| 回数 | 放送日 | サブタイトル | ゲスト出演者 |
| 653話 | 昭和54年1月3日 | お紺の初恋 | 和泉雅子 森次晃嗣 亀石征一郎 山村弘三 |
女スリ櫛巻お紺。子分ふたりを引連れて粋がってはいるが、その心根は優しいことを平次は見抜いている。そんなお紺が、浪人結城十郎太に一目ぼれ。しかし、十郎太は、辻斬りの廉で追われていた。十郎太を匿うお紺だが、許婚が、現れて、お紺の恋は、はかなく終わる。一度はスリから足を洗ったお紺だが、十郎太を救うため、再びそのスリの腕を使おうと決心する。 ゲスト 和泉雅子さん(櫛巻お紺)、森次晃嗣さん(結城十郎太)、亀石征一郎さん(萩原清兵ヱ)、山村弘三さん(越後屋) 冒頭、お正月(1979年1月3日放送)らしく、平次は、紋付(違い柏)袴姿、お静は、赤色系の着物、年始の挨拶にきた八五郎は、いつもの着物のうえに羽織をはおっただけでした。その後、平次は「斧、琴、菊」模様の半纏を着ていました。 今回は、万七親分、初手柄をものにしようとお正月からスリのお紺の現場を押さえんがため、必死です。が、お紺にいいようにされて、袂に子猫まで、入れられてしまいます。 お紺の心情を盛り上げる音楽が、クラシックを使ったりと時代劇には、思ってもみなかった曲が流れていました。お紺が、さぁ、スリの仕事をするぞ!というときは、運動会などで御馴染の「天国と地獄」(タイトルに自信ないけど)、十郎太との結婚を夢見るときは「ウエディング・マーチ」恋に破れたときは「運命」 そうそう、八つあん、寒くて手水場の水が、凍ってたからって、食事の前にはちゃんと手を洗ってくださいね。 *ラストシーン 高田藩邸付近。 捕り物のあと。お紺が、結城十郎太を連れ、駆けてくる。 平次「(十郎太に)あとは、町方の領分じゃねぇ、あなたにお任せします」 十郎太「(萩原達が、捕えられたのを見て)親分さん……」 平次「な〜に、手柄は、あっしじゃねぇ、このお紺だ。あなたって人をりっぱに出世させてぇばっかりに、どんなに辛ぇ思いをしたことか」 十郎太「私は……濡れ衣さえ、晴れればそれでいいんです。このまま、一生浪人でもかまわないと思っています」 お紺「いやですよォ、お二人とも。そんなこと言われたら、女スリの櫛巻お紺、照れくさくてしょうがないじゃありませんか」 平次「おっ、違う! おめぇは、スリなんかじゃねぇ」 お紺「いいんですよ、親分さん。さっ、十郎太さん、早くこやつらをお屋敷に連れていってください」 見つめあう十郎太とお紺。 十郎太「お紺さん……(頭を下げる)」 平次「結城さん、どんなに出世なすっても、江戸の町の片隅にこんな美しい心を持ったいじらしいひとりの女が、いたってことを忘れねぇでやっておくんなさいよ」 十郎太「はい」 薬種問屋。 一生懸命働いている、お紺の元子分、鮒吉と亀三。その様子を見て、満足そうな平次と八五郎。 八「やってますねぇ」 平次「ん」 往来。 十郎太と許婚の美保が、国元に帰るのであろう、旅姿で歩いている。お紺がその後ろ姿を見送っているが、十郎太の所へ走ってぶつかり、去っていく。お紺のあとをつけていた万七と清吉、スリを働いたと勘違い。 万七「おっ、やった!」 清吉「今度こそ、間違いねぇ」 万七「よし、御用だ!」 物陰から、飛び出そうとする万七の襟首を押さえる者がいる。 万七「おっ、誰だ!」 後ろに平次と八五郎が、立っている。 平次「三輪の、野暮な真似はよしなよ」 万七「なんだと! おめぇ、スリを見逃せっていうのか!」 平次「いいから、いいから」 万七「いいから、いいからって、おめぇ、そんな、ようし……ようし、覚えていろ! 榊の旦那にいいつけてやるから、ふん、なんでぇ……」 万七と清吉、怒って去っていく。 往来。 十郎太、お紺から渡された書きつけを見る。「おしあはせに」と書かれてある。物陰から、その様子をみていたお紺。 お紺「女一匹、泣くもんか!(涙をぬぐう)はぁ〜」 お紺、道端に落ちていた羽根つきの羽根を拾う。 娘「ありがとう」 お紺「私にやらせて!(娘から羽子板をとる)」 それを見ていた平次と八五郎。 平次「なぁ、八」 八「へっ」 平次「今度こそ、お紺も普通の娘になって、幸せをみつけてくれるだろう」 八「へぇ、きっとそうなりますよ」 お紺、娘たちと羽根つきをしている。 それを見つめる平次と八五郎。
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| 654話 | 1月10日 | 寄りそう影二つ | 野川由美子 長谷川明男 中条郷子 汐路章 |
こんな巡り合わせが、あるのだろうか。殺しの請負稼業から、抜けられない弟にお竜は、刃を向けた過去がある。怪我をして、お竜の店に転がり込んできた音吉に弟の姿を重ねた。だから、お竜は、黙って音吉を匿った。しかし、その音吉が、弟と同じ殺しの請負人だったとは! 同じ心の傷をもつふたりは、お互いに魅かれあう。音吉は、足を洗ってお竜とやり直そうとするが、殺し屋たちが、黙って見逃すはずはない。 ゲスト 野川由美子さん(お竜)、長谷川明男さん(音吉)、中条郷子さん(おきぬ)、汐路章さん(車坂のご隠居) お竜と音吉、心に傷を負った者同士が、幸せになろうと寄りそって生きていこうとする……罪を償わない限り、心の休まる所はないはずなのに。平次は、やろうと思えば、すぐ音吉をお縄に出来たろうし、お竜を執拗に責めることもできたはず。でもお竜が、自分の力で踏ん切りをつけるまで、待ちます。自分で、踏ん切りをつけてこそ、納得して強く生きていくことが、出来るんですね。何も考えず、お縄にすることは、容易いけれど、先々まで、考えてくれる平次親分は、岡っ引きの鏡です。お竜のような人間が、立ち直っていくことが、平次にとって、至福なんです。 *負い目 平次の家。 長火鉢で、平次は、煙草。傍らにお静。 お静「お竜さん、どうする気でしょうかねぇ」 平次「妙に同情しねぇで、自首をさせてくれりゃいいんだがな」 お静「でも……弟さんのことで、負い目もあることだし」 平次「負い目といやな、実はおいらにもあるんだ」 お静「えっ」 平次「弟さんが、死んだあと、お竜さんは、自分も死のうと手首を切ったんだ。俺の見つけるのが、もう少し遅かったら、お竜さんは、死んでいたろう」 お静「そんなことが……」 平次「なぜ、死なせてくれなかったと、お竜さんは、おいらをひどく恨んだもんだ。今頃は、下手人を匿いながら弟さんのことを思い出して、苦しんでいるに違ぇねぇ」 お静「辛いところに立たされているのねぇ」 平次「お竜さんが、自分で踏ん切りをつけるのをおいら、待ってやりてぇんだ」 平次の横顔をじっと見つめるお静。 *ラストシーン お竜、八百屋で、店の仕入れをしている。 八百屋「毎度ありぃ〜」 平次と八五郎が、通りかかる。 平次「おぅ、八、見ろ」 八「へっ」 平次「お竜さんだ」 八「はっ」 お竜、買い物を済ませて、店を出る。 八百屋「毎度ありがとう存じます。どうもありがとうございました」 お竜「(通りがかりの人に)こんにちは」 女「こんにちは」 八百屋「いらっしゃいまし」 去っていくお竜。 八「親分、よかったですね」 平次「うん」 八「へへ」 ほっとして、往来を歩いて行く平次と八五郎。 |
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| 655話 | 1月17日 | 他人が泣いてくれた | 桜木健一 殿山泰司 清島智子 高峰圭二 |
捨て子だった島吉。ちょいとぐれて、岡っ引き喜三郎のたれこみ屋を生業としている。そんな島吉だが、紙問屋今津屋の大旦那に出会ってからは、心を入れ替え、まっとうな仕事をしている。大旦那の芳兵ヱは、実の息子に家を追い出されていた。捨てられた者同士、島吉は、芳兵ヱを実の父のような情を感じていた。しかし、平穏な日々を裂く、凶悪犯政五郎の出現。島吉のたれこみのために、父親を打ち首にされたと逆恨みで、島吉の命を狙っていた。そして、芳兵ヱが、家に戻れる日も近い。どうする、島吉! ゲスト 桜木健一さん(島吉)、殿山泰司さん(今津屋の大旦那、芳兵ヱ)、清島智子さん(お咲)、高峰圭二さん(徳次郎) 父と子の関係が、テーマでした。親に捨てられた島吉と子に捨てられた芳兵ヱ。血はつながっていなくても実の父子のような情があります。 芳兵ヱを追い出した息子の徳次郎は、自分の息子に今度はそっぽを向かれ、自分のしたことの重大さに気付きます。 凶悪犯の政五郎も歪んだ心情だけれど、父の仇を討とうとします。 平次もお静も肉親の縁が薄いですが、(子供もいないし)親の気持ちも子の気持ちも実によくわかっていますね。 今回は、台詞のなかに諺や言い伝えが、いっぱいありました。「小糠三合持てば養子に行くな」「子もあるも嘆き、なきも嘆き」「子はかすがい」「親をあだおろそかにすれば、子に返される」「盗っ人猛々しい」 *今津屋の大旦那 平次の家。 夕食 お静「(平次のお膳を運びながら)まっ、今津屋の大旦那さんが!」 平次「(十手を神棚に置いて)う〜ん、小糠三合持てば養子に行くなっていうが、聞いているうちに、こっちまで気が重くなっちまってよ」 お静「一体、どういうわけで……」 平次「酒、くれねぇか」 お静「はい。おまえさんが、帰ってきたらと思って」 平次「おぅ、そうか」 お静、長火鉢のところで、燗をつける。 平次「やぁ、先代から見込まれて、手代から一躍今津屋の主人の座に昇ったものの、二十八から二十何年ってもの、結局、婿ってぇのは名ばかり。あ〜、旦那はもう、ず〜っと一介の奉公人にすぎなかったっていうんだよ」 お静「そんなことって」 平次「それもだ、口減らしで、売られてきた芸者に同情して、もう……引かした上で、根岸の寮に囲った。いかにも人のいい今津屋の大旦那らしいじゃねぇか。まぁ、身を粉にして脇目もふらず、今津屋を盛りたててきた大旦那にしてみりゃ、生涯たった一度の、おめぇ……(気まずい表情)ん、まっ、それぐれぇ大目に見たって、よもやバチは、当たるめぇ」 お静「(諌めるように)おまえさん」 平次「(バツが悪くなり)ん、あぁ、燗は、まだかい!」 お静「はいはい(平次に酌)」 平次「まぁ、そりゃ、おかみさんが、裏切られたって、息捲く気持ちもわからねぇじゃねぇが……だがな、お静、夫婦(めおと)なんてものはな、(一杯飲んで)ん、気持ちが通い合い、お互いにいたわりってものがなきゃならねぇんだ。そうだろう?」 お静「ええ、若旦那……若旦那は、仲だちしなかったんですか」 平次「ん、家付き娘のお袋さんにすっかり飼いならされてたんだな」 お静「でも……血を授かった実の父親じゃありませんか」 平次「子はあるも嘆き、なきも嘆きとはよく言ったもんだな。おっ、おめぇにもやろう(お静に盃を渡す)」 お静「でも、子はかすがいとも言いますのにね(一杯飲む)それで、大旦那さんは、その引かしたっていう芸者さんのところに?」 平次「そこがまたあの大旦那らしいところでな。女には、他に通じ合っていた若けぇ男がいて、大旦那からあてがわれていた根岸の寮を売り払い、手に手をとって、逃げちまったのさ」 *ラストシーン 寺の門前にあるお咲の花屋。 大工姿の島吉とお咲が、出てくる。 お咲「行ってらっしゃい」 島吉「おぅ、行ってくるぜ」 お咲「おまえさん」 島吉「あいよ」 お咲「早く帰ってきてね」 島吉「へへへ(お咲の髪の乱れを直す)ん」 そこへ、平次と八五郎。 八「よォ〜、若夫婦!」 島吉「あっ、親分」 平次「やぁ、ふたりともすっかり板についたようだな」 島吉「(照れくさそうにお咲と顔を見合わせ)へへへ……どうも……いや、親分、そりゃいいんですけどね、何とか言ってくださいよ、今津屋のご隠居、しょっちゅうやって来ちゃ、泊まり込みで、水差すんですからねぇ、子宝授かるのは、いつのことやら(お咲を見て)なぁ〜」 お咲「まぁ〜、知らない!」 隠居が、来る。 隠居「おはよう」 島吉「ほら〜」 隠居「え、何か?」 島吉「ほらね、ハハハハ」 皆、大笑い。 |
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| 656話 | 1月24日 | 噂の娘 | 鮎川いづみ 松橋登 玉川伊佐男 白石奈緒美 松山照夫 |
上総屋の娘、お新は、家がつまらないと今日も外をほっつき歩いている。しかし、その胸中は、店の行く末や殺された父親のことで、気の休まることはない。そして、手代の与吉が、殺され、凶器が、お新のかんざしだったことから、殺しの疑いが、かかる。お新は、今の上総屋の主人、源蔵が、父や与吉の殺しに絡んでいると疑いを持ちながらも、なぜか、口に出していうことができない。 ゲスト 鮎川いづみさん(お新)、松橋登さん(中村芳之丞)、玉川伊佐男さん(源蔵)白石奈緒美さん(お浜)、松山照夫さん(音松) 「かすが」で、食事をしている万七。今回は、いつも以上に「かすが」のメンバーや榊様にからかわれていました。挙句、お照に「子供のように拗ねて、可愛いわ〜」なんて言われちゃいました。それにしても、万七親分、お店の開店前から、食べていたんですね。 ラストの立ち回りは、平次対出刃うちの音吉(音松)。十手と出刃包丁との対決でした。投げられた一本目の出刃は、十手ではじき落したものの、二本目は、十手をはじき落されてしまいました。さぁ〜どうする、平次親分! どきどきしました。平次はすばやく、もう一本の十手を腰のうしろから、抜いて、音吉の持っていた出刃に向けて投げ、落しました。持っててよかった、二丁十手! あとは、平次の思うまま。 *万七、からかわれる 「かすが」 万七が、食事をとっている。 万七「(ごはんをかきこんで)おかわり〜!」 お京、飯台を拭きながら、くすくす笑っている。 万七「何が可笑しいんだい!」 お京「だって、親分は、いつもお腹をすかしているんですもの」 万七「フン」 三吉「体が、でっけいからね、七、八杯は、当たり前だよ」 万七「冗談じゃねぇよ、おめぇ、相撲取じゃねぇんだよ、俺は……」 お照「相撲取になってりゃね、今頃、幕下ぐらいまでいけたでしょうに(表にのれんを出す)」 万七「ふざけるな!」 清吉が、入ってくる。 お照「おはようございます」 清吉「おっす……あ、あ、親分(万七の向かいに座る)」 万七「ん」 清吉「銭形の親分と八の野郎がね、朝っぱらから、両国の小屋をまわってますよ」 万七「小屋?」 清吉「何か、掴んだんじゃありませんかねぇ」 万七「芝居小屋とおめぇ、絵草子屋の手代殺しとどういう関係があるんだよ」 清吉「さぁ〜」 万七「ほっとけ、ほっとけ、そんなもん……おかわりって言ってるのに……おかわり!!」 お京「(ふくれっ面で)はいはい、(万七のごはん茶椀をもっていく)」 三吉「へいへい、何も考えないとお腹もすきますよね」 万七「どういう意味だよ、そりゃ。ふざけるねぇ、この野郎、ほんとに、三公!」 榊が、入ってくる。 お照・お京「いらっしゃ〜い」 万七「どうもこりゃ」 榊「なんだ、万七、こんなところでとぐろを巻いていたのか(万七の隣に座る)」 万七「とぐろとは、ひでぇや、旦那。あっしだってね、あっちこっち足を棒にして、与吉殺しを捜してるんですよ、腹だって、減りますよ、ほんとに……お京ちゃん、おかわりだって、言ってるだろう、もう!」 お京「はいはい、おひつで持ってきたわよ」 万七「おひつ……」 お京「はい!」 榊「おい、万七」 万七「えっ(おひつのふたをとる)」 榊「少しは、平次親分のこと、見習ってくれよなぁ」 万七「(ごはんをよそう)何かといや、平次、平次って……言っときますけどね、旦那、この道に入ったのは、銭形なんかより、あっしの方が、ず〜っと先口なんですからね!ほんとに(怒って、よそったごはんをおひつに戻す)やい! この店じゃ、お客に飯もよそわねぇのか!」 お照「はいはい、親分さん、子供のように拗ねて可愛いわ〜」 *ラストシーン 上総屋の一室。 お新「(集まった奉公人たちの前で、涙ぐみながら)今日、お沙汰があります。この上総屋は……この上総屋は、お取り潰しになりましょう。今まで、みんなが一生懸命働いてくれたのに、こんなことになってしまって……本当に申し訳ないわ。少しのお金でもみんなに分けてあげたいのだけれど、お蔵のお金には、手をつけることができないんです。みんな、体に気をつけて新しいお店を捜して、働いてちょうだい」 そこへ、庭に八五郎と、汗を拭きながら平次が、走って入ってくる。 八「お嬢さん! お店は安泰だ! 今ね、お沙汰がくだったんですよ」 お新「えっ、(パッと明るい表情になる)」 奉公人たち、お互いに喜びあう。 お新「親分さん、(縁先の平次に近づく)本当ですか」 平次「あぁ、赤の他人に奪われたものをもとの主人のお嬢さんが、取り戻したんだ。そういうことですよ…で、早く知らせてやりてぇとな……もうここまで、駆け続けてきたもんだから……喉がもう、すっかり、カラカラだよ……へへ」 お新「まぁ(立ち上がる)」 平次「おっと……お嬢さん、間違っちゃいけねぇよ酒じゃねぇんだ、水だよ」 お新「はい(その場を離れる)」 平次、汗を拭く。 |
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| 657話 | 1月31日 | 貧しき者に幸いを | 松山省二 赤座美代子 久富惟晴 谷口完 |
貧しいながらも幸せに暮らしている太助、おたか夫婦。そこへ大恩ある浪人野崎敬吾が、封印金切りの罪で、捕まったという知らせが舞い込む。今こそ、野崎に恩を返す時ととばかり、太助夫婦は、奔走する。平次は、被害者、飛脚問屋江戸屋の言動が、腑に落ちないが、証拠が掴めない。おたかは、金さえ返せば、野崎が救えると思い、身を売る決心をする。平次は、おたかを救うためにも事件解決を急がなければならないとあせるが、そんな平次の命を狙う奴が現れる。 ゲスト 松山省二(現 政路)さん(太助)、赤座美代子さん(おたか)、久富惟晴さん(野崎敬吾)、谷口完さん(江戸屋) 万七親分、平次が、お静に心配をかけまいと襲われたことを隠していたのに、うっかり、しゃべって、おじゃん。さすが、平次親分、顔では怒っていても怒りを口にしませんでした。そのせいかしら、平次が、万七の縄張りで起きた事件に首を突っ込んだことに起こりませんでした。 平次と八五郎が、証拠の封印を捜すため、ゴミ捨て場あさり。そこへ、平次を狙って刺客が! 平次は、トンボをきったり、十手をはじかれたりとかなり苦戦。でもその甲斐あって封印が、見つかりました。平次が、十手の代わりにわらくずを刺客に投げたら、そのなかに封印が入っていたのでしょう、刺客の髪にくっついていたとは……傑作。 ラスト 息子の不始末を金で解決しようとする江戸屋に放った平次の言葉がよかったです。「何の力もねぇ善人同士。自分を犠牲にでもしなきゃ、助け合うことができねぇ。そういう人たちが、本当は、この世の中をしっかりと支えてるってことを考えてみるんだな」 *思いやりが、台無し 平次の家。 お静、平次の羽織の鉤裂きを繕っている。 平次は、長火鉢で煙草。 お静「いやねぇ、塀の釘に引っ掛けただなんて、まるでわんぱく坊主みたいなことを……」 平次「まぁ、勘忍しろよ、いや、これから気をつけるから……な」 玄関の開く音。 万七の声「銭形! 上がるぜ」 平次「おう、三輪の」 万七と清吉が、入ってきて、長火鉢のところに座る。 万七「あ〜、無事だったか、まさかとは思ったんだがな、ばかに腕の立つ奴と聞いたもんでよ」 お静「どういうことなんですか、万七親分」 万七「えっ、どうって、このすぐそばで、銭形を刺そうとした奴が、おめぇ……」 清吉、平次の顔色をみて、万七の袖をひっぱり「言ったらダメ」と目くばせ。はっとする万七。 万七「……まずかったかなぁ……俺……(しょんぼりする)」 お静「ちゃんとしまいまで、聞かせてくださいな」 万七「(しどろもどろで)し、しまいまでったって……その……」 平次、万七をキッと睨む。 万七「ま、あの、か、角の旦那がね、あの、句会の帰りに仲間と一緒にその喧嘩、見たとかって、その、凄かったって……(バツの悪そうな表情)悪かったかな……銭形」 平次「(怒りを抑えて)まっ、お、おめぇのせいじゃねぇんだ。気にしないでくんな」 お静「どうして話してくれないんです? おまえさん、そいじゃ、あの、この釘を引っ掛けたというのは……」 平次「あぁ、まぁ、妙な得物を使いやがってな……長い、千枚通しみてぇな、ありゃ、特別に作ったもんだい」 お静「(涙声で)ひどいじゃありませんか、どうして本当のことを……」 平次「いやぁ、すまねぇ、すまねぇ、そう怒るなって」 *ラストシーン ときわ屋(岡場所)の一室。 主の鬼吉、平次、太助父子がいる。 平次、鬼吉の前に小判を置く。 平次「五十両、確かにあるはずだ。数えてくれ」 鬼吉「へい」 平次「まさか、おたかさんに客をとらせちゃいめぇな」 鬼吉「へい、そりゃもう、お〜い、おたか! 連れて来い!」 手下が、おたかを連れてくる。 太助「おたか!」 おたか「あんた……太郎(抱きしめる)」 太郎「おっ母ぁ〜」 太助「旦那様は、助かったぞ、それにここのお金も特別に奉行所から……これもみんな親分さんのお陰だ」 おたか「親分さん(泣きながら)ありがとうございました、本当にありがとうございました」 平次「礼はいらねぇよ。おめぇたちを助けられねぇようじゃ、とてもおいら、十手持ちとはいえねぇや。さっ、行こうか(立ち上がろうとする)」 鬼吉「ちょ、ちょっと待ってくれよ、親分。実はその……奉行所から呼び出しがきましてね、明日の朝、行くんだが、いってぇどういうお調べがあるんでしょ?」 平次「さぁね、おめぇさん、おととい、かどわかされた女をつかっているようなこと、言ってたね?」 鬼吉、しまったという表情。 平次「かどわかしの女と知って、客をとらせるとどんなことになるか……ふん、まっ、またお白州で会おうぜ」 平次、部屋を出ていく。続いて、太助親子も出ていく。 鬼吉「ちょ、ちょっと待ってくれ! おい、待ってくれ! これ返す……」 鬼吉、あわてて追いかけようとして、先ほどの小判を畳にばら撒く。 鬼吉「返すからよ! (小判をかき集めながら)ま、待ってくれ! 親分、助けてくれ」 往来。 太助「本当にどうもありがとうございました」 太助夫婦、平次に頭を下げる。 平次「ん、仕事に精を出すんだぜ」 太助「はい、じゃ、失礼いたします」 太助親子、去っていく。 平次、にこやかに往来を歩いて行く。 |
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| 658話 | 2月7日 | 俺は神様じゃない | 桑山正一 竹田かほり 伊達三郎 石浜祐次郎 |
川で溺れていた子供を助けた男、なぜか名前も告げず、その場を去っていった。瓦版が、飛び交っても名乗り出ない。奉行所も平次もその男の行方を捜しあぐねていた。平次は、やっとその男、甚五郎を見つけだすが、あまりの遠慮深さに何かあると怪しむ。万七の昔の記憶から甚五郎の過去が、暴かれるが、平次は、甚五郎に身の危険が、迫っていることを知る。 ゲスト 桑山正一さん(甚五郎)、竹田かほりさん(お久)、伊達三郎さん(むささびの伝蔵)、石浜祐次郎さん(近江屋) 人命救助をした男を捜す平次、なかなか見つからないことに「かすが」の三吉やお照が「悪人ばかりを追いかけているが、今回は、いい人を追いかけている。平次親分も勝手がちがうのだろう」と。妙に納得してしまいましたが、ラストは、やっぱり悪人を追いかけることに。 万七親分、今回も空気を読めませんでした。娘の前で、父親、甚五郎の過去を暴いたり、近所の人々に「甚五郎は盗っ人だ」といいふらしたり。さすがの平次もムッとした顔をしました。 若き日の万七親分と清吉が登場。 万七は、羽織りなしで、髷も先をちょっと横に曲げて。清吉は、なんと丁稚のような前髪の髷! 何歳の設定なんでしょうか? *ラストシーン 良源寺境内。 捕り物のあと。 甚五郎「親分さん、ありがとうございました」 平次「な〜に、おめぇのお陰で由松殺しも解決したんだ。礼をいうのは、こっちかもしれねぇ。それにしても間に合ってよかった」 八「あの手紙、もうちょっとで燃え尽きちまうところだった」 榊「そうなったら、この場所は、金輪際わからなかった」 平次「父つあん、おめぇの人助けが、天に通じて幸運を呼んでくれたんだよ」 甚五郎「へへ、へへへ」 笑顔で、頷く平次。 甚五郎の家の玄関先。 近江屋親子が、来ている。 近江屋「遠い昔にどんなことが、あったにせよ、私たちには、何の係わりもありません」 おはん「あなた様は、私たち親子にとっては、神様も同然のお方で、ございます」 甚五郎「とんでもねぇよ、あっしは、そんな大それたもんじゃねぇんで。弱虫で、ただのつまらねぇ男なんすよ」 近江屋「近江屋は、小さな店ですが、どうか一緒に働いていただけませんか」 おはん「お願いします。仙吉もおじちゃんにぜひ、来てほしいと申しておりますし」 仙吉「おじちゃん、来て」 甚五郎「あっしを雇ってくださるって、ほ、ほんとですかい」 そこへ、平次と八五郎。 平次「近江屋さん」 近江屋「はっ(頭を下げる)」 平次「甚五郎父つあんは、神様扱いに懲りてるんですよ。神様でもねぇ、極悪人でもねぇ、ひとりの平凡な人間として、どうか使ってやっておくんなさいよ。さぁ、父つあん、おめぇからもお願ぇしねぇか」 甚五郎「へい、よろしくお願ぇいたします」 平次「よかったな、父つあん」 甚五郎「へい」 お久、笑顔で頭を下げる。 笑顔の平次のアップ。 |
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| 659話 | 2月14日 | さらわれた同心 | 山本麟一 浜田寅彦 木村元 |
同心榊が、かどわかされた。平次は、唯一人、榊の身柄を引き取りに行くが、事態は複雑だった。眼前に現れた謎の覆面の男。その男は、かどわかされた自分の娘を救出しろと言う。犯人は、わかっているが、一筋縄ではいかない極悪人だ。平次は、思い切った策にでるが、証拠が見つからない。このままでは、榊だけでなく、娘も平次の命もあぶない! ゲスト 山本麟一さん(火の玉仁佐ヱ門)、浜田寅彦さん(廻船問屋時津屋)、木村元さん(宇平) ダブルかどわかし事件でした。 殺されるかもしれない平次を送り出すシーン。しっとりとした雰囲気がよかったですね。雨が、その効果をあげています。高下駄を履き、番傘をさして、雨の中をひとり歩いて行く平次、哀愁が、あって、情緒があって、よかったです。無事に帰ってきた平次に思わず、平次の肩にすがるお静、久々のツーショット、こちらもよかったです。 ラストの立ち回り、平次親分、大暴れ。いつもなら、事件後のほのぼのシーンや平次の笑顔で終わるところですが、今回は、極悪人の仁佐ヱ門を召しとり、キッと睨んだところで終わりました。 *やらずの雨 平次の家。 平次、出かける支度。お静、黙々と手伝っている。八五郎、平次にまとわりつく。 八「親分、お願いだ、あっしも一緒に連れてっておくんなさいよ」 平次「ならねぇ」 八「だって親分、親分にもしものことがあったらね……」 平次「見くびるんじゃねぇ、こんなことぐれぇで、いちいちくたばったんじゃ御用は勤まらねぇ」 八「だって親分、親分とあっしゃぁね、二人で一人だ、ねっ、親分、だからあっしがついて行くのは、当たりめぇじゃないですか」 平次「(投げ銭を帯にくくりつけながら)ありがとよ、八、だがな、榊の旦那を殺しちゃ、江戸の岡っ引きの名がすたるんだ。これはもういいなりになるしかねぇんだ(お静から十手を受け取る)」 八「そんな親分……」 お静、玄関の戸を開ける。 お静「雨だわ……」 平次「本当だ、雨だな」 お静、高下駄を出す。 お静「やらずの雨っていうけどね……」 平次「な〜んだ、おめぇまで。昨日今日、夫婦になったわけじゃあるめぇし……」 お静「(平次を見つめて)死なないでね、おまえさん」 頷く平次。 お静「おまえさんが死んだら、私も生きてはいませんよ」 平次「そいつは大変だ。そいじゃ、おいら二人分の命をしょってるわけだ」 八「親分、三人ですよ。あっしもあの……首をくくります」 家の外。 お静、平次に傘をさしかける。 平次、傘の柄を握る。 お静「(傘の柄を握った平次の手をしっかり握る)おまえさん(涙ぐむ)」 お静、袂から火打ち石を取り出し、平次の背中に切り火をかける。雨の中、傘をさして歩いていく平次。 *ラストシーン 口入屋。 平次、くぐり戸から中に入るやいなや、五、六人の手下を一気にやっつける。ほかの手下をやっつけながら、廊下の奥へと進む。火の玉仁佐ヱ門が、たちはだかる。 平次「火の玉の、今度ばかりは逃げられねぇ」 仁佐ヱ門「な〜にぃ、俺が何をしたっていうんだい」 平次「何をしたかだと? とぼけるのもいいかげんにしろい! お春をさらわしたのもおいらを殺しにかかったのも全て、貴様の指図だと宇平が吐いたぜ。今度こそ、証拠があるからおとなしく観念しろい!」 仁佐ヱ門「でたらめだ! おらぁ、知らねぇ!」 平次「おいらの目の黒いうちは、このお江戸で二度とそんな汚い真似は、させねぇんだ」 仁佐ヱ門「やっちまえ〜!」 手下が、平次になぐりかかっていく。 大立ち回り。 榊、八五郎、捕り方が、到着。さらに激しい立ち回り。店の外に逃げようとする仁佐ヱ門に平次の投げ銭が当たる。平次が、十手で一撃、八五郎がお縄にする。 八「神妙にしろい!」 平次、十手をクルクルと回して納め、仁佐ヱ門をキッと睨む。 |
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| 660話 | 2月21日 | 迷い橋・想い川 | 榊原るみ 伊沢一郎 西山辰夫 |
私は、腕利きの金庫破り、十六夜左文字の娘ではない! 父親の思うままに生かされた過去は捨て、今、やっとまっとうに生きる暮らしを始めたばかり。誰にも邪魔されたくない。お紺は、父との辛い想い出の橋の上で、叫ぶ。そんなとき、幼子が金庫に閉じ込められる事件が発生する。お紺以外には、破れない代物だ。その子を助けるべきか、いや、金庫を開けたら左文字の娘とばれ、今の幸せは消えてしまう。お紺は、橋の上で悩む。が、自分の心情を理解してくれた平次の言葉が、身に沁みた。 ゲスト 榊原るみさん(お紺)、伊沢一郎さん(田島屋利兵ヱ)、西山辰夫さん(安藤主馬) 子供を助けるべきか、迷っているお紺。お紺に助けを求めた同心榊に向けた平次の言葉。平次は、お紺の助けを借りるのは、無理と思っていても、お紺の良心に訴えるような感じでした。もちろん、お紺は、助ける決心をします。 平次「今のお紺は、十六夜左文字の娘じゃありませんよ。誰よりも辛ぇ仕事をしながら、必死でまともな暮らしをしようとしている、ただの娘なんです。子供のころから、父親の思うままに生きてきた、いや生きなきゃならなかったお紺が、今、生まれて初めて、ただの娘としての暮らしを手に入れたんだ。それを邪魔することは、誰にもできねぇ。榊様にもあっしにもね、あっしらの力で何とかあの子の命を救うしかねぇんで……さぁ急いで戻りましょう」 ラスト、平次は、お紺の幸せを願って、逃がします。あとから来た、榊と八五郎、一瞬戸惑いますが、すぐ、平次の意図を理解して、責めることはせず、「とんだしくじりをしたな」とからかいます。榊も八五郎も心中は、平次と同じだったんでしょう。 *ラストシーン 橋。 平次、手に縄をかけられたお紺を連行してくるが、橋の途中で、その縄を解く。 平次「俺が、お縄にしなきゃならねぇのは、十六夜左文字の娘だ。おめぇじゃねぇ」 お紺「親分さん……」 平次「あのとき、この橋を渡ってしまえば、確かにおめぇは、左文字の娘として生き続けることになった。だが、今は違う。橋を渡らずにあの子の命を救おうと決心したときから、おめぇは、左文字とは、縁もゆかりもねぇただの女になったんだ。いくら俺でもそいつをお縄にすることは、できねぇや」 お紺「親分さん……」 平次「旅の空でやり直すんだ。子供のころからのおめぇの夢を叶えるためにも……さぁ、行くんだ」 お紺、頭を下げる。そして、橋を渡って行く。見送る平次。お紺の姿が見えなくなり、ほっとため息をつく平次。 八の声「親ぶ〜ん!」 榊と八五郎が、駆けつける。 八「あ、あれ? お紺は?」 平次「あ、あ、それがな、逃げられちまった」 榊・八「へぇ〜っ」 平次「女だと思って、つい油断したのが、まずかった。いや、全く面目ねぇや」 榊と八五郎、顔を見合せ、すぐ平次の意図に気づく。 八「へぇ〜、逃げられたんすか」 榊「親分も、とんだしくじりをしたもんだな」 八「ほんと、ほんと」 平次「全く……(手で額をポンとたたく)」 榊「今夜は、親分のしくじり祝にぜひとも一杯やらなくっちゃなぁ〜。おい、八」 八「やりましょ、パ〜ッと、盛大に。もちろん、勘定は親分もちで。ごちそうさま」 平次「こいつぅ〜。仕方がねぇ、よろしいでしょう」 三人、笑いながら橋を下って来る。 |
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| 661話 | 2月28日 | 父ちゃんガンバレ | 財津一郎 水澤摩耶 岩田直二 加藤和夫 |
五郎吉は、医師玄碩が、息子の目を治してくれたことから、奮起して医師を志し、猛勉強を始める。しかし、薬種問屋泰山堂に押し込み強盗が入り、下手人の疑いがかかってしまう。平次は、五郎吉の女房子供が、五郎吉が、医師となって帰ってくる日を健気に待っている姿を目の当たりにし、下手人ではないと確信する。五郎吉の疑いが晴れようかとするときに五郎吉の子供がかどわかされる。一体何ために? 黒幕は誰?五郎吉は、医師になれるのか。 ゲスト 財津一郎さん(五郎吉)、水澤摩耶さん(お徳)、岩田直二さん(前野玄碩)、加藤和夫さん(千賀寿安) 冒頭、八五郎が、五郎吉にぶつかり、薬箱を壊してしまいます。五郎吉が、弁償してくれと平次の家を訪ねると、平次は、一朱をあげました。十六分の一両、一万円近いでしょうか、やっぱり、リッチな岡っ引き。お静は、平次に言われて懐からすぐ出しました。 万七の息子が、登場。八代目かな。前回(#633「万七大いに売り出す」)より、幼くなりました。髷も幼いし、万七を「ちゃん」と呼ぶし。前回では、桶屋さんに奉公に行ってる設定だったんだけど……。でも、万七の言うことをよく聞いて、おにぎりを上手に作ってあげました。万七は、本に埋もれて机の上でうたたねしていましたが。万七は、五郎吉を見習って、自分も医師になろうと一大決心して、勉強をはじめたんですが、予想通りの結果。捕り物の勉強をもう少しした方がよさそうです。 久々に平次と八五郎が、将棋。八五郎が、待ったをかけていました。平次親分、強くなりました。八五郎は、平次の目を盗んで、駒を片づけはじめてしまうんです。平次に見つかったら、「この手が悪い」と八五郎は、自分で自分の手をぶってました。 ☆杉浦日向子さんの「一日江戸人」によると、当時の医者は、無免許でなれたので、医者でもやるかとバイト感覚で素人でも開業できたとか。怖いですねぇ。 *ラストシーン 平次の家。 家の前を八五郎と五郎吉が、はしゃぎながら、走ってくる。 八「(戸を開けて)親分! 合格だ! 合格だ! 親分、こいつが、合格したんですよ! イヒヒ」 平次とお静が、出てくる。 平次「そ〜か、五郎吉さん、おめでとう!」 お静「よかったわね」 八「よかったなぁ、おめぇ」 八五郎と五郎吉、お互いの手を互いに打ち合って(ハイタッチ風)喜び合うが、五郎吉の手元が狂って八五郎の頬に。 八「あ痛ぇ」 五郎吉「すまんな」 皆、大笑い。 「かすが」 万七「(「かすが」の人たちに)あの五郎吉が、受かったんだよ!」 清吉、万歳をして、万七と飯台を叩いて「やった、やった」と大はしゃぎ。 平次の家。 五郎吉「どうもありがとうございました。これもみんな、親分さんのお陰だで」 平次「そんなことよりも一時も早くおかみさんや、子供たちに知らせてやらなくっちゃ」 五郎吉「へい」 赤羽。 五郎吉の女房子供たち、畑仕事。 近くの土手に五郎吉を先頭に平次と八五郎がくる。 五郎吉「お〜い、お〜い(土手を駆け降りる)」 子供「お父うだ!」 五郎吉「やった! やった! お父うは、合格したぞ!(畑に飛び降りる)」 五郎吉を女房子供が取り囲む。 皆嬉しそう。 子供たち「お父う、やったぁ、やったぁ」 土手で、平次と八五郎が、様子を見ている。 八「よかったなぁ、ねぇ親分」 頷く平次。 お徳「おまえさん、これからもがんばらなくっちゃねぇ」 五郎吉「あぁ、これからだ。何もかもあの親分さんのお陰だ(平次を見あげる)」 八「何だか、泣けてきますよ、へっ(洟をふく)」 五郎吉「並べ……ちゃんと……早く並べ(女房子供たちを平次たちに向って一列に並ばせる)」 五郎吉「(自分も列に加わり)礼!」 一同、平次たちに頭を下げる。 五郎吉「なおれ!」 平次、頷く。 |
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| 662話 | 3月7日 | 憂き世まんだら | 有吉ひとみ 小坂一也 山本茂 藤村薫 |
大店美濃屋が、焼失してから、娘のお歌は、店の再建を願い、弟のために辛酸をなめ続けてきた。そんなとき、許婚だった同心佐山新吾と再会する。しかし、弟宇一が、犯した罪をお歌が、弟を愛するが故、佐山が、お歌を愛するが故に他人に着せてしまう。濡れ衣に苦しむ仙吉夫婦をさしおいて、お歌たちに幸せが、来るはずもない。 ゲスト 有吉ひとみさん(お歌)、小坂一也さん(佐山新吾)、山本茂さん(宇一)、藤村薫さん(おさよ) 弟への愛情、愛する女への愛情……素晴らしいものだけれど、このエピソードでは、その愛情が歪んでいたようです。まわりが、見えなくなった自己中心の愛に思えました。 耳よりの話を八五郎が、もってきます。「お仲ですよ、ほら、親分にお熱をあげてた夜鷹のお仲」なんて、言いだすものだから、平次が、あせって「朝っぱらから、おれっちの夫婦仲にも波風をたてにきやがったのか!」と八五郎を叱ります。お静が一瞬、ムッとしましたが、大事にならなくて、よかったですね。 *ラストシーン 堀端。 平次と八五郎に追い詰められた宇一。 宇一「助けてくれよォ」 平次「やかましい! 心ねぇ、てめぇひとりの撒いた種で、周りの誰もがどれほど辛ぇ、惨めな思いを味わってきたか、てめぇは、少しでもそれを考えてみたことがあるのかい」 八「立て!(倒れている宇一を抱き起こす)」 平次「いやぁ、あるめぇ、今日の日まで、お天道様が、照っていなさる往来を大きな面、さらして歩いてこられる道理はねぇんだ。てめぇのような奴は、地獄へ落ちて憂き世の見直しをしてくるといいんだ」 八五郎、宇一に縄をかける。 そこへ思いつめた面持ちの同心佐山が、来る。 佐山「平次……(小太刀を抜く)」 平次、投げ銭に手をかける。しばし、睨みあうふたり。佐山、急にしゃがみ込み、小太刀を自分の腹に刺す。 佐山「赦せ……」 平次「旦那……」 佐山「宇一をかばい、身代わりの下手人を仕立てた罪は、ひとりで俺がしょっていく。だから、お歌……お歌さんのことは、見逃がしてほしい……」 そこへ、お歌。 お歌「新吾様!」 佐山「会おう……いずれ、あの世で……(絶命)」 お歌「新吾様……」 平次「(お歌の前に立ちはだかる)旦那の今わの際の頼みだが、こればっかりは、おいらには聞けねぇ。骨肉の情にほだされ、一時の気の迷いだったにしても……犯した罪は罪だ。その罪の償いをしてもらわなきゃならねぇ。務めを終わって娑婆に戻ったそのときにゃ、佐山の旦那の供養をしておあげなさることだ」 お歌「親分さん……」 頷く平次。 がっくり肩を落とす宇一。 お歌「新吾様……(佐山の遺体にすがりつき、泣き崩れる)」 伝馬町牢屋敷前。 おさよ、おみつを抱いて、夫の仙吉が、出て来るのを待っている。 おさよ「あっ!」 平次、八五郎、仙吉が出てくる。 おさよ「おまえさん!」 仙吉「おさよ!」 おみつ「ちゃん!」 仙吉「おみつ!(おみつを抱く)」 おさよ「親分さん、なんとお礼を言えばいいか……」 平次「な〜に、命がけで亭主を思うおめぇさんの真実が、勝ったんだ。俺はただ、その手助けをしたまでだ」 おさよ「ありがとうございました」 往来を歩いていく平次と八五郎。 |
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| 663話 | 3月14日 | 誰がための十両か | 中野誠也 三好美智子 内田稔 |
「父ちゃんは、嘘つきじゃない!」と番屋に石を投げたり、役人に悪態をつく幼い姉弟。その母親もまた、役人を憎んでいた。一体この母子に何があったのだろう。父親の喜助は、殺しの現場を目撃し、お上に申し出るが、すでに下手人は捕まっており、なんと吟味中に死亡していた。喜助の見た下手人とは、別人のようにも思えるが、聞き入れてもらえず、逆に偽証だと痛めつけられてしまう。そして、事故か他殺か、死体となって発見される。事件を担当したのは、火盗改め与力になろうかという腕利きの同心、服部軍十郎。平次は、疑問がある限り、調べるのが、務めと再調査を始める。 ゲスト 中野誠也さん(服部軍十郎)、三好美智子さん(お民)、内田稔さん(井筒屋重兵ヱ) 役人を憎む母子。平次は、丁寧に経緯を聞いたり、うどんをご馳走したりして、情けをかけます。やがて、母子は、平次が、自分たちを信じてくれる人だと、心が、解きほぐれていきます。本当にいい親分ですね。 前回#662「憂き世まんだら」と同様、罪を犯した同心が、切腹。二話、続けてというのもちょっと……間に別の話が入ってもよかったと思います。 *ラストシーン 境内の脇道。 同心服部と平次、お民が歩いている。平次、服部がお民の夫、喜助を殺したと詰め寄る。 服部「その通りだ。俺はこの仕事が、好きだ。火盗改め与力となって、もっともっと力をふるいたかった」 平次「そんな身勝手な理屈が赦せると思うんですかい! 喜助が、どんな思いで死んでいったか、残された家族が、どんなに嘆きと悲しみに身を苛まれたか、そして、あっしゃ、同じ十手を持つ者として、何よりあんたを赦せねぇのは、せっかくの善意で届け出てくれた協力者の気持ちをむざむざと踏みにじってしまったことだ」 服部、刀を抜く。平次と対決。平次、刀を十手で大きく払う。服部、切腹。寺の鐘が鳴る。 お民「親分さん……ありがとうございました。これでやっとあの人もうかばれます(涙ぐむ)」 十手を納め、お民を見つめる平次。 平次の家の前。 お民、子供たちを連れ、歩いてくる。 お光・正太「あっ、親分さん! 親分さ〜ん!」 家から平次、お静、八五郎が出てくる。 平次「あ〜ぁ、ん、ん」 お光「親分さん、ありがとう」 正太「ありがとう」 平次「ん、ん」 お静「よかったわねぇ」 お民「何もかも親分さんのお陰です」 平次「な〜に、いや、この子供たちが、父親を信じてる気持が天に通じたんだよ」 お光「父ちゃんは、嘘つきなんかじゃなかったね」 お静「そうよ、とっても正直で、いいお父つあんだったのよ」 正太「おいら、ずっとしじみ売りをやるぜ」 お光「私も働いて母ちゃんを助けるよ」 平次「おぅ、偉ぇな、ん」 お民「私たちは、お役人を憎んで、親分さんにまで、毒づいたりして、本当に恥ずかしいんです」 八「そらまぁ、役人にもよりけりですよ。いや、中には悪い人もいますよ、でもうちの親分みたいに特別出来のいい人もいますからね」 平次「おいおい、だめだよ、俺は、特別でも何でもねぇ普通のあたりめぇの人間なんでぇ」 八「いや〜、ハハハ、そんなことは……へへへ」 水辺。 平次、八五郎、お民母子がいる。 八五郎、子供たちと遊んでいる。 お光・正太「(川に向って)わ〜ぃ、父ちゃんは、嘘つきじゃないよォ〜、父ちゃんは、嘘つきじゃないよォ〜」 母子を見つめる平次。 |
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| 664話 | 3月21日 | 去りゆく人々 | 稲葉義男 島田順司 北村英三 |
死んだと思っていた娘を与力加地左門が、立派に育てていた。その加地は、今、与力引退を前に江戸の大掃除をしようと決意する。まず、羅漢の斗兵衛一家を潰そうとするが、事は容易に運ばない。それを聞いた娘の実の父親、島帰りの喜久造は、まっとうに働いていたが、今こそ、娘を育ててくれた恩を加地に返す時とばかり、命を張って、羅漢一家に立ち向う。 ゲスト 稲葉義男さん(加地左門)、島田順司さん(牟藤彦太)、北村英三さん(喜久造) 次回で、放送13年、最終エピソード。 今回で、平次たちの溜まり場「かすが」が閉店。三吉はお照とともに故郷の信州へ帰ります。お京は、結婚が決まって、やはり故郷に戻ります。与力の加地は、引退を決意、喜久造は、形だけですが、江戸払いとなり、娘の多江は、結婚します。タイトル通り、「去りゆく人々」。それぞれ新しい人生を歩み始め、平次は、それらの人々を優しく見守るのですね。三吉は、お照が、一緒に帰ってくれるので、嬉しくて夜も寝られなくなりそう? 羅漢一家を探るため、八五郎は、家のまえで、托鉢。妙にお坊さん姿が、似合ってました。 ラストの立ち回り、平次は、着物の裾を端折る間もなく、着流しのままで応戦。羅漢一家を一網打尽にします。喜久造が、加地に恩返しが、出来たと喜久造と手を取り合って、嬉し涙で、喜びあいました。 「かすが」 榊、平次、八五郎、万七、清吉がいる。 食卓にたくさんの料理が並んでいる。 お照「(たくさんのお銚子を運んでくる)さぁ、どうもお待たせしました」 平次「お、おい、お照さん、え〜、お、おいらにゃ、おめぇ、こりゃ、払いきれねぇよ」 お照「いいんですよ、かすが、店じまいの大盤振る舞い、お代を頂こうなんてことは申しませんよ」 三吉「(あっけにとられ)お照……」 平次「店じまいだって?」 お照「ええ、あの人のお父つあんがね、帰って来い、帰って来いって、優しく言ってくれるもんですから」 三吉「(調理場から出てきて)お照、おまえ……」 お照「あんたのお父つあんは、私のお父つあん。あたしゃ、とうからそう決めてたんだよ。十五年も連れ添ってんだろ? わかんなかったのかい、そんなことぐらい」 三吉「お照……」 八「(立ち上がって)よし、そんなら遠慮はいらねぇや。どんどん持って来てちょうだい。ねぇ、親分」 平次「お〜おい、そんなに調子にのるんじゃねぇぞ」 お照「じゃ、どんどん運んできちゃって……」 日本橋。 旅姿の喜久造と平次が来る。 喜久造「そいじゃ、親分さん(頭を下げる)」 平次「いいかい、落ち着く先が決まったら、きっと知らせをよこすんだぜ、一年たったら迎えをだすからな」 喜久造「えっ!」 平次「いやぁ、形ばかりの江戸払い、加地様のお計らいなんだ」 喜久造「親分、もしや、娘の……いえ、あのことおっしゃたんじゃ……」 平次「いいや、言いやしねぇよ。だが、ほんと言や、加地様だけでも、そっとお知らせしたかった。まぁ、せめて一目、陰からならとどれだけ見てぇかわからねぇ娘の花嫁姿。そいつを見ずに去っていく。おめぇの心根を思いやりゃ、やっぱし俺は、言えなかったよ。父つあん、それでよかったんだな?」 喜久造「へい」 平次「それじゃ、一年あとに帰ってくるんだ。その時分にゃ、初孫が…いや、加地様のお嬢様に初めてのお子が生まれているだろう。それを楽しみにな」 喜久造「へい」 お京の声「おじさ〜ん」 旅姿のお京が来る。 お京「おじさん、お待ちどうさま!」 平次「な〜んだ、お京ちゃん、おめぇも一緒に行くのか」 お京「ええ、一緒に行けるところまででも。あたい、そう言ったんです。ふふ、本当のこと言うとおじさんをあたいの村へ引っ張っていこうとそう思ったんです」 平次「そうかい、そいつは、よかった」 お京「(急に寂しげな表情になって)親分さん、お世話になりました。お静姐さんにも」 平次「(お京の肩をたたいて)元気でな」 喜久造「じゃ、親分さん……」 平次「おぅ、やぁ、こう並んでるところは、まるで父娘(おやこ)だぜ、アハハハ」 喜久造「ハハハ」 平次「さぁ、行きなせぇ」 喜久造とお京、去っていく。振り返って平次に頭を下げ、橋を渡って行く。ふたりの後姿を見送る平次。 |
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| 665話 | 3月28日 | 殉職・榊同心 | 大関優子 清水めぐみ 水上保広 田口計 |
同心榊の婚約者おあきの兄、小吉が、質屋の主殺しの廉で捕まった。小吉に限ってそんなことをするはずはない! 榊は怒りに燃える。しかし、アリバイもなく、小吉は、いため吟味に耐えかねて、ついに自白をしてしまう。死刑執行まで、残された時間は、わずか。榊は、小吉のアリバイを証明できるたったひとりの証人、おぎんの行方を追って、ひたすら街道を走る。だが、この事件が、榊、最後の務めとなるとは、誰が想像しただろうか。 ゲスト 大関優子(現 佳那晃子)さん(おぎん)、清水めぐみさん(おあき)、水上保広さん(小吉)、田口計さん(片桐伊三郎) 今回は、平次一家、一丸となって、小吉の濡れ衣晴らしに懸命になる姿が、よかったし、榊(見習いのまま?)も同心として、りっぱに最後まで務めを果たしました。 タイトルから、榊が、死ぬとわかっていても、林で、浪人たちと戦う榊のところへ、平次が、来て助けてくれるのではと願ってしまいました。榊役の下塚誠さん(1953・9・5生まれ)、#870「はやり風邪」で、ゲスト出演されています。このときも田口計さんと出ておられて、縁がありますね。 今回も平次のいろいろな表情が、見られました。やはり、目力は、すごい! 見ているものを惹きつけます。 榊の結婚報告に顔をほころばせたり、事件について思案中のむつかしそうな顔。榊の死を目の前にして、無念の涙を流し(前回は、嬉し涙で、喜久造と喜びあいました)宇月屋敷では、榊の仇を討つがごとく、たすき掛けで、宇月父子に挑む。勝之進をぐっと睨む平次の凄み。勝之進は、蛇に睨まれ蛙のごとく、タジタジ。平次は、十手をつきつけ、見えをきる。かっこいい! 兵助を亡くし、おあきも哀れですが、母親のせつは、ひとりぼっちになってしまいました。御主人もとうに亡くなっているようですし、これから辛いですね。 *結婚報告 平次の家。 榊とおあきが、来ている。お静、お茶を持ってくる。 平次「えっ、そいじゃ、おふたり、夫婦(めおと)に? そ〜ですかい、いや、え〜、こりゃどうもおめでとうございます、え〜」 お静「本当によろしゅうございましたね」 平次「う〜ん」 おあき「不束者ですけど、よろしくお願いします」 平次「いやぁ、こちらこそ、どうぞよろしく」 榊「え〜、祝言のことなんだけど、二人お揃いで出て頂きたいと思って」 平次「あ、あっしらが?」 おあき「ぜひ、お願いします。兵助さんもそれをいの一番にお頼みしようと」 平次「あ〜あ、あっしら岡っ引き風情が、町方のお偉い方と同席するなんて、そんなことしたら座がしらけちまいますよ」 榊「親分、お願いだ、ぜひ私たちの新しい門出を祝ってください」 榊とおあき、両手をついて、頭を下げる。 平次「あ、まぁ、榊さん、とにかく手をあげておくんなさい。それじゃ、ものごとがあべこべだい」 榊「何があべこべですか、親分は、全ての道での私の先達だ。手をついてお願いするのは、筋ではありませんか」 平次「いや、こいつは弱ったなぁ」 お静「喜んで、出させて頂きます」 平次「(あっけにとられ)お、おい、お静、いやぁ……」 榊・おあき「ありがとうございます」 平次「そいつは……まぁ、ひとつ、こっちも……へい」 *平次、勘定方宇月邸に乗り込む 宇月邸。 力「今頃は身代わりの首が、血煙りあげて、とんでるかもしれねぇ。片桐も相当な悪党だ」 勝之進「バカなこと言うもんじゃない! わしの跡取りなら、少しは言動を慎むんだ!」 力「だったら、もっと小遣い、増やしてくれませんか」 勝之進「おまえという奴は……」 力「とにかく、いいんじゃないんですか? 一件落着し、お家は安泰なんだから」 平次の声「そうはいかねぇ!」 平次、旅姿のまま、庭に入る。 力「なんでぇ、ズカズカ入り込んできやがって! ここをどこだと思ってる!」 平次「たとえ、勘定方の組頭だろうが、何だろうが、赦せねぇものは、赦せねぇんだ! おまえさんたち、父子(おやこ)のために町場を守る若い同心の命が、散っていったんだ」 勝之進「そんなことは、知らん! 下がれ!」 平次「そうは言わせねぇ! あの世にいって、榊さんに詫びをいれるんだ!(道中着を脱ぎ、十手を勝之進につきつけ)神妙にしろい!」 勝之進「無礼者!」 力「くそ〜っ」 力、座敷にある刀をとりにいくが、平次の投げ銭が、手に当たり刀を落とす。 *ラストシーン 榊の墓。 榊の母、せつ、樋口、平次、八五郎、万七、清吉、おぎん、おあき、小吉が手をあわせている。ひとりずつ、アップ。 せつ「(立ち上がり、皆に向って)ありがとうございました。兵助もこれでやすらかに眠れるでしょう」 平次、沈痛なおももちで、頷き、墓をみつめる.平次と八五郎、墓地の中を歩いて行く |
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| 666話 | 4月4日 | やがて青空 | 北条清嗣 杉田景子 山本清 水上竜子 |
新米同心青柳伸之介。若さゆえに突っ走り、血の気の多い一徹者。早速、誤認逮捕というしくじりをやってしまう。平次の捜査に腹立出しさを覚えた青柳だが、やがて、平次の言動から、同心のあり方を教わるのだった。 ゲスト 北条清嗣さん(安吉)、杉田景子さん(お豊)、山本清さん(泉屋主人)、水上竜子さん(お紋) 14年目突入。 オープニングが、変わりました。銭形の巨大砂絵での立ち回り。平次が、お静に「すすきみみずく」を買ってあげるところをみると、場所は雑司ヶ谷鬼子母神の境内という設定でしょう。 バックタイトルにスタッフ名が出ます。そこに流れる映像は、お待ちかねの平次一家のおもしろアドリブです。 レギュラー陣の変更 溜まり場の居酒屋は「わかな」女将のおちか(正司照江さん)、おちかの娘お町(酒井ゆきえさん)、板前松吉(鎌倉俊明さん) 新米同心青柳伸之介(森田健作さん) 新米同心青柳伸之介、殺しの下手人として安吉を逮捕。犯人逮捕後も平次が、捜査をしているのが、気に入らず、平次をどなったりします。しかし、平次の言動から、同心の心得を学ぶのです。「やっと俺にもわかった。罪人を捕えるだけが、同心の務めじゃない。人に罪を犯させないことが、大事なんだ。もっともっと大事なんだ!」 ラストに平次は、青柳が、誤認逮捕でめげているのをわかっていて、ちゃんとよいしょすることも忘れません。自信を取り戻させるために。ほんとにできた親分です。 万七親分が、ラストに「今日は俺のおごりだ、銭形と一杯やっておくんなさい」なんて、気の利いたことを青柳に言ったのには、びっくりですね。「わかな」の女将に気がありそうな万七、株をあげたかも。 青柳は、誤認逮捕したものの、そのお陰で、むささび十兵ヱの島抜けの企てを阻止できたし、安吉を悪の手から救うことが出来たのだから、けがの功名かも。 ☆銭形の巨大砂絵…オープニングシーンで、銭形の巨大砂絵の中での平次と悪人との殺陣がある。これは、後の北大路欣也平次のときにも使われている。 香川県観音寺市有明町。有明浜にある砂で描かれた、東西122メートル、南北90メートルの寛永通宝。寛永10年(1633年)丸亀藩主の視察を歓迎しようと地元住民が、一夜で作ったとされ、これを見れば、お金に不自由しないとの言い伝えがある。 (読売新聞 観光案内記事より) *平次の教え 「青柳さん、殺しというのはね、やる方にわけがありゃ、やられる方にもそれなりのわけがある。それを調べなきゃ、片手落ちでござんしょう」 「悪事に加担してるからって、悪党とは限らないんですよ、青柳さん。十手を持ってるからって、善人とは限らねぇのと同じにね」 「(悪党に向って)まっとうに生きている人間が、本当は一番強いんだ」 *ラストシーン 「わかな」 万七、清吉、青柳がいる。皆、うかない顔。 万七「八丈島のむささびの十兵ヱも女房のお紋と同様、死罪と決まったしよォ、全くてぇしたお手柄だよ、銭形……(一杯飲む)」 清吉「お陰で、安吉んとこの豆腐は、ここんとこ売れ行き上々だし……またまた平次親分の名前ばっかし、上がっちゃって……」 お町、清吉の肩をポンと叩いて、酌をする。 清吉「ん、もうこっちは、淋しくなっちゃた」 お町「どうぞ」 おちか「まぁ、万七親分ゆうたら、青菜に塩みたいな顔しはって(万七の肩をポンと叩く)しくじりや間違いは、誰にかておまっせ、ね」 お町「そうよ」 万七「(にやにやして)おちかさんが、そう言ってくれると俺、なんだかもりもりと元気が出てきたみてぇだ」 万七、肩に置かれたおちかの手を握ろうとして、逆にはたかれる。 万七「痛っ、へへへ、そうだな……アハハ、ねぇ、旦那、もうお互い済んじまったことは忘れて、こうがんばりましょうよ」 青柳「(意気消沈して、うどんを食べている)いや、私のしくじりは、人並はずれて、大きかったから……そんな簡単には、忘れられないよ」 お町「(おちかの耳元で)本当はいい人なのね」 おちか「ほんまやな。わずかなあいだに、いやにかどがとれはって、どういう風の吹きまわしやろう」 お町「うん」 平次が、店に入ってくる。 平次「あっ、いた、いた。青柳さん、いやぁ、さすが目がきくとね、感心していたところなんですよ」 青柳「なんですか」 平次「ええ、いやね、実は、今、広小路で、二人組の巾着切を捕まえましてね……おぅ、ちょいと面(つら)お見せしな」 八五郎、お縄にされた二人の男を連れ、入ってくる。 八「さぁ、へぃれ。旦那、こいつらですよ」 青柳「あっ! おまえたち、この野郎〜」 青柳、二人に掴みかかろうとするが、万七が止めに入る。 万七「まぁ、ま、ま、ま、ま、旦那、へ〜ぇ、やっぱり旦那だねぇ〜」 おちか「青柳さん、よろしおましたなぁ」 万七「こうなったらね、こいつら、あっしらが、番屋へしょっ引きますから、今日は、ひとつあの……銭形と一緒に一杯やっておくんなせいよ。あっしのおごりだよ。女将、頼んだぜ、アハハハ」 皆、大笑い。 青柳の声「おい、決めてやがんな、こいつは……」 平次の笑顔のアップ。 *バックタイトル 縁日。出店で、平次、八五郎にひょっとこのお面を買ってやる。お面と八五郎の顔を比べているので、似てるってことかな。八五郎も面を頭につけ、ちゃちゃと手振りをしておどける。周りの人々に何やら八五郎は、話しかけながら、ふたりは歩いて行く。 |
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| 667話 | 4月11日 | 結婚って何だ | 長澄修 谷川みゆき 小栗一也 |
山吹屋の娘、お雪の結婚が決まった。婚礼衣装、婚礼道具などは、目を見張るほどの豪華さだ。しかし、喜びの真っただ中にいるはずの山吹屋の顔になぜか、暗い陰が、漂う。そして、婚約者、杉田屋の清二郎が、水死体となって、大川に浮かぶ。やがて、この結婚は、杉田屋の欲得だったことが、判明する。一方、お雪を心から愛する男がいた。 ゲスト 長澄修さん(宇之助)、谷川みゆきさん(お雪)、小栗一也さん(山吹屋甚右ヱ門) 万七親分、「清吉には、苦労ばかりかけているから、今晩は、俺がご馳走する」なんて、まぁ、珍しいと思ったら、「わかな」の女将おちかが、目当てだったんですね。店に入る前に手鏡で、身だしなみのチェック。女将の娘お町が、後押ししてくれますが、平次の心配するようにまだまだ、前途多難のようです。おちかは、気付いていないようですし。 新米同心青柳は、せっかちで、すぐ結論を出したがるのが、難点。平次に「じれってぇなぁ、親分の勘で、パ〜ッと一発いかないか」とせっつきます。平次は「あれもこれも考えて、無駄足も踏んで、やっとひとつの真実に辿り着く。それがあっしのやり方」と。青柳同心、納得。またひとつお勉強になりましたが、またはやとちりで、誤認逮捕。やれやれ。 真犯人は、山吹屋でしたが、捕まるのが早い気がして、もしかして下手人ではないと思い、またそう願いました。冒頭、「清二郎の死体の打撲の傷と財布がないこと」が、ひっかかっていたんですが、違っていたんですねぇ。 平次たちの会話から、察するに放送当時、派手婚が、流行っていたのでしょうか *結婚事情 平次の家。 お静「山吹屋のお嬢さん、早く元気になってくれるといいんですけどね」 平次「うん、山吹屋の婚礼支度は、随分と金のかかった豪華なものだったな」 お静「近頃は、どこでも派手になりましたからね」 八「へぇ、親に散財させて、子供はそれを当たり前だと思ってんすからね」 平次「まぁ、年々、贅沢になってくるんだな」 八「へぇ」 お静「私たちのときは、この家で、ここの大家さんに仲人してもらって、お客様っていっても近所の人が、三、四人だけ」 平次「そうだったな。あんとき、おめぇが、持ってきた道具といや、鍋、釜、茶碗に布団だけだ」 お静「八つあんの前で、恥をかかせないでくださいよ」 平次「な〜に、おめぇ、何も恥ずかしがることなんか、ありゃしねぇ。俺達は、分相応、それでいいんだよ」 笑顔で、頷くお静。 平次「山吹屋は、老舗だから俺達とは、訳が違うが、だいぶ無理したのかもしれねぇな」 八「へぇ、話ではね、内情は、あんまり楽じゃなかったそうですよ」 *ラストシーン 「わかな」 青柳、平次、八五郎、万七、清吉が、卓を囲んでいる。 八「親分、父つあんの方ですがね、やっぱりあの重いお咎めが、あるんですがね」 平次「やぁ、そいつは俺達みんなで、何とかできるだけのことは、しようじゃねぇか。まっ、たとえ遠島になったとしても、そう遠くない時期にまた戻れるようにな」 八「へい」 青柳「きっと、そうする」 おちか「へぇ、お待ちどうさん(酒を運んでくる)一件落着のお祝いに(平次に酌)」 お町「今日だけはね、私もお酌しますよ、はい(青柳に酌)」 青柳「やぁ、しかしな、親分、俺はまだまだガキだ。ひとつ仕事をする度に何か教えられるような気がする。今度の事件では、罪を犯す人間も極悪人ばかりじゃない、でも何というか人間の哀しさみたいなものがあるってことだ」 八「全くですよねぇ」 頷く平次。 お町「それで、今度も平次親分のお手柄だったんですか?」 平次「いや、なに、誰の手柄でもねぇや。みんなで力を合わせてやったんだ」 万七「そうだとも。俺がはなから言ったろう? 宇之助は、いい奴だって。だから男は、面(つら)じゃねぇんだよ」 清吉「また、十八番(おはこ)が、始まった……」 皆、大笑い。 松吉の声「はい、煮付け、あがったよ」 万七「(立ち上がって)よ、よ、よ、お町ちゃん、(お町とふたりだけで、話そうと、みんなと離れたところに連れだす)」 お町「え、な〜に」 万七「俺がね、再婚するときゃな、贅沢な衣装も道具も何もいらねぇんだ。この「わかな」の店で、この仲間が集まって、心だけのお祝いをしてもれぇてぇとそう思っているんだよ」 お町「いいわねぇ〜。私、大賛成よ」 万七「イヒヒヒ」 八「親分さん、言うことが、違うんじゃないんですか?」 平次「おい、三輪の、とことんぶちまけて、体当たりでいくんじゃなかったのかい」 万七「(あわてて)ありゃ、その、おめぇ……宇之助に言ったんだよ、おめぇ」 皆、大笑い。 おちか「何のお話でんの?」 お町「あのね、三輪の親分……」 万七「ワッ、ワッ、ワッ、……もう、あの、俺、ちょいと忙しいんだ。手の離せねぇことがあるんだ。先に失礼するぜ、おい、清吉! 行くぜ、おう、早く来いったら(その場を急いで去る)」 清吉「(席を立ち)親分……そんなのねぇでしょう(万七の後を追う)」 おちか「ほんまに、けったいな人やな」 お町、ふくれっ面。 平次の家。 平次、詰将棋。 お静。縁側に腰かけている。 お静「宇之助さんとお嬢さん、一緒になったらきっと上手くいくでしょうね。それこそ、私たちのときみたいに、ひとつひとつ、買い揃えていって……」 平次「うん、だが、三輪とわかなの女将さんの方は、まだまだ前途多難っていうやつだ。先が思いやられるぜ」 お静「まっ」 平次、万七のことを思い出したのか、笑みを浮かべる。 *バックタイトル 平次の家の前に小間物屋が、来ている。お静は、平次にと煙草入れを品定め。平次は、お静にとかんざしを選んでいる。ひとつ手にとってお静の髪に刺す。店主に「似合うだろ」とでも言っているのか、お静、かんざしを買ってもらえそう? |
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| 668話 | 4月18日 | 危機一髪!辰の下刻 | 天津敏 黒部進 光丘真理 幸田宗丸 |
夜回り中、平次の拾った「竜」の字が書かれた割符。どこかで、抜け荷の取引が行われるに違いない。一方、同心青柳は、殺しの下手人として、蟄居を命じられていた。濡れ衣だが、晴らす術もない。そう、罠に嵌められたのだ。平次から割符を取り戻すための手段として。青柳にくだった沙汰は、うち首。平次は、真犯人を捕え、牢屋敷へとひた走るが、時刻は辰の下刻。青柳の首に刀が、振り落とされようとしていた。 ゲスト 天津敏さん(唐津屋政五郎)、黒部進さん(軍三)、光丘真理さん(お加代)、幸田宗丸さん(高井総八郎) 一本気で、熱血漢の同心青柳。今度は、悪党の罠に嵌まって、殺しの下手人にされてしまいます。蟄居を命じられても、警備の目を盗んで脱走、捕まって、沙汰はうち首。まさに首を落とされようとするとき、平次が助けにくるのを信じて、時間稼ぎに辞世の句をひねります。妙に冷静で、可笑しかったです。句もいまいち……「青柳や〜青柳や、青柳や(これでは、ちと短すぎる)散りゆく花の花散る(ちと遅いなぁ)我が身哀しき」 晴れて、牢屋敷から出てきた青柳。ひどいめにあわされたからとめまいを起こしたふりをして、筆頭与力高井の足を思いっきり踏んでうさばらし。平次親分、青柳が、わざとやったと知りながら、とぼけて、口裏を合わせちゃって。親分もやりますねぇ〜。 *ラストシーン 伝馬町牢屋敷。 与力高井、同心青柳、同心樋口、平次の順で出てくる。 高井「青柳」 青柳「はっ」 高井「これに懲りて、これから以降、軽挙妄動は、厳に慎めよ」 青柳「は、ははぁ(頭を下げるが、めまいを起こしたふりをして、高井に寄りかかったすきに高井の足を思いっきり踏む)」 高井「痛い!痛い! 踏んでるぞ、バカ!」 平次、青柳の意図を察しているが、笑いをこらえ、口裏をあわせる。 平次「あぁ、どうしました、えっ」 青柳「ちょっと、めまいがして……」 平次「めまいが! これはいけねぇや。肩につかまっておくんなさい、大丈夫ですか」 平次、青柳に肩をかし、そのまま、去っていく。高井、うらめしそうに二人の後姿を見つめる。 往来。 青柳、平次の肩をかりたまま、歩いている。 平次「やりましたね」 青柳「知っていたのか」 平次「ええ」 青柳「高井様には、ひでぇめにあわされたからな。正直言って、俺は怖かった。だがな、親分、俺は心の中では、信じていた。親分が、必ず来てくれると……」 平次「いやぁ、どういたしまして」 笑みを浮かべて、ふたり、歩いて行く。 *バックタイトル 往来。 平次と八五郎が、歩いている。 幼子を抱いた女が、歩いて来て、風車を落とす。平次、それを拾って、風車を吹いて回し、子供をあやし、風車をわたす。お礼言って、母子去る。お店風の男が、来て、平次たちとしばし、立ち話。平次と八五郎歩いて行く。 |
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| 669話 | 4月25日 | 雨の中に消えた女 | 南田洋子 佐藤仁哉 富田浩太郎 堀内一市 |
遊び人の源次が、殺された。おせんという女が、下手人として、捕まるが、アリバイがあり、解放しとなる。しかし、平次は、おせんの顔に浮かんだ笑みを不審に思う。おせんの身辺を洗う平次だが、あまりに悲しい過去をおせんは、背負っていた。源次殺しは、母親として、名乗れぬ息子のためにしてやれる残された、たったひとつの道だったのだ。 ゲスト 南田洋子さん(おせん)、佐藤仁哉さん(信吉)、富田浩太郎さん(佐野屋)、堀内一市さん(芳三) 冒頭、八五郎は、かなり酔っ払っていました。雨の中、同心青柳に送ってもらうところですが、「酒飲んで、酔わねぇんだったらね、水を飲んでりゃいいんですよ、ウィ〜、あたしゃ、池の鯉じゃないんだから、水、嫌い」なんて、青柳に絡んだり、橋の柱に「どちら様でしたっけ?」なんて、かなりの重症です。 青柳は、自分の目撃した下手人と思える女を躍起になって捜します。つき合わされている万七と清吉は、もうヘトヘト。途中放棄してしまいます。青柳は、やっと見つけたその女、おせんをお縄にします。真犯人だったのに、嘘が、見破られず、解放しに。平次は、しっかり、おせんの表情の不自然さを見逃しませんでした。 平次と八五郎の旅姿が、見られました。おせんが以前居た、松戸に聞き込みに行くという設定です。 信吉の子役の男の子、橋蔵さんの息子さんの大川辰五郎さんに似ていませんでしたか? *ラストシーン おせんの墓前。 平次と信吉がいる。 信吉「親分さん、本当なんですか? このおせんという人が、本当においらのおふくろなんですか?」 平次「あぁ、確かにこのおせんは、おめぇのおふくろだ。十年前、おめぇを抱いて小糸川に身を投げ、それを悔み続けてきた、おめぇのおふくろなんだ。おせんは、芳三から、おめぇのことを聞いたものの、今さら、母子(おやこ)の名乗りもできず、ただ、遠くからおめぇを見守っていたんだ。たぶん、おせんの店に来たならず者から、おめぇが、源次に盗みのタネで強請られていることを聞いたんだろう。だからこそ、おせんは、源次を殺した。殺さなきゃならなかったんだ。倅の、おめぇの幸せを守るために。おめぇを人殺しにさせねぇためにもだ。それが、おせんにとっちゃ、たったひとつの母親としての道だったんだ。おめぇの母親としてのな……」 おせんと幼い信吉との放浪シーン。 信吉、墓の前で、泣き崩れる。 信吉「おっ母さん……」 平次「信吉、おめぇの犯した盗みの罪は、おめぇ自身のこれからの生き方で償うことだ。おせんも本当は、それを願っていたに違ぇねぇ」 平次を見つめる信吉。 信吉「親分さん……」 頷く平次。 墓前で、うなだれる信吉。 それを見つめる平次。 *バックタイトル 平次の家。 平次、銭を磨いている。お静、縫いあがった平次の半纏を持ってくる。平次、試着(衿にまだしつけあり)。気に入った様子。 |
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| 670話 | 5月2日 | 手鏡を抱く女 | 司葉子 長谷川哲夫 山下勝也 船戸順 |
旗本青山主水正が、芸者君千代と共に行方知れずとなった。平次は、青山の内儀、直々に内密の捜査を依頼される。平次は、捜査を突っぱねるが、町人の君千代が、行方知れずとなっていては、そうはいかない。そして、君千代が、何より大事にしていたという蒔絵の手鏡に突き当たるが、鏡は割れていた。何の役にも立ちそうもない割れた鏡に映し出されたのは、悲しい愛と武士に対する憎しみだった。 ゲスト 司葉子さん(お秋《君千代》)、長谷川哲夫さん(宇之助)、山下勝也さん(佐吉)、船戸順さん(津島刑部) #96「割れた鏡」のリメイク版。 初物には、特別こだわりのある江戸っ子。八五郎も例外ではありませんね。平次だけでなく、お静にも鰹(初鰹は食べ損ねたようですが)や竹の子を催促していました。 久々に平次の侍嫌いが、色濃く出たエピソードです。 平次は、武家の面目を保ち、お秋も殺意が、なかったことから、事件を終りにしようとします(青山主水正は、殺されたものの、お家大事のため、病死扱いで報告されていた)が、すっきりしません。青山の死体に不精ひげがなかったことに気がついたのです。三日も監禁されていたというのに。溺死ではなく、自力で川から這い上がり、どこかで身を寄せたところで、殺されたと確信します。さすが、平次親分ですね、些細な所にも気付きます。お秋が、下手人でなくて、ほんとうによかった! *平次の啖呵 「(青山の内儀に)あっしは、しがない町方で、ござんすが、金のために仕事は、いたしません。お断りいたしやす……金と脅しで、何でも出来るという、あっしは、そんなやり方が、一番嫌いなんでござんす。ごめんくださいまし」 「(津島刑部に)あっしは、、確かにしがねぇ町方でござんす。だが、上っ面は、きれいごとに見えても御歴歴のお侍の世界っていうのは、あんたたちが、虫けらのように見下してる貧乏長屋の町人よりも、もっと汚ねぇものが、いっぱいあるんだ」 「(青山の内儀に)奥方様、全ては、お武家様のおごり、たかぶりや醜い争いから起こったことで、それに気がつかれたら、お秋さんに再び刃(やいば)を向けることは、お止めくださいまし……平次、心からのお願いでございます」 *さすが、お静。 平次の家。 青柳と八五郎が、来ている。 平次「まぁ、そんなわけでな、本当に心配かけて申し訳ありませんでした」 青柳「直参千二百石、青山主水正」 お静「さぁ、どうぞ、青柳様もご一緒に(料理を出す)」 青柳「じゃ、あの、遠慮なくいただきます」 平次「へぇ、……あっ、鰹の刺身に竹の子かい、おぅ、八、うちのかみさんは、千里眼だぜ、おめぇの心をちゃんと読んでやがった」 お静「いえね、この間から何遍も謎をかけられていたんですよ。今年は、初鰹を食べそこなったとか、そろそろ、竹の子もおいしいとか」 平次「なんだい、そうだったのかい」 八「へへへ……だけど命があって、お静姐さんの手料理が、食べられる。こんないいことは、ないですよ。いや、一時はね、どうなるかと心配しちゃった、へへへ」 青柳も平次も笑う。 青柳「(隣室のお静を見ながら)しかし、おかみさんの落ち着いてるのには、驚いたなぁ。あわくって、オロオロしたのは、俺と八五郎だけじゃないか、え」 八「へへへ」 平次「えっ、おっ、おい、なんだ、おめぇ、ずい分薄情なんだなぁ」 お静「(長火鉢でお燗をしながら)そりゃ、私だって、最初はあわてましたよ。でもね、よく聞いてみたら(お燗をした徳利を運びながら)手向かうのをやめて、おとなしくついて行ったって、いうでしょう」 平次「うん」 お静「(卓に徳利を置きながら)あぁ、それなら、きっとおまえさんに何か魂胆が、あるんだなと思って」 平次「そうかい」 青柳「あぁ、いや、参った。さすが、おかみさんだな。俺は、まだまだ未熟なんだなぁ」 *ラストシーン 平次の家。 平次、縁側先で煙草。 お静は、庭で、洗い張り。 お静「(伸子《しんし》)をとって)お秋さんだって、まだまだ若いんですもの。きっといつか幸せを見つけてくれるでしょうね」 平次「あぁ、そうだとも。きっと幸せになるぜ」 そこへ、八五郎が、庭に入ってくる。 八「あっ、どうも」 平次「おぅ」 お静「八つあん」 八「あっ、やりましょう(伸子を束ねて取って、占いの筮竹のようにし、一本抜いて)え〜、ひょっと、大吉! 親分、いいことありますよ、へへ」 そのまま、バックタイトルへと入っていく。 *バックタイトル 八五郎、干してある反物に伸子を打とうとするが、お静に止められる。その隙に平次、庭に降り、反物に伸子を打ち始める。お静と八五郎、平次のそばに来て、見ている。平次、得意げに刺し始めるが、直後、伸子で指を刺してしまう。 |
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| 671話 | 5月9日 | 故郷の祭ばやし | 浅野真弓 渡辺篤史 西山嘉孝 |
偶然出会った同郷の幼馴染、朝吉とおこよ。二人とも江戸の生活に虚しさを感じていた。もうすぐ、故郷の村祭り……なつかしい祭りばやしに二人は、望郷の念にかられる。一緒にふるさとに帰ろう! しかし、朝吉は、親方徳兵ヱから、十両を盗み、逃亡してきた身……お金を返して故郷へ戻ろう! 朝吉が、徳兵ヱの家に戻り、目にしたものは、徳兵ヱの変わり果てた姿。このままでは、殺しの下手人にされてしまう。二人は、無事故郷へ戻れるのだろうか。 ゲスト 浅野真弓さん(おこよ)、渡辺篤史さん(朝吉)、西山嘉孝さん(伊豆屋重兵ヱ) のっけから、平次の投げた投げ銭が、品川無宿の辰造の目にぐさり!とささりました。このような場面は、以前にもありましたが、あまりいい気持ちはしませんね。それでも辰造は、川に飛び込み、平次たちから逃れてしまいます。 #669「雨の中に消えた女」では、八五郎が、べロンべロンに酔っていましたが、今回は、青柳伸之介でした。小料理屋の看板娘、おこよに気があったようですが、おこよは、男嫌いで、江戸の男は薄情だと思っていると女将から聞かされ、がっくり。「わかな」で、やけ酒。万七は、なだめるのに四苦八苦。翌日は、二日酔いで、平次の家へ。お静は、昔は、平次もよく深酒をしたと言っていましたが、そのような場面、あったかしら? *ラストシーン 日本橋。 故郷に帰る朝吉とおこよ。見送りに来ている青柳、平次、八五郎。 八「(空を見上げて)あ〜あ、いやぁ、いい天気だなぁ。旅立ちには、もってこいだ、ねぇ、親分」 平次「あぁ、長い道のりだ、気をつけて行くんだぜ」 おこよ「はい、ありがとうございます」 青柳「でも、俺ぁ、すっかり騙されたな、ハハ、しかし、もとに返したとはいえ、一度犯した罪を不問にしてもらったのは、銭形の親分の尽力があったからだ。このことを決して忘れるなよ」 朝吉「はい、肝に命じて絶対に忘れません。ありがとうございました」 平次「さぁ、行きな」 おこよ「はい」 ふたり、頭を下げ、橋を渡って行く。途中で振り返り、再び頭をさげ、去って行く。 青柳「田舎か……いいなぁ……」 見送る平次の顔のアップ。 *バックタイトル 長屋の夫婦喧嘩の仲裁に入る平次と八五郎。かなり、派手な喧嘩。夫婦に説教する平次。納まったものの、八五郎は、腰と肩を痛めたよう、平次は、右肘を怪我したのか、唾をちょいとつける。 |
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| 672話 | 5月16日 | 万七・恐怖の三日間 | 菅貫太郎 水原麻記 増田順司 |
矢切の辰蔵一味が、廻船問屋渡海屋に押し入り、店の者を人質に立てこもった。偶然居合せた万七も巻き添えとなる。辰蔵は、万七に昔の女、お新を捜し、連れてくるよう命じる。万七は、仕方なく捜し始めるが、その言動に不審を抱いた平次は、事件を知ることとなる。強行突入の命が、奉行からくだされるが、平次は、辰蔵が、高飛び用の船を要求したことから、ある策略を思いつく。 ゲスト 菅貫太郎さん(矢切の辰蔵)、水原麻記さん(お新)、増田順司さん(渡海屋) 万七親分、「わかな」で、紋付姿を披露。見回り先のお店で御祝事が、あるそうで。「馬子にも衣装」なんて、からかわれたり。おちかは、万七に気がありそうな、なさそうな。 万七の息子、万助が、登場。相変わらず、大きくなりませんね、今回は、万七を「おとう」って呼んでました。 平次も八五郎も日曜大工が、苦手なようです。前回のバックタイトルで、平次は、夫婦喧嘩の仲裁で、肘を怪我、その前は、洗い張りの反物に伸子を刺していて、指を刺し、今回は、棚を吊っていて、金槌で、指を叩いちゃって……捕り物以外でよく怪我をしますね、気をつけて! 平次は、お上の命を聞き入れず、ひとりの命も失うことのないよう、画策をたてます。平次自身は、命をかけて。船頭に扮した平次、板についてますねぇ、頬かむりをして、煙草をふかして、ふなべりに腰かけている後姿。 *日曜大工は苦手 平次の家。 八五郎が、家に入ってくると、なにやら金槌を叩く音がする。 八「おっ?」 平次、棚を吊っている。 八「あら、親分、、何してんすか?」 平次「(金槌で釘を打ちながら)あぁ、今、大事なとこなんだ……あっ、痛ぇ!」 八「あっ」 平次「あっ、痛ぇ!(金槌で指を打ってしまい、その指をくわえる)」 八「ハハ……見ちゃいらんねぇな。あっしが、やります、へへ」 平次「横から口出すから、おめぇ、突いちまったじゃねぇか(指先を見る)」 八「そんなことないっすよ。こういうのはですねぇ」 八五郎、平次に代わって、金槌をテンポよく叩く。 八「はい」 平次「な〜るほど、うめぇもんだ。人間、なかなか取り柄が、あるもんだ(感心しきり)」 八「え〜、へへへ、いやぁ、あっしだって、この位できますよ、へへへ」 お静「(吊られた棚を見て)あら、八つあん、すいませんねぇ」 八「いえ、あ、出来ましたよ」 お静「(棚を見上げて)ほんと、うちの人に頼んだら、いつできたか、わからなかったわね」 平次「てやんでぇ、俺なんか、まだ半時位しか、経ってねぇんだぞ」 お静「うふふ」 八「半時? 棚を吊るだけで? さすが親分だ、アハハハ」 お静「これなら、小物を置くのに便利ね」 平次「おぅ、八、(長火鉢の前に座って)」 八「へ、へい」 平次「おめぇ、何か俺に用事が、あったんじゃねぇのか」 お静、棚に物を載せ始める。 八「へ〜ぇ、ありました……あっ、そうだ! 親分、万七親分がね、夕べ、あの、出かけたっきり今朝になっても、帰ぇってこないんですって」 平次「何?」 お静「あっ、あ〜」 棚が、落ちる。 お静「八つあん、(嫌味っぽく)上手ねぇ〜」 平次「あ〜ぁ、やい、おめぇの腕もてぇしたことねぇじゃねぇか!」 八五郎、情けない顔、この上ない。金槌で、自分の額を打って、舌を出す。 *ラストシーン 船着場。 捕り物の後。 青柳、平次、八五郎、清吉がいる。 青柳「親分、その……何というか……ハァ〜(溜息)やっぱり親分には、かなわねぇや。俺は、まだまだ修行不足だ」 平次「な〜に、あっしだって、一か八かの賭けだったんですよ。もし、しくじっていたら、青柳さんに合す顔もなかったかもしれません」 青柳「親分、しかし、そう言って、慰めてくれると、あの、ますます俺は、いじけるな」 清吉、きょろきょろと辺りを見回している。 八「旦那、そう言わずに、また頑張りましょう」 青柳「あぁ」 清吉「ところで、うちの親分は?」 平次「あっ、いけねぇ! あっ、流れ出ちまった(川を指さす)」 皆、川を見る。 万七「(舟上で)助けてくれぇ〜、連れ戻してくださいよ〜、どうするんだ〜(泣きそう)」 青柳「おい、誰か助けなきゃだめだよ、おい、八、おまえ、行けよ」 八「いやぁ、あっしは、泳げないんですよ」 青柳「清吉、おまえ、行け」 清吉「お、同じく……」 青柳「しょうがねぇな、じゃ俺が行くか」 青柳、桟橋を走って行く。 青柳「お〜い、待っててくれよォ〜」 万七「助けておくんなせぇ〜」 青柳「(刀を置く)全くしょうがねぇな〜」 万七「助けてくださいよ、旦那〜」 青柳「(羽織を脱ぎながら)なんで、俺が行かなきゃいけねぇんだ……」 平次、八五郎、清吉、笑いながら様子を見ている。 *バックタイトル 平次の家。 冒頭の棚作りを受けて。平次、ねじり鉢巻き、たすき掛け、汗だくで、棚用の板をのこぎりで切っている。そばにお静。切り終わった板を鴨居にあげる。今度は、大丈夫かな? |
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| 673話 | 5月23日 | 翔べないトンビ | 大門正明 小林伊津子 中田博久 南祐輔 |
大木戸一家の跡目争いにとうとう死人が出た。小頭仙太郎と争っていた若頭安蔵が殺されたのだ。下手人は、チンピラで、トンビの市松。恋人お妙の借金を返すため、引き受けた殺し。役人から逃れた市松は、お妙の故郷に帰り、まっとうに働くと誓う。ふたりは、故郷の鹿沼をめざして、歩きだす。この橋を渡れば、江戸とはおさらば……あと一歩で……しかし、市松は、どうしてもその一歩が、出なかった。お妙を残して踵を返す市松。そこに待っていたものは……「羽根があったら、今からでも翔んでいけるのに……」 ゲスト 大門正明さん(トンビの市松)、小林伊津子さん(お妙)、中田博久さん(仙太郎)、南祐輔さん(八十吉) 安蔵殺しの下手人として、市松を青柳が逮捕。証拠もあり、自白を待つのみ。しかし、万七は、早く自白をさせようと、独断で市松を番屋から奉行所へ連れ出します。途中で、八十吉たちに襲われ、市松を逃がしてしまいます。本ボシだったのに。 市松が、殺人を犯したことなど知らないお妙。市松の死体を前にどうしてこうなったのか、何をしたのか、平次に問うお妙。平次は「何もしちゃいねぇ、ちょいと道を踏み外しちまっただけさ」とつぶやきます。最後までお妙を思いやって、真相を話しませんでした。 ラストは、平次と八五郎が、将棋をしている場面。今回も八五郎の分が悪いようです。平次は、すっかり八五郎より腕が上になったようです。 *ラストシーン 平次の家。 平次と八五郎、将棋をしている。 お静「(姉さんかぶりをしている)おまえさん、で、あの、その娘さんは、どうしたんですか?」 平次「故郷(くに)へ帰ぇったよ」 お静「そう……でも一生忘れられないでしょうね、その市松さんって人のことが」 平次「な〜に、時は、良薬、歳月は、名医。時が経ちゃ、心の傷も癒えるだろうよ(駒を打つ)」 八「あぁ、考えてみりゃ、市松って野郎も可哀相でしたね、あら? (将棋盤を見て)こんなところへ……」 平次「あぁ、まっ、あいつのお陰で、江戸の大掃除ができたんだ。そう思ってやらなきゃ、あいつも救われねぇだろう、へへ」 平次、煙草を吸おうとキセルを煙草盆に持っていく。 八「(苦戦)あっしの王様も救われませんねぇ〜」 平次「おぅ、おぅ、おぅ、おぅ、煙草、おい、煙草、きれちまってる、煙草」 お静「あら、おまえさん、買ってきたんじゃなかったんですか」 平次「おれが?」 八「あ〜ぁ、あっしがね、煙草、買ってきます!(立ち上がろうとする)」 平次「あ〜あ、ダメ!ダメ!(キセルで、将棋盤を叩いて)勝負がついてから、勝負がついてから」 八五郎、がっくり。 お静「あのう、おふたりさん、ちょっとすいませんけど、これからお掃除したいんで、ここ、どいてほしいんですけどね」 八「(渡りに船と喜ぶ)あっ、邪魔なんですか? 邪魔? アハハ、邪魔、邪魔ね(将棋盤を持って玄関の方へ)」 平次「なんだよォ〜、負けてるからって(煙草盆を持って八五郎に続く)」 お静「八つあん、そっちへ行かないで、そっち」 平次と八五郎、別の部屋へ行こうとする。 お静「そっちは、これからお掃除するんで……あちらの方へ……すいませんねぇ〜」 平次と八五郎、庭へ。そのまま、バックタイトルへ。 *バックタイトル 平次の家。 八五郎、縁台を持ってくる。平次と八五郎、縁台に腰掛け、勝負の続き。八五郎、うっかりか、わざとか、将棋盤を反対に置いてしまう。変だと気づいた平次、もとの位置に戻す。八五郎、指で空を指し、平次の気をそらす。その隙にズルをして、駒を置こうとして平次にみつかり、手をぴしゃりと叩かれる。 |
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| 674話 | 5月30日 | 夫婦流転(めおとるてん) | 藤間紫 安井昌二 白石奈緒美 |
押し込みの一味を何度となく、下谷正慶館付近で、見失った。平次は、正慶館に疑いをもつ。そこに現れたおふじ。夫である医師、村越隼人に冷たくされながらも、ひたむきに生きている。何やら深い訳がありそうだが、おふじは、黙して語らない。調べを進める平次、やがて、おふじ夫婦と押し込み一味との意外な過去が、浮かび上がる。 ゲスト 藤間紫さん(おふじ)、安井昌二さん(村越隼人)、白石奈緒美さん(およう) 藤間紫さん、9回目のゲスト作品です。 おかかえ医師をあきらめ、廓から連れ出してくれた村越に恩を感じ、またそれがおふじにとって、村越の本当の姿と信じ、辛い仕打ちにもじっと耐えてきたおふじを藤間さんが、熱演。 徹夜で正慶館を見張っている平次と八五郎、明け方には、八五郎は、平次の背にもたれて、高いびき。かわいかったですね、八つあん。もちろん、平次は、お冠り。肘で八五郎を突っついて、ビンタをして、起こしました。 ラスト、おふじ夫婦を通じて、平次とお静、ほんとうの夫婦の暮らしを自分たちも再確認していたように感じました。 蛇足ですが、「わかな」で、平次と八五郎が、食事をしていましたが、二人ともお膳の上のご飯茶わんと味噌汁のお椀の位置が、逆だったみたい。ごはんが、手前右で、味噌汁が、手前左になっていましたが、反対だと思うんですが…平次が、家で食べているときは、どうだったかしら? 今度気をつけて見てみようっと。それとも江戸時代は逆だったのかしら? *おふじの胸の内 正慶館の診察室。平次がいる。医師の村越隼人が、酔って入ってくる。 村越「おふじ! 水だ! 水をくれ(よたよたと椅子に腰かける)」 平次「おふじさんは、おようのところへ行きましたぜ」 村越「およう?」 平次「どうやら、思い出したようですね(腰かけて)十年前、小田原の郭で、おようの男が大けがをして、転がりこんできた。そのとき、先生、本当はおめぇさん、同じ郭の中にいたんじゃねぇんですかい」 村越の顔色が、変わる。 平次「やっぱり、そうなんですね、おふじさんはね、先生、おようが押し込みの一味とわかっていながら、何度か、この正慶館に匿っていたんだ」 村越「何だって!」 平次「誰のためでもねぇ、そいつは先生、おめぇさんの為だ。十年前、おようの男を見殺しにしたおめぇさんの償いをするために」 村越「私の償いを……」 平次「そうです。おめぇさんには、何も言わず、自分ひとりの胸の中で、おふじさんは、苦しみ続けてきたんだ」 村越「そうだったのか……おふじは、三島に売られると聞いて、一緒に逃げたときから、おかかえ医師をあきらめたつもりだった。だが、この十年、あきらめきれずに、ついつい、おふじに辛く当ってきた……そんな、おふじの胸の内も知らずに……」 平次「おかかえ医師をあきらめきれねぇおめぇさんの気持ちは、誰よりもおふじさんは、わかっていたんだ。だからこそ、十年前、拷問を受けながらも必死におめぇさんを庇い、おめぇさんは、来ていなかったといい通した。そのときと同じ気持ちで、おふじさんは、今、死を覚悟して、おようのところに出かけたに違ぇねぇんだ。おめぇさんを小田原藩のおかかえ医師にするために……」 村越「おふじは、どこに……」 八五郎が、飛び込んでくる。 *ラストシーン 平次の家。 平次、縁側先で、障子にもたれ、お茶を飲んでいる。そばにお静。 お静「おふじさん、何のお咎めもないということになって、本当によかったですね」 平次「あぁ、大勢の患者たちから、嘆願書が出て、お上も心を動かされたらしい」 お静「村越先生、おふじさんと一緒に正慶館に骨を埋める決心をなさったんでしょう?」 平次「ああ、あの二人にとっちゃ、これから本当の暮らしが、始まるんだ、本当の夫婦の暮らしがな」 平次を見つめ、ゆっくりと頷くお静。平次もお静の顔を見て、頷き、空を見上げる。 *タイトルバック 橋を渡ってくる平次。 重そうに幼子を抱いて、橋を渡っているおばあさんがいる。平次が、橋の袂まで、その幼子を代わりに抱いてやる。そこへ、八五郎が、走ってきて、平次に事件発生を知らせる。 |
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| 675話 | 6月13日 | 蛇の目傘の女 | 夏純子 早川保 岩田直二 |
雨の夜、蛇の目傘をさした女が、駿河屋を訪ねてきた。女は、死んだはずの駿河屋徳三郎の妻、お栄だと言って譲らない。お栄しか知れ得ないことも知っている。特徴である腕の火傷痕もある。徳三郎は、真偽を明らかにしようと、お栄をよく知る儀兵ヱを出身地の駿州岩渕から呼び寄せる。まもなく、儀兵ヱは、駿河屋に着くだろう。駿河屋では、平次、徳三郎、女が、それぞれの思いで儀兵ヱの足音に耳を澄ませている。 ゲスト 夏純子さん(女)、早川保さん(徳三郎)、岩田直二さん(儀兵ヱ) クレジットで、夏純子さんの役名が、「女」とは、びっくりしました。お栄の腹違いの妹という設定ですが、最後まで、名前が出てきませんでした。クレジットで、名前が、出たら、面白さが、半減するからですね、きっと。最後まで、本当のお栄かどうか、明らかになりませんでしたから。 ラスト、平次が、去っていく女を見つめながら「幸せになんなせぇよ」とぽつりとつぶやきます。胸が、ジ〜ンとしました。平次の優しさ、思いやりが、あふれているから、自然と出た言葉ですね。ほんと、あの女の人、幸せになってほしい。 雨の中、傘をさし、高下駄をはいた平次の姿が、様になっていて、ほれぼれします。でも八五郎は、いつも草履で、雨の日は、気の毒ですね。 *ラストシーン 駿河屋の一室。 捕り物の後。 平次「儀兵ヱさん、なかなか見事な芝居でしたよ」 儀兵ヱ「ハハハ、お役に立って、何よりでした」 女「私も一時は、どうなることかと思いました」 平次「ところで、おめぇさん、これからどうする?」 女「駿州の吉原宿へ帰ります」 平次「雨は、まだ降ってますぜ」 女「私……蛇の目を持っているんです」 平次「蛇の目?」 頷く女。 女「姉さんにもらった蛇の目が……」 納得する平次。 そして女を見つめる。 店の外。 蛇の目をさして、女が出てくる。続いて、平次と八五郎、ひとつの傘に入って出てくる。 女「じゃ、親分さん、ここで……」 平次「達者でな」 女、去っていく。女の蛇の目傘のアップ。見送る平次と八五郎。 八「親分、ひとつ、わかんねぇことがあるんですがね」 平次「何だ?」 八「あのぅ、火傷です。 火傷の痕って証拠があるのに、どうして偽者だって、わかったんすか?」 平次「火傷の痕ってぇのはなぁ、時が経つにつれて、肌と同じように平たくなるもんだ。だが、あの人のは、そうじゃなかった。まるで、鳥もちを貼り付けたみてぇに盛りあがっていた。ありゃ、新しくつけたもんだ」 八「はぁ〜、なるほどね」 平次「(女の行く先を見つめ)幸せになんなせぇよ」 *エンドタイトルバック ラストシーンの続き。 平次と八五郎、雨の中、ひとつの傘に入って帰宅。お静が、出迎える。おそらく、平次が、八五郎の足が濡れているので、雑巾でも持ってくるようお静に頼んだのだろう。八五郎は、「あっしが、持ってくる」とばかり、そのまま、座敷に上がってしまう。畳の上に足跡がつく。八五郎、あわてて、玄関に戻る。 |
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| 676話 | 6月20日 | おやこ同心 | 江木俊夫 多々良純 谷口完 |
同心原田貞左ヱ門は、不知火組を御用にし、これを機に引退し、同じく同心の息子、貞一郎を見守る決心をした。そこに降ってわいた芸者小松殺し。下手人の疑いを受けたのは、貞一郎。状況も極めて不利。平次は、貞一郎が、罠にはめられたと確信し、北町、南町の垣根を越えて奔走する。 ゲスト 江木俊夫さん(原田貞一郎)、多々良純さん(原田貞左ヱ門)、谷口完さん(越後屋総兵ヱ) 久々、クレジットにミスがありました。 堺屋総兵ヱとなっていましたが、劇中では、越後屋総兵ヱです。 北町に手柄をとられて、青柳も万七も悔しくて、面白くありません。平次が「北とか南とか関係ねぇ。要は、悪い奴を捕まえることだ」となだめますが、万七は「北町には、負けたくねぇってのが、人情じゃねぇか」と反発。しかし、北町同心原田父子が、来たとたん、万七の態度は、コロリと変わります。その代わり様に平次たちは、あきれ顔。青柳は「万七親分め!」と不愉快な顔。 万七の息子、万助が、出てきますが、相変わらず幼いですね、孫に近くなってきました(笑)。面倒をみてくれた「わかな」のおちかに「おばちゃんみたいなお母ちゃんが、ほしいな」と健気なことを言います。おちかと万七との仲をとりもってくれればいいのですが。 青柳は、北町との対抗心もあってか、いつも以上に突っ走っていました。やたらと着物の裾が、はだけるのが、気になります。ラストの殺陣も、気合いが入っているのは、わかりますが、喧嘩というか、殴り合いのようです。 *ラストシーン 越後屋の庭。 総兵ヱをお縄にした貞一郎。 青柳「貞一郎、疑ってすまなかったな。赦してくれ」 貞一郎「いや、私の方こそ……」 平次「青柳さん、この手柄、どうか貞一郎様に」 青柳「うん、それが何よりの小松への供養だな」 平次「へぇ」 平次の家。 原田父子、青柳、八五郎が来ている。 貞左ヱ門「平次、この通りじゃ、赦してくれ」 貞一郎は、両手をつき、頭を下げたまま、貞左ヱ門も両手をつき、頭を下げる。 平次「えっ、いや、いや、まぁ、原田様、こいつは、困ります。どうぞ、お手をお上げなすって……へぇ」 青柳「そうですよ。今回は、私もとんだ先っ走りで、親分に迷惑ばかりかけた」 八「本当ですよ。あっしもね、ひやひやしましたよ、旦那。今度から気をつけてくださいよ」 お静「まぁ、八つあんたら……」 青柳「あ、いや、八、これからは気をつけるよ、なっ」 八「(偉そうに)うん、わかってくれりゃいいんすよ……(平次の視線に気づき)あっ、こりゃ、どうも……」 平次「まぁ、失敗は成功のもとといいますから、貞一郎さんは、どうか今度の一件を肝に命じて、父上に劣らねぇ名同心になっておくんなせぇ」 貞一郎「ええ、必ず」 頷く平次。 貞左ヱ門「いやいや、わしなぞは、もう古い。貞一郎、これからは、平次を父と思って、しっかり励むのだぞ」 貞一郎「父上……」 青柳「おい、今から父上は、こっちだぞ(平次を指さす)」 貞一郎「(平次に)よろしく」 平次「はぁ〜、いやぁ、青柳さん、そいつはねぇや」 お静「おまえさん、急に大きな息子ができましたね、ふふふ」 八「へへへ、ほんと、ほんと」 平次「おいおい、おめぇたちまで、そんな……ハハハ……どうも(頭をかく)」 *エンドタイトルバック 平次と八五郎、舟釣り。 あたりが、こないのか、八五郎、飽きてるようす。平次、一匹、釣りあげる。 八五郎もあたりがくるが、破れた草鞋。八五郎、やる気が失せる。平次、釣った魚を手にご満悦。 |
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| 677話 | 7月4日 | おかめが泣いた | 津山登志子 西田健 伊達三郎 |
大道芸人のおくに。その踊りは見る者の心をなごませる。純粋な心ゆえ、佐吉に騙されたのかもしれない。佐吉を信じて、庇ったものの、殺人犯だったとは。それでも、佐吉の命が、狙われていると知るや、おくには、自分の命を投げ出しても佐吉を救おうとする。そのひたむきな愛に佐吉は、ようやく目が覚める。 ゲスト 津山登志子さん(おくに)、西田健さん(佐吉)、伊達三郎さん(難波屋) お静が、姉さんかぶりで、庭で洗濯物を干そうとしています。そこへ、平次、「おい、お静、えっ、働き者の、いい女房ぶりだぜ」だって。平次は、時々、ズバッと女房をほめるんですよね、女房としては、嬉しいかぎり。はりきって、家事をしちゃいます。 万七は、青柳に叱られてばかりで、面白くありません。青柳に追い立てられるように被害者の身元確認へ走ります。途中で平次と八五郎に出くわします。平次「おっ、三輪の、遅くなってすまねぇ」万七「ほんとだな、どうぞ、ごゆっくり」この万七の言い回しが嫌味だけど何とも可笑しかったです。 おくには、本当に純粋な心を持った女性。平次ですら、その純な心を知らず、舞台に立ちたい一心で、佐吉と口裏を合わせたと誤解をしていました。 平次、青柳、八五郎は、アヘン密輸の証拠をつかむため、舟人足に扮して、難波屋に潜り込みます。やっぱり、平次が一番様になっています。頬かむりすると美男度アップ! *佐吉を論す 平次「信じられねぇのは、おめぇの心が、貧しいからだ……まだわからねぇのか、おくには、自分の命よりもおめぇを救おうとしているんだ……おめぇは、知らなかったろうが、世間には、こういう人間がいるんだぜ」 *ラストシーン 楼門。 以前の場所で以前のように、おくには、おかめの面をつけて、仲間と踊っている。 見物人は、手拍子。平次と八五郎は、遠巻きに見ている。 八「ははぁ〜、やってますね、親分」 平次「ほんとだ」 おくに、面をはずす。見物人、拍手。 見物人「よォ、おくにちゃん、もう一遍、やってくれよ……頼むよ」 見物人、アンコールの拍手。 おくに、再び面をつけ、踊り始める。 八「へへ、よかったですね」 平次「世の中にゃ、泣くに泣けねぇ人間が、たくさんいる。おくにちゃんは、そんな人の心に笑いを吹き込む福の神だぜ」 *エンドタイトルバック ラストシーンの続き。 平次と八五郎、楼門から、去る。 参道を楽しげに話しながら(八五郎は、おくにの踊りについて、話しているような)歩いている。 |
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| 678話 | 7月11日 | ドジな野郎の命がけ | 小野進也 斉藤浩子 外山高士 |
十二年前、生き別れた妹のお光をやっと捜し当てた仙吉。兄と名乗りをあげるが、お光は、頑なに否定する。盗っ人稼業に足を突っ込んだ仙吉だが、妹のためにと足を洗おうとする。が、それを仲間が、許すはずもない。お光を人質にとってしまう。そこで、知らされたお光の素姓。しかし、仙吉は、己の命も顧みず、お光を救いにいくのだった。 「妹でなくたって、妹だい!」 ゲスト 小野進也さん(仙吉)、斉藤浩子さん(お光)、外山高士さん(天陽堂) タイトルからだとコミカルなエピソードを連想しましたが、全く違って、哀しく切ない物語でした。放送当時(1979.7.11)は、梅雨の真っただ中。劇中も長雨の設定でした。 ラストは、文字通り、涙雨となりました。 エンドタイトルバック、本編のキーポイントとなったかんざしを絡めていました。お静のかんざしが、話題に。セリフが、聞きたいとつくづく思いました。 *ラストシーン 西尾道場。 仙吉、押し込み一味の西尾に刺され、瀕死状態。 平次、お光が、捕まっている部屋に入る。 お光「あっ、親分さん!」 平次、お光の縄を解く。 平次「お光ちゃん、おめぇを助けたのは、俺じゃねぇ、仙吉なんだよ」 お光「あの人はいや!」 平次「お光ちゃん、仙吉は、今、死にかけているんだ。誰のためでもねぇ、おめぇのために」 お光「えっ、だってあの人、思い違いを!」 平次「思い違いなんかしちゃいねぇよ。仙吉は、おめぇが、妹じゃねぇことは、今ではちゃんと知ってるんだぜ。 それでも仙吉は、おめぇが、可愛いんだ。おめぇが、たったひとりの身内なんだよ。確かにあいつは、ずっとおめぇを妹だと信じこんでいた。盗みにも手を出したドジな男だが……だが、お光ちゃん、おめぇのために死んでもいいという、そう思うのが、本当の身内なんだ。仙吉こそ、本当のあんちゃんじゃねぇか」 お光「親分さん」 平次「さぁ、行ってやるんだ」 お光、倒れている佐吉のところへ行く。 お光「(仙吉にすがって)あんちゃん! あんちゃん! しっかりして、あんちゃん……」 仙吉「……おめぇ……今…何て言った……」 お光「あんちゃん、死んじゃいや、死んじゃいや……」 仙吉「お光……」 仙吉、懐から、ようようかんざしを取り出し、お光に渡す。 お光それを髪にさす。 お光「ありがとう、あんちゃん……」 仙吉「(微笑んで)……よ〜く似合うぜ……うっ……(こと切れる)」 お光「あんちゃん……あんちゃ〜ん(仙吉の遺体にすがって、大泣き)」 ふたりを切ない表情で、見守る平次。 お光のかんざしのアップ。 平次「やすらかにな……お光のあんちゃん……」 *エンドタイトルバック 本編に出てきたかんざしにちなんでいる。お静、 鏡をみて、かんざしをさす。長火鉢のところにいる平次と八五郎に見せに来る。 お静、八五郎にかんざしを平次に買ってもらったと言っているよう。 八五郎、「親分が!」と平次を指さす。茶化して、平次に手を合わせて拝む。平次、お静に見えないよう、袂で隠して、八五郎に「金がない」と言っているらしい。平次とお静、隣室へ行って、何やら話しあっている。 八五郎、勝手にしてくれというようにお茶を飲んでいる。 |
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| 679話 | 7月18日 | ふたりの女 | 野川由美子 柴田p彦 長谷川弘 |
魔性の女、お滝。男をたぶらかし、破滅させる。その毒牙にかかった弥之助は、寄せ場送りとなった。寄せ場から帰った弥之助は、まっとうに暮らしていたが、お滝と瓜二つのお波と出会い、夫婦となる。お滝の身代わりなのか……。そんなとき、弥之助は、お滝と再会してしまう。未練があったのか、弥之助は、再び、お滝の魔性に取り憑かれる。この女が、いる限り、俺はだめになる……弥之助は、お滝に刃を向けた……。 ゲスト 野川由美子さん(お波、お滝)、柴田光(にんべんに光です)彦さん(弥之助)、長谷川弘さん(血桜の重兵ヱ) 平次の家の暖簾が、夏向きに水色地に檜扇模様になりました。お静の着物も夏定番の大きな笹の葉模様。 お滝とお波、全く対照的なふたりの女。野川由美子さんが、見事に演じ分けていました。 万七親分、若いですねぇ、御用中につい、おちかさんに会いたくなって「恋ってぇのは、切ねぇ〜」と。「わかな」から、番屋のみんなに差し入れ。万七、自分だけのためじゃないと知ると、ふてくされて、おにぎりを食べません。お町が「おっ母さんが、万七親分に怪我が、なくてよかったといってた」というと、とたんにご機嫌になり、おにぎりを食べはじめます。あげく「おかず、な〜に?」なんて。言い方が、可愛かったです。 ラスト、平次が、弥之助に言った「おかみさんが、待ってる。さぁ、早く行くんだ……今度こそ、身代わりなんかじゃねぇ、天にも地にもたったひとりのおかみさんなんだぜ」という台詞に胸が、ジーンとしました。 *ラストシーン 「わかな」 青柳、万七、清吉が、いる。 おちか「お気の毒に〜。万七親分、また間に合わなかったんでっかぁ」 万七「いやぁ、面目ねぇ」 お町「でも、この次ってことが、あるわ。今度こそ、がんばってね」 万七「そ、そうだよ。やる、きっとやるよ」 清吉「いや、煩悩はいけませんよ、親分、煩悩は」 青柳「あぁ、女は、怖いからなぁ。いや、俺はね、つくづくそう思ったよ」 おちか「そやけど、男かて怖いでっせ」 青柳「えっ」 おちか「そうでっしゃろ? そんな、ええおかみさんが、ありながら、魔性の女にひっかかるんでさかいにね」 万七「あ〜、い、いや、俺はね、俺はね、俺は絶対そんなことしないよ、俺は、もうね、かみさん本意に、こう尽くす方だからね、俺はね……」 おちか「ハハハ、そんなことよろしいがな、松吉、うどん、まだか?……おまえ、どこにすわってんのや!」 松吉「へ、へい」 平次の家。 平次、お静、八五郎、心太を食べている。 平次「弥之助とお波は、新しく生まれ変わったつもりで、商売に励み、長屋の人たちは、弥之助のことをわかってくれたんだ」 お静「そ〜う、よかったわね」 物売りの声「あさ〜り〜」 八「あれ? 親分、しじみ売りだ! 弥之助ですよ」 平次「おっ」 お静「あっ、おまえさん」 平次「おぅおぅ、お静、ざるだ、ざる、持って来い、ざる」 お静「は、はい」 三人とも家を出る。 八「弥之さ〜ん!」 くず屋「くず〜い(路地を通り過ぎていく)」 お静「あら?」 平次「おい、ありゃ、くず屋じゃねぇか、おめぇの耳は、どうかしてるぞ」 お静「八つあん、くず屋さんにしじみは、売ってるの?」 八「はっ(お静から、ざるをとり)♪安来〜(安来節を唄いながら、どじょうすくいの真似)くず屋としじみと間違えた〜(家の中に入る)」 お静「すくいがたいですね」 平次「全くだ……」 平次とお静、笑う。 *エンドタイトルバック お宮の前で、平次、八五郎に十手さばき(くるくる回す)を見せる。八五郎が、やってみるが、十手を足の上に落としてしまう。かなり痛そう。八五郎、今度は投げ銭をリクエスト。平次、格好よく投げて、木に生っていたみかんを落とす。八五郎、感心する。八五郎、投げ銭をするが、果たして結果は? |
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| 680話 | 7月25日 | 女房の告白 | 市原悦子 小川真司 西山嘉孝 |
酒に賭博に船遊び……とうてい人妻とは、思えないおりんの放蕩ぶり。亭主は、かなり年下の宗吉。いたって真面目で、女房に仕えている。だが、殺しの疑いがかかった宗吉の身代わりにおりんが、出頭してきたとき、平次は、おりんの今までの言動の真相を知る。しかし、おりんは、その辛い苦しい胸の内を宗吉に伝えようとはしない。そして、宗吉もまた、おりんの胸中を知る由もない。 ゲスト 市原悦子さん(おりん)、小川真司さん(宗吉)、西山嘉孝さん(立花屋) 万七親分、久々のお手柄。三日も張り込んで、賭博を摘発。 ラスト、平次は、おりんの気持ちを汲んで、宗吉におりんの本心を伝えず、あえて、宗吉を捨てたかのような言い方をします。おりんは、今では、宗吉のことを心底好きなのですから、真実を言ってもよさそうなものですが、そこは、親分、宗吉が、未練を残さないようにと計らったのでしょう。お静の言葉を借りれば、本当に哀れな話……。 ラストシーンでは、平次が、八五郎に「将棋の修行も足りないようだから、一丁、揉んでやる」と言って、将棋を始めます。八つあん、ついこの間まで、平次を負かせていた気がしますが、すっかり逆転してしまったようです。 *ラストシーン 立花屋の寮の前。 宗吉が、息を切らして走ってくる。あとから、おみつと番頭の佐平がくる。 宗吉「親分さん、おりんは、どこに、どこにいるんですか!」 平次「どっか遠くへ行っちまった」 宗吉「なんですって!」 平次「おりんにゃ、おめぇとは、この先一緒に暮らす気はねぇと言った。あきらめるんだな」 宗吉「何か、何か、俺にことづては?」 平次「いや、何もねぇ」 宗吉「何もない?」 平次「何もありゃしねぇよ」 宗吉「(がっかりして)そうですか……」 おみつ「兄さん、わかったでしょ? 兄さんは、あの女に騙されていたのよ」 佐平「お嬢さんのおっしゃるとおりですよ。あんな性悪女は、他にいやしません。さぁ、帰りましょ」 おみつ「兄さん……」 宗吉、おみつ、佐平が、平次に頭を下げ、去っていく。 おりんが、重い足取りで、寮から出てくる。 平次「これで、よかったんだな?」 おりん「ええ……いいんですよ、これで」 平次「昔はともかく、おめぇは心底、宗吉を思っていた。思っていたからこそ、嫌いなふりをして、悪い女房を装って、宗吉を自分から遠ざけようとした。そんな気持ちを宗吉は、一生知らねぇままでいる。おめぇの辛ぇ胸の内をな……」 おりん「親分さん……(涙があふれる。平次の胸に顔を埋めて泣く)」 やるせない平次の顔アップ。 街道。 旅姿のおりんが、歩いている。年端もいかない娘を連れた男とすれ違う。明らかに売られていく娘。 男「(娘に)早く歩くんだ」 おりん「待って」 おりん、娘の帯を直してやる。 おりん「いいよ」 娘「ありがとう」 男「さぁ」 おりん、その娘に昔の自分の姿を重ねたのだろう。 憐みの表情を浮かべ、去っていく。 平次の家。 平次、障子にもたれて座っている。 おりんのことを思っている様子。八五郎は、隣室で、将棋盤の上の駒をいじっている。 お静「(すいかを平次のところにもってくる)八つあん、こっち来て食べない?」 八「へい」 平次「おぅ」 お静「おりんさん、今頃、どのあたりかしら」 平次「そうだな、たぶん、高崎あたりだろう」 お静「心底、好きになったときから、嫌いなふりをしなきゃならなかったなんて、哀れな話ですねぇ」 平次「いや、それも、あのおりんの宿命だったと思うしかあるめぇ」 お静「そうですねぇ」 平次「う〜ん」 お静「八つあん?」 八「えっ」 お静「さっきから、ひとりで何考えているの」 八「いえね、死体があった(駒を将棋盤の上に置く)血のついた石ころが転がって、離れた場所にあった(別の駒を置く)これだけで、下手人が、他にいると根っこをつけた親分の眼力、さすがでございますねぇ〜、あたしなんか、まだまだ修行が足りませんよ」 お静「うふふふ」 平次「アハハハ、おい、八、将棋の修行も足りねぇようだから、一丁、揉んでやるか、アハハハ」 *エンドバックタイトル ラストシーンからの続き。 平次、八五郎のところに来て、ふたりで、将棋盤の上に駒を並べ始める。八五郎、お静のところから、すいかを運んでくる(一切れ、かじりながら)八五郎、すいか、片手に食べながら、駒を並べる。 お静も来て、ふたりをうちわで仰ぐ。 |
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| 681話 | 8月1日 | 人情・一番花火 | 佐藤仁哉 佳那晃子 田中浩 高峰圭二 |
「兄さんの一番花火が、上がるのを見たい」余命幾ばくもない妹のおきよは、熱にうなされながらも、必死に訴える。平次は、その哀れなおきよに花火を見せようと、家から連れ出す。夜空に広がる美しい花火をしっかり目に焼き付けて、おきよは、こと切れる。花火も妹の命も終わった後、兄の佐吉は、同心青柳と平次によって、連行されていく。妹を思って、つい犯してしまった殺人……打ち上げ場には、打ち上げ筒だけが、虚しく残されていた。 ゲスト 佐藤仁哉さん(佐吉)、佳那晃子さん(おきよ)、田中浩さん(粂蔵)、高峰圭二さん(弥七) 今回の話もラストで、泣かされました。おきよの最後の願いを叶えてやる平次の優しさ、花火のように短い命を終えたおきよ、兄の一世一代の花火が、見られたのが、せめてもの救い。 私は、佐吉が、弥七を棒で殴ったものの、致命傷でないことを願っていました。きっと、目撃した、蔵破りの頭、粂蔵が、佐吉を強請るために佐吉が、去ったあと殺したのではないかと。平次が、念入りに凶器の棒を調べていたので、佐吉が、犯人じゃない証拠が、あったのだと思っていたら、逆に火薬が、付着していたことが、わかり、花火師の佐吉が、下手人と確信されてしまいました。 お静は、せっかく平次とお揃いの浴衣を着て、ふたりで花火見物をしようと思っていたのに、できませんでした。映像には、出てこなかったけれど、残念に思ったことでしょう。 お静が、揃いの浴衣で、花火見物もいいと平次に新しい浴衣を持ってきますが、平次も乗り気でしたね、いつまでたっても仲がよろしいようで。 万七は、おちかさんと花火見物が、できたのでしょうか。 *揃いの浴衣 平次の家。 平次、戸にもたれて座り、うちわで、仰いでいる。 お静「おまえさん」 平次「おぅ」 お静「(新しい浴衣を抱えている)ちょいと合わせてみてくださいな」 平次「ん?」 お静「浴衣ですよ」 平次「浴衣?」 お静「年に一度、お揃いの浴衣で花火見物っていうのも、ふふふ、いいもんでしょう?」 平次「アハハ、そうか、そうか」 お静「ちょっと、立ってくださいな」 平次「おっ(立ち上がる)よし、どれ(手を広げる)ん、いいか」 お静、平次の体に浴衣を当てる。 平次「そういやぁ、今年も、もう両国の大花火の季節だな」 お静「まっ、ふふふ、今頃になって、そんな、明日ですよ、大花火は」 平次「あ〜、明日か……その番付表は、もう出たのか」 お静「え〜え、今年の一番花火は、鍵屋さんとこの佐吉さんっていう花火師が、打ち出すことになったそうですよ」 平次「あの佐吉さんがか」 お静「え〜え」 平次「う〜ん」 そこへ、八五郎が、事件を知らせに入ってくる。 *ラストシーン 花火の打ち上げ場。 職人たちが、引き上げたあと、佐吉だけが、残っている。そこへ青柳と平次が来る。 佐吉「親分さん、おきよのこと、よろしくお願いします」 平次「佐吉さん……おきよちゃんは、死んだよ」 佐吉、涙ぐむ。 平次「おめぇの一番花火を見て、安らかに死んでいった。眠るようにな。いい死に顔だったよ」 佐吉、平次の前に両手を差し出す。 平次、それを押し返す。驚く佐吉、平次と青柳の顔を見つめる。青柳、ゆっくりと頷く。 平次「今夜の花火は、江戸中のものが、忘れやしねぇ。いや、誰よりもおきよちゃんがな」 青柳、平次、佐吉、打ち上げ場を去っていく。 *エンドタイトルバック ラストシーンの続き。青柳と平次、佐吉を連行して、打ち上げ場を去っていく。打ち上げ筒のアップ。 |
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| 682話 | 8月15日 | ずっこけ三人旅 | 横山あきを 睦五郎 上方柳次 柳沢紀子 |
「わかな」のお町が、法事のため、浜松へ。護衛する松吉と八五郎。その八五郎、護衛どころか、十手は、忘れるわ、財布は無くすわ、おまけに宿の女将にのぼせるわ……ずっこけぶりもいいところ。そんな旅の途中で、出くわした詐欺師の芳助。まがいもののかんざしを売りつけられたお町は「金を返せ!」と芳助を追いかける。松吉も八五郎も追いかける。しかし、芳助は、極悪非道の鬼念仏の一味だったから、さぁ、大変! お町と八五郎が、捕まって……この旅の結末は、いかに。 ゲスト 横山あきをさん(芳助)、睦五郎さん(近江屋)、上方柳次さん(桃川梅之丞)、柳沢紀子さん(お良) 万七親分、お町と松吉が、不在の「わかな」のお手伝い。おちかとふたりきりなので、気合いが、入っています。ねじり鉢巻き、たすきがけ、前掛け姿、なかなかお似合いです。煮物の腕もそこそこ上手(やもめ暮らしが長いから?)火打ち石さえ、一緒に煮なければ、ほぼ満点だったのに。 八五郎、護衛とは、名ばかりのずっこけぶり。ついていかない方がよかったみたい。お金に困った三人、役者にスカウトされ、渡りに船と芝居小屋に行ったものの、松吉と八五郎は、奥女中役。 お客さんの前に出なくてよかった? 平次の浴衣、白地に柏の葉っぱが散らしてありました。小さめの葉っぱで、可愛い柄ですね、新歌舞伎座のパンフレット(昭和54年)にこの浴衣を着た平次の写真が、載っていました。 *ラストシーン 平次の家。 八「いやぁ、もう、あんときばかりは、もうだめだ、いよいよあの世行きだと観念しましたよ」 平次「アハハ」 青柳「しかし、いっそのこと親分が、駆けつけなきゃ、この明神下界隈も、結構静かになったでしょうね」 八「そりゃないですよォ、ねぇ、親分」 平次「いやぁ、確かに青柳様の言う通りかもしれねぇぜ。大事な十手をうっかり忘れるようじゃ、先の見込みもありそうもねぇぜ。アハハ」 八「(心配顔)そ、そんな〜、姐さん、何とか言ってくださいよ」 お静「うふふふ、冗談よ。ふたりともちょっと、八つあんをからかっただけよ、うふふふ」 青柳「考えてみろよ、八」 八「はっ」 青柳「親分がな、おまえを見殺しにするわけないじゃないか、そうだろう?」 八「あっ、あ、ハハ、びくりしたぁ、いや、親分も青柳の旦那も人が悪いなぁ」 皆、大笑い。 おちか「ごめんやす(旅姿。庭に入ってくる)」 お静「はい」 万七、清吉、松吉も庭に入ってくる。 お静「あっ、あら、おちかさん、なんですかぁ、そんな格好して(庭先へ)」 お町「浜松には、改めて、おっ母さんが、出かけることになって」 お静「あら、あっ、そう〜、あっ、ちょっと、おまえさん」 平次「おぅおぅ、え〜え、そうかい、へ〜え(庭先へ)」 おちか「法事に間に合わなかったさかい、せめて、お線香だけでもお供えしてこようと思いましてな」 万七「へへ、それで、まぁ、俺と清吉がな、護衛役をかってでたってわけなんだよ」 おちか「わてひとりで大丈夫やて、ゆうたんでっけどな」 清吉「ええ、もううちの親分ときたら、ここぞと言わんばかりに張り切っちゃって……」 万七「黙ってろてめぇは! へへへ、まっ、そんなわけで、留守中はひとつ、銭形、青柳の旦那、よろしくお願いします」 平次「いやぁ、そいつはいいが……いやぁ、おちかさん、そのかんざしは……」 お静「どうして、そんなに、またたくさん……」 平次「うん」 おちか「いえね、まさかのための用心にこれだけあったら、安心でさかいにな」 万七「ハハ、さっ、おちかさん、そろそろ出かけねぇと」 青柳「奉行所まで戻るついでだ、途中まで送っていこう」 八「じゃ、あの、あっしもご一緒に……へぇ」 万七「さぁさ、じゃ」 おちか「行ってきます」 皆、去る。 お静「お気をつけて」 平次とお静、長火鉢のところに戻る。 平次「はぁ、いやぁ、一難去って、また一難だな」 お静「道中、何事もなきゃいいんですけどね」 平次「う〜ん(腕組をして)しかし、大丈夫かなぁ」 お静「ほんとに大丈夫かしら」 平次「あん?」 平次とお静、同じように心配しているのに気づき、お互い顔を見合わせ、笑う。 *エンドタイトルバック ラストシーンからの続き。 お静、おもむろに髷から、かんざしを抜き、手に取る。「これだけじゃ、不安だわ」とでも言っているよう。平次「だったら、買ってくればいいじゃないか」と言ってるらしい。「だって、三百文はするのよ」とお静。平次、お金の話になり、分が悪くなり、ごまかそうとし、玄関へと逃げるが、お静も来て、そこでひと悶着(?)。 |
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| 683話 | 8月22日 | 平次の心意気 | 長内美那子 服部ひろ恵 出原健一 |
俺が、しょっ引いた下手人、その陰で残された子供たちが、こんな不幸な目に遭っているとは! 幼いおむぎと信太を目の前にして、平次の心は痛む。おむぎたちの母親、おかつは、悪の波に呑み込まれ、子供たちを捨てた。しかし、一度たりとも子供たちのことを忘れたことはない。罪人となってしまった今、どの顔をさげて、子供たちに会えるのだろうか。平次は、なんとか、この親子を対面させたいと奔走する。 ゲスト 長内美那子さん(おかつ)、服部ひろ恵さん(おむぎ)、出原健一さん(信太) おむぎ役の女の子、上手かったですね、確か、以前にも出た子役さんだと思います。表情の変化が、素晴らしい。 人間の本心が、描かれていたと思います。母親のおかつは、見かけは、非情だけれど、ほんとは、子供に会いたかったし、おむぎも、母親に背を向けていても、ほんとは、その胸に飛び込みたかったのでしょう。万七親分も現場検分に来た平次を理不尽に追い返しますが、その実、万一、しくじって、平次の褒賞に差し支えてはとの気遣いからでした。「万七親分、見直した!」とは、青柳の弁。平次もその気遣いを汲んで、万七に手柄を譲りました。 平次の子供たちや、母親への説得(平次がビンタしたのには、びっくり)、諌めなどが、光っていました。 平次は、おむぎたちのような不幸な子供たちがいることに気づき、褒賞金を辞退。奉行に子供たちが安心して暮らせるよう計らってほしいと願い出ます。このことがなかったら、褒賞金を受けとったでしょうか? やっぱり、どこかへ寄付するなりして、受け取らないでしょうね。 平次とお静、差し向かいで、差しつ差されつ……お熱いシーンあり。 *差しつ差されつ 平次の家。 平次とお静、差し向かいで、酒を飲んでいる。 お静「(一杯飲んで)まるで、夢のようだわ。お奉行がおまえさんに御褒美をくださるなんて」 平次「いや、それほどの働きをしたわけじゃねぇが、さりとて断るいわれもねぇしな」 お静「そんなことあるもんですか、感謝されるのが遅かったくらいですよ(平次に酌)」 平次「へへへ……何だ、お静、おめぇ……」 お静「私がお奉行だったら、とっくに日頃のおまえさんの苦労に報いてますよ」 平次「おぅ、おいおい、そんなに亭主を持ち上げるもんじゃねぇぜ」 お静「アハハ、だって、心底嬉しいんですもの」 平次「おぅ、おい、おめぇ、ちょいと飲みすぎてるんじゃねぇのか」 お静「ふふふ、今夜だけは勘忍してくださいな。ね、もう一杯(盃を差し出す)」 平次「おめぇ、ほんとに酔っちまったんだな」 お静「うふふ」 平次「よし、で、もうこれっきりだぞ(お静に酌)」 お静「うふふ……(急に神妙になって)おまえさん……」 平次「どうしたい」 お静「私が、たったひとつ、人様に誇りに思っているもの……何だかわかるかしら」 平次「さぁ〜、いきなり、そう言われたって、おめぇ、ん」 お静「おまえさんですよ」 平次「おいら?」 お静「(頷く)おめでとう……おまえさん」 平次「何でぇ、(照れくさそうに)アハハハ」 お互いに笑う。 お静「さぁ、おまえさん(徳利を持つ)」 平次「えっ、おぅ、よし、それじゃ、今夜は俺も飲もうか……よしきた(お静が、酌)おっおっ……」 *ラストシーン 奉行所の中庭。 平次、ひざまずいている。 樋口と役人が、出てくる。青柳、万七、清吉、八五郎が、物陰から、様子を見ている。 役人「平次、前へ」 平次「へい(立ち上がり、前に進む)誠に恐れ入りますが、その前に一言申し上げたい儀がございます」 奉行「何か、申してみい」 平次「へぇ、この度のこと平次、身に余る光栄に存じております。ただ、はなはだ失礼ながら、褒賞の儀、御辞退申し上げとうございます」 役人「何!」 樋口「平次!」 青柳「そ、そんなばかな」 万七「いってぇ何を考えてやがんだ、ほんとうに」 役人「平次、この場に及んで奉行所を愚弄する気か!」 奉行「待て、平次、わけを聞かせてくれぬか」 平次「へい、それではお言葉に甘えまして……平次、お願いの儀がございます」 奉行「かまわん、話してみい」 平次「江戸の市中には、親に先立たれ、放浪している子供たちがございます。寝るところもなく、食うや食わずで必死に生きながらえようと、世間の冷てぇ風と闘っておりやす。そん中にゃ、てめぇが、しょっ引いた下手人の子供たちも混じっておりやす。たとえ、親が咎人であろうと子供に何の罪がございましょう。お奉行にお願い申し上げます。この子供たちが、一日も早く雨、露をしのぎ、安穏な日々を送れるよう、是非御配慮のほど、平次、強くお願い申し上げます」 尼寺。 大勢の子供たちが、遊んでいる。おむぎと信太もいる。 そこへ平次と八五郎。 八「親分、出来ましたね」 おむぎ「一、二、三……(楽しそうに信太たちと縄とびをしている)」 八「アハハ……元気になりましたね」 平次、頷く。 子供たちを見つめる平次と八五郎。 *エンドタイトルバック ラストシーンからの続き。 寺の長い階段を何やら楽しそうに話しながら、平次と八五郎が、降りてくる。子供たちのことを話題にしているような……最後は、八五郎が、平次に一杯やろうとおねだりしているよう。 |
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| 684話 | 8月29日 | 海鳴りは父の声 | 大川功次郎 佐藤允 黒部進 名川貞郎 |
「三吉! 俺がお父つあんだ!」信じがたい言葉が、盗っ人源太の口から飛び出した。茫然とする三吉。父ちゃんは七年前に亡くなったはず……盗っ人なんかじゃない! 両親のいない三吉をことのほかかわいがっていた平次だが、源太のことがわかるほどに三吉の父ということが、次第に強まって行く。平次は、何としても源太の口から「父ではない」と言わせなければ、三吉の心の傷が、癒えないと躍起になる。源太……三吉の父、源之助は、平次の三吉を思う心にほだされ、意識が薄れて行く中、平次に三吉のことを託すのだった。 ゲスト 大川功次郎さん(三吉)、佐藤允さん(源太)、黒部進さん(疾風の伊蔵)、名川貞郎さん(俵屋) 父子共演5作目。(大川功次郎として、2作目) 三吉を可愛がる平次親分、お静があきれるほどですが、何だか、実生活を見ているよう……橋蔵さんは、子煩悩だったと聞いています。三吉は、10歳の設定。功次郎さんも当時10歳。誕生日も三吉と近いですよ。 逃亡した源太を追って、青柳、平次、八五郎が、房州への旅。真夏の海辺を歩いて行く平次たち。八五郎は、大はしゃぎ。途中で、万七と清吉が合流します。 | |||