優業を休まれていましたが、最近、よくテレビでお見かけします。

 万七親分、「つるや」で食事中。 おかわりしたら、「平次親分は、急な御用のことを考えて腹七分にするのに。 お腹が痛くなったらみっともないから」とおゆみに嫌味を言われます。 万七は、「店の者が代替わりして、顔ぶれが変わっても俺を尊敬してくれる奴が誰もいない」とぼやきます。 挙句、それは清吉がしっかりしないせいだと八つ当たり。そこへ、平次がやってきたら「腹七分目の親分さんのお出ましだよォ」には、大笑い。

 「はしりがね」とは……劇中で説明しているので、そのまま、載せます。

船頭「早く言や、あっしら、船乗り相手の女郎で、はしりがねっていうのは、つまりその、縫い物をする針師、その針師を兼ねた女郎ってぇのが、訛ってはしりがねというんだそうで」

平次「はしりがねのわけを聞いて、俺も胸が痛くなったよ。 女たちは、ちょろ舟という小舟に乗って、沖の千石船まで稼ぎに出向くんだそうだ。船乗りたちの衣類にほころびを繕うばかりか、汚れ物も洗濯までしてやり、そして、客となった船乗りと一夜を共にするんだそうだ」


* 愛情の証

 境内。 みんな私のせいだとお縄にされようとした弥助にお梶がすがりつく。

平次「お梶さん、それじゃ、おめぇさんには、弥助の心が何も通じちゃいねぇ。弥助は、
おめぇさんに夫婦になって、このかた、ただの一度でも後悔したと言ったことが、あったかい? 今も聞いたはずだが、弥助のおめぇさんへの思いやりは、今も、いや、これから先も変わることのねぇ証なんだ。それをわかってやらなきゃ、弥助も立つ瀬がねぇだろうよ」

* ラストシーン

 菊屋。 樋口、平次、八五郎が店先で、弥助を連行するため、待っている。 弥助とお梶が出てくる。

弥助「お待たせいたしました」
樋口「平次から、事細かに事情は、聞いたよ。十分、情状酌量はされるだろう。そう長ぇ送りにはならねぇ」
八「旦那もこうおっしゃってんだ。安心していきな」
弥助「はい」
お梶「大事なこと……今日は戌の日。水天宮の腹帯を締めました」
弥助「そうか、そばにいてやれないが、丈夫な赤ちゃんを頼んだよ、な」

 うなずくお梶。弥助、平次の前に両手を差し出す。

平次「そんなもんは、いらねぇ。いりませんよね、旦那」
樋口「ん? いらねぇとも」
平次「お梶さんの過去も、おめぇの犯した罪も今度出直すときにゃ、逆に夫婦の絆を固めるかすがいにしてみせるんだな」
弥助「はい」

 強くうなずくお梶。平次もうなずく。

 往来。 平次と八五郎が歩いていく。
579話 6月29日 盗っ人志願 高原駿雄 日吉としやす 楠年明
 仏師東雲屋の奥座敷から、忽然と消えた由緒ある仏像。 そして弟子の政吉が殺されていた。 疑われたのは、その仏像を搬入したもと盗賊の伝蔵。 平次は、すっかり足を洗った伝蔵を信じた。 平次たちの探索は、寺社方に妨げられ、手出しが出来なくなる。 平次は思う、これは、寺社方が絡んだ内部犯行だと。 平次は、真の下手人を突き止めるため、命をかけて、伝蔵とともに東雲屋に潜り込む。

 ゲスト 高原駿雄さん(伝蔵)、日吉としやすさん(半助)、楠年明さん(与吉)

 元大泥棒、伝蔵の助けを借りて、平次は寺社方の警戒が厳しい東雲屋に潜入。 #574「大泥棒平次」で盗っ人指南を受けたから、今回も慣れたもの。

 寺社方の柳田隼人に、面目が保てたとお礼を言われた平次。 それを見た万七親分、自分のことのようにしてやったりと言わんばかりのいい笑顔でしたね。

 ラストシーンでは、平次とお静が、追いかけごっこ。 八五郎じゃないけど「親分、若いねぇ」 映画なんかによくある場面ですね、恋人同士が、木を挟んで、はしゃいで、追いかけごっこ。 いつまでも恋人気分の平次夫婦です。


* ラストシーン

 寺門。 伝蔵たちが、荷車を引いて出てくる。(修復した仏像を納めたのであろう)
平次、お静、八五郎が見送る。

お静「あ〜あ、いい気持ち。おまえさん、何もかも片付いたあとって、さっぱりするわねぇ」
八「あっしゃね、なんだか、ピ〜ンとこねぇんですよ」

 境内側に向いて。

平次「何、こだわっているんだい」
八「いや、あの東雲へ潜り込んだことなんですがね、どうしてあんな厳しいところへ、まんまと……」
平次「命がけでやる気になったら、どんなことでもやれるもんだぜ」
八「そうっすかぁ? よ〜し、俺も命をかけて嫁さんを捜そう(階段から飛び降りる)」

 はとが驚いて、飛び立つ。

平次「そうよ、そうでなきゃ、いつまでたっても、おめぇ、お静のようないいかみさんにあたらねぇぜ」
八「(お静をしげしげ見て)な〜るほど」
お静「(とまどった顔で)おまえさん(平次の背中を押そうとする)」
平次「おっと」

 平次、階段を降り、逃げる。 あとを追うお静。

お静「おまえさ〜ん」

 平次とお静、石灯篭を挟んで、追いかけごっこ。

平次「(お静に)ベ〜だ(舌を出す)」
八「(はしゃぐ二人を見て)親分、若ぇなぁ〜」

 平次とお静、まだ石灯篭を挟んで追いかけごっこ。 平次の笑顔のアップ。
580話 7月6日 女の水鏡 松原智恵子 長谷川哲夫
 芝居小屋で、三味線を弾くお志乃。 島帰りの与助は、偶然出会ったお志乃に心を奪われる。 目の不自由なお志乃にとっても、思いは、同じだろう。 しかし、与助は、耳を疑った。 お志乃が、金物問屋「山萬」の娘だとは! 何という運命のいたずら! お志乃の目が開く日がやってきた。 そして、その日は、与助の正体が、見破られるときでもあった。

 ゲスト 松原智恵子さん(お志乃《おしん》)、長谷川哲夫さん(与助)、
     北原義郎さん(清五郎)

 #121「鬼の眼」のリメイク版です。 設定が、かなり違いますが、基本のところは同じ。

 #567「涙の帰り花」以来のお静と平次のいちゃいちゃシーンがありました。 ちょっと平次が「年甲斐もない」とひいていましたが。 今回は、耳をつねられた平次でした。


* いちゃいちゃ

 平次の家。 長火鉢のところ。 平次は煙草。 お静は平次の肩揉み。

お静「おまえさん、うちへ帰ったら、少しは頭を休めなさいな。帰ってから、まだ一言も口をきいちゃいませんよォ」
平次「ん、おぅ、そうだったかな」
お静「ん、つまんない(平次によりかかる)」
平次「おいおい、よせよ。おめぇ、十六、七の小娘じゃあるまいし、今時分から、ひっついたり、はっついたりするなよ、おめぇ」
お静「あら、小娘でなくて悪かったわね!(平次の左耳をつねる)」
平次「あ痛ぇ、痛ぇなぁ〜!」
お静「あら、ほんとに痛かった?ごめんなさい(顔をすりよせ)うふふ」
平次「へへへ」

 いつのまにか、八五郎が入ってくる。

八「姐さん、またまた」
お静「はっ」
平次「おいおい、おめぇ、いつのまにへぇったんだ」
お静「(平次から離れて)何よ、八つあんたら!いやらしい目!これから、もう何もあげないから」
八「へへ、姐さんたら、またまた……」


* ラストシーン

 眼科医小杉玄庵宅。 お志乃の包帯を取る日。

お志乃「見える、見えますわ、先生!」

 頷く玄庵。

お志乃「(平次を見て)銭形の親分さんですね」

 玄庵、席をはずす。

平次「冷や汗をかいたぜ。よかったな、お志乃さん」
お志乃「親分さんのお陰です(深く頭を下げる)」
平次「いけねぇ、いけねぇ、やっと目が見えたというのに、涙なんか出しちゃいけねぇよ」
お志乃「はい」
平次「その目で、しっかり見なくっちゃならねぇ人間がいるはずだ」
お志乃「(辺りを見回して)あの……」
平次「与助さんは、逃げやしねぇ」
お志乃「逃げる?」
平次「お志乃さんの目が開くのをこの世で一番願ってるのは、与助さんだ。お志乃さんにゃ、おそらくわかってるだろうがな」
お志乃「与助さんは、どこに?」

 玄庵宅の庭。 平次とお志乃が庭に降りる。 与助と八五郎が待っている。

与助「(お志乃に近づき)お志乃ちゃん……」
お志乃「与助さんね」
与助「手術はうまくいったんだね」

 頷くお志乃。 与助をじっと見つめる。 固唾をのんで与助もお志乃を見つめる。 ほほ笑むお志乃。

与助「お志乃ちゃん、俺は、昔……」
お志乃「あらっ! レンギョウの花がとってもきれい」
与助「俺、昔……」
お志乃「あら、向こうに池もあるのね」

 与助、とまどって、平次の顔を見る。 平次、「言うな」という合図。

お志乃「与助さん、私は、山萬に戻ることに決めたの。お父つあんやおっ母さん、それにおくめさんが、守ってくれた山萬を今度は、私が守らなければならないの。お願いがあるんです。与助さんも、うちで働いてくれますね」

 与助、驚いてお志乃を見て、そして平次を見る。平次、与助の肩をたたく。

お志乃「働いてくれるわね」
与助「……はい」

 平次、安心したような顔。 お志乃、レンギョウの木の下へ行く。

平次「与助さん、お志乃さんは、どうやら、おめぇの昔のことを知っているようだ。だからおめぇにしゃべらせなかった……わかるか?」
与助「はい」
平次「お志乃さんのそのあったけぇ心に答えるには、力一杯、お志乃さんのために働くことだけだ。いいか、わかったな」
与助「(力強く)はい」

 平次、お志乃のところに行けとあごでしゃくる。 与助お志乃のところに行き、ふたりでレンギョウの花を見つめる。

平次「おぅ、八」
八「へい」
平次「これからの山萬さんは、めっぽう繁盛する店になるぜ」
八「そうでしょうね」

 笑みを浮かべた平次の顔のアップ。
581話 7月13日 吉凶うらおもて 左右田一平 五味竜太郎 高津住男 外山高士
 世直しと称し、次々と悪徳商人と襲う「天魔党」。 しかも、次に襲う店を予告するという高慢さ。 平次は、盗人たちに踊らされている自分たちが、歯がゆかった。 そんなとき、気の休まる心やさしい浪人、那須小弥太に出会う。 しかし、人を疑うことを知らない小弥太は、天魔党の罠にはまり、越後屋押し込みの下手人として、捕まってしまう。

 ゲスト 左右田一平さん(一見堂中斉)、五味竜太郎さん(多門一角)、高津住男さん
     (那須小弥太)、外山高士さん(井関)

 平次、「つるや」から、帰る時、おゆみたちに「もうお帰りですか」「お姐さんがお待ちかねですものね」と言われ、つい「あんなの待たせておきゃ、いい」なんて言ったのが運のつき。 しっかり、お静の耳に入っていて、今回は腕を思い切り、つねられるはめに。かなり、痛そうでしたね。 それにしても、お静は、よく平次をつねります。 親分、あざだらけだったりして。

 浪人、那須小弥太、出店で見つけた、妻によく似た人形を買いたいのですが、高くて手が出ません。 「阿国」と「山三郎」と一対になっているので、「阿国」だけ求めたいと言っても、店主は応じません。 そこへ平次が来て、「山三郎」を買うと申し出ます。小弥太は、人形が手に入り、めでたしなのですが、一対で二分。 ひとつで、一分ですね、一分は四分の一両。 平次親分、やっぱりお金持ち?
 #306「隅田さわぎ」にも同様の場面がありました。こちらは、お雛様。 平次は男雛を買います。

 ラスト、たすき掛けをして、悪党の前に現れた平次、かっこよかったです。


* 失言

 平次の家。 平次、浴衣に着替え、たんすの上の山三郎の人形に気づく。

平次「あれは?」
お静「えっ」
平次「おぅ」
お静「あ〜あれ? おゆみちゃんが、届けてくれたんです」
平次「あぁ、そうかい」
お静「那須様のお話、聞かせてもらいました」
平次「へへ、いい話だったろう」
お静「え〜え〜、本当にお優しい方なんですね」
平次「あ〜そうよ、おいらが、見込んだ通りの人だったい」

 平次、長火鉢のところへ。

お静「お幸せですねぇ〜その奥様。たとえ離れ離れになっても、これだけ思われてりゃ…それに引き替え(平次を見る)」
平次「ん?」
お静「あんな奴、待たしときゃいいって、どういうこと?」

 平次、お茶を詰まらせそうになる。 お静がそばに来る。 平次、うちわで仰ぎながら、そしらぬ顔。

お静「聞いてるんですか!」
平次「ん?(右耳をほじる仕草)聞こえねぇなぁ〜」
お静「まっ、ん〜意地悪ぅ〜、(平次の右腕をつねる)」
平次「あ痛ぅ〜、あ痛ぅ〜(かなり強烈だったようで、顔をゆがめる」
お静「うふふ」

* ラストシーン

 平次の家。 平次と那須小弥太、一杯やりながら、そうめんを食べている。

平次「あ〜あそうですか、お侍ってぇのは、なかなか難しいもんですねぇ」
那須「あぁ、せっしゃも今度ばかりは、つくづく浪人暮らしが……いや、くだらん夢やつまらん意地を張った浪人暮らしが、つくづく嫌になりました。親分、妻がこういうものを書いてよこしましたが(懐から手紙を出して、平次に渡す)」
平次「えっ(手紙を読み始める)……ん……」
お静「どうぞ(那須に酌をする)」
平次「ほぅ、へぇ、奥方は、あのぅ、国表で茶店をやってらっしゃるんですか」
那須「はい。せっしゃの陰に隠れて大きな声で、ようものを言えなかった奴が、つまらん武士の意地など捨てて、早く田舎に帰って来い!なんなら、こっちから迎えに行くと……こりゃ全くあべこべですな、アハハ」
平次「アハハ」
那須「いやぁ、お内儀の前ですが、女というものは、強いもんですなぁ、ハハハ」
お静「どうですか……あの、それで、帰っておあげになるんですか?」
那須「あぁ、那須小弥太、武士を捨てて、信州の茶店の親爺、アハハ」
平次「いや、そりゃいい、よく旦那もご決心なさいましたよ」
お静「ほんとに。奥様もどんなにか、お喜びになることでしょう」

 那須、嬉しそうにそうめんを食べる。

平次「へい、旦那(手紙を返す)いや、天魔党、裏切り同心、それに越後屋と今度の一件じゃ、欲にくらんだ人間の醜さを嫌っていうほどみせつけられた。どうもすっきりしなかったが、これでやっといい気もちになりましたよ、ハハハ、おい、お静」
お静「はい」
平次「ひとつ、ここで歌おうか」
お静「あっ、いけない! お味噌にふたしなきゃ」
平次「何を! なんだこいつ」

582話 7月20日 夫婦坂 長谷川明男 北林早苗
 大工の伸助は、妻と息子に恵まれ、幸せな日々を送っている。 だが、その幸せに危機が訪れようとしていた。 町で見かけたおふじ。 伸助が、昔、駆け落ちし、別れた女だ。 幸せに暮らしていると言い聞かせていた伸助だが、みじめで、辛い生活をしているとわかれば、黙ってはいられない。 償いをしなければ。 しかし、そこには、大きな罠が仕掛けられていた。 平次は、おふじに大盗人、鬼面組の影が、ちらつくのを見逃さなかった。

 ゲスト 事件を絡めて、夫婦の絆を描いた作品でした。 いくら訳ありの女性といっても、その人のために家まで売られたら……わが身に置き換えると、ん…考えさせられました。

 結局、おふじは、鬼面組の一味で、大店の図面欲しさ(盗みに入るため)に伸助を利用しただけでした。 心の底では、伸助のことを愛していたのではないかと思いたいですね。

 ラスト、平次が、しみじみ「夫婦とは、坂を登るようなもの」と悲観的に言いますが、お静は、楽観的ですね。 だから、いい夫婦なんでしょう。


* 今の幸せは……

 平次の家。 おしのが来ている。

平次「だが、おしのさん、そのおふじさんのことをおめぇに隠していたのは、確かに伸助もよくねぇ。だがな、伸助がどんな男か誰よりもおめぇが、一番わかってるはずだ……たとえ、わずかの間だったとはいえ、一緒に暮らしたことのある相手の女が、今、辛ぇみじめな毎日を送っている。それを知って見て見ぬふりが、できるような男だったら、おしのさん、おめぇだって、惚れなかったんじゃねぇのかい?」
お静「私もそう思うの。もしもそのおふじさんという人を見殺しにするような男だったら、おしのさんも健坊も決して、幸せに暮らしてこれなかったと思うの。間違っているかしら?」

* ラストシーン

 境内。  捕り物のあと。

平次「(伸助、おしの夫婦に)あの女、ひょっとすると銭で買えねぇ、おめぇたち夫婦の幸せが、妬ましかったのかもしれねぇな……皮肉なもんじゃねぇか、仲を裂かれるどころか、おめぇたちは、返って固く結ばれちまった。そうだろう?」
伸助「親分さん」

 夫婦坂。  伸助、健太をおぶって、おしのと坂道を登って行く。 見送る平次とお静。

平次「なぁ、お静」
お静「えっ?」
平次「夫婦の一生ってぇのは、ああやって坂を登るようなものかもしれねぇな」
お静「坂を?」
平次「……」

 歩きながら。

平次「途中で息切れをすることもありゃ、雨風に吹かれて、地獄に落ちる夫婦もいる。長ぇ、長ぇ夫婦(めおと)坂を」
お静「でも、ああやって、手をとりあって、登っていけば、登りきれない坂じゃぁない。ねっ、そうでしょ?」

 お静、平次の腕をとる。

平次「おいおい、人が見てるじゃないかよ」
お静「かまやしませんよ。だって、夫婦(めおと)坂ですもの、うふふ」
平次「こいつぅ、ハハハ」

 ふたりの笑顔のアップ。
583話 7月27日 お民の初恋 倉石功 清水めぐみ
 畳刺職人の腕比べ大会も近い。 備後屋は、あてにしていた勘八が、辞めてしまい、気落ちしていた。 そこへ、怪我をした渡り職人の定吉が、ころがりこんでくる。 わけありのようだが、腕はいい。 備後屋も娘のお民も頼りにする。 お民は、いつしか定吉を男としてみるようになっていた。 しかし、伊勢屋に強盗が入り、主人が殺される事件が起きる。 その日、畳の表替えに来ていた定吉に平次は、疑いの目を向ける。

 ゲスト  倉石功さん(定吉)、清水めぐみさん(お民)

 冒頭、平次は、銭を磨いていました。

 伊勢屋の旦那が、畳針で、急所を一突きされて、殺されます。 まさに必殺仕事人!
針の刺される様子をレントゲンで、表現していましたし。

 平次は、恩義ある備後屋のため、定吉は、腕比べ大会に出ると思っていましたが、本人は、出場せず、陰ながら見守っていました。 定吉は、朋輩の市松に職人の技と魂を教えることで、恩を返したのです。

 備後屋に見切りをつけ、大和屋に行った勘八。 腕に自信があり、大会も一番に終了しましたが、小馬鹿にしていた市松に負けてしまいました。 仕事に魂が入っていなかったのでしょうね。 自信に満ちた顔が、だんだん曇っていくのが、小気味よかったです。


* 渡り職人の手口

 平次の家。

お静「(お茶菓子を出しながら)じゃ、床板に細工をしたのは、定吉さんなんですか!」
平次「(うちわで仰ぎながら)まぁ、そうとしか考えられねぇ」
お静「でも、夕べは定吉さん、一歩もお店を出てないんでしょ?」
平次「伊勢屋に忍び込んで旦那を殺したのは、恐らく定吉の仲間だ」
お静「仲間?」
平次「渡り職人が、盗みに入る時の決まった手口だ。定吉が、手引きして仲間二人が、忍び込む、しかもお互いに怪しまれねぇように町で顔を合わせても声もかけねぇ」
お静「まぁ、用心深いんですね」
平次「そうやって、次々と土地を渡り歩いては、盗みを働く、ふてぇ奴らだ」
お静「どうする気? 定吉っさんをひっ捕らえるんですか」
平次「いや、今はその時期じゃねぇ。たとえ、ひっ捕らえても、口を割るような男と違う。まっ、いずれ仲間と繋ぎをつけるはずだから、そのときを狙って仲間と共にお縄にしてやる」
お静「いい職人が見つかったって、喜んでいたのに、皮肉なもんね」
平次「いや、おいらだって、お民坊や父つあんの気持ちを思うとこの仕事は、放り出しちめぇてぇよ(立ち上がる)」
お静「おまえさん」
平次「定吉の奴、むごいことをしやがる」

* ラストシーン

 常泉(?)寺。 畳刺職人の腕比べ大会。 備後屋の市松が、二位になる。

お民「親分さん、市松が勘八に勝ったって!」
平次「うん、やぁ、よくやった。お民坊、さっ、早く市松のところへ行ってやんな」

 うなずくお民。

清吉「やったぁ、やったぁ」
万七「やっぱり、俺が言った通りだろう」
八「あっしが、言ったんですよ」
万七「おめぇは、だめだって言ったじゃないか」
八「ま、また……」
三人「あぁ、よかった、」よかった(笑う)」

 陰で見守っていた定吉のところに平次が来る。 定吉、平次に頭を下げる。

定吉「お供します(両手を差し出す)」
平次「定吉さん、いいみやげを残していってくれたな。平次からも礼を言うぜ」

 お民と市松、賞品を取りに行き、見物人や職人たちの拍手と感嘆の嵐のなか、歩いて行く。 その様子を見て、平次、満足な顔。
584話 8月10日 男の錦 高橋元太郎 松木聖 中村孝雄
 呉服問屋三浦屋に恩義を感じている次郎吉。 店の火事で主人を失い、その後は、娘のお糸に忠義立てをしている。 お糸にいいよる番頭の久兵ヱから、お糸を守ろうと次郎吉は、お糸を連れて逃げ回る。 しかし、世間では、お糸をかどわかしたと大騒ぎになっていた。 最後まで、お糸に忠義立てをする次郎吉に平次は、心を打たれる。 平次は、火事が、付け火と確信し、隠された罠を暴くのだった。

 ゲスト 高橋元太郎さん(次郎吉)、松木聖さん(お糸)、中村孝雄さん(久兵ヱ)

 前回#583「お民の初恋」で、備後屋が、火事で、店が傾いた設定でしたが、今回もですね。 同じテーマが続くことが多いような気がします。 火事の場面で、家が炎に包まれ、焼け落ちるところがありますが、よく使われる絵(同じ)です。

 八五郎、バカ正直なのか、嫌味なのか、お静の料理をほめているのか、いないのか……だから、お清めの塩をおなおとおゆみに、漬物のごとく、かけられるはめになっちゃうんですよ。

 平次の浴衣、紺地に纏いの図柄でしょうか、大柄で粋でした。 立ち回りのときの着物も一見、青色の無地に見えますが、小さな白の水玉の小紋でした。

 万七は、番屋で、清吉に酒を買って来いと、こつぶを渡します。 清吉の言うとおり、珍しく大金を持っていました。 二分の一両にあたります。


* 正直な八?

 平次の家。  お静、八五郎に食事を出す。

お静「お待ちどうさま。何もなくて……」
八「いいえ〜、毎度のことで……あっ、いけねぇ、つい、正直なもんで、本当のことを言っちゃった」
お静「じゃ、余計悪いじゃない!」
八「どうもすみません(味噌汁をのむ)あぁ、うめぇ、こんなうめぇもん、食ったことありませんや」
お静「あら、そう〜お、(嬉しそうに)私の料理もちょっとは上がったのかしら」
八「あっしゃね、舌が、バカなせいかね、どんなもん食っても、うまいんですよ、へへ」
平次「それじゃ、なんにもならねぇじゃないか」
お静「もう〜、八つあんにあっちゃ、かなわないわ」


* ラストシーン

 往来。  屋根の上に次郎吉。 捕り方や火消しに囲まれ、水攻めに遭っている。 平次が、駆けつけ、止めさせる。

平次「次郎吉! 降りて来い! 降りるんだ! 三浦屋さんの仇は、この俺が、とってやる。次郎吉、降りて来い!」
次郎吉「銭形の親分さん! (泣きながら)お嬢さんをお願ぇします! お嬢さんは、私が、無理やりさらったんです。私の罪なんです。どうか、お嬢さんのことを……」

 次郎吉、さらに高い屋根に登る。

平次「次郎吉! 死ぬんじゃねぇ!」

 屋根に上っていた八五郎、次郎吉を背後から捕まえる。

八「次郎吉! 親分!」

 平次、野次馬の中に久兵ヱの姿を見つける。 踵を返す久兵ヱ。

平次「待ちねぇ! おい、久兵ヱ、三浦屋乗っ取りを隠して、付け火した一部始終、ネタはあがってるんだ」
久兵ヱ「なんだと」
平次「弁天一家のやくざどもが、てめぇに頼まれ、火をつけたと白状しやがったぜ。てめぇが、財産を残しておくために、こっそり運び出しといた上等の反物、二百反、どうみても二千両の代物だ。これでもまだ、証拠が足りねぇとぬかしやがるかい」

 八五郎が、次郎吉を、清吉が、お糸を平次のところへ連れてくる。

八「親分!」
平次「おう、八、よくやった」
八「へい」
平次「お糸さん、次郎吉、この平次が、幕を引く悪党の最後のざまをよく見てるんだ」

 逃げる久兵ヱ、投げ銭をする平次、久兵ヱのうなじに当たり、倒れる。 万七、清吉、八五郎が、久兵ヱをお縄にする。

お糸「親分さん、次郎吉は、私を助けてくれたんです。決して、かどわかしなんかじゃありません」
平次「身分は、下男でも心に錦を着た立派な男だ。きっと情けがあるだろうよ。二千両の反物が、お糸さんに戻りゃ、三浦屋の店は立派に立ち直れる。おめぇもお嬢さんのそばで、力になってあげるんだ」
次郎吉「わ、私が! またお店で働けるんですか!」
平次「うん」

 お糸と次郎吉、顔を見合わせ、平次に深く頭を下げる。 平次、頷く。 平次の笑みを浮かべた顔のアップ。
585話 8月17日 船宿の女たち 森秋子 水沢有美 沢村宗之助 青山良彦
 一件落着で、船宿「竹や」で祝杯をあげていた、万七、誠吉、平次、八五郎。 その船宿の庭で、男が殺される。 そばに落ちていたご禁制の宝石を、平次は見逃さなかった。 そして、すぐ、岡っ引きの勘吉が、下手人として文三を捕まえた。 あまりの手際のよさに、平次は疑問を持つ。 平次は、船宿が、抜け荷に絡んでいると睨み、下働きとして、潜り込む。 やがて、そこで働く女たちのさまざまな人生が見えてくる。

 ゲスト 森秋子さん(お新)、水沢有美さん(おきよ)、沢村宗之助さん(勘吉)、青山良彦さん(弥助)

 今回は、平次がほとんど出ずっぱりの大サービス。 やくざに扮して、船宿の下働きとして潜入。 洗濯物を干したり、雑巾がけに掃き掃除、薪割りに船頭(いなせで、芸者もぞっこん、チップをくれました)とお宝映像が、多くて嬉しいですね。 それと下着姿も披露(飛び込み自殺を図ったおきよの人工呼吸を施すところ)されました(照)。

 冒頭、祝杯をあげる万七たち。 お勘定は、万七、自ら、おごると言います。 これまた珍しいです。 前回から万七親分の懐が温かいようで。

 お静が、平次の無断外泊は、一緒になってからないといいますが、八千草さんのときはありました。 香山さんになってから、無かったのかな。

 洗濯物を干している場面で、おきよが干していた浴衣は、菊五郎縞のものでした。

 平次扮する平助の動きに不審を感じた船宿の主は、平助を辞めさせようとしますが、そこは、さすが平次、上手いやり取りで、相手の弱みを握って、そのまま居続けます。 そのやり取りが面白かったです。

 平次は、この事件に関わろうとした万七を制してしまったので、手柄を万七に譲りました。

* お静の心配事

 平次の家。  お静、長火鉢の拭き掃除をしながら、あくび。

八「へ〜ぇ、姐さん、一晩中、起きて待ってたんすか」
お静「当たり前じゃないのォ。今まで、一緒になってから、一度だって無断でうちを空けたことが、ないのに……あの人ったら、もう心配で、心配で」
八「へへへ、なんだか、のろけられてるみたいだな、へへへ」
お静「八つあん」
八「えっ」
お静「ねぇ、うちの人、どこにいるの?」
八「へい。両国の『竹や』っていう船宿で、飲んでたはずなんですがね。あれ、親分、あのまま、ずっと居続けるつもりなのかな」
お静「えっ、今、なんて言った?」
八「えっ、ええ、ちょっと腑に落ちねぇ殺しがあったもんですから」
お静「そ〜う」
八「へい」
お静「でも、いつもは、御用があっても、ちゃ〜んとうちに帰ってくるのに。それにしても(不安顔)」
八「姐さん、ご心配には及びませんよ」
お静「えっ」
八「そりゃ、あの、船宿ですから、ちょいと渋川の剥けた女もいますよ。そりゃ、きれいな芸者も出入りしますが、うちの親分に限って……イヒヒヒ」
お静「まぁ、ふふふ。ばかねぇ。私が、心配しているのはね、着替えのこと」
八「へっ」


* ラストシーン


 大番屋。  文三が門から出てくる。

おきよの声「文三さ〜ん」

 おきよが走り寄ってきて、文三に抱きつく。

おきよ「文三さ〜ん」
文三「おきよちゃん」
おきよ「(涙を浮かべて)よかった……よかったわね」
文三「うん……行こう」

 二人、肩を寄せ合って、去っていく。  その様子を見ていた平次、お新、八五郎。

平次「これでいいんだな、お新さん」

 頷く、お新。

平次「二年もしたら、出てこられる。 今度こそ、毎日空を見上げて、暮らせるんだぜ」
お新「はい」

 文三と入れ替わりに、大番屋の門をくぐるお新。 平次と八五郎が付き添う。

 往来。  平次と八五郎が、歩いている。 カメラに向かって歩いてくる平次のアップ。

586話 8月24日 壺振りのお駒 北川めぐみ 有川博
 濡れ衣で、庄内藩を追放された、秋山新之助。 帰参の夢も絶たれ、盗っ人鳴海の竹蔵の一味になり下がっている。 御用金五千両強奪をたくらんでいる竹蔵一味。 それに目をつけた盗っ人稲荷の小兵ヱ一味。 盗っ人同士の駆け引きと欲に目がくらんだ、同輩の裏切りと罠。 醜い人間模様の中で、新之助とお駒の美しい愛の灯が、消えていった。

 ゲスト 平次は、尾行するのにこの方が都合がいいと、やくざ姿で現れます。 そのまま、鳴海の竹蔵一家に平吉と名乗って、潜入。 今回も舟を漕ぐ場面があり、お駒から、助けてもらったお礼として、チップをもらっていました。

 盗っ人の首領とはいえ、竹蔵は、ものわかりがよく、物静かで、潔い男でした。

 ラスト、八五郎は、お駒の墓の前で「新之助は、揚屋(あがりや)で、舌を噛み切った」と平次に言います。 揚屋がわからなかったので、調べてみました。

☆揚屋  小伝馬町牢屋敷内の牢の名前で、武士や僧侶を収容する牢のこと。 ほかに大牢(庶民)、二間牢(無宿者)、百姓牢などに分かれていた。 (小学館 江戸時代館 参照)

* 差しつ差されつ

 平次の家。 一杯やっている平次。 そばにお静。

平次「おぅ、一杯いこうじゃないか(お静に盃を渡す)」
お静「うふふ、すみません」
八「(戸の陰から様子を見ていて、顔を出す)イヒヒ」
お静「もう、八つあんたら、いやらしいわね、そんなところから」
八「差しつ差されつ……結構な眺め、私も中に入りたい」
お静「待ってね、すぐ、つけてくるから……ほんとにもぅ(お勝手へ)」

* 呑気な八五郎

 平次の家。

お静「(すいかを運んでくる)盗っ人の家に?」
八「へぇ、心配ありませんよ。うちの親分のことですからね。生きて帰ってきますよ(すいかを食べ始める)」
お静「当たり前じゃないの! も〜う、縁起でもないこと言わないでちょうだい!」
八「ん……すいません」

 お静、急いで、神棚に手を合わせる。

* ラストシーン

 お駒の墓。  平次と八五郎、墓参り。

八「新之助は、揚屋(あがりや)で、舌を噛み切って、死んだそうですね」
平次「お駒のあとを追ったんだろうよ」
八「はぁ、お駒のやつ、帰参の叶ったことを、とうとう最後まで一言も言いませんでしたね」
平次「今さら、教えても新之助を苦しめるだけだと思ったんだろう」
八「はぁ」
平次「悪い女には、違ぇねぇが、かわいいところのある女だったな」
八「へぇ」
平次「新之助の死体が、お下げ渡しになったら、この隣に葬ってやろうじゃねぇか」
八「はぁ、そうですね」

 平次、遠くを見つめる。  墓の前に立つふたり。
587話 8月31日 平次御用旅 横内正 宗方奈美 川合伸旺 可知靖之
 平次一家が、仕事を離れ、浜辺の町に遊びにきたが、ひょんなことから、その町の十手を預かることに。 刀欲しさに刀鍛冶の荘田助国を殺した、町を支配する竜神組。 なぜか、その捜査の邪魔をするお島。 竜神組の用心棒、関新八郎の真意は? 平次は、土地の代官と竜神組が、絡んでいると確信するが……

 ゲスト 横内正さん(関新八郎)、宗方奈美さん(お島)、川合伸旺さん(竜神の辰五郎)、可知靖之さん(安部左馬介)

 海辺の町(舘山?)に遊びに来た、平次、お静、八五郎、万七、清吉。万七の息子さんは、お留守番?

 竜神組のひどい仕打ちに 町役人は、平次たちに十手を預けます。 町役人は、平次の名前は、この土地まで、鳴り響いているといいます。 万七のことはというと「皆目……」とのことでした。 やっぱり。

 平次は、町役人から、十手を4本預かります。(平次と八五郎と万七と清吉の分)浪人に襲われたとき、平次の十手は、いつもより短いと感じました。 預かりものだからと思いましたが、 ラストの立ち回りでは、いつもの長い十手だったような。 しかも平次の腰には、もう一本の十手が差してありました。 預かったのは4本ですよね? 十手を持ってきてたのかな。

 お静は、助国を殺した竜神組の一味の隠れ場所を聞き出そうと「私に任せて!」と胸をポンとたたいて、飲み屋に潜り込みます。 お島に平次の女房とばらされて、おじゃん。

 ラスト、平次が、釣りざおを肩に、びくをもって、笑う姿は…若様侍の若様、そのもの。

* 平次の説得

 路地。 平次、関新八郎に話があると連れ出す。

平次「当然でしょう。赦免状のない仇討は、天下のご法度、あえて、なさるんなら、おめぇさんは、罪に問われるんですぜ」
関「かまわん。そのときは、潔く死んでみせる」
平次「おめぇさんは、それでいいでしょうが、だが、お島さんは、どうなる?」
関「どういう意味だ」
平次「おわかりにならねぇんですかい。お島さんは、おめぇさんを好いているんですぜ」
関「俺を好いてる?」
平次「関さん、よ〜く考えてみなさるがいい。武家の対面にこだわっている限り、おめぇさんの未来は、ねぇんですよ。そんな無謀な仇討は、あきらめて、お島さんとご一緒になる方が、どんなにいいかわかりゃしねぇ」
関「それは、できん。無理な相談だ」
平次「関さん!」
関「もう話すことはない」


* ラストシーン

 竜神ヶ浜。 捕り物の後。 平次から逃れた安部左馬介、関新八郎の前に転がってくる。

関「安部左馬介! 兄の仇!(刀を振り上げる)」
安部「ま、待ってくれ、わしが悪かった、わしが悪かった、謝る、謝る」

 関、転げまわる安部に刀を突き付けようとする。 そこへ平次。

平次「おっと、関さん、こんな奴を斬ったところで、刀のけがれになるばかり」

 平次、安部から取り上げた関の兄の刀を差し出す。 関、自分の刀を納める。

関「(兄の刀を受取り)すまん」

 頷く平次。 お島が、少し離れたところからふたりを見つめている。

平次「関さん(お島のところへ行けと顎でしゃくる)」

 関、お島のところへ行き、お島と見つめあい、抱きしめる。

 磯。 平次、八五郎、万七、清吉、磯釣りをしようと岩場に来ている。 万七が、岩に移りそこねて、海に落ちる(とっても浅いが)。八五郎と清吉が、助けようとおおわらわ。 それを見て平次が、笑う。
588話 9月7日 白浪ざんげ 服部妙子 竜崎勝 松山照夫 宇南山宏
 有馬家御用達になった、呉服問屋大和屋。 娘のちえも有馬家のお姫様のお相手をすることになり、喜びで満ちている。 そこに現れた強請りの芳造。 大和屋のおかみ、おかよの脳裏に六年前の悪夢が、よみがえる。 一方、芳造に裏切られ、命を落としそうになったおかよの元恋人、千吉。 盗っ人の仁平に拾われ、今や、ふたつ名を持つ身。 皮肉にも仁平は、大和屋を狙っていた。 芳造とおかよの存在を知った千吉のとった行動とは……。

 ゲスト 服部妙子さん(おかよ)、竜崎勝さん(千吉)、松山照夫さん(芳造)、宇南山宏さん(大和屋吾兵ヱ)

 橋蔵さんの一番好きなエピソードと聞いています。 その理由をお聞きしたかった。

 幸せを掴んだおかよに待ち受けていたのは、皮肉な人間の巡りあわせ。 とても理解があり、おかよを大切に思う吾兵ヱに感心しました。 平次親分と懇意で、事情も知っているのなら、私だったら、まっ先に親分に知らせたと思いますけど。

 ラストの平次の情けが、光ります。 千吉におかよとちえ(千吉とおかよの娘)の晴れ姿を見せます。 おかよに会わせるかとも思いましたが、六年前に死んだと思って、毎月供養しているおかよにとっては、この方がいいのでしょう。

 シリアスなエピソードの中、笑わせてくれたのが、万七親分。 張り番中に平次の憎まれ口をたたいて、平次が来るや否や、大いびきをかいて、寝たふり。 その早かったこと、可笑しくて、可笑しくて。 ラストも平次が賊と闘っているのに、寝ていて出遅れちゃって、今さらしょうがねぇとまた、寝ちゃいました。

 平次は、夏らしく(放送日は、9月7日ですが)すいかを食べたり、そうめんをすすったり。

 冒頭、芝居小屋(芳造が、大和屋の番頭にいちゃもんをつけたところ)にちゃんと、「尾上菊五郎」の看板が掛けてありました。


* 寝たふり

 盗っ人のアジト「天狗屋」。 向かい側の家から、見張る万七、清吉、八五郎。 清吉が窓辺で、うちわで仰ぎながら、見張っている。 八五郎は、隣室で寝ている。 万七も何やら、つまみながら、ごろ寝。

万七「清吉、今、何時だ」
清吉「えっ、もう、四つ半頃でしょ、何回聞くんですよ!」
万七「な〜ぁ、清吉〜」
清吉「(いらいらして)うるっさいなぁ、もう〜」
万七「まさかと思うがよ、平次の奴、俺達だけに張り番させておいて、そのくせ、てめぇは、家で寝てんじゃねぇのかぁ〜、清吉」
清吉「あっ、(平次)親分!」

 万七、すぐさま、大いびきをかいて、寝たふり。

平次「(部屋に入ってきて)おぅ、ご苦労だな」


*ラストシーン

 天狗屋の前。 平次と八五郎が、仁平たちと闘っている。 隣家にいた清吉、やっと異変に気づく。

清吉「あっ、お、お、親分! 親分! (万七をたたき起す)」

 ふたりで、窓から見下ろすと、平次が、必死に闘っているのが見える。

清吉「あっ、お、親分、どうしよう、どうしよう」
万七「どうしよって、今さらどうしようもねぇじゃねぇか。また、このまんま寝てなきゃしょうがねぇ。寝よっ(また横になる)」
清吉「お、親分」

 両国橋。  万七を先頭に、清吉、八五郎、平次、樋口が、深編み笠をかぶった仁平一味を連行してくる。 橋を渡ったところで、平次、樋口に耳打ちし、千吉とともに脇道にそれる。

千吉「親分さん、奉行所へ行く道は、違いやしませんか」
平次「うるせぇ、黙って歩きな」

 有馬家の屋敷前。 平次、木陰に千吉をしゃがませ、編み笠をとる。 有馬家の前に駕篭が、着き、おかよと着飾ったちえが、降りてくる。

おかよ「御苦労さまでした(駕篭かきに心付けを渡す)」
千吉「おかよ……」
平次「娘の名前は、ちえってんだ。利発な子でな、見込まれて、有馬様のお姫様のお相手をすることになった」

 頷く、千吉。 おかよとちえ、有馬家の門をくぐっていく。 平次と、千吉がそれを見つめる。

千吉「親分さん、ありがとうございました。こんな、嬉しいことは、生まれてはじめてでございます」
平次「さぁ、行こうか」

 平次、千吉に深編み笠をかぶせ、連行していく。 平次の切なさそうな顔。
589話 9月14日 岬に立つ少年 沢井孝子 井上孝雄 北条清嗣 庄野たけし
 私は、悪い女……なぜ、そんなことを……ほんとうに悪い女なの? 少年、千吉にとって、お夏は、あこがれの、いや初めての恋なのかもしれない。 辻斬りの濡れ衣を着せられ、お仕置き寸前で、牢を破り、お夏に会いにきた浪人、宇都宮隼人。 隼人を愛しながらも身勝手から、伊太郎と祝言の約束をした、お夏。 平次たちは、隼人を捕らえるべく、お夏のいる海辺の寮に出向く。 しかし、そこで、もうひとつの殺人事件が起きてしまう。

 ゲスト 沢井孝子さん(お夏)、井上孝雄さん(宇都宮隼人)、北条清嗣さん(伊太郎)、庄野たけしさん(千吉)

 平次、八五郎、万七、清吉が、品川の先の岬へ、旅立ちます。いつ見ても平次の旅姿はほれぼれします。 手ぬぐいを道中かぶりにして……。

 朝っぱらから、騒々しい八五郎。 まだ平次が寝てい